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一般財団法人 親学推進協会の公式メールマガジンに投稿した
「図書紹介」を画像付きで掲載します。

2019年02月15日

109号

『祖父母学 5つの心得と32の視点で考える孫とのかかわり』
著 者:大森 弘
発 行:グッドブックス、2019年

紹介者から: 祖父母は身近なカウンセラー
 当協会の元専務理事、大森 弘先生の新著をご紹介いたします。

<はじめに>
 この本には、大森先生の経験と実績に裏付けられた想いが現代
社会へのメッセージの形で著されています。帯の「気くばりしても
出しゃばりすぎない“名脇役"」とは、まさに先生のことだと、日頃の
先生をご存じの方は思われていることでしょう。

また、編集者と出版社の仕事のおかげで、読者にとっては読み
やすく感じられます。 結果として、祖父母学という、やや固い印象
だった内容は染みこむ ように入ってきました。

 では、内容の話に移りましょう。

<「コミュニケーション」の位置づけ>
 先生が現役の教師として、そしてカウンセラーとして、活躍されたのは
20世紀の半ばから21世紀にかけてでした。この時期に大きく変わった
ことの一つに「コミュニケーション」に関わる事柄があります。

例えば、英語の成績がいくらよくても外国人を前にすると全く話すことが
出来ない人は、今でもたくさんみかけます。
「話す」行為に集中してしまって、その人と気持ちや情報を共有する
ことを見落としている、と指摘できるでしょう。

このように、20世紀のコミュニケーションは情報伝達の手段でした。
どうすれば、相手に伝わるか、理解してもらえるか、に関心が向けられて
いたといえるでしょう。それが21世紀に入ると、価値や意味を共に創り、
共有するためのプロセスに関心が向けられるようになっています。
どうすれば、新しい意味を創り出せるか、その人の理解者でいられるか、
の視点です。

<大森「指南書」発刊の意義>
 この時代の変化の中を先生は、カウンセリング・マインドやスキルを身に
つけることで乗り越えられてきたことをうかがうことができます。
だからこそ、この変化に難しさを感じている世代の人たちにとっては、
まさにこの本が「指南書」となるのだと思います。

また、地方で生まれ、横浜で過ごした先生だからこそ、地方と都市の
ハイブリッドな視点から祖父母学を語ることができるのだと思います。
そして、よく似た軌跡を辿ってきた人たちは、数多くいることでしょう。

 したがって、本書は、日本の工業化・都市化を支えてきた(いる)人たちに
お薦めできます。個人を尊重しながら、家族や集団の一員としての
役割を果たすヒントが詰まっています。

<本書から受け取ったメッセージ>
最後になりますが、「相手のニーズを特定してからでないと、どんな助言も
空回りする」。私は、そんなメッセージをこの本から受け取りました。
そして、祖父母はまるで身近なカウンセラー、といっているようにも感じます。
【図書紹介の最新記事】
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2019年01月19日

108号

『想定外のマネジメント−高信頼性組織とは何か−』 (第3版)
 著 者:カール・E・ワイク、 キャスリーン・M・サトクリフ
 監 訳:中西 晶
 発 行:文眞堂、2017年

 紹介者から:

 九州の地震を始めとした天災や国や企業の不祥事などの人災といった想定外」が起こった時、私たちはどのように対応すればよいのでしょうか。

 不確実で想定外のことが起こった時の対応に多くの人が関心を向けるなか、組織論研究者のカール・ワイクらは想定外の問題を乗り越えることに成功した組織、失敗した組織を調査して5つの原則を見出しました。

 今月は、想定外に満ちた世界を生き抜くために必要な信頼性の高い組織を取り上げます。不確実性が高く、変化の激しい時代のなかで、柔軟に対応するヒントが見つかるはずです。

 本書から:(一部要約しています)

 事故が起こる可能性を免れた組織は、次の特徴があった。独自の文化の存在、自己デザイン能力、専門知のネットワーク、冗長性を考慮したハイブリッド構造、訓練とルーチン、状況認識、センスメイキングに関わる思考様式、関係の構築、情報処理などである。

 これらの特徴から反復しているパターンを統合すると、5つの原則に焦点を定めることができる。

高信頼性組織の5原則:
一、失敗にこだわる。
二、単純化を避ける。
三、オペレーション(実際に行われている活動を理解すること)に敏感になる。
四、レジリエンス(回復)に積極的に関わる。
五、専門知を重んじる。

 信頼性の高い組織は、不確実な世界で生じる避けがたいエラーを事前に察知し、その影響を抑制し、回復する能力を発揮する。エラーが起こらないことよりも、組織が機能不全にならないことを重視する。専門知を重んじるのは、複雑性に適応することに役立つからだ。

 専門知は、特定の誰かに存在するものではなく、プロセスのなかで創発されるものと考える。
専門家は、文脈のプロセスに細心の注意を払いながら意味形成を扱う役割を担っている。
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2018年12月25日

107号

『長寿と性格 なぜ、あの人は長生きなのか』
著 者:ハワード・S・フリードマン、レスリー・R・マーティン
訳 者:桜田直美
発 行:清流出版、2012年

紹介者から:
 健康長寿を実現した人達の人生を調べてみると、これまで常識だと思われていたことが逆効果であったり、まったく違っていたことが明らかになってきました。本書の背景には、1921年から80年間に渡って、当時10歳前後の男女1,500名を追跡調査した研究があります。これは世界的にみても稀なものです。

 この企画は、故ルイス・ターマン博士によって企画されたもので、それをフリードマンとマーティンの両博士が継承して結実しました。健康長寿を実現した人達は、人間ドックの愛好者でもなければ、サプリやジョギングとも無縁でした。むしろ生き方のパターンとその性格が健康長寿と密接に関係していることがわかったのです。しかもそれは子供の頃の性格からわかるとのことです。

 今月は、健康長寿の秘訣について取り上げます。

 本書から:

 健康長寿の秘訣:「勤勉性(conscientiousness)」という性格が、じつは健康長寿において重要なカギを握っている。子供のころ、どんな性格だった人がいちばん長生きする確立が高いのか。それは明らかに「勤勉性の高い人」であった。

「勤勉性の高い人」は慎重で、思慮分別があり、粘り強く、整理整頓が行き届き、いつも準備万端おこたりないような性格で、やや神経質なところがある。「勤勉性の高い人」はよく考えて慎重に行動する。自分の身を危険にさらすことはしない。

喫煙、深酒、ドラッグ、危険な運転を避ける傾向がある。シートベルトをキチンとするし、医者の言いつけもよく守る。自然と健康で長生きする人生を歩んでいる。
 
また、勤勉さで逆境を乗り越え、重責から逃げずに立ち向かうことは、基本的に健康リスクにならないことが、今回の調査で明らかになった。健康長寿を実現した人たちは、ストレスを避けずに仕事をしたからこそ、長生きしたのである。

 社交ネットワークを広げることから始めてみよう。
週に何時間かボランティアや趣味のグループに参加するだけで、社交ネットワークが広がり、人生を楽しむだけではなく、実際に長生きできる効果もある。もし健康になって長生きもしたいと思っているのなら、まず社交ネットワーク作りに取り組むのがいちばんだ。
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2018年11月15日

106号

『グループ・キャリア・カウンセリング-効果的なキャリア教育・キャリア研修に向けて-』
編著者:渡部昌平
発 行:金子書房、2018年

紹介者から
私たちにはグループ「で」学ぶ機会はたくさんありますが、グループ「を」学ぶ機会は意外と少ないものです。本書は、グループ実践の理論的な背景を説明しています。

 グループでは、自分以外の人の行動や考えを見聞きするので、自分の行動や考えが他の人にとっての当たり前ではないことに気づきます。他の選択肢があることに気づくと、問題解決の新しい方法を見つけやすくなるのです。他にも、自分だけが悩んでいるわけではないことに気づいたりして、安心することもあります。

 グループでの学びにつながるようにするには、実施する側のグループ管理や統制が欠かせません。グループでの学習はとても有効な方法ですが、「使える」までには技術やコツの習得が必要です。

本書はグループ・カウンセリングの本ですが、親学のグループワークでも役立つ情報が掲載されています。ぜひご活用ください。

本書から
 1.カウンセリングの4大要素:共感、尊重、純粋性、具体性(p7)
個人でもグループでも、最良の結果を生み出しているカウンセラーには共感、尊重、純粋性、具体性の特質があり、これらを満たす必要がある。

「共感」:クライエントが伝える感情や体験よりも、もっと深い水準に対して心を動かす。
「尊重」:自分の感情や体験を尊重し、他者の感情や体験も尊重する。
「純粋性」:クライエントの福祉に反しない範囲で、自分の本当の感情を表明する。
「具体性」:特定の具体的な感情や体験に、正確に完全に反応する。

2.グループワークの種類(pp11-12)
グループワークは目的によってアプローチが異なる。予防が目的の場合は教育的なガイダンスの手法をとり、予防と治療の双方を目的にする場合にはカウンセリング、治療を目的にする場合にはセラピーの手法をとる。セラピーに比べるとカウンセリングはより健常な人を対象とする。カウンセリングには教育的、支持的、問題解決的、短期的な特徴がある。

3.グループの発達と働きかけ(p83)
グループ発達の第1段階は「出会い」である。グループメンバーは少し気後れしていて、リーダーはこれから行うワークの目標や原理、技法を示す。リーダーは参加することの大切さ、この場はお互いに学び合う機会であることを強調してグループの規範をつくる。

 第2段階は「探索」である。リーダーは参加してこないメンバーへの対応を考える。
 第3段階は「作業」である。グループメンバーが自信をもって、問題を持ち込めるようになる。リーダーに頼るだけではなく、お互いに助け合えるようになる。
 第4段階は「実行」である。メンバーが自分の興味を言語化できるようになる。リーダーはそれぞれの経験を評価する機会をつくる。

 結果の評価(p80):介入の効果を示すデータを得ることを考慮する。参加者からのデータを集めて、その後の改善、効果への洞察につなげる。
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2018年10月15日

105号

『超一流になるのは才能か努力か?』
著 者:Anders Ericsson, Robert Pool.
翻訳者:土方 奈美
発 行:文藝春秋、2016年

紹介者から
 「よりよい実践のために、どうしたらいいのだろう」。親学を学び、実践に取り組む、あるいは取り組もうとする私たちが抱き続ける疑問の一つだと思います。

 ここに“deliberate practice”という言葉があります。「限界的練習」、「意図的訓練」あるいは「意図的な実践」と訳されますが、意味するところは、ただ漠然とした練習や訓練、そして実践を重ねるだけではなくて、意図的に行うということです。

では、何に気をつけて、何を心掛けて練習や訓練、実践をすればよいのでしょうか。

 今回ご紹介する著者アンダース・エリクソンは、30年以上にわたってスポーツ、音楽、科学、医療、ビジネスなどの分野で傑出した人物を研究して、超一流の人達に共通する、よりよい実践のための手がかりを発見しています。今号は、その概要をみていくことにしましょう。

本書から
「ただ努力するだけでは能力は向上しない」:努力をつづけなさい。そうすれば目標を達成できるというのは間違っている。正しい訓練を、十分な期間にわたって継続することが向上につながるのだ。では何が「正しい訓練」なのだろう。

「意識的に」実践すること:一般的に、何かを習得して許容できるレベルに達して、意識しないでも自然にできるようになってしまうと、そこから何年練習を続けても、向上にはつながらない。例えば20年の経験がある医師や教師は、5年しか経験がない人よりも劣っている可能性が高いのだ。自然にできるようになると、改善に向けた意識的な努力をしなくなるからだと考えられている。

 「目的のある練習」:この程度できれば十分、という水準で頭打ちになる一般的な訓練や練習方法を超えるには、目的のある練習が必要だ。ただ愚直に繰り返すだけの練習とは異なる、目的のある練習には4つのポイントがある。

@具体的な目標
A集中
Bフィードバック
C心地よい領域から飛び出す(楽をしすぎない)

特にCは挑戦することを意味していて最も重要なものだ。
 
それまでできなかったことに挑戦して壁にぶつかったとき、それを乗り越える方法は、「もっと頑張る」ではなくて「別の方法を試す」ことだ。なかでも「限界的練習」が効果的である。現在のレベルを少しだけ超えられるように設計された訓練を意味する。何を知っているかよりも何ができるのか(技能)が重視される。

人間の本質を表すこれまでの考え方は「ホモ・サピエンス(知恵のある人)」である。だが、練習によって自らの人生の可能性を広げて未来を切り開く人間は「ホモ・エクセサンス(練習する人)」といえるのではないだろうか。
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2018年09月18日

104号

『キャリアを超えて ワーキング心理学 -働くことへの心理学的アプローチ-』
 編 者:D.L. ブルスティン
 監訳者:渡辺三枝子
 発 行:白桃書房、2018年

紹介者から
 「仕事か家庭か」から「仕事と家庭」。そして、「働き方の二項モデル」へ。
 (From Work and Family to a Dual Model of Working.)

 仕事と家庭のバランス(ワーク・ライフバランス)は、親学の必要性のなかで取り上げられてきた話題です。「仕事か家庭か」の対立を超えて両者のバランスを目指す内容です。本書は、その先の視点を提供します。

 どこが新しいのかというと、「仕事と家庭」の枠組みを「マーケットワーク」と「ケアワーク」に置き換えているところです。 言葉の意味を詳しくみると、内容は次のようになっています。
 まず、「マーケットワーク」は報酬を得るためにする仕事と、教育機関での準備(学習)。

 次に、「ケアワーク」は他者への貢献を伴う社会的活動をさしています。ここでの「ケアワーク」は、主に「無償」のワークをさしていて、私生活のなかでケアするために無償で行っていることをいいます。報酬を伴うものは、マーケットワークに入るわけです。

そう考えると、親学のほとんどの活動は「無償」のケアワークに当たることがわかります(無償といっても、厳密には金銭以外の報酬はあると思いますが)。人々が生活するコミュニティの維持や環境などの再生産に関わるものとして、経済的生産とともに、健全で持続可能な社会には欠かせないものとなっているのです。

このようにケアワークは「経済生産性とは根本的に異なる目的をもった仕事である(p193)」として、人間の発達と人間社会には不可欠な位置を占めるようになりました。

 あらゆる人がケアの提供者であり、受け手と考えられるようになると、ケアワークはすべての人々に関わる問題になります。こうした背景から、各個人にはマーケットワークとケアワークの間で折り合いをつける能力を身につけて、適応する戦略を見出すことが求められるようになっています。

しかしながら、マーケットワークとケアワークの間で、一貫性を持たせながら環境に適応する戦略を作りあげていくのは、個人ひとりの力では難しいものです。今、親学に求められているのは、こうしたニーズに応答していくことではないでしょうか。
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2018年08月20日

103号

『技芸(アート)としてのカウンセリング入門』
著 者: 杉原保史
発 行:創元社、2012年

紹介者から

 本書は「カウンセリングに興味や関心を抱いている一般の方々に向けて書かれたカウンセリングの入門書」です。実際の現場で役立つことを優先した実用書といえるでしょう。

 本書における著者(杉原先生)の立場は明確です。カウンセリングの実践を学問や科学ではなく、技芸(アート)として捉えています。アート、特にパフォーミング・アートだからこそ、音楽や演劇の学校のように演奏できること、演じられることが重視されるのです。先生の見本をマネながら、自分のスタイルを確立していく習得方法だといえるでしょう。

 同様のことは親学にもいえるはずです。理論と実践の関係は非常に複雑ですが、どちらも何のためにやっているのかについて考えてみることで、一人ひとりのなかで意味づけられていくのだと思います。

 第二章「カウンセラーの聴き方」から特に印象的だった部分を要約して紹介します。

本書から
 カウンセラーは、クライエントのつらい体験などを聴いても、すぐには慰めません。慰める代わりにすることは、「目覚めさせる体験」(awakening experience)に向かって共に歩もうとします。

 実存的心理療法家のアーヴィン・ヤーロム(2008)が使ったこの言葉(目覚めさせる体験)は、死に直面した人が人生の有限性を深く自覚して、それまでの生き方を根本的に見直して、大きな成長的変化を遂げるときのきっかけ(契機)になる体験を指します。

 一例を挙げます。教育実習に行ってうまく行かなかった学生に対して、ある教授は「そんなことは気にする必要はない。僕にもそんなことがあったけど、こうしてやっているから大丈夫だ」と慰めたことがありました。しかしながら、その学生は退学を選択しました。

 この場合、失敗した体験を追い払ってしまうことではなくて、挫折を「体験し尽くす」ことを通して、自分に何が不足していて、どのように補っていけばいいのかを考え、理解する契機とすることで、多くのことを学ぶ機会にすることができます。

 クライエントがつらい体験を語るとき、「目覚めさせる体験」にまで高めようとするカウンセラーは、共にそちらに向かって歩んでいこうとします。もちろんこの姿勢は、突き放した冷ややかな態度で眺めることを薦めるものではなく、つらい体験をみつめて、率直に語るという大変な仕事をサポートしながら、共に問題を味わおうとする態度です。

熟達したカウンセラーは、問題のなかで落ち着いて身を置くことをみせることによって、モデルを示しているのです。
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2018年07月15日

102号


『脳を鍛えるには運動しかない!最新科学でわかった脳細胞の増やし方』

 著 者:ジョン・J・レイティ/エリック・ヘイガーマン

 訳 者:野中香方子

 発 行:NHK出版、2013年

紹介者から
 運動でやる気や集中力を生み出すことができる。
取材で訪れたある幼稚園の話です。登園した子供達は、到着するやいなや身体を使って遊び始めました。運動した後に集中が訪れることを、この幼稚園は知っていたのです。しばらく運動した後でチャイムが鳴ると、整列を始めて静かに園長先生のお話を聞いていました。

 本書は、運動することで脳が鍛えられることを様々な角度から実証的に根拠づけています。著者のレイティは「運動の第一の目的は、脳を育ててよい状態に保つことにある」というのです。どのような運動が、どのような症状に影響を与えるのか。ストレスや不安、うつや女性ホルモン、加齢などへの影響について読み応え十分のボリュームで語られています。

 一例を紹介すると、アメリカ・シカゴにある高等学校では、一定以上の成績に満たない生徒は希望すれば0(ゼロ)時間目が設けられます。1時間目が始まる前に集合して、心拍計をつけてランニングを終えてから授業に臨むのです。

これには、参加しない生徒よりも成績が向上するという科学的な根拠があるからです。日本でも授業前に校庭で運動する小学校があるように、学習前の運動は理に適っていると言えそうです。

 では、どのような運動がよいのでしょうか。例えば30分のジョギングを週に二から三回、12週間続けると頭のキレを保つ機能が向上することが確認されています。肝心なのは何かをすることで始めることが大切なのだと強調しています。

 有酸素運動以外の運動では、例えば筋力トレーニングが紹介されています。
脳に及ぼす影響を研究したものには、有酸素運動のように記憶や学習に影響を与えるものよりも、気分や不安、自信などの精神面での健康が増進することを扱うものが多いようです。

 統計によると、運動を習慣にしようとした人の約半分は、半年から一年以内に諦めてしまっています。その最大の理由はいきなり高強度の運動を始めることなのだそうです。身体にも心にも無理は禁物です。やめてしまうよりは、低強度でも続けていた方がはるかにいいのです。

 著者は、次のメッセージで本書を締めくくっています。

「私たちは動くように生まれついている。動いているとき、あなたの人生は燃え始める」。

やる気スイッチの入れるコツは、運動にあるのかもしれません。
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2018年06月15日

101号


『内向型を強みにする-おとなしい人が活躍するためのガイド』

 著 者:マーティ・O・レイニー

 訳 者:務台夏子

 発 行:パンローリング、2013年(原著2002年、『小心者が世界を変える』(2006年)の新装改訂版)



紹介者から
 子供のやる気スイッチに関わるもう一つのテーマは「充電」です。やる気に満ちた行動の背景には適切なエネルギー補給が欠かせません。何をしているときに「充電」できるのか。意外と見落とされがちなやる気を生むための方法についてご紹介いたします。

 私たちの周りには、たくさんの人と会って話をしたり色々な場所を訪れてみることで活力がみなぎるタイプの人もいれば、一人の時間を大切にしたり親しい数人のたちとの関わりを大切にする人もいます。

 一般的には、コミュニケーションを活発にとるタイプが外向型で、一人の時間を好むタイプが内向型と考えられていますが、今号ではそうしたアウトプット(出力)の方式ではなくて、インプット(入力・充電)の方法に注目してみます。

 本書を読むと、やる気スイッチのヒントが見つけやすくなるかもしれません。
内向型・外向型診断の小テストもついていますので、自分の充電方法もわかります。

本書から
 あなたがリフレッシュしたと感じるのは、どっちだろう。「静かに過ごした後(内向型)」か「活動的に過ごした後(外向型)」か。

 すべての人間には多くの面があるため、どちらも持ち合わせているだろうが、エネルギーをあまり消費せずにすむ自然な居場所はだれにでもある。年を取るにつけて、わたしたちのほとんどは、外向と内向の連続体の中央に近づいていくものだが、スタート地点はそれぞれ異なっている。

 内向性の人は、充電式バッテリーに似ている。一旦エネルギーを使うのをやめて充電のための休息が必要だからだ。休息は刺激の少ない環境でじっくりと考えながら行われる。

 たとえば「久々にビルにあえてうれしかったけど、パーティーが終わってくれてよかった」とほっとしてそう思う。

 外向型の人は、ソーラーパネルに似ている。充電のためには太陽を必要とし、外に出て人と交わる必要がある。様々な刺激のなかで活気づくため、大きな網をかけて情報や経験を得ようとする。たとえば「パーティーではあちらこちらと飛び回って、それぞれの会話のいいところだけを聞くのが好き」などという。

生きるとは経験を収集することなのだ。

こうした特性から、外向型が社交的だと考えられるが、そうともいいきれない。内向型は、外向型と違った社交性を発揮している。多くの人との付き合いよりも、親しい数人との強い結びつきを好み、自分に栄養とエネルギーを与えてくれる中身の濃い会話を好む。

 これらの特徴は子育ての場面では、どのようにあらわれるのだろう。たとえば内向型の親が外向型の子供を育てる場合などのように、組み合わせによっては子育てに困難を感じることもあるだろう。

 そんなときに、一人の時間を持つことで充電するタイプか、活動的に動くことが充電になるタイプかを知っておくと、子供の心身のシグナルを読み取りやすくなり、私たちはもっと子供の力になれる。
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2018年05月15日

100号


『モチベーション改革 稼ぐために働きたくない世代の解体書』

 著 者:尾原和啓

 発 行:幻冬舎、2017年

紹介者から
 子供のやる気スイッチをテーマにした親学講座で、幼稚園児の母親から「私のやる気スイッチを探して欲しい」との声があがりました。

 このような反応は、親学あるあるですが、最近は少し増えてきたような気もします。子育てに限らず、親世代のモチベーションに変化が起きているのでしょうか。

 本書は、モチベーションに焦点を当てて、30代前後(親世代)とその親世代(祖父母世代)の特徴を比較しています。「やる気」変化の背景を覗いてみましょう。

本書から
 時代の変化、右肩上がりの終焉
仕事を頑張った分だけ結果が出て、社会全体が成長していく時代は終わった。その理由には、人口減少による経済成長が見込めないことと、IT革命とグローバル化による変化スピードの加速がある。

社会経済の基軸は「決められたことをひたすらやる」時代から「消費者の潜在的な欲求を発見し提案する」方向に変化している。

「決められたことをひたすらやる」ことに価値を置いていた世代(祖父母世代)にとっては、何かを「達成」することはモチベーションに欠かせないものであった。何のために、何をやるかは社会や世間、会社が決めてくれたので、達成するものの大きさが大事であった。安定した経済、家計のために、具体的な目標はなくても全力で物理的な達成を追い求めることに幸福があった。

 一方で、その世代の子供たち(30代前後の子育て中の親世代)は、物心ついたときから、物質的に恵まれて育っているので、物質的な「達成」(マイホーム、高級車、海外旅行など)はモチベーションに直結しにくい。欲望に乾くことができない世代といえる。

 この「乾けない」世代(30代前後)は、やることの意味や、人間関係、没頭して取り組めることに価値を置く。世界や国や会社のような大きな目標のために自分を犠牲にして働く自分の親世代を見てきていることもあって、そこには価値を置かずに、「自分にとってやる意味を見いだせるものを、好きな仲間たちと一緒に、没頭して取り組む」ことに幸せを感じる。趣味のボランティアであれば延長を引き受けるが、サービス残業は一切しないように、自分の時間は犠牲にしたくない。

 このように「好きなことに夢中になれるか」、「好きな人と笑顔でいれるか」、「この作業をやる意味を見いだせるか」が見つからないと、とたんにやる気が起きなくなる。

 この世代が輝くためには、心理的な安全性を保障する必要がある。「人として見てくれているか」が、心理的安全性には欠かせない。人として認め合うことで自分の色を全部出し合って彩りある未来の絵を描いていくことができるようになる。
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