19年度 第9回親子学級[2019年10月31日(Thu)]
2019年度 第9回親子学級
『私の見方を考える』
今回は、NPO法人乳幼児親子支援研究機構理事長、國學院大學兼任講師の石井栄子先生にお話を伺いました。
■先生のご紹介■
福祉と臨床心理の視点から、乳幼児から高齢者に至るまで幅広い年代層に対する家族セラピーを行うかたわら、保育園、幼稚園、子育てひろば等のスーパーバイズも行っている。現在、麻生区内にて、子育てひろば「みどりのへや」と「大きな樹」を運営している。
■「良い母」ってどんな母?■
各グループで話し合ってみたところ、以下のような意見があがりました。
・穏やかで怒らない。イライラしない=常に笑顔でいる
・子どもの味方でいられる。
・子どもの遊びに付き合ってあげられる。
・家事スキルが高い。料理上手で家の中がキレイ
・無理しない
■「よい母」になるべきという呪縛に縛られる必要はない■
あがった意見の中でできることは「無理をしない」だけ。
母も人間。常に「良い母」でいることは不可能。気持ち・時間に余裕のある時にできることがあればいい。「こんな風にできたらいいね、無理だけどね」というスタンス。
良い母のイメージにとらわれすぎると「私が母親でなければこの子はもっと良い子に育ったのではないか」「他のママはみんな子育て上手で良い母親であるように見える」といった考えに苛まれることになる。
■母がイライラするのは当然のこと■
◎マタニティブルース
ホルモンバランスの乱れにより、出産後子どもが1歳〜1歳半くらいになるまではそれまで経験したこともないような過度な落ち込み、激しいイライラ、深い悲しみなど、様々な現象が起こる。
◎原初的女性没頭
精神分析学者フロイトの弟子でもあるウィニコットが提唱したもの。
母親には、赤ちゃんを世話するのはとても大変であるという思いの一方で、自分から生まれた子どもは自分が守らなくてはならない、という強い「〜ねばならない」の思いが存在する。
◎赤ちゃんは母の心を刺激するボタンを持って生まれてくる
子どもが押すと、母がとてもイライラするボタンがある。
そのボタンを押されると母親は自分の小さい頃のことを思い出したり「ほら、ママにはこんなところがあるんだよ」と自分の中のいやな部分に気づかされてしまうので、当然イライラすることになる。子どもは皆そんなボタンを持って生まれてくると言われている。
■イヤイヤ期の対処法■
イヤイヤ期の子どもに対し、機嫌を取るように優しく対応してこちらまでイライラしてしまう必要はない。
「あーあ!もう、ママも、いやになっちゃったなぁ!どうしていいかわからないよ・・・」と言ってしまって良い。この時期に母がこのように言えると、その後の反抗期でも言いたいことを言い合える関係を築ける
癇癪を起こした子どもに必死に「どうしたの?何があったの?」とその場で尋ねてしまうとせっかく自己コントロールしようとしている子どもの気持ちを損ねてしまう。子どもがトーンダウンした頃合いを見計らって「落ち着いたかな?」と声をかけてあげると良い。
脳が活発に発達している時なので、優しいだけでなく、はっきりとメリハリをつけて声掛けをした方が子どもには伝わりやすい。母親は女優になって色々演じてみるくらいの気持ちで
■母親の感情を言葉にする■
母親も自分の気持ちを伝えることが大切。
幼稚園児は「そんな意地悪をしたら、〇〇ちゃん悲しくなっちゃうわよ。」と言葉で説明されても相手の悲しみを想像することはできない。「ママ、なんか疲れていやな気持ちになっちゃった」のように、感情を表す言葉を行動と組み合わせて伝えられることで感情は育っていく。
「怒らず、穏やかで、イライラもせずいつも笑顔で対応するのが良い母」と思う必要は一切ない。しっかりと自分の感情を言語化しながら伝えていくことが、子どもの感情とコミュニケーション力を育てることになる
大切にしたいのは「怒り過ぎない」ということ。
“怒らない子育て”という考えが間違って解釈されたまま横行し、絶対に怒ってはいけない、手をあげてはいけない、とママ達はピリピリしているように見える。悪いことをしたら怒る、叱るというのは当然。正しい理解は、怒り「すぎない」、叱り「すぎない」こと。
怒っているうちにコントロールできなくなり、怒り過ぎてしまうこともあるかも知れないが、修復できる
気持ちが落ち着いてきた頃「さっき、ママ怒りすぎちゃったよね。ごめんね。」とちゃんと言えば良い。怒ったことには理由があるので「怒ってごめんね」ではなく「怒り過ぎちゃってごめんね」と言う。
特にこの手法はある一定の年齢までの男の子には有効。(男の子はおだてに弱い性質があるため。)ただし、女の子に同じようにすると「そうよ、ママはいつも怒りすぎよ!」とボタンを押されてしまったりするので、男女差は理解しておくと良い。
■「我が家のルール」があって良い■
「子どもが社会に出てから困ることなく自立できるようにする」のが子育てなので、ルールはとても大切。家庭ごとに違うルールがあって良い。自分のうちのルールがあったとしても、外に出ればそれとは違うルールがあることを知ることになる。それが「うちとよその違い」の理解につながる。
■自由と放任■
自由・・・枠組みのあるもの
放任・・・枠組みがないもの(凧の糸が切れてどこまでも飛んで行ってしまうイメージ)
“自由保育”を謳う保育園や幼稚園があるが、放任との違いをしっかり理解する必要がある。
子どもが園庭で他の子と遊ばずに小さな虫を見つけながら「この虫おもしろいね」などと話していたら、後でさりげなくその子のそばに昆虫図鑑を置いておく、というのが自由保育。
手足を伸ばした少し先、届きそうで届かないところに枠を作ってあげるのが自由。そして子どもの成長に合わせてその枠を広げていけば良い。
放任はそもそも枠がないので、子どもは「これはやっていいのかな?これはどうかな?」と、とてもエネルギーを要する“試し行動”をしなくてはならなくなる。
■弱みを見せ合える親子関係■
子どもは母をパーフェクトな人だと思っているかも知れない。母も子どもからそんな風に思われたいかも知れない。
けれど、失敗や弱みを見せたり、時には子どもの前で泣いてしまうようなことがあっても良い。
なぜなら、こちらが弱みを見せられないと、子どもも親に対して弱みを見せられなくなる。
しっかりと自分の感情を伝えることがとても大切。子どもが小さい頃から親子の間で2人だけの楽しい遊びの合図(何かできた時に両手でハイタッチしながら「やったー!」など)を作っておくと、言葉にせず気持ちを伝え合うことができるので、反抗期の親子間コミュニケーションに役に立って良い。
■自己肯定感を育てる■
子どもの自己肯定感が育つのは「本当にありがとう!キミのおかげでママは助かった!」という言葉によって、誰かの役に立ったことを知り、自分の存在価値を感じられた時
小さい子どもの自己肯定感を高めるためには『一緒に何かをする』ことが大切。ずっと一緒に何かをする必要はなくて「何もしない」時間があっても良い。一緒におはしを並べる。一緒に手をつないで歩く。そんなことで良い。一緒に何かをすることで「ママには絶対捨てられない。」という思いが育ち、それこそが自己肯定感となる。
基本的な自尊感情=“このママは僕の良いところも悪いところも知っていて、ボクのことを好きな時も嫌いな時もあるけれど、決して自分を捨てることはない”という想い
社会的自尊感情=”●●君よりも△を上手にできる”など
基本的な自尊感情の上に社会的自尊感情がなりたつ。
「勉強も他のことも良くできてとても器用なのに、なぜあんなに自信がないんだろう?」と言われるような子は、基本的な自尊感情が育っていない。
好きな部分も嫌いな部分も全部含めてその子を認め、自尊感情を育ててあげる。そのために一緒に何かをすることがとても重要。特別に計画したりするのではなく、小さなことを一緒にやっていって欲しい。
さいごに・・「好き好きシャワー」と題して、グループ内の一人の人に対して、他のメンバーが順番に良いところを挙げていき、最後に「そんな〇〇さんが大好きです。」と言ってしめくくるワークを行いました。
先生より・・母として何をやっても当然と思われていて、大好きよ、頑張ってるね、なんて言ってもらえることはなかなかない。仲間同士でこれからも「大好きよ」を言い合い、寝る前には「がんばったね」と自分への労いも忘れずに過ごして欲しい。
沢山のエピソードや事例を紹介してくださる中で、
一貫して「母である前に人。母だからといって頑張りすぎる必要はない。」というメッセージが根底にあり、まさに母達のミカタになって下さっている先生の優しさが伝わってきました。
母である前に私なんだ・・・私自身も大事にしよう・・・
そう思うと、ホッとして暖かい気持ちになりますね
学級第9回の保育室だより(子ども達の名前はすべて仮名です)
『私の見方を考える』
今回は、NPO法人乳幼児親子支援研究機構理事長、國學院大學兼任講師の石井栄子先生にお話を伺いました。
■先生のご紹介■
福祉と臨床心理の視点から、乳幼児から高齢者に至るまで幅広い年代層に対する家族セラピーを行うかたわら、保育園、幼稚園、子育てひろば等のスーパーバイズも行っている。現在、麻生区内にて、子育てひろば「みどりのへや」と「大きな樹」を運営している。
■「良い母」ってどんな母?■
各グループで話し合ってみたところ、以下のような意見があがりました。
・穏やかで怒らない。イライラしない=常に笑顔でいる
・子どもの味方でいられる。
・子どもの遊びに付き合ってあげられる。
・家事スキルが高い。料理上手で家の中がキレイ
・無理しない
■「よい母」になるべきという呪縛に縛られる必要はない■
あがった意見の中でできることは「無理をしない」だけ。
母も人間。常に「良い母」でいることは不可能。気持ち・時間に余裕のある時にできることがあればいい。「こんな風にできたらいいね、無理だけどね」というスタンス。
良い母のイメージにとらわれすぎると「私が母親でなければこの子はもっと良い子に育ったのではないか」「他のママはみんな子育て上手で良い母親であるように見える」といった考えに苛まれることになる。
■母がイライラするのは当然のこと■
◎マタニティブルース
ホルモンバランスの乱れにより、出産後子どもが1歳〜1歳半くらいになるまではそれまで経験したこともないような過度な落ち込み、激しいイライラ、深い悲しみなど、様々な現象が起こる。
◎原初的女性没頭
精神分析学者フロイトの弟子でもあるウィニコットが提唱したもの。
母親には、赤ちゃんを世話するのはとても大変であるという思いの一方で、自分から生まれた子どもは自分が守らなくてはならない、という強い「〜ねばならない」の思いが存在する。
◎赤ちゃんは母の心を刺激するボタンを持って生まれてくる
子どもが押すと、母がとてもイライラするボタンがある。
そのボタンを押されると母親は自分の小さい頃のことを思い出したり「ほら、ママにはこんなところがあるんだよ」と自分の中のいやな部分に気づかされてしまうので、当然イライラすることになる。子どもは皆そんなボタンを持って生まれてくると言われている。
■イヤイヤ期の対処法■
イヤイヤ期の子どもに対し、機嫌を取るように優しく対応してこちらまでイライラしてしまう必要はない。
「あーあ!もう、ママも、いやになっちゃったなぁ!どうしていいかわからないよ・・・」と言ってしまって良い。この時期に母がこのように言えると、その後の反抗期でも言いたいことを言い合える関係を築ける
癇癪を起こした子どもに必死に「どうしたの?何があったの?」とその場で尋ねてしまうとせっかく自己コントロールしようとしている子どもの気持ちを損ねてしまう。子どもがトーンダウンした頃合いを見計らって「落ち着いたかな?」と声をかけてあげると良い。
脳が活発に発達している時なので、優しいだけでなく、はっきりとメリハリをつけて声掛けをした方が子どもには伝わりやすい。母親は女優になって色々演じてみるくらいの気持ちで
■母親の感情を言葉にする■
母親も自分の気持ちを伝えることが大切。
幼稚園児は「そんな意地悪をしたら、〇〇ちゃん悲しくなっちゃうわよ。」と言葉で説明されても相手の悲しみを想像することはできない。「ママ、なんか疲れていやな気持ちになっちゃった」のように、感情を表す言葉を行動と組み合わせて伝えられることで感情は育っていく。
「怒らず、穏やかで、イライラもせずいつも笑顔で対応するのが良い母」と思う必要は一切ない。しっかりと自分の感情を言語化しながら伝えていくことが、子どもの感情とコミュニケーション力を育てることになる
大切にしたいのは「怒り過ぎない」ということ。
“怒らない子育て”という考えが間違って解釈されたまま横行し、絶対に怒ってはいけない、手をあげてはいけない、とママ達はピリピリしているように見える。悪いことをしたら怒る、叱るというのは当然。正しい理解は、怒り「すぎない」、叱り「すぎない」こと。
怒っているうちにコントロールできなくなり、怒り過ぎてしまうこともあるかも知れないが、修復できる
気持ちが落ち着いてきた頃「さっき、ママ怒りすぎちゃったよね。ごめんね。」とちゃんと言えば良い。怒ったことには理由があるので「怒ってごめんね」ではなく「怒り過ぎちゃってごめんね」と言う。
特にこの手法はある一定の年齢までの男の子には有効。(男の子はおだてに弱い性質があるため。)ただし、女の子に同じようにすると「そうよ、ママはいつも怒りすぎよ!」とボタンを押されてしまったりするので、男女差は理解しておくと良い。
■「我が家のルール」があって良い■
「子どもが社会に出てから困ることなく自立できるようにする」のが子育てなので、ルールはとても大切。家庭ごとに違うルールがあって良い。自分のうちのルールがあったとしても、外に出ればそれとは違うルールがあることを知ることになる。それが「うちとよその違い」の理解につながる。
■自由と放任■
自由・・・枠組みのあるもの
放任・・・枠組みがないもの(凧の糸が切れてどこまでも飛んで行ってしまうイメージ)
“自由保育”を謳う保育園や幼稚園があるが、放任との違いをしっかり理解する必要がある。
子どもが園庭で他の子と遊ばずに小さな虫を見つけながら「この虫おもしろいね」などと話していたら、後でさりげなくその子のそばに昆虫図鑑を置いておく、というのが自由保育。
手足を伸ばした少し先、届きそうで届かないところに枠を作ってあげるのが自由。そして子どもの成長に合わせてその枠を広げていけば良い。
放任はそもそも枠がないので、子どもは「これはやっていいのかな?これはどうかな?」と、とてもエネルギーを要する“試し行動”をしなくてはならなくなる。
■弱みを見せ合える親子関係■
子どもは母をパーフェクトな人だと思っているかも知れない。母も子どもからそんな風に思われたいかも知れない。
けれど、失敗や弱みを見せたり、時には子どもの前で泣いてしまうようなことがあっても良い。
なぜなら、こちらが弱みを見せられないと、子どもも親に対して弱みを見せられなくなる。
しっかりと自分の感情を伝えることがとても大切。子どもが小さい頃から親子の間で2人だけの楽しい遊びの合図(何かできた時に両手でハイタッチしながら「やったー!」など)を作っておくと、言葉にせず気持ちを伝え合うことができるので、反抗期の親子間コミュニケーションに役に立って良い。
■自己肯定感を育てる■
子どもの自己肯定感が育つのは「本当にありがとう!キミのおかげでママは助かった!」という言葉によって、誰かの役に立ったことを知り、自分の存在価値を感じられた時
小さい子どもの自己肯定感を高めるためには『一緒に何かをする』ことが大切。ずっと一緒に何かをする必要はなくて「何もしない」時間があっても良い。一緒におはしを並べる。一緒に手をつないで歩く。そんなことで良い。一緒に何かをすることで「ママには絶対捨てられない。」という思いが育ち、それこそが自己肯定感となる。
基本的な自尊感情=“このママは僕の良いところも悪いところも知っていて、ボクのことを好きな時も嫌いな時もあるけれど、決して自分を捨てることはない”という想い
社会的自尊感情=”●●君よりも△を上手にできる”など
基本的な自尊感情の上に社会的自尊感情がなりたつ。
「勉強も他のことも良くできてとても器用なのに、なぜあんなに自信がないんだろう?」と言われるような子は、基本的な自尊感情が育っていない。
好きな部分も嫌いな部分も全部含めてその子を認め、自尊感情を育ててあげる。そのために一緒に何かをすることがとても重要。特別に計画したりするのではなく、小さなことを一緒にやっていって欲しい。
さいごに・・「好き好きシャワー」と題して、グループ内の一人の人に対して、他のメンバーが順番に良いところを挙げていき、最後に「そんな〇〇さんが大好きです。」と言ってしめくくるワークを行いました。
先生より・・母として何をやっても当然と思われていて、大好きよ、頑張ってるね、なんて言ってもらえることはなかなかない。仲間同士でこれからも「大好きよ」を言い合い、寝る前には「がんばったね」と自分への労いも忘れずに過ごして欲しい。
沢山のエピソードや事例を紹介してくださる中で、
一貫して「母である前に人。母だからといって頑張りすぎる必要はない。」というメッセージが根底にあり、まさに母達のミカタになって下さっている先生の優しさが伝わってきました。
母である前に私なんだ・・・私自身も大事にしよう・・・
そう思うと、ホッとして暖かい気持ちになりますね
学級第9回の保育室だより(子ども達の名前はすべて仮名です)