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2021年01月15日

131号

論文紹介:「高校生の身体不調と家族の対応との関連」
著者:森川 夏乃
収録:家族心理学研究 34(1), 15-25, 2020

 かんたんな要約:子どもが体調不良を訴えたときに、家族が「落胆」または「回避」する対応をとると、子どもの抑うつや不安につながり、無気力になって症状の頻度が増える。

1.背景:不登校経験者が訴える体調不調には、本来の体調不調と「心理社会的因子」を背景とする身体不調があります。

「心理社会的因子」を背景とする体調不調とは、家族や学校など子どもの周囲の配慮が十分でないために二次的に生じる心理的ストレスによるものです。

不登校経験者が訴える体調不調には、本来の体調不調と「心理社会的因子」を背景とする体調不調が相互作用していると考えられています。この種の体調不調は、小学校高学年から高校3年生において確認されています。

この論文では、体調不調を抱える子どもの視点から、家族の対応(心理社会的因子)をどのように認知していて、自分の症状とどのように関連しているかについて調査しています。

 調査内容:頭痛や腹痛等の体調不調を抱えている高校生(150名)を対象に症状が生じた後に、症状や症状に伴う行動に対する家族の対応と、生じている症状との関連を調査した。

 結果1:家族の問題解決パターンのなかでも、「強制・対立型」「拡散型」「落胆・回避型」(注)において、ストレス反応である「抑うつ・不安」「不機嫌・怒り」「無気力」と弱い正の相関がみられた。

(注)「強制・対立型」と「拡散型」は、子どもの体調不調を家族内の問題として取り扱い、なんとか解決しようとして、子どもに指示したり話し合う関わりが生じること。「拡散型」は、問題を解決しようとするが当該問題以外に話がそれてしまったり、感情的になって決裂してしまうといったように、家族がバラバラの状態になること。
「落胆・回避型」は、家族が自身を責めたり落ち込むばかりで、問題について話し合う機会がなく、家族内で問題解決に向けた関わりが生じないこと。
  
 結果2:症状の頻度に影響を与えるのは「無気力」であった。家族が「落胆・回避型」の対応パターンの場合、子どもの「無気力」につながり、それが症状の頻度を高める。

 家族内で子ども自身の症状について扱われていないと感じられる中では、子ども自身がどうにかしようという気持ちが持てず、症状が悪化する一方であることが考えられる。

 結果3:「拡散型」は「不機嫌・怒り」につながる。家族内で問題を解決しようと話し合いなどの関わりが生じるものの、話し合いが決裂して解決に向かわない対応がおきる。

解決が見えそうな話し合いがなされていないと感じられると、子どもは家族の対応に対して混乱し、不満を抱くことが推察される。

 コメント(紹介者から):この論文では、子どもが体調不調を訴えたときに、家族の対応によって、体調不調が長引いたり、悪化したりすることが確認されました。

家族の対応パターンのなかでも、子どもの症状に対して「落胆・回避型」の対応が取られた場合には、子どもは「無気力」になり、「症状の頻度」が増えることが確認されています。

 これらことから、子どもが体調不調を訴えて、不登校が続いたときに家族が避けたい対応は、自分を責めて落ち込むばかりで解決に向けた関わりが生じない「落胆・回避型」だといえます。

 一方で、興味深かったのは、家族が「強制・対立型」の対応をした場合に、そこからは何も生まれなかったことです。

 この論文を読んで感じたことは、強制・対立ではなく、落胆・回避でもない関わりができるように家族を支えていくことが、これからの方向性なのではないかということです。
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posted by oyagaku at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 図書紹介
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