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2021年12月15日

142号

論文紹介:「ラーニングピラミッドの誤謬――モデルの変遷と“神話”の終焉へ向けて」
著者:土屋耕治
出版:人間関係研究、2018年
URL:https://nanzan-u.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_comm
on_download&item_id=1672&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1

「人に教えることで、学びが深まる」といわれることがあります。本当にそうなのでしょうか。この論考は、科学的な根拠の欠如を指摘します。

1.ラーニングピラミッドとは何か
教育や学習の場面で、人に教えることで学習効率が高まると紹介されるとき、その根拠に「ラーニングピラミッド」学習モデルが引用されることがあります。

ラーニングピラミッドとは、三角形の頂点に講義形式を置き、その学習定着率が5%と最も低く、以下、読書や視聴覚などが続いて最下層に「人に教える」ことを位置し学習定着率は90%で最も高いと説明するモデルです。

このモデルを根拠にして人に教えることが記憶の定着には最も有効であると説明されてきました。

2.しかし、科学的な根拠はなかった
このピラミッド型の三角形によって、学習過程において「人に教える」活動を組み入れることが大切だと理解されるようになり、その結果グループ発表やプレゼンテーションなど、人に教える活動が教育・学習プログラムに組み込まれて来ました。

しかしながら本稿では、「他者に教える」ことで学習効果が高くなるという科学的な根拠を見出すことはできなかったというのです。

3.ラーニングピラミッドの弊害
このモデルの弊害は次のようなものです。

まず、学習の文脈や内容を加味せずに「他者へ教えることがよい」と考えてしまう傾向が生まれることです。

そのことによって、特定の文脈では講義形式や読書、視聴覚教育の学習効果が高いにも関わらず、それらは低く見積もられてしまいます。

4.自己複製的に広がる誤解
さらに、他者に教える経験が最も有効であると理解されるようになると、それを説明する教師や講師は自分たちが教える立場にいることもあって、教えている自分の学びが深まると理解しやすくなります。さらにこのモデルを教えてもらった人もまた他の人に教え始めるので、自己複製的に伝播する特徴があります。

5.ラーニングピラミッドを見直そう
このラーニングピラミッド・学習モデルは、日本の学校教育や企業の社員教育などに大きな影響を与え続けています。人に教えることで教える人の学びが深まるというのは、特定の文脈で特定の内容を扱うときにこそ、効果を期待することができるものです。このモデルで軽視されがちな講義や読書、視聴覚教材を使った教育・学習方法について、この論考を機に見直してみたいものです。
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posted by oyagaku at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 図書紹介
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