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特定非営利活動法人おれんじの会(特発性大腿骨頭壊死症友の会)

 特発性大腿骨頭壊死症友の会です。患者・家族の交流と情報交換を目的として2007年11月に山口県を拠点に発足しました。患者の立場から疾患の原因究明・予防・治療の確立を求め、社会に対しては疾患についての正しい理解を求めるべく働きかけています。


山口県難病交流会報告 [2016年09月26日(Mon)]
平成28年度 山口県難病交流会報告

日時:平成28年9月25日
場所:防府市地域協働支援センター大会議室
参加者:患者8名
オブザーバーとして県健康増進課、県難病相談センター、宇部市健康福祉センターの
職員が同席

各人の自己紹介と特発性大腿骨頭壊死症に関する体験や、今困っていること、治療について知りたいことなど、意見交換をしました。質問に対しては随時、整形外科医師が回答。

年代層が現役で就労中の人から定年退職後の方まで幅広く、男性も女性もおられました。合併症のある方、ステロイドの副作用で発症した型、ステロイドを使っていないにもかかわらず特発性大腿骨頭壊死症になってしまった方、いろいろな方のお話が聴けました。普段は同じ病気の人と会うこともなければ、話をすることもないのですから、大変貴重なひと時でした。

人工股関節全置換術の手術後の人が多く、中には脱臼の経験者の方もおられて、大変リアルなお話を聞けました。「退院後一週間目ごろに風呂場で浴槽の淵に足を乗せて体を拭いていたら足が内側に入ってしまい脱臼した。(家族の方によりますと、外から見ても人工関節の脱臼した骨頭部分がボコッと盛り上がっていて、異様なのがわかったそうです。)救急車で運ばれる間も、足がぶらぶら状態なので車の振動がものすごく応えた。途中から、座布団をあてがって足がぶらぶらしないように支えてもらって、いくらか楽になった。たまたま自分の手術をしてくれた医師が病院の当直でいてくれたので対応は早かった。」

Q1)人工股関節がもし脱臼したら、どこに連絡したらよいのか?
A1) とにかく救急車を要請しましょう。時間が早い方が治療は容易ですし患者さんの苦痛も少なくて済みます。手術をした病院でなくとも、整形外科医が待機している救急病院であれば一番近いところから問い合わせます。救急隊が調整してくれます。圏外の病院には救急搬送はできません。

Q1-2)脱臼に気を付けなければならないのはいつごろまででしょうか?
A1-2)手術直後が一番注意が必要な時期です。自力で脚が持ち上がらない最初の3日ぐらいが一番危険です。リハビリして自宅に帰れる3週目ごろには、病院で指導されたことを守ればめったに脱臼することはありません。3か月ぐらいで片足立ちできるくらいの力がつけば(追記:杖がなくても歩けるのとほぼ同じ)あまり心配しなくてもよいです。本当に自分の脚になるには半年、ご高齢の方ですと、1年は注意をした方がよいでしょう。

Q2)手術後、一年に一回レントゲン写真を撮って、簡単な診察をしてもらって大丈夫ですよ、といわれて帰ります。実際は痛みが股関節のあたりにあるのですが。一年に一回検診をしないといけないものなのでしょうか。
A2)一年に一回レントゲンを撮る意味は、自覚症状がなくても人工関節の部品特にポリエチレン(プラスチック)がすり減ってきたり、金属の部品が自分の骨との間で緩んで来たりすることがあるので早期発見目的の検診です。何年も検診しなくて、痛くなったといってこられた方が、ガタガタに緩んだ状態だったということがありました。
 痛みには何か原因があります。理由なく痛いはずはないのです。人工関節部分には異常がないとしても、その周りの筋肉や腱、関節周囲の何かに不調があると思われます。今度の診察のときに、担当医に症状のことをよくお話して、診てもらってください。


保存的治療で、経過観察中という方もおられました。他方で手術を勧められているが手術に踏み切っていない方も多数おられました。

痛みについても、常時痛み止めを飲まないといけないほどではない、痛くない、痛いけれど痛み止めが効かない、様々です。痛みとの付き合い方ではその人なりの知恵と工夫で付き合っておられました。中には、電気カーペットの上に座ると電磁波のせいなのか人工関節のあたりが痛くなって、冬場は困るという人もいました。


Q3)慢性化してしまった痛みに効く薬は?
A3)慢性痛の薬は、いわゆる痛み止めである非ステロイド性消炎鎮痛剤(ロキソニンなど)はあまり効果がないといわれます。ガイドラインでは抗うつ剤が第一に使われます。副作用に吐き気と眠気ふらつきなどがあります。副作用に耐えられない、あるいは仕事で機械や車の運転をする方は、ほかの薬を使います。
リリカレジスタードマークは、最近よく使われる薬の一つです。体質によってとても効きやすい人と効きにくい人があります。1カプセルでは効果がない場合は増やしていきます。重大な副作用が眠気とふらつきです。この薬の眠気は、非常に危険で、突然、意識がなくなるような眠りが襲ってきます。効かない人の場合は必要な量に達していないことが考えられます。まずは担当医と相談して増やしてみるというのが手順ですが、眠気が強いと増やせません。
トラムセットレジスタードマークあるいはトラマールレジスタードマークという薬があります。成分は麻薬に似ていますが麻薬ではありません。強い痛みに効果があり胃を直接荒らすことがないので、比較的安全な薬です。一日3ないし4回飲みます。


筋力低下と手術のタイミング、体重の管理なども話題になりました。


Q4)ステロイド性の筋力低下の状態で手術に踏み切れません。どう判断したらよいのでしょうか。
A4)大量のステロイドを使っていると筋力が低下してしまうことがあります。かといってむやみにトレーニングをして効果が上がるわけではありません。ステロイドの量が多い方は負荷をかけるのは良くありません。かといって股関節の痛みがあると運動療法もできません。もちろん、寝たきりで自分では体を起こせない状態では手術後のリハビリが大変です。立ち座りができる、杖で歩けるくらいの力が戻っていれば、手術をして股関節の悩みを解決して積極的に筋力を取り戻すための運動療法ができるようになるのが良いと思います。


Q5)片方の人工関節の手術をしたら4キロぐらい一気にやせた。両方とも骨頭壊死症なので、次の手術を控えているが、体重を増やした方がいいのでしょうか?もともとは体重が多すぎて、減量の指導をされて手術前に20キロ減らしました。
A5)前回の手術前ぐらいに少し増やした方がよいでしょう。筋肉の量を増やすことと体力をつけることが必要だと思います。バランスよく、しっかり食べてください。


Q6)そもそも骨壊死は治るものなのですか?
A6)治ります。そうは言っても、死んだ骨が吸収されて新しい骨に置き換わるには何年もかかります。その間骨が吸収されて弱くなっているところに負担がかかるとつぶれて変形してしまいますので、形を保った状態で治したい。骨頭を温存する手術、例えば回転骨切り術では上にあった壊死部分をくるっと回して下にもってきて、体重のかからないところに移動させます。最終的には、壊死が治ったかどうかはMRIで骨の信号が正常の部分と同じになれば完治したということになります。壊死が治った時点で、骨頭が完全な形であれば痛みもなく動きもよいのですが、変形して治ってしまうと、関節面があっていないために痛みや動きの悪さ、異常な音など股関節症状が残ります。変形性関節症と同じ状態になります。
 実際には回転骨切り術成功しても骨頭は完全な球ではないので、20年以上たつと、二次性の関節症が出てきます。このころには壊死は完全に治っていることが証明されています。


仕事場での病気に対する理解がどこまで得られているのか、現職での就労継続支援について公的な啓蒙・制度の周知徹底などはどうなっているのか?といった意見も出ました。
配慮が必要と分かっていても現実的には現場ではやらざるを得ない、無理をしてしまうこともある。
人工股関節でも仕事を変えられないので、重いものを持ったりしゃがんだりしている人も現実には大勢います。農業、運送業、建築業など。

人工股関節の耐用年数は、今頃は昔のように一概には「15年しか持たない」とは言いませんが20年は持つことは証明されていても、30年というのはわかりません。しかもそれらは20年昔の機種の追跡調査の結果ですから、私たちの体に入っている機種が一体どれだけ持つのか?の答えは出ていません。私たちが実験台のようなものなのです。それが人工関節の日進月歩の時代を生きるということなのです。
人工股関節に関する技術はどんどん進歩しますので、右側と左側後で違うタイプの人工関節になった、という笑い話のようなことが現実にはあります。(医師はふざけてやっているのではなく最善の選択をした結果、そうなってしまうのです)

難病患者の就労支援についてはハローワークも現在相談事業「難病患者就職相談会」を開始していると県からの説明がありました。対象者は離職(失業)した人に限定されず、現在働いている人でも相談できるそうです。

予定時間ではとても話しきれないほど、意見交換が盛り上がりました。また、患者と医師とのコミュニケーションにまだ不十分な面があることもわかりました。

 
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