
23年度 第4回親子学級「『アリサ』から見た子どもの発達」[2023年09月28日(Thu)]
「アリサ」から見た子どもの発達
今回は、帝京大学 名誉教授の杉本眞理子先生にお話を伺いました。
■意欲が低下している子ども達■
最近の子ども達には何か提案しても「やらない」「知らない」
=意欲的ではない。自信がないことを避けようとしている様子。
子どもが興味を持ってやっていることの多くは危ない・汚い(=大人がやってほしくないこと)
↓
「ダメ!」「貸してあげなさい」「ごめんなさいして」
↓
・子ども達の意欲が削がれていく
・自分の本当にしたいことが分からなくなってしまう
・大人の評価を気にする
映画「アリサ」に映っていた子ども達は、
自分で決めること・自分で体験すること
を通じて、
・やってみたいと挑戦する心
・知りたいという知的好奇心
・協力する力
・コミュニケーション能力
・あきらめない粘り強さ
を身につけて心と身体が成長していた。
■「知る」よりも「感じる」■
発達の順序を無視した知識の詰め込み → 学習意欲の低下 → 学力低下・・となりかねない。
乳幼児期に大切なことは、
直接体験すること
遊びの中で学ぶこと
できれば自然の中で感覚を駆使して感じること

大人の役割は・・・
子どもに知識を詰め込むのではなく
子ども自身が「知りたい!」と思えるような体験のできる環境を用意すること。
そして見守ること。
〜「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要ではない 幼い子ども時代は土壌を耕すとき〜
レイチェル・カーソン著『センス・オブ・ワンダー』より
■エリクソンの心理・社会的発達段階■
@乳児期:基本的信頼 対 不信
心の深い所で自分を肯定し、自分を取り巻く世界を肯定すること=基本的信頼=この世に対して希望を持つこと
A幼児前期(1〜3歳):自律性 対 恥・疑惑
いずれ自分の足で立つための励まし=しつけ
不安や恐怖による過度なしつけは無力感・自己疑惑を生む
B児童期/幼児後期(4〜6歳):自主性 対 罪悪感
自分からしたいことを自発的に動こうとすること=1つの目的のために失敗しても繰り返し行うこと
↓
何を学ぶにしても何をするにしても、この感覚が必要
=遊びの中でもっともよく発揮される
C学童期(小学生):勤勉性 対 劣等感
やらなければいけないことが出てくる。@からBまでの段階をきちんと踏まえていないと小学生になって、自分から勉強に取り組めない。
人と比べて勝っているという感覚は優越感、その反対は劣等感。ただし勤勉性で身に着けるのは優越感ではなく「有能感」=自分が自分なりに何かしらのことができるという感覚
「人に比べてできる」ではなく「個々にとって自分はできる」ということがなければ、自分の人生を肯定できない。
D青年期(中高生):自我同一性・アイデンティティの確立 対 拡散
「自分は何者であるか」という問いを定義していく心のプロセス
「自分は自分である、他人は他人である」という意識で自分も他人も受け入れる
他人に自分が飲み込まれる恐怖 → 孤独・敵対
E若い成人期:親密性 対 孤立
他と親密ではあるが同一化しないこと
F成人期:世代性 対 停滞
次の世代に対して手間をかけ世話をする。自分の生みだしたものに責任を持つ。
[子ども]=欲求を満たすために援助を求める
↑↓
[ 親 ]=自分が生み出したものへの責任として世話をする
世話は相互補完的なもの。子どもも大人も対等である。
G老年期:統合性 対 絶望
「老い」や「死」に直面してもなお、次の世代への関心と、家族・地域を越えた大きなものへの関心を持って生き続けること=自我が統合された状態
自分自身の人生を、肯定的な部分も否定的な部分もすべて受け入れる自我の強さが必要

@からGまでの発達段階はそれぞれをきちんと経ていないと次の段階にうまく進めない。
乳幼児期に@〜Bの基本的信頼感・自律性・自主性を育てたうえで、学童期にCの勤勉性に向かうことが大切。
また、Aの自律性・Bの自主性は習い事のように「大人がさせる」保育や関わりではなく、遊びなど「子どもがやりたい」を尊重する保育や関わりの中で育つ。
乳幼児期から知識を詰め込むのではなく、自然の中で遊びこんで直接体験すること。土・水・太陽の光・風・植物などの自然と触れ合う中で感覚が磨かれ、子どもの感情が豊かになる。
宮前区には冒険遊び場がある。「ケガと弁当は自分持ち」「自分の責任で自由に遊ぶ」で出かけてみましょう!

■絵本を読む意味■
子どもにとって、ママ・パパ・保育士などの声を通して聞く絵本は直接体験。
読んでくれる人の温もり、声、リズムなど感じ取れるものがたくさんあり、まだ文字も言葉も分からない赤ちゃんでさえ、体で味わっている。

『 でんしゃくるかな? 』きくちちき 作
電車が「くるかな?」・・・「きたー!」とワクワクする感覚が直接体験。
毎回毎回同じことが繰り返される
↓
次に何が起こるのか予想することができる
↓
世界が安定し安心して過ごすことができる
大人にとって同じことの繰り返しは退屈だけど、子どもにとって繰り返しは大切なこと。
『 もこもこもこ 』谷川俊太郎 作 / 元永定正 絵
自然を感じることのできる絵本、少し大きくなった子ども達と親が『こころのあり様』を考えることのできるおすすめの絵本
『 わたしとあそんで 』マリー・ホール・エッツ 文・絵 / よだ じゅんいち 訳
『 もりのなか 』マリー・ホール・エッツ 文・絵 / まさき るりこ 訳
『 またもりへ 』マリー・ホール・エッツ 文・絵 / まさき るりこ 訳
『 はなをくんくん 』ルース・クラウス 文 / マーク・シーモント 絵 / きじま はじめ 訳
『 14ひきのシリーズ 』いわむらかずお 作
『 みんなうんち 』五味 太郎 作
『 ぼくはおこった 』ハーウィン・オラム 作/きたむら さとし 絵・訳
『 かいじゅうたちのいるところ 』モーリス・センダック作 じんぐうてるお訳
『 とべバッタ 』田島征三 作
『 どんなかんじかなあ 』中山 千夏 文/和田誠 絵
『 だいじょうぶだいじょうぶ 』いとうひろし 文・絵
絵本は、大人が日常では押し殺して自分の中に眠っている “子どもの心” を呼び起こしてくれる。心豊かに生きるために、大切にした方が良い。