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2019年03月15日

110号

『胎児のはなし』

著 者:最相葉月、増ア英明
発 行:ミシマ社、2019年

紹介者から: 最新の超音波検査とDNA解析でわかった胎児の世界

この本は1983年に出版された三木成夫『胎児の世界』 (中公新書)以来の一般の読者向けに書かれたもので、最新の超音波検査とDNA解析によって明らかになってきた胎児の世界を覗くことができます。

この本は、本欄でも紹介してきたノンフィクションライターの最相葉月さんが「生徒」として、長崎大学病院長で40年間にわたって胎児の研究をしてきた増ア英明「先生」に質問を投げかけて進む「対話型」になっています。会話のように進んでいきますので、300頁を超える分厚い本ではありますが、ほとんど読みづらさを感じることはありませんでした。

本書から:父親のDNAは、胎児を通じて母親に入る。

この本を読者の皆様に紹介しようと思ったきっかけは、父親のDNAが胎児を通じて母親に入っていることがわかった、との内容に触れたからでした。もちろん母胎のDNAも胎児に入っているし、胎児のDNAも母親に入っている。そう考えると、胎児を通じて、母親と父親はDNAレベルでつながり、本当の家族になることがわかります。

増ア先生が「女は母に生まれつくのではない、母親になるのだ」というように、女性は他人のDNAを受け入れて初めて母親になることを考えると、受精の重要さを改めて考え直すことになりました。受精は個体にとっても、人類種にとっても大切な意味があるようです。

もちろん本書は、医学からの視点ですので、限界もありますが、先号でご紹介した大森先生がよく使われる「いのちのバトンリレー」は、単なる価値観の話だけではなくて、この生殖細胞のレベルで受け継がれていることになります。

また、身体の細胞は細胞分裂の回数に限りがあるために、人には死があるが、単細胞である生殖細胞には死はなく、これまでも、これからも受け継がれていくのだといいます。

増ア先生は子供向けの性教育の時間に「君たちの体は、自分だけのものと、自分だけのものではないものを持っています」と述べていますが、最新の医学研究の視点から、このようにいえるようになっていることは新しい発見でした。

現代社会は、遺伝的なつながりによらない多様な家族の在り方が認められるようになっている一方で、科学技術の成果として、「血の絆」が存在しつづけることが明らかになっています。このことは胎児に関する話題は、医学モデルだけではなく、心理・社会・倫理・スピリチュアルなど様々な視点から「いのち」について考える必要性を示しているように思いました。またそれが専門家の共働によるチーム支援やコミュニティアプローチなどによって、可能になってきていることも感じます。

なお、本書の紹介動画は、YouTubeで以下のURLからみることができます。https://www.youtube.com/watch?v=7obUhpway-0
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posted by oyagaku at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 図書紹介
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