
図書紹介:『こころの資本-心理的資本とその展開-』
著者:フレッド・ルーサンス、キャロラオン・ユセフ=モーガン、ブルース・
アボリオ
訳者:開本 浩矢、加納 郁也、井川 浩輔、高階 利徳、厨子 直之
出版:中央経済社、2020年
「こころの資本」って聞いたことありますか。
「こころの資本」は、私たちが持っているポジティブな心のエネルギーを指します。近年、ポジティブ心理学などの領域で研究が盛んなテーマです。
「こころの資本」は、私たちが直面する様々な出来事に対して、私たちを積極的に向き合わせて目標を達成させる心のエネルギー源になるものです。本書には、現時点までの研究成果がまとめてあります。
科学的な根拠に基づく「こころのエネルギー源」とは何か、気になる方は本書をチェックしてみてください。
1.なぜ、いま、「こころの資本」が注目されているのか。
近年、企業や組織の寿命が短くなり、変化が激しく、複雑で、曖昧で、不確実性の高い環境になってきています。そのなかで多くの組織では、深刻な人手不足に直面しています。
かつて、人手に余裕があった時代はいかに優秀な人材を自分の組織に集めるかが人材育成戦略の要でした。その頃に比べて、現在は慢性的に人手が不足しているために、いかに人を組織に定着させて、そのなかで活躍できるようにするかに焦点が移っています。
その際に人材育成戦略の中心的な課題となるのが、私たち一人ひとりの「こころの資本」なのです。こころの資本に着目した人材育成戦略では、次の4つの要素を中心にして育成に取り組んでいます。
2.「こころの資本」4つの要素とは。
定量的な研究成果から、「こころの資本」には4つの要素があることが確認されています。
(1)効力感(エフィカシー):有能感・自信にも近い。
(2)希望(ホープ):ゴールに向う熱意と、その手段に対する積極性を含む。
(3)楽観性(オプティミズム):環境に合わせて柔軟に変化する原動力になる。
(4)回復力(レジリエンス):立ち直るだけに留まらず、さらなる成長に向かう力。
これら4つの要素は、私たちが逆境を乗り越える際の心のエネルギーになるもので、かつ科学的な根拠が認められたものです。
3.「こころの資本」、次の候補は?
「こころの資本」研究は発展途上にあります。本書では、研究途中の「こころの資本」候補も紹介されています。例えば、次のことが研究されています。
・クリエイティビティ(創造性)
・フロー
・マインドフルネス
・感謝
・赦し
・エモーショナル・インテリジェンス(情動知能)
・スピリチュアリティ
・勇気
これらは、次の「こころの資本」候補です。科学的な根拠が認められると5つ目の要素に入るわけです。
4.まとめ
変化の激しい時代にあって、私たちが社会・環境に適応するために身につける必要がある能力は変化しています。今回ご紹介した「こころの資本」をまとめると、次のような能力が求められているといえそうです。
「ネガティブな環境にめげずに楽観的に構えて、現実的なゴールを設定して、熱意をもって手段を選択し、自信や有能感を味わいながら、失敗を糧に次のステップに進んでいく能力」
科学的にみるとこのような能力が今求められていて、これら能力の育成を軸にした人材育成戦略が練られている、といえそうです。具体的なエビデンス(根拠)に関心のある方は、ぜひ本書でご確認ください。
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