公衆衛生医師のお仕事紹介です。金沢市保健所の北岡です。
少し前の仕事ですが、住民の方への啓発のためにポスターを作成しました。
当時、保健所の食品衛生の部署で食品衛生監視員をしており、肉の生食や不十分な加熱による食中毒や、有症苦情(食中毒が疑われるもの)を多く経験しました。
現在、豚と牛レバーを生で食べることは禁止されており、ユッケなどの生食用の牛肉には厳しい規制があります。一方で生の鶏に関する規制は現時点ではなく、啓発は非常に重要です。
鶏を生もしくは不十分な加熱により食べることで、カンピロバクターによる食中毒が起こることがあります。カンピロバクターに汚染された食事をしてから2〜5日後に高熱、下痢、嘔吐、腹痛などの症状が出現し、その症状が治まったあとにギランバレー症候群(手足の麻痺や呼吸困難などの症状が出る)が起こることもあります。
このポスターはデザイン会社の方と、カンピロバクターによる食中毒を予防するための情報や伝えたいメッセージについて話し合っていく中で、調子が悪そうな鶏をメインに、「命トリ」という印象に残るコピーを提案してくださいました。
当初、鶏の背中にファスナーはありませんでしたが、鶏はカンピロバクターを保菌していても、調子が悪くなるわけではなく、ヒトがカンピロバクターで汚染された肉を食べることによって食中毒の原因となることを表現したかったので、ファスナーをつけていただきました。
完成後は給食施設や焼き肉店監視などで配付し、貼ってくれている施設も多くありました。
とはいえ、最近でもカンピロバクターに限らず、腸管出血性大腸菌による生肉や加熱が不十分な肉を食べたことに関連した食中毒の事例が数多く報告されています。腸管出血性大腸菌による食中毒では、溶血性尿毒症症候群(HUS)という重篤な合併症で死に至ることもあります。
「肉は十分に加熱してから食べる」
これは提供側への周知だけでなく、消費者側もよく知ることが大切です。
食事は旅行先でも重要な楽しみのひとつです。そんな食事が、健康を害するものにならないためにも、継続した啓発活動が必要と感じています。自治体の立場から、信頼ある情報をわかりやすく伝えることはとてもやりがいのある仕事です。