24年度 第4回親子学級「アリサから見た子どもの発達」[2024年10月02日(Wed)]
「アリサ」から見た子どもの発達
今回は、帝京大学 名誉教授の杉本眞理子先生にお話を伺いました。
■映画「アリサ」からの考察■
アリサとその仲間たちは、自分で決めて、自分で行動することによって
・集中力
・探求心
・好奇心
・仲間との協力
・意欲
・友達を助ける力
・子どもらしい知恵
を自然と身につけていた。
子どもはいつもよく生きようとしている存在であり、 私たち大人は、それを応援する人でなければならない。 (井桁容子さんの言葉より) |
自分のお子さんの行動にイライラした時、この言葉をぜひ思い出してほしい。
■知らない = できない?■
現代の子どもたちは「知ってる」とそれ以上の探求をしなくなってしまっている。
「わからない」「できない」と、自信がないことに挑戦しない。
「面白そうだからやってみたい!」「もっと深く知りたい!」ではなく、自信がないことを避けようとする。
■「知る」よりも「感じる」■
「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要ではない。 幼い子ども時代は土壌を耕すとき。 レイチェル・カーソン著『センス・オブ・ワンダー』より |
発達の順序を無視した知識の詰め込み → 学習意欲の低下 → 学力低下・・となりかねない。
乳幼児期に大切なことは・・・
・直接体験すること
・遊びの中で学ぶこと
・五感を駆使して感じること
直接体験を保証する3つのキーワードは・・・
・遊び
・自然
・絵本
大人の役割は、子どもに知識を詰め込むのではなく、子ども自身が「知りたい!」と思えるような豊かな体験のできる環境を用意すること。そして見守ること。
■「自由な自己決定」と「十分な時間」■
『子どもの自由な体験と生涯発達 子どもキャンプとその後・50年の記録』杉本眞理子他著
生涯的横断研究として行った子どもキャンプでは、食事と宿舎だけが用意されていて、子どもがやりたい時にやりたいことをやる(やらなくてもいい)という
・自分が決定できる自由
・十分な時間
が保障されていたが、それには大人の在り方・大人たちの姿勢が大切。「早く」「上手に」と効率重視していては上記を保障できない。
・子どもにとって本当に重要なこと?
・私の思い込みでは?
・勝手な期待をしているだけでは?
と大人が自分で考えなければいけないが、一人でやるのは難しいので子育て仲間を作ることが大切。
■エリクソンの心理・社会的発達段階■
@乳児期:基本的信頼 対 不信
安心できる存在に触れて安全基地から探索に出かける
↓
外の世界で危機に出会うと安全な場所に戻ってくる
↓
この輪が少しずつ大きくなって子どもは成長していく。基本的信頼(この世に対して希望を持つこと)が育つ。
A幼児前期(1〜3歳):自律性 対 恥・疑惑
いずれ自分の足で立つための励まし=しつけ・・・外からコントロールを内面化していく=自律
不安や恐怖による過度なしつけは強い自己防衛・自己疑惑を生む
B児童期/幼児後期(4〜6歳):自主性 対 罪悪感
自主性=自分からしたいことを自発的に動こうとすること、失敗してもひるまないこと
↓
何を学ぶにしても何をするにしても、この感覚が必要
=遊びの中でもっともよく発揮される
この時期に知識を詰め込み過ぎると自主性が育まれない。
この時期に育んでおきたいのは非認知能力で、
1.「自己」に関わる心の性質(基盤としての自己信頼)
2.「社会性」に関わる心の性質(基盤としての他者信頼)
3. 両側面に関わる「感情の制御・調節」
といった目に見えにくい人の心や社会性に関係する力を幼児期に身につけられるかどうかで、その後の人生に大きな影響を与える。
C学童期(小学生):勤勉性 対 劣等感
@からBまでのプロセスを積み上げてから、この時期にようやく知識を入れる。
学童期に得られるべき力は「優越感=人と比べてできる」ではなく「有能感=自分が自分なりに何かしらのことができる」という感覚
「人に比べてできる」ではなく、一人ひとりにとっての「できる!」という感覚が育まれないと自分の人生を肯定できず、とても生き辛くなってしまう。
乳幼児期に@〜Bの基本的信頼感・自律性・自主性を育てたうえで、学童期にCの勤勉性に向かうことが大切。
乳幼児期の知識の詰め込みは有能感につながらない。知識の詰め込みではなく、自然の中で十分に遊びこんで直接体験すること。
土・水・太陽の光・風・植物などの自然の中で感覚を駆使して「感じる」ことが大切。
宮前区には、自然の中で自由に遊べる冒険遊び場があるので行ってみましょう!
宮前区冒険遊び場
■絵本を読む意味■
子どもにとって、ママ・パパなどの声を通して色んな世界を体験し、ワクワクドキドキ肌で感じられる絵本は直接体験。
『 でんしゃくるかな? 』
きくちちき 作
電車が「くるかな?」・・・「きたー!」とワクワクする感覚が直接体験。
毎回毎回同じことが繰り返される
↓
次に何が起こるのか予想することができる
↓
世界が安定し安心して過ごすことができる
大人にとって同じことの繰り返しは退屈だけど、子どもにとって繰り返しは大切なこと。
『 もこもこもこ 』
谷川俊太郎 作 / 元永定正 絵
元永さんの色鮮やかな不思議な生き物(?)と谷川さんのオノマトペ。読んでいると、小さな子どもも体が動き出してしまう大人気の絵本です。
おすすめ絵本
自然を感じることのできる絵本、少し大きくなった子ども達と親が『こころのあり様』を考えることのできる絵本を集めてみました。
『 どんなかんじかなあ 』
中山 千夏 文/和田誠 絵
障がいに限らず、隣の人のことも自分の子どもにも「どんなかんじかなあ」と想像することが大切
『 だいじょうぶだいじょうぶ 』
いとうひろし 文・絵
『 わたしとあそんで 』
マリー・ホール・エッツ 文・絵 / よだ じゅんいち 訳
『 もりのなか 』
マリー・ホール・エッツ 文・絵 / まさき るりこ 訳
『 またもりへ 』
マリー・ホール・エッツ 文・絵 / まさき るりこ 訳
『 はなをくんくん 』
ルース・クラウス 文 / マーク・シーモント 絵 / きじま はじめ 訳
『 14ひきのシリーズ 』
いわむらかずお 作
『 みんなうんち 』
五味 太郎 作
『 ぼくはおこった 』
ハーウィン・オラム 作/きたむら さとし 絵・訳
『 かいじゅうたちのいるところ 』
モーリス・センダック作 じんぐうてるお訳
『 とべバッタ 』
田島征三 作
子どもたちよ 子ども時代を しっかりと 楽しんでください。 おとなになってから 老人になってから あなたを支えてくれるのは 子ども時代の「あなた」です。 『石井桃子のことば』2014年新潮社より |
杉本先生からのメッセージ
『皆様、どうぞお子様と過ごす時間を大切に楽しんでください。かけがえのない今を、子どもたちはすぐに大きくなってしまいます。』
次回は『仲間を知ろう』というテーマで受講生同士で交流します。