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2021年09月15日

139号

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図書紹介:『テキスト家族心理学』
編著者:若島孔文・野口修司
出版:金剛出版、2021年


<家族心理学に興味のある方へ:オススメのテキストが出ました!>
 先日、家族心理学の入門セミナーを開催したところ、その反響は多く、この領域に寄せられる関心の高さに驚きました。その一方で、受講生が想定する内容と家族心理学で扱うものは、必ずしも一致しないという場面にも遭遇しました。

そんなときに、家族心理学はどのようなことを研究していて、どんなことを学ぶことができるのか、できれば海外の研究成果だけではなく、国内のものがまとめられているとありがたい、と思っていました。この本はそんな想いに応えてくれています。

1.最新の研究動向がわかるように編纂
 本書は、国内の家族心理学研究を網羅し、かつ必要最低限の分量でまとめられています。かつて「本というのは『つくる』ものなんだよ」と教えていただいたものですが、その意味でもこの本はよくできていると思います。

ご承知のとおり、家族を取り巻く問題は社会情勢や法制度などの影響を受けやすいため、時代とともにつねに変化しています。そうした変化に応じるように家族を対象とする心理学研究も多様化しているといえるでしょう。2021年現在の最新動向を知りたい方は、確認されてみてはいかがでしょうか。

2.特に面白かったところを2つご紹介します。

1)家族システム理論の視点:家族は個人の集まり以上のもの親学研究に始まり、家族心理学の世界を覗いてみた私にとって家族心理学のなかでもっとも興味深いのは、なんといっても「家族システム理論」です。

家族をシステムとしてみる視点を提供してるのがこの理論ですが、どこが興味深いかといえば「問題の原因を個人の精神(意志)に帰結させない」見方を提供することにあります。たとえば、「子どもが嘘をついたから親が叱った」コミュニケーションでは、子どもはわざと嘘をついた(=子どもの精神に問題がある)のだから親は叱るべきだ、と考えがちです。

 一方で、家族システム論の見方では、精神よりも状況に目を向けます。したがって、どんな状況にその子どもが置かれていたから嘘をついたのだろう、と考えるのです。

 このように問題と解決するための努力が悪循環に陥らないような視点から、家族の問題を眺めてみようとするのは、家族システム論ならではといえます。

2)情報回帰速度モデル:個人の変化と家族の変化には時間的な速度の違いがある

 次に、情報回帰速度モデルでは個人の変化と家族システムの変化には時間的な速度の違いがあることを強調しています。したがって、家族のだれかの行動が変わったとしても、家族全体の変化を生み出すには時間が必要であること。また、その人が時間をかけて家族に影響を与え続けることを支援する必要があることを指摘しています。

3.まとめ
 このように、家族のなかで何か問題が起きたときに、特定の人の精神(意志)が問題だからそれを直せば解決する、と直線的に考える以外の選択肢を提供するところに、私は興味を惹かれています。現代の家族心理学は、そのような家族システム論のうえに築かれているわけです。

 ネガティブな場面で、家族心理学の「状況のせいにすれば見方が変わってやさしくなれる」ことを思い出して、家族と問題を乗り越える。そんな使い方ができるようになるといいですね。
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2021年08月16日

138号

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図書紹介:『組織と職場の社会心理学』
著者:山口裕幸
出版:ちとせプレス、2020年


 まだ、夏は始まったばかり。そう思ってやるべきことを先送りするうちに、
結局何もできずに夏が終わってしまった。そんな経験をした方も多いでしょう。
私もその一人です。

 なぜ人はやるべきことを先送りしてしまうのでしょうか。多くの人が直面す
るこの心理作用には、カラクリがあるようです。

1. やるべきことを先送りしてしまう、心理的な罠とは
 程度の差はあれ、多くの人がやるべきことを先送りして、後になって大変な
思いをしています。

このやるべきことを先送りしてしまう心理は、次のように言い換えることができそうです。

「目先のことを過大評価して、遠い先のことを過小評価する心理」

 つまり、いま目の前にある楽しいことの方が魅力的に見えてしまう、というわけです。

2.「双曲割引」の認知バイアス
 このように時間的な近さと遠さによって、主観的な評価に違いが生じる現象
を「双曲割引」の認知バイアス(バイアス=歪み)、といいます。

 このバイアスが働いている状態では、目の前の楽しい時間のメリットが過大
に評価され、遠い未来のメリットは過小評価されてしまいます。

3.この罠から抜け出すことはできるのか
 本書によれば、目の前の楽しいことを選択するこのバイアスは人間がもとも
と持っているものなので心理作用そのものを抑えるのは難しいのです。

 ではどうすれば、この罠から抜け出すことができるのでしょうか。

 いま分かっている範囲で有効な行動の一つに「自己シグナリング」がありま
す。「自己シグナリング」とは、自分自身がこの罠にどれくらい誘惑されやす
いのか、そしてそれをどのくらい自制することができるのかを常に振り返って
確認することで克服することができる、というものです。

誘惑に対する自分の弱さを知って、それから達成可能な目標を立て、それを周
囲の人に公言することで、言ってしまった手前、がんばろうという気になるというのです。

4.やってみよう
 例えば、このような感じです。

「私は来月のメルマガまでに4本の原稿を書き上げる」

こう宣言すると、言った手前やらなければと動機づけされるワケです。私も「自己シグナリング」効果を使って、この夏を乗り越えてみようと思います。
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2021年07月15日

137号

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図書紹介:『オンデマンド・ラーニング』
著者:ティム・スレイド
訳者:足立 美穂
出版:日本能率協会マネジメントセンター、2021年


1.退屈なオンライン配信を変える技術

 ある日突然、オンライン教育の担当者に任命されてしまったら。この本は、そんな人向けのオンライン学習デザイン・ハンドブックです。

 突然ですが、次の単語の意味はわかりますか?
「オンデマンド・ラーニング」、「ブレンデッド・ラーニング」、「EdTech(エドテック)」。

「オンデマンド・ラーニング」は、非同期型学習の意味で事前に録画した動画をみながら学習することを指します。

「ブレンデッド・ラーニング」は、混合学習の意味でライブ配信(同期)・録画配信(非同期)と対面型・非対面型を混ぜ合わせてデザインする学習を指します。

「EdTech(エト゛テック)」は、Education(教育)とTechnology(技術)を組み合わせた造語で、技術を用いて教育を支援する仕組みを指します。

 これらの技術を組合せることで、退屈なオンライン学習を変えることができそうです。

2.オンライン学習にまつわるQ&A

Q1:魅力のあるオンライン研修会にするにはどうしたらいいですか?
A:あなたのオンライン研修会は、どのようなニーズを解決するのでしょうか。
1)知識の欠如を補う:学習者が実行方法を知らない場合
2)スキルの欠如を補う:課題解決のスキルがない場合
3)モチベーションの欠如を補う:実行する意欲がない場合
4)リソースの欠如:課題解決に必要なリソースがない場合
 オンライン研修だけで参加者の課題がすべて解決するとは限りませんが、上記の組合せによって問題の解決に近づくことができます。

Q2:どのようにオンライン学習コンテンツをデザインしたらいいですか?
A:大まかには次の流れになります。まず主催者側と学習者側のニーズを「分析」してコンテンツを「デザイン」します。次にカリキュラムを「開発」して「実施」します。その後「評価」したものを「分析」して次の「デザイン」に活かします。

Q3:私には難しそうです。一つずつ、順を追って進めたいのですが。
A:本書はワークブック形式になっています。最初から順を追ってすすめると、基礎的なオンライン研修がデザインできるようになります。

3.まとめ:多様なオンライン研修、一つずつ対応できるようになりましょう。

 本書は多様なオンライン研修のうち、オンデマンド(非同期)学習デザインに特化した入門書です。この非同期型学習スタイルを取り入れることによって、基礎から専門まで幅広い学習コンテンツを企画・開発・運営できるようになります。
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2021年06月15日

136号

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図書紹介:『こころの資本-心理的資本とその展開-』
著者:フレッド・ルーサンス、キャロラオン・ユセフ=モーガン、ブルース・
アボリオ
訳者:開本 浩矢、加納 郁也、井川 浩輔、高階 利徳、厨子 直之
出版:中央経済社、2020年

「こころの資本」って聞いたことありますか。

 「こころの資本」は、私たちが持っているポジティブな心のエネルギーを指します。近年、ポジティブ心理学などの領域で研究が盛んなテーマです。

「こころの資本」は、私たちが直面する様々な出来事に対して、私たちを積極的に向き合わせて目標を達成させる心のエネルギー源になるものです。本書には、現時点までの研究成果がまとめてあります。

科学的な根拠に基づく「こころのエネルギー源」とは何か、気になる方は本書をチェックしてみてください。

1.なぜ、いま、「こころの資本」が注目されているのか。
 近年、企業や組織の寿命が短くなり、変化が激しく、複雑で、曖昧で、不確実性の高い環境になってきています。そのなかで多くの組織では、深刻な人手不足に直面しています。

 かつて、人手に余裕があった時代はいかに優秀な人材を自分の組織に集めるかが人材育成戦略の要でした。その頃に比べて、現在は慢性的に人手が不足しているために、いかに人を組織に定着させて、そのなかで活躍できるようにするかに焦点が移っています。

その際に人材育成戦略の中心的な課題となるのが、私たち一人ひとりの「こころの資本」なのです。こころの資本に着目した人材育成戦略では、次の4つの要素を中心にして育成に取り組んでいます。

2.「こころの資本」4つの要素とは。
 定量的な研究成果から、「こころの資本」には4つの要素があることが確認されています。
 (1)効力感(エフィカシー):有能感・自信にも近い。
 (2)希望(ホープ):ゴールに向う熱意と、その手段に対する積極性を含む。
 (3)楽観性(オプティミズム):環境に合わせて柔軟に変化する原動力になる。
 (4)回復力(レジリエンス):立ち直るだけに留まらず、さらなる成長に向かう力。

 これら4つの要素は、私たちが逆境を乗り越える際の心のエネルギーになるもので、かつ科学的な根拠が認められたものです。

3.「こころの資本」、次の候補は?
 「こころの資本」研究は発展途上にあります。本書では、研究途中の「こころの資本」候補も紹介されています。例えば、次のことが研究されています。

・クリエイティビティ(創造性)
・フロー
・マインドフルネス
・感謝
・赦し
・エモーショナル・インテリジェンス(情動知能)
・スピリチュアリティ
・勇気

これらは、次の「こころの資本」候補です。科学的な根拠が認められると5つ目の要素に入るわけです。

4.まとめ
 変化の激しい時代にあって、私たちが社会・環境に適応するために身につける必要がある能力は変化しています。今回ご紹介した「こころの資本」をまとめると、次のような能力が求められているといえそうです。

「ネガティブな環境にめげずに楽観的に構えて、現実的なゴールを設定して、熱意をもって手段を選択し、自信や有能感を味わいながら、失敗を糧に次のステップに進んでいく能力」

 科学的にみるとこのような能力が今求められていて、これら能力の育成を軸にした人材育成戦略が練られている、といえそうです。具体的なエビデンス(根拠)に関心のある方は、ぜひ本書でご確認ください。

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2021年05月17日

135号

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図書紹介:『オンライン研修アクティビティ』
著者:ベッキー・パイク
監訳:中村文子
出版:日本能率協会マネジメントセンター、2021年

紹介者(木下)から: こんな「オンライン」セミナーは失敗する!

先月号でご紹介したボブ・パイク『オンライン研修』の記事は予想以上に好評でした。すでに手に入れた方も多いかと思います。今号も引き続きオンライン研修を紹介します。

この本は、ボブの娘、ベッキー・パイクの著書です。オンライン研修の潤滑油ともいえる様々なアクティビティが紹介されています。オンライン研修を企画する際の実用書として、そばに置いておきたい本です。

では、内容に入ります。

1.こんな「オンライン」セミナーは失敗する!
 参加者の満足度が低い研修には、オンライン研修ならではのルールを守れていないことが考えられます。

「講師」が犯しやすいミスを見ていきましょう。

(1)時間通りに始めない。終わらない。
 オンライン研修では、早めにログインして開始時刻よりも前に入室してきた人たちに感謝を伝えることで、時間を守ることの大切さを共有できます。

(2)ソフトオープニングをしない
 ソフトオープニングとは、セミナーを始める前の準備運動のことです。研修が始まるまでタイトルを表示しておくのではなく、アクティビティを示してくことがコツです。

例えば、キーワードになる単語やパズル、視覚的な画像などを使って、研修が始まるまでの数分間をテーマについて参加者に考えてもらう時間にします。

(3)配布資料がない
 たとえ白紙だとしても配布資料は必要です。参加者のほとんどは、研修で何を学ぶことができるのか、そして重要な要素は何かを知りたいと思っています。

 適切な配布資料には3つの原則があります。
1)視覚的であること。デザインや画像を使って工夫します。
2)書き込むスペースを設けること。書くことで思い出しやすくなるからです。
3)話のまとまりごとに、一つのかたまりなっていること。

(4)扱う内容が多すぎる
 対面型の研修に比べて、オンラインで参加者とやりとりをすると1.3倍の時間がかかることが分かっています。

対面と同じ時間でオンライン研修を企画する場合には、内容を絞って大切なところだけを扱うようにします。

その代わりに、詳しく知りたい人向けに補足情報を検索する方法を伝えます。
これで、参加者は必要になったときにそこにアクセスして情報を参照することができます。

(5)講義の連続
 「講義による死」(シャロン・ボウマン)という言葉があるように、講義の連続は参加者のモチベーションを台無しにします。講義の代わりに、本書にあるようなアクティビティを取り入れてみてください。

 他にも、講義中心の研修から双方向の研修に変えるアイデアはあります。
1)一つの話を、5分間の話に分割してみる。
2)専門知識のある参加者にゲストスピーカーとして話してもらう。
3)時々、振り返る時間をとって、ワークシートに書き留めてもらう。
4)講義の全体を通して参加者に質問して、チャットに書き込んでもらう。そこで出てきた例やアイデアを使用する。
5)ブレイクアウトルームを活用して講師から投げかけられた質問について、参加者が検討する時間を設ける。

このように、オンラインの特性をいかした研修を企画する際には、対面とは違った工夫が求められます。前号の繰り返しになりますが、「誰が話したか」よりも「何を学んだか」に焦点を当てるのがコツのようです。

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2021年04月15日

134号

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図書紹介:『オンライン研修ハンドブック』
著者:中村文子、ボブ・パイク
出版:日本能率協会マネジメントセンター、2021年

紹介者(木下)から: 質が問われる「オンライン研修」、実現のために
 
1.オンライン研修のガイドラインはこれ!
 この一年ですっかり市民権を得たオンライン活動。会議や授業、研修に至るまで一変してオンラインに切り替わりました。はじめは非常事態に対応するべく対面の代替でしたが、いまはその「質」が問われています。

 本書は、特に質の高さが求められるオンライン「研修」の実現にむけた最新刊です。これからオンライン活動を始める方だけではなく、すでにオンラインで親学活動をしておられる方にも、必携の一冊です。これからは、このレベルが標準ラインになっていくでしょう。

2.オンライン研修にまつわる誤解
 質の高いオンライン研修を実現するには、「対面の代替」という考え方を見直すことから始めます。オンラインの特性を知って講義内容を再構成することで、対面以上の学習効果が期待できるからです。

まずは、オンライン研修は対面の代替であり、講義を「配信」すればよいという考えから脱却することから始めましょう。

3.対面との違い:講師の位置づけと役割
 対面との大きな違いは、講師の存在をアピールする必要は「ない」ことにあります。

対面講義では、講師の魅力で参加者を引きつけて内容に関心を持ってもらい、学習へとつなげます。親学もそうですが、対面では「誰が」話すかが重要とされてきました。

 一方、オンライン化によって物理的な距離が生まれるようになると講師の影響が伝わりにくくなりますから、「内容自体」に関心を向けてもらえるようにする必要があります。

4.質の高いオンライン研修、実現のヒント:「90/20/4」の法則
 オンライン研修を設計するには「90/20/4」の法則がベースになります。

 基本的には60分に一回、長くても「90」分に一回は休憩をとること。また一日中、画面に向き合うのは健康とはいえませんから、長くても一日、3時間までが適切です。

 つぎに、オンライン研修では講師が一方的に話すことになりがちです。「20」分に一回は学習者が「おさらい」できるように、個人やペア・グループワークの時間を設けます。

 さらに講義中も「4」分に一回は、参加者に語りかけて質問に答えてもらうなどの工夫をして、受け身にならないように工夫する必要があります。

5.まとめ:対面講義の内容を精査し、再構成せよ
 このように、オンラインならではの特性をいかした質の高い研修をするには、対面講義で扱っていた内容を見直して、オンライン用に再構成して学習者に提供することが求められます。

 オンライン化という分水嶺を超えるには、こうした対応が必要だといえるでしょう。

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2021年03月15日

133号

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図書紹介:『News Diet』
著者:ロルフ・ドベリ
訳者:安原 実津
出版:サンマーク出版、2021年

紹介者から:ニュースを絶つと、人生が豊かになる。

 この本は、ニュースの「ダイエット」を勧めています。実際にニュースを絶ってみると、自分にとって本当に必要な情報がわかるようになります。

 このような内容です。

1.ニュース中毒になっていませんか。
 ニュースは、1650年ドイツのライプツィヒで生まれました。いまから370年前のことです。それ以来、ニュースは私たちの時間を奪い続けてきています。

アメリカのピュー研究所によると、私たちはニュースに一日あたり58分から96分(年換算では約一ヶ月分)の時間を消費しています。

しかし、あなたは長年にわたってニュースを見聞きしきて、世界をよく理解できるようになり、よい判断ができるようになったでしょうか。

2.ニュースでは、出来事の本質的な理解にはつながらない。
 ニュースに触れ続けると、世界が実際よりも単純で、説明可能なものだと錯覚してしまうことがあります。

世界で起こっている出来事は、複雑に絡み合っています。ニュースは、それら出来事同士の関連性を説明しないで、事実を並び立たてるだけで、説明したことにしてしまっています。ニュースでは、出来事の本質的な理解にはつながらないのです。

3.自分がコントロールできないものを心配しても、役に立たない。
 ニュースの内容は、基本的にはあなたと無関係です。そして、あなたの能力を超えているものばかりです。

人は、自分にはどうしようもないことを連日にわたって聞かされていると、次第に受け身になっていってしまいます。文明病といわれるうつ病と、ニュース誕生の歴史がリンクしているようにみえるのは気のせいではないようです。

 自分でコントロールできることの情報を手に入れて、奪われた気力を取り戻し、悲観的なものの見方から脱却しましょう。

4.ニュースから自由になろう。
 ニュースがなくても、あなたが困ることはありません。本当に大切な情報は、適切なタイミングで、専門誌や友人・家族からあなたの耳に入るのものだからです。

あなたも、ニュースをダイエットしてみませんか。

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2021年02月15日

132号

論文紹介:「母親による子どもの父親イメージの構成に関する研究―家庭内の直接的コミュニケーションとの比較から―」
著者:萩臺美紀・若島弘文
収録:家族心理学研究 34(1), 40-54, 2020

紹介者から:
 
 父親からの子どもに対する関わりは、子どもの社会性や適応に対して重要な役割を果たすことがこれまでの研究からわかっています。

 しかしながら、平日に子どもとふれあう時間が2時間以上ある母親(67.6%)に比べると、父親は24.5%で、父と子のコミュニケーション時間が少ないことが報告されています(文部科学省,2017)

 そうなると、子どもと過ごす時間が比較的長い母親から伝えられる父親像が、子どもが抱く父親イメージに影響を及ぼすことになるわけですが、具体的にどのような伝え方が子どもの父親イメージに影響を与えるのかは、よく分かっていませんでした。

 この研究では、母親の言動がどのように子どもの父親イメージに影響を与えているのかを明らかにしています。

対象:大学生301名(男性150名、女性151名)、平均年齢19.49歳(SD=1.126)

結果1:まず、父親との「直接的なコミュニケーション」が、子どもの好意的な父親イメージに影響していることがわかりました。特に、父子の間で日常生活の出来事や友人関係のことを直接話すことが最も影響力を持っていました。したがって、家庭内において父親不在感を予防するには、普段から父親と子どもが直接、会話することが重要だといえます。

結果2:次いで、母親から伝えられる「父親の親和的情報」が影響を与えていました。「父親の親和的情報」とは、「母親は父親の能力や成果について褒める」「母親は父親の仕事が大変そうで、心配だと話す」「母親は父親の人間性について褒める」などでした。

このように、母親が父親のことを褒め、父親の気持ちを子どもに伝えることは、母親の「取り持ち」機能と呼ばれ、それによって青年が認識する両親の仲の良さを媒介して、父親に対する尊敬や親和性を促進することが確認されました。

このように、母親が父親に対する肯定的な情報を伝えると、子どもの好意的な父親イメージに影響があることが示されました。

結果3:一方で、母親が父親の情報を「呆れたような冷淡な口調」で伝えると、子どもの父親イメージのうち、能力的な部分が低下することがわかりました。「呆れたような冷淡な口調」とは「何もしてくれない」「子どもに何も言ってくれない」などでした。

 このように、母親が父親の情報を「呆れたような冷淡」な口調で伝えると、子どもの父親に対する能力的な父親イメージが低下することが示されました。

まとめ:この論文から次のことを読み取ることが出来ます。
1.好意的な父親イメージを育てるには、父と子が日常的に会話をする機会を持つこと。
2.母親が父親の能力や成果を褒めて伝えること。
3.能力的な父親イメージを育てるには、父親の能力的な面が分かるような機会に触れられるようにすること。
4.まとめ:母親から父親の家庭外の様子を聞くことに加えて、母親とコミュニケーションをとることで、家庭を気にかけている父親の姿を子どもが認識して能力のある父親イメージが子どもに形成される。

 参考:文部科学省(2017)「家庭教育の総合的推進に関する調査研究」
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2021年01月15日

131号

論文紹介:「高校生の身体不調と家族の対応との関連」
著者:森川 夏乃
収録:家族心理学研究 34(1), 15-25, 2020

 かんたんな要約:子どもが体調不良を訴えたときに、家族が「落胆」または「回避」する対応をとると、子どもの抑うつや不安につながり、無気力になって症状の頻度が増える。

1.背景:不登校経験者が訴える体調不調には、本来の体調不調と「心理社会的因子」を背景とする身体不調があります。

「心理社会的因子」を背景とする体調不調とは、家族や学校など子どもの周囲の配慮が十分でないために二次的に生じる心理的ストレスによるものです。

不登校経験者が訴える体調不調には、本来の体調不調と「心理社会的因子」を背景とする体調不調が相互作用していると考えられています。この種の体調不調は、小学校高学年から高校3年生において確認されています。

この論文では、体調不調を抱える子どもの視点から、家族の対応(心理社会的因子)をどのように認知していて、自分の症状とどのように関連しているかについて調査しています。

 調査内容:頭痛や腹痛等の体調不調を抱えている高校生(150名)を対象に症状が生じた後に、症状や症状に伴う行動に対する家族の対応と、生じている症状との関連を調査した。

 結果1:家族の問題解決パターンのなかでも、「強制・対立型」「拡散型」「落胆・回避型」(注)において、ストレス反応である「抑うつ・不安」「不機嫌・怒り」「無気力」と弱い正の相関がみられた。

(注)「強制・対立型」と「拡散型」は、子どもの体調不調を家族内の問題として取り扱い、なんとか解決しようとして、子どもに指示したり話し合う関わりが生じること。「拡散型」は、問題を解決しようとするが当該問題以外に話がそれてしまったり、感情的になって決裂してしまうといったように、家族がバラバラの状態になること。
「落胆・回避型」は、家族が自身を責めたり落ち込むばかりで、問題について話し合う機会がなく、家族内で問題解決に向けた関わりが生じないこと。
  
 結果2:症状の頻度に影響を与えるのは「無気力」であった。家族が「落胆・回避型」の対応パターンの場合、子どもの「無気力」につながり、それが症状の頻度を高める。

 家族内で子ども自身の症状について扱われていないと感じられる中では、子ども自身がどうにかしようという気持ちが持てず、症状が悪化する一方であることが考えられる。

 結果3:「拡散型」は「不機嫌・怒り」につながる。家族内で問題を解決しようと話し合いなどの関わりが生じるものの、話し合いが決裂して解決に向かわない対応がおきる。

解決が見えそうな話し合いがなされていないと感じられると、子どもは家族の対応に対して混乱し、不満を抱くことが推察される。

 コメント(紹介者から):この論文では、子どもが体調不調を訴えたときに、家族の対応によって、体調不調が長引いたり、悪化したりすることが確認されました。

家族の対応パターンのなかでも、子どもの症状に対して「落胆・回避型」の対応が取られた場合には、子どもは「無気力」になり、「症状の頻度」が増えることが確認されています。

 これらことから、子どもが体調不調を訴えて、不登校が続いたときに家族が避けたい対応は、自分を責めて落ち込むばかりで解決に向けた関わりが生じない「落胆・回避型」だといえます。

 一方で、興味深かったのは、家族が「強制・対立型」の対応をした場合に、そこからは何も生まれなかったことです。

 この論文を読んで感じたことは、強制・対立ではなく、落胆・回避でもない関わりができるように家族を支えていくことが、これからの方向性なのではないかということです。
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2020年12月19日

130号

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『心理学から見た社会‐実証研究の可能性と課題』
監修者:安藤清志、大島尚
発 行:誠信書房、2020年

今なぜ、鬼滅の刃が大ヒットなのか−「感動」の心理学研究から読み解く、そのワケとは―

 アニメ「鬼滅の刃」は、日本のみならず世界中で多くの人たちを感動させています。特に映画は大ヒットをみせ、日本の映画歴代興行収入ランキング1位に迫る勢いです。
 
 なぜ今、これほどの大ヒットなのでしょうか。今回は、「感動」の心理学的研究からそのワケに迫ります。

<感動には複数の感情が含まれている>
 まず、感動とは、非常に強烈な感情の集合を指します。何によって構成されているのかというと、「喜び・うれしさ」、「悲しみ・哀しみ」、「共感・同情」、「驚き」、「達成感」、「素晴らしさ」(戸梶,1999)などです。

<日本では、協力して助け合うことに感動が起きる>
 日本では天災や人災などの社会的な緊急事態に対して、協力して助け合うということに価値が置かれることが多いことから、「誰かの優れた実績は多くの人の支えによって実現できた」という話に強い感動が喚起されるようです。

<「感動」が及ぼす影響>
 こうした「感動」は、どのような影響を私たちに及ぼすのでしょうか。

1.「動機づけの向上」
2.「認知的枠組みの更新」
3.「他者志向・対人受容」(戸梶,2004)

 感動すれば、必ずこうした影響があるとは限りませんが、その時々で私たちの気にかかっていることに対して、感動することによって、動機づけられる傾向があるということはできるでしょう。

<まとめ:「鬼滅の刃」が新しい生活への動機づけにつながった>
 コロナ禍によって、翻弄された一年となりました。

「鬼滅の刃」は、そうした懸念事項に対して、
1.前向きに向き合う動機づけ、
2.新しい生活に向かうための認知的な枠組みの更新(考え方を変えること)、
3.オンライン化による新しい対人関係への適応と他者受容、をもたらしてくれたのではないでしょうか。

 炭治郎という主人公が仲間たちと助け合いながら協力して達成していくストーリーは、多くの人を感動のなかで動機づけたのではないかと、考えられるわけです。
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