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2021年09月15日

139号

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図書紹介:『テキスト家族心理学』
編著者:若島孔文・野口修司
出版:金剛出版、2021年


<家族心理学に興味のある方へ:オススメのテキストが出ました!>
 先日、家族心理学の入門セミナーを開催したところ、その反響は多く、この領域に寄せられる関心の高さに驚きました。その一方で、受講生が想定する内容と家族心理学で扱うものは、必ずしも一致しないという場面にも遭遇しました。

そんなときに、家族心理学はどのようなことを研究していて、どんなことを学ぶことができるのか、できれば海外の研究成果だけではなく、国内のものがまとめられているとありがたい、と思っていました。この本はそんな想いに応えてくれています。

1.最新の研究動向がわかるように編纂
 本書は、国内の家族心理学研究を網羅し、かつ必要最低限の分量でまとめられています。かつて「本というのは『つくる』ものなんだよ」と教えていただいたものですが、その意味でもこの本はよくできていると思います。

ご承知のとおり、家族を取り巻く問題は社会情勢や法制度などの影響を受けやすいため、時代とともにつねに変化しています。そうした変化に応じるように家族を対象とする心理学研究も多様化しているといえるでしょう。2021年現在の最新動向を知りたい方は、確認されてみてはいかがでしょうか。

2.特に面白かったところを2つご紹介します。

1)家族システム理論の視点:家族は個人の集まり以上のもの親学研究に始まり、家族心理学の世界を覗いてみた私にとって家族心理学のなかでもっとも興味深いのは、なんといっても「家族システム理論」です。

家族をシステムとしてみる視点を提供してるのがこの理論ですが、どこが興味深いかといえば「問題の原因を個人の精神(意志)に帰結させない」見方を提供することにあります。たとえば、「子どもが嘘をついたから親が叱った」コミュニケーションでは、子どもはわざと嘘をついた(=子どもの精神に問題がある)のだから親は叱るべきだ、と考えがちです。

 一方で、家族システム論の見方では、精神よりも状況に目を向けます。したがって、どんな状況にその子どもが置かれていたから嘘をついたのだろう、と考えるのです。

 このように問題と解決するための努力が悪循環に陥らないような視点から、家族の問題を眺めてみようとするのは、家族システム論ならではといえます。

2)情報回帰速度モデル:個人の変化と家族の変化には時間的な速度の違いがある

 次に、情報回帰速度モデルでは個人の変化と家族システムの変化には時間的な速度の違いがあることを強調しています。したがって、家族のだれかの行動が変わったとしても、家族全体の変化を生み出すには時間が必要であること。また、その人が時間をかけて家族に影響を与え続けることを支援する必要があることを指摘しています。

3.まとめ
 このように、家族のなかで何か問題が起きたときに、特定の人の精神(意志)が問題だからそれを直せば解決する、と直線的に考える以外の選択肢を提供するところに、私は興味を惹かれています。現代の家族心理学は、そのような家族システム論のうえに築かれているわけです。

 ネガティブな場面で、家族心理学の「状況のせいにすれば見方が変わってやさしくなれる」ことを思い出して、家族と問題を乗り越える。そんな使い方ができるようになるといいですね。
posted by oyagaku at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 図書紹介