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2019年10月15日

116号

『赤ちゃん学を学ぶ人のために』
著 者:小西行郎、遠藤利彦
発 行:世界思想社、2012年

紹介者から:
 小西先生は、子ども観や子育て論の見直しを赤ちゃん学の構築の立場から目指しておられました。いわく、無力な赤ちゃんを育てているのではなくて、私たちは「赤ちゃんによって育児させられている」のではないか、という赤ちゃん主体の側面を強調された先生でした。

 大人(親)の都合による子育てから、親が育ち・子どもが育ち・子育てに関わる人たちが育つ親学への展開のなかで、赤ちゃんが育つとはどういうことなのか、この本はそのヒントを示しています。育児を科学することに興味がある方にお薦めいたします。

本書から: 21世紀の新しい子ども観・子育て論
 20世紀は、「末は博士か大臣か」というように、頑張って子育てすれば必ず期待に沿った子どもが育つという、きわめて楽観的な右肩上がりの子ども観でした。「3歳までは母親の手で育てなければならない」などの神話はいまだに多くの母親に影響を与え、育児を難しいものにしているように思えます。

 科学的な目から赤ちゃんを観察し、発達のメカニズムを考えようとする赤ちゃん学では、もはや赤ちゃんが白紙状態でも無力でもないことが明らかになりました。

 <新しい子ども観1:赤ちゃんは自発的に動く>
 20世紀に行われた研究では、「赤ちゃんは、外から受けた刺激や学習によって成熟する」という考えが基盤にありました。しかし、自発的に運動をしていることがわかってからは、自らが動くことによって、他者や周囲の環境を認知して、「自ら育つ」という考え方に大きく変わってきています。
 
 <新しい子ども観2:無駄なシナプスをバランスよく削りながら成長する>
 脳は、あらかじめシナプスを多めに用意しておき、不要になった段階で適当に刈り込み、回路を円滑に運営するシステムをもっています。

 早期教育肯定派の人は、このシナプス数が最大になる乳幼児期に子どもの能力を伸ばすために多くの刺激を与えることが豊かな育児教育であると唱えるようになりました。

 ところが、最近になって、あまりにいろいろな刺激を与えることが疑問視され始めてきています。刺激が強すぎることによって、本来バランスよくおこなわれるはずのシナプスの刈り込みに支障をきたし、子どもの脳に悪い結果をもたらすのではないかという懸念が、専門家の間で広がっているのです。こうした研究は、何でもかんでも刺激すればするほど成長する、という従来の考え方に警鐘を鳴らすように思えます。

 <新しい子ども観3:赤ちゃんは無力ではない>
 赤ちゃん学のもっとも大きな成果は、まったく無力であると思われていた胎児期から新生児期(生後1ヶ月まで)・乳児期(生後1年まで)の赤ちゃんにきわめて優れた能力があることを発見したことにあります。

 赤ちゃんは、白紙状態でうまれるわけではないことがわかってきたといえるでしょう。例えば、3D超音波装置の開発によって、胎児のさまざまな表情や複雑な行動がリアルタイムで見られるようになりました。

 また、新生児は苦い、酸っぱい味を区別でき、味に合わせて大人と同じような表情をするといわれていますが、こうした表情の多くは胎児期にすでに準備されているということかもしれません。

 <育児を科学する必要性>
 核家族化が進み、一人で子育てをしなければならないお母さんにとっては、育児についての情報が以前よりも重要になってきていると思います。
 
 しかし、一方では昔ながらの思い込みや経験に基づく育児法などがいまだに氾濫しています。育児にとって愛情が重要であることは否定しません。しかし、愛情があればすべてが解決するものではありません。

相手を知り、理解することこそが重要であり、そのうえで赤ちゃんに合った方法で育児を行うことが大切だと思うのです。子どもを理解せずしてどうして育児支援や保育あるいは教育ができるのでしょうか。

 この本はまず赤ちゃんを理解しようという日本赤ちゃん学会の研究者の思いが基になっています。
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posted by oyagaku at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 図書紹介
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