果樹栽培で癒しと治療力アップとメンバーの工賃向上そして環境保全
〜 一つの農福連携のありかた 〜
1. はじめに
幼い頃に見慣れた畑や棚田が耕作放棄地になっていく光景が多くなってきている。辛い農作業、採算のとれない農業では、放棄するのも仕方がないと思うのですが、反面、何とかできないものかと考えたりします。
生まれ育った自然の風景が手つかずの状態で放置される面積が増えるこの頃ですが、なんとかしたいと思うのは私だけではないように感じています。国土に7割が中山間地域になり、都市に人口が集中し富と貧困が同居、新型コロナウイルスのクラスター等が問題になる人口、都市機能を変えることが必要となっているように推察されます。
2.癒しと治療力
障がいのある人たちと農業、果樹園の経営で一緒に働くことは、学生の時に教えてもらった滋賀県にある一麦寮の田村一二さんが構想した「茗荷村」をイメージしました。流汗同労で、行動障害の方の問題行動が軽減されていく姿をみていると農業で癒され集中力を高め、様々な行動が治まってきています。もし、室内だけの作業なら、仲間同士のトラブラから興奮して異常行動をとり、病院で投薬治療になるのではないかと思ったりします。
障がいのある人たちの「できること」を大切にして農作業の組み立て、働くことに集中してもらう体制をつくることが大切で、できることから始めることが一番意欲を引き出せることでもあります。
また、働くことに集中するには、働くことにあわせてもらうことです。意外とメンバーの方は色々なことを言ってきますが、働くこと以外は受け付けないようにお願いしたりしています。
どんなに障がいの重い人でも働きたいと思っています。その思いを癒しと集中力にしていく支援も大切です。

3.メンバーの工賃給与向上をめざした農業・農作業と農福連携
今、農福連携のなかでは、ソーシャルファーム、ケアファームなどと色々言われたり
しますが、収支、採算のとれる農業、農福連携が大切であるとおもっています。これはピアファームが進めている「癒しの果樹園あわらベルジェ」の真髄あり、障がい者と一緒に農作業を進めているからと言って、妥協のないナシやブドウを提供しています。
平成24年の認定農業者になり、今年2月にアジアGAPの認証取得をしました。その目的は1)従事者と消費者への安全と事故防止、2)栽培する品目の品質向上、3)生産工程を可視化、4)環境を保全する、5)経費の節減を図る、の5点です。こうした姿勢を貫くと、福祉、就労支援関係者から、疎まれることがしばしばあります。
ピアファームは果樹や野菜栽培で年間30,000千円まで事業収益を上げられるようになりましたが、後5年で500万円〜800万円増を目標に思っています。メンバーの工賃給与向上と働くことでの治療力がでる農業栽培を見ています。
ですから、ここでは無事故、安全、虐待防止が最も大切なテーマです。

4. 農福連携と環境保全
これまでに耕作放棄地を約2haほど樹木伐採して開墾、皆総出で樹や根、草の後始末をしてきました。この作業をメンバーと共にできたが地域の環境保全になってきたと思っています。開墾整備した放棄地を耕し、タネを撒いて野菜を育てて畑に慣らしていきます。次にビニールハウスを設置して、ブドウの苗木を植えて観光ブドウ園、または醸造用ブドウを植えてワインをつくる準備をしています。
5. 一つの農福連携のありかたとして
果樹栽培で癒しと治療力アップとメンバーの工賃向上そして環境保全を私たちは農福連携の柱として、手法はいくつかありますが、想いは耕作放棄地を少しでも何とかしたいとおもっています。また、現在耕作している6haほどの農地を健全に保全することも大切にしていきます。農業・環境保全はけして収支、採算がとれない面もありますが、この課題を貫くことも重要と考えています。
私たちの取り組みは、決して農福連携の就労継続支援事業で参考にはなりませんが、一つの農福連携の在り方としてこれからも前進させていきたいと考えています。
