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2020年06月18日

保健所は地域における感染症対応の要(北海道倶知安(兼)岩内保健所長(兼)北海道庁子ども子育て支援課 村松 司)

 行政における感染症対応というと、エボラ出血熱やMERS、あるいはCOVID-19のパンデミック対応などを思い浮かべる方が多いかと思いますが、現状のコロナ対応を除けば、地域の保健所の日常対応としては、ノロウイルスに代表されるような感染性胃腸炎の施設内集団発生への対応や、2類感染症である結核への対策が比較的多いものとなります。


 そのほかにも、感染症定点医療機関から毎週報告されてくる定点報告をもとに、感染症の発生動向を把握したり、感染症予防研修会などでの情報提供を行い、それを市町村や管内の幼稚園・保育園・学校等での感染対策に役立てていただいています。


 最近は麻しん・風しんが注目されていますが、特に麻しんは2015年の排除認定以来麻しん清浄国となっているこの日本国内で発見された場合、対応が非常に大変です。麻しんの基本再生産数(R0)は12〜18とされており、患者とのすれ違いや、患者退去後の室内でも感染することがあるので、その疫学調査は至難を極めます。接触者も通常多数にのぼるため、人海戦術が必要になり、そのような時にこそ保健所のチームワークが試されますし、多くの場合は近隣、場合によっては遠く離れた保健所や都道府県とも連携しなければならなくなります。保健所長はその陣頭に立って指揮をとる仕事を担います。


 もう一つ保健所の役割として注目されているのが、AMR(薬剤耐性菌)対策です。もしひとたび管内の医療機関でAMRの院内感染が起これば、保健所は地域の感染症専門家と連携し、指導を行わなければなりません。さらにAMRは一つの施設にとどまらず、地域の問題でもあることから、その対策の中心になれるのは保健所しかありません。私自身は、臨床勤務時代に院内感染対策もやっており、ICDも取得しているので、「医療機関とそこを利用する患者、ひいては住民を守る」立場を医療機関の責任者とも共有しながら対策を進めていけるadvantageがあります。保健所は抗菌薬の適正使用をリードしなければいけない立場でもあり、保健所勤務でも臨床の経験はとても役に立ちます。


かつての戦後のような感染症による死亡が極端に多かった時代は過去のものとなりましたが、だからといって保健所や公衆衛生医師の地域防疫に対する役割は決して軽くなっているわけではなく、むしろ大きく、かつ複雑化してきていると言えます。


是非、皆さんの現場経験を、地域保健の「現場」でも活かしてみませんか!

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(写真:学校・福祉施設職員対象の感染症対策研修会にて。
    ノロウイルス対策の吐物処理の実演)

筆者プロフィール

平成11年 自治医科大学医学部医学科 卒
以降、羽幌町、天塩町、根室市、中標津町、紋別市で地域医療を実践
平成24年 利尻島国保中央病院 副院長
平成26年 北海道岩見沢保健所 主任技師
平成27年9月 北海道滝川保健所 所長
平成28年 北海道根室保健所 所長(兼)北海道中標津保健所 所長
平成30年 北海道網走保健所 所長(現職)
平成31年4月 (兼)北海道紋別保健所 所長(令和元年9月まで)
令和2年4月   (兼)北海道立網走高等看護学院 学院長(令和2年9月まで)
令和2年10月 (兼)北海道紋別保健所 所長(令和3年3月まで)
令和3年4月 北海道倶知安保健所 所長(兼)北海道岩内保健所 所長
       (兼)北海道保健福祉部子ども未来推進局子ども子育て支援課 医療参事
       (現職) 
現在に至る

資格・専門医 等

社会医学系専門医・指導医
日本内科学会総合内科専門医
日本結核・非結核性抗酸菌症学会 結核・抗酸菌症認定医
ICD
臨床研修指導医
日本医師会認定産業医
posted by 公衆衛生医師の確保と育成に関する事業班 at 00:00| 業務紹介