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2018年10月15日

105号

『超一流になるのは才能か努力か?』
著 者:Anders Ericsson, Robert Pool.
翻訳者:土方 奈美
発 行:文藝春秋、2016年

紹介者から
 「よりよい実践のために、どうしたらいいのだろう」。親学を学び、実践に取り組む、あるいは取り組もうとする私たちが抱き続ける疑問の一つだと思います。

 ここに“deliberate practice”という言葉があります。「限界的練習」、「意図的訓練」あるいは「意図的な実践」と訳されますが、意味するところは、ただ漠然とした練習や訓練、そして実践を重ねるだけではなくて、意図的に行うということです。

では、何に気をつけて、何を心掛けて練習や訓練、実践をすればよいのでしょうか。

 今回ご紹介する著者アンダース・エリクソンは、30年以上にわたってスポーツ、音楽、科学、医療、ビジネスなどの分野で傑出した人物を研究して、超一流の人達に共通する、よりよい実践のための手がかりを発見しています。今号は、その概要をみていくことにしましょう。

本書から
「ただ努力するだけでは能力は向上しない」:努力をつづけなさい。そうすれば目標を達成できるというのは間違っている。正しい訓練を、十分な期間にわたって継続することが向上につながるのだ。では何が「正しい訓練」なのだろう。

「意識的に」実践すること:一般的に、何かを習得して許容できるレベルに達して、意識しないでも自然にできるようになってしまうと、そこから何年練習を続けても、向上にはつながらない。例えば20年の経験がある医師や教師は、5年しか経験がない人よりも劣っている可能性が高いのだ。自然にできるようになると、改善に向けた意識的な努力をしなくなるからだと考えられている。

 「目的のある練習」:この程度できれば十分、という水準で頭打ちになる一般的な訓練や練習方法を超えるには、目的のある練習が必要だ。ただ愚直に繰り返すだけの練習とは異なる、目的のある練習には4つのポイントがある。

@具体的な目標
A集中
Bフィードバック
C心地よい領域から飛び出す(楽をしすぎない)

特にCは挑戦することを意味していて最も重要なものだ。
 
それまでできなかったことに挑戦して壁にぶつかったとき、それを乗り越える方法は、「もっと頑張る」ではなくて「別の方法を試す」ことだ。なかでも「限界的練習」が効果的である。現在のレベルを少しだけ超えられるように設計された訓練を意味する。何を知っているかよりも何ができるのか(技能)が重視される。

人間の本質を表すこれまでの考え方は「ホモ・サピエンス(知恵のある人)」である。だが、練習によって自らの人生の可能性を広げて未来を切り開く人間は「ホモ・エクセサンス(練習する人)」といえるのではないだろうか。
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posted by oyagaku at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 図書紹介
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