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2016年沿岸域総合管理ネットワーク会議2日目:ディスカッションとまとめ [2016年10月16日(Sun)]
海洋政策研究所が毎年開催している沿岸域総合管理ネットワーク会議は、「海を活かしたまちづくり」の実践モデルサイトにおける地方自治体などの担当者を対象として、勉強会とネットワークづくりを目的としています。

2016年度の初日(10月4日)は、寺島所長による趣旨説明のあと、沿岸域総合管理を東アジア各地で数十年実践されてきたチュア・ティア・エン博士による基調講演https://blog.canpan.info/oprficm/archive/415、そして、7ヶ所ある沿岸域総合管理実践モデルサイトと候補地による「海を活かしたまちづくり」の進捗状況の発表が行われました。https://blog.canpan.info/oprficm/archive/416

2日目(10月5日)のこの日、午前中は、省庁・関係機関から海を活かしたまちづくりに役立つ貴重な情報提供を戴きました。https://blog.canpan.info/oprficm/archive/417 午後には、参加者全員によるディスカッションが行われました。司会進行は、海洋政策研究所海洋調査研究部古川恵太部長です。
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志摩市、小浜市、備前市、宿毛湾、宮古市、竹富町、大村湾の各サイトからの出席者、そして、サイトでの実践を応援している有識者や大学関係者からも、次々と前向きな意見が出て、大変活溌なディスカッションとなりました。
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古川部長がそれら皆さんの意見をまとめつつ進行し、その場で、下記のようなリストを作成しましたので、ご紹介しておきます。

地域の活性化のために「発展」の方向性と「持続可能な開発」を獲得する
1)全員参加の「楽しい」仕組みづくりが大切。そのための包括的な議論が出来る場を行政の中につくることが必要。それが地域の活性化を促進する。

2)ICMの発展と地域の活性化の実現のために、
1. それを支える行政は、コモンズ(共)の仕事と認識し、自分の地域だけでなく他の地域も含め、関係者と相互に支え合い、お互いに認め合う姿勢で取り組むべき。行政も市民の一員である。

2. 協議会は、貪欲に明るい未来を志向し、やる気のある関係者を中心に、実行部隊(リーダー)を支えるものであるべき。

3.生業(なりわい)を支える里海を守り育て、生業の主体である漁業者が中心的な役割を担っていくことが大切である。

4.生業と切り離さない議論を行うことで、里海での成果が里山にも拡大して適用されることを期待する。

5. 地域の経済循環および交流経済循環を考えていくべき。(再生可能エネルギーを活用していくことにも配慮すべき)

6. 専門家、有識者は世界の動きや情報を地域に橋渡ししていくことができる。

7. 伝統知、経験知、科学知を結合して学び継承していくことが大切である。

3)ICMは、横断的な取組の推進という段階から、長期的な世代を超えた人材育成を考える段階に
発展してきた。海洋教育・リテラシーは大切であり、ICMをきっかけに、「気づき」をキーワードに、海洋教育をさらに発展させることができるのではないか。
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省庁・関係機関からの情報提供:2016ICMネットワーク会議2日目 [2016年10月12日(Wed)]
2016年10月5日(水)午前
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沿岸域総合管理ネットワーク会議2日目の午前中は、省庁・関係機関から沿岸域総合管理に関係する有益な情報提供が行われました。中央省庁の方々の地方自治体への思いが感じられた素晴らしい時間でした。具体的な連携も始まっており、今後の進展が楽しみです。

内閣官房
「わが国における海洋政策の推進について」
・海洋由来の海の恵み(食・エネルギー・鉱物資源など)と自然災害
・国と地方自治体の協力と役割分担
・国・県・市町村間の調整のためには若い担当者間の情報共有も重要

国土交通省
「地方創生の取り組みについて」
・新型交付金の紹介
・「地域の魅力のブランド化」と広い関係者と連携する「日本版DMO」の登録事例

環境省
「閉鎖性海域における環境保全について」
・閉鎖性海域における課題と対策、
・瀬戸内海環境保全特別措置法の改正、栄養塩の管理
・里海づくり活動と里海ネット
「つなげよう、支えよう森里川海プロジェクト 今後の展開について」
・生態系サービスの低下、ふれあいの機会の減少
・環境が社会を変えていく
・新しいライフスタイルの提唱、草の根の取り組み

農林水産省
「森・川・海のつながりを考える」
・縦割りを超える省庁同士の協力(国の機関も変わりつつある)
・水産多面的機能発揮対策事業の実施
・全国アマモサミットの応援

里海づくり研究会議
「地域と未来をつなぐ交流事業ー里海からの発信ー」
・民間ベースでの協力の推進
・アマモ場再生事例、全国アマモサミット(カキ殻活用による底質改善、アマモ場による物質循環の改善)、小・中学校連携によるアマモ場再生
・里海・里山ブランドへ

笹川平和財団
「海洋教育パイオニアスクールプログラム」
・海をテーマにした学びの支援
・日本財団・東京大学海洋アライアンス海洋教育研究センター・海洋政策研究所の共催事業
実践サイトからの報告:2016ICMネットワーク会議 [2016年10月11日(Tue)]
2016年10月4日(火)午後
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今年のネットワーク会議、午後に行われたサイトからの報告・情報提供。志摩市、小浜市、備前市、宿毛湾、宮古市、竹富町、大村湾、富山湾から発表が行われました。

志摩市:
志摩市政策推進部里海推進室浦中秀人室長「新しい里海創生によるまちづくり〜第2次計画へのステップアップ」
・市民一人ひとりが取組みに参加し、その恩恵を受けるために、取組みの優先事項をワークショップで検討。
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西尾新志摩市観光協会会長(里海創生推進協議会副会長)「志摩市における自然との調和を前提としたまちづくりの必要性について」
・観光で地域経済を回復。適正観光客数とは?適正な人口とは?
・適正数を示すことで行政の取組みを推進できる。質を高めることによる経済発展の可能性をさぐることが地域の魅力(御食つ国、海女など)の持続可能性につながる。

小浜市:
「小浜市における沿岸域総合管理の取組みについて」
小浜市産業部農林水産課畑中直樹課長補佐
・海のまちづくり協議会の開催と海のまちづくり計画の各事業の実施。市民参加の推進。地元の貴重な知恵の発掘と蓄積
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小浜市産業部農林水産課 中村亮介主事
・小浜市海を活かしたまちづくりー高校生・大学生も参加する未来会議との情報共有、未来会議の持続性、ネットワーク化へのほどよい支援

備前市:
日生町漁業協同組合天倉辰己専務理事「備前発里海・里山ブランドの創生〜地域と世代をつなげて〜」
・30年に亘る地域・世代を超えた連携によるアマモ場再生活動
・ストーリーと発信力を備えたブランドの創生
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備前市まちづくり部産業振興課 橋本誠二水産係主査「全国アマモサミットの開催とその後の展望」
・備前市総合計画、備前市まち・ひと・しごと創生総合戦略
・アマモサミット大会宣言→「備前発!里海・里山ブランド」に向けたまちづくり

宿毛湾(宿毛市・大月町):
宿毛市産業振興課谷本和哉課長補佐と大月町産業振興課蔦江太一水産振興係長
「宿毛湾の沿岸域総合管理の今後の進め方について」
・「宿毛湾はひとつ」横断的な振興策
・川上・川下連携の推進
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海洋研究開発機構アプリケーションラボ美山透主任研究員「海洋科学は宿毛湾沿岸域総合管理に貢献できるか?」
・黒潮研究による地元漁業者との連携
・海難防止などにも応用できるnet_sukumowan miyama.jpg

宮古市:
さんりくESD閉伊川大学校水木高志事務局長・永洞俊典事務局員「閉伊川大学校の取組み:なあどかすっぺす!子供たちの明日のために」
・流域を中心としたESD(持続可能な開発のための教育)、地域資源を活用した体験型環境学習の実施
・山と海の活動の連携
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東京海洋大学佐々木剛准教授「沿岸域管理を担う人材の育成を目指して」
・森川海学びネットワークシステムの構築、サーモンランド宮古宣言、食の本有的価値
・水圏環境コミュニケーション学
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沖縄県竹富町
竹富町役場企画財政課 小浜啓由課長補佐兼係長「竹富町海洋基本計画の現状」
・島嶼群からなる自治体としての地域的、自然環境、行政コスト等の課題
・竹富町海洋基本計画により竹富町の魅力を活かし、国の海洋政策に活かす
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竹富町役場商工観光課 通事太一郎課長補佐「世界自然遺産登録に向けた取り組み」
・包括的管理計画と地域の行動計画群の作成のための合意形成
・島嶼における流域と沿岸域(ドーナツ型からピザ型へ)

大村湾

長崎県環境部 地域環境課 山口正広課長「大村湾の現状および県の取組みについて」
・高い閉鎖性、穏やかな海面(海上空港・競艇場)
・負荷削減、浅場造成などを処方
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長崎県環境部 地域環境課 地域環境班 村井勝行係長 「第3期大村湾環境保全・活性化行動計画等について」
・「みらいにつなぐ”宝の海”大村湾」海の状態を監視することが大切
・「浜の記憶」人の情報も重要
・湾全体の市町の取組みに拡大していくことが大切

富山湾
美しい富山湾クラブ 高桑幸一理事・事務局長「美しい富山湾クラブ」
・世界で最も美しい湾クラブへの加盟、「美しい富山湾クラブ」の設立。
・環境保全・魅力発信、後継者育成、湾アップ提案の募集
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沿岸域総合管理ネットワーク会議2016 [2016年10月09日(Sun)]
2016年10月4日(火)
笹川平和財団海洋政策研究所では、意欲のある沿岸地方自治体とともに、沿岸域総合管理(海を活かしたまちづくり)の実践モデルサイト事業を行っています。2015年度までは、志摩市、小浜市、備前市、宿毛湾(宿毛市・大月町)、宮古市の5カ所をモデルサイトとしていましたが、2016年度からは沖縄県竹富町、長崎県大村湾が加わって7カ所となりました。沿岸域総合管理(海を活かしたまちづくり)について、さらに深く学び、実践的な情報を交換・共有するために、各モデルサイトから2名(志摩市は市の費用で追加1名)と、モデルサイト候補地の富山湾から1名が参加して、10月4日と5日の2日間にわたり、「沿岸域総合管理ネットワーク会議2016」を開催しました。こうしたネットワーク会議は2011年度に第1回を開催してから今回で6回目となります。
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初日のこの日は、まず寺島紘士海洋政策研究所長から挨拶と開催趣旨について説明が行われました。(https://blog.canpan.info/terashima/archive/1317 参照のこと)
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引き続き、東アジア各地で沿岸域総合管理を実践し、その豊かな経験から沿岸域総合管理をシステムとして確立したチュア・ティア・エン博士(東アジア海域環境管理パートナーシップPEMSEA名誉議長)が2時間におよぶ基調講演を行い、沿岸域総合管理の考え方や進め方について、説明しました。その中で、チュア博士は、「里海」「新しい里海」などは到達したい「ビジョン」であり、「沿岸域総合管理」はそうしたビジョンへ到達するための「手法」「プロセス」であることを明確に説明しました。

午後は、各サイトからの発表が行われ、それぞれの進捗状況を報告するとともに、悩みや今後進めていきたい方向などについて情報共有を行いました。その内容については、次のブログで報告します。
沿岸域総合管理ネットワーク会議2日目 [2015年10月23日(Fri)]
2015年10月7日
前日に続き、沿岸域総合管理ネットワーク会議が開催され、午前中は沿岸域総合管理のサイトからの発表の続きで備前市と宿毛湾(宿毛市・大月町)から取り組みの発表が行われました。
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備前市は、日生町漁業協同組合の天倉辰巳専務が30年間のアマモ再生活動「日生モデル」の成果、備前市まちづくり部営業課ブランド観光係の川平昌彦係長が備前市の観光、まちづくり部産業振興課水産係の橋本誠二主査が備前市沿岸域総合管理の取り組み、里海づくり研究会議の田中事務局長が来年備前市で行われる「全国アマモサミット」の準備状況を含め「アマモとカキの里海」を発表、広島大学の松田治名誉教授がコメントを述べました。故本田和士日生町漁協組合長の沿岸域総合管理への熱い思いを引き継いで、発表も熱く、心を動かされました。今後の展開が楽しみです。
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宿毛湾のサイトは宿毛市と大月町です。代表して大月町産業振興課の河野賢二課長補佐が宿毛市産業振興課大内淳平課長補佐を中心に作成されたパワーポイントを使い、第一次産業をを中心にダイビングなどの観光業と折り合いをつけている宿毛湾沿岸の産業や、宿毛湾での沿岸域総合管理研究会の取り組みについてなどを発表、宿毛湾の沿岸域総合管理の特徴について高知大学の深見公雄副学長が追加コメントを述べました。
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午後のセッションは、チュア博士によるコメントから始まり、その後の参加者全員によるフリーディスカッションの時間には、より高い実践レベルに向かうために乗り越えるべき具体的な問題や地方創生へ現在行われている沿岸域総合管理の実践をどう活かすかなども含めた質問やそれに対するアドバイスが述べられ、非常に活溌な意見交換が真剣に行われました。参加者の意識の高さが反映されて、実に充実した2日間となりました。
沿岸域総合管理ネットワーク会議開催(初日) [2015年10月19日(Mon)]
2015年10月6日。
笹川平和財団海洋政策研究所では、2010年度から沿岸域総合管理をまちづくりに活かしたいという意欲のある地方自治体とともに沿岸域総合管理実践(ICM)の活動を行っています。10月6日と10月7日の2日間にわたり、「沿岸域総合管理ネットワーク会議」を開催しました。
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志摩市・小浜市・備前市・宿毛湾・宮古市の5カ所のICMモデルサイトと今後ICMの導入を希望している長崎県・大村湾から、担当者とそれを支える研究者が参加し、実践から得た知見や課題を共有しました。
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初日の午前中は、最初に、海洋政策研究所寺島紘士所長が開会の挨拶と会議の趣旨、沿岸域総合管理の歴史と実践の意義をあらためて確認したあと、チュア・ティア・エン東アジア海域環境管理パートナーシップ(PEMSEA)名誉議長から50年間にわたる東アジア各地での沿岸域総合管理の実践から得た教訓を中心に基調講演を行いました。
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午後は、各サイトからの発表が行われ、最初は浦中秀人里海推進室課長代理と協議会会長の高山進三重大学名誉教授。志摩市は2013年から始まった沿岸域総合管理のPDCAサイクルの一巡目を来年度に終えます。従って、今年は、2期目の里海推進基本計画(沿岸域総合管理基本計画)策定作業を行っています。他のサイトからは、所属団体の代表で構成している志摩市の協議会での利害調整についてや、2期目の計画策定についてどのような改訂をしているか、海洋レジャーと漁業の調整、また、志摩市がすすめている里海学舎構想についてなど、ICM先進自治体の志摩市に質問が相次ぎました。
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2つ目の発表者はメンバーを絞り込んで比較的少人数の協議会を平成26年度に立ち上げた小浜市。農林水産課の御子柴北斗課長、NPO「海のゆりかごを育む会」代表の西野ひかる氏、福井県立大学の富永修教授から発表がありました。市長からの委嘱を受け、実際に動く人々による協議会、また、若者・女性の意見を受け止めやすい協議会にした、というポイントが紹介されました。また、協議会の下部組織として、高校生も参加する若者による「未来会議」を置き、未来の人たちが望むことを形にできる仕組みにしたとのことです。市の水をすべて地下水でまかなえるほど湧水が豊富な小浜市。陸域のみならず、海域での湧水の研究も行っています。他のサイトからは、「未来会議」についての質問が多く出ました。
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3つ目の発表者は宮古市のNPO閉伊川大学校の水木高志氏と森・川・海MANABIネットワークシステムの板橋麻里子氏で、それぞれの活動をわかりやすく紹介しました。さらに、当地でESD活動に取り組まれている東京海洋大学の佐々木剛教授が補足コメントを行いました。
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4つめの発表はモデルサイト候補地の長崎・大村湾で、長崎県環境部環境政策課の山下三郎課長が長崎県が策定した「第3期大村湾環境保全・活性化行動計画」の取組について発表。長崎県からは環境政策課の村井勝行係長、大村湾5市5町が加盟する大村湾沿岸議員連盟から田中秀和大村市市議会議員、城孝太郎大村市市議会議員も、発表および活発に議論に加わられました。
各サイトからの発表には、60分〜45分と十分に時間をとっていたつもりでしたが、白熱した質疑応答で、まったく時間が足りないほどでした。
ICMモデルサイトおよび候補サイトによるネットワーク会議(映像) [2014年08月16日(Sat)]
2014年7月4日。
東京・虎ノ門に、海洋政策研究財団とともに沿岸域総合管理を実践している志摩市、小浜市、備前市、宮古市、宿毛湾(宿毛市と大月町)のモデルサイトおよび導入を希望をしている長崎県からそれぞれの担当者、総合海洋政策本部事務局から内閣参事官が一堂に会して、意見交換を行いました。成果や乗り越えるべき課題が具体的になり、熱のこもった議論の交換されました。そのようすを映像で是非、ご覧下さい。

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沿岸域総合管理モデルサイトのネットワーク会議開催 [2014年07月09日(Wed)]
2014 年7月4日(金)
沿岸域総合管理シンポジウムに引き続き、海洋政策研究財団と沿岸域総合管理の実践に取り組んでいるモデルサイト関係者、取組を希望している地方自治体関係者が一堂に会する、沿岸域総合管理ネットワーク会議が開かれました。
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最初に、各サイトからそれぞれの取組の進捗状況や、その中で見えてきた課題などが報告されました。
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志摩市では、既に市の総合計画に位置づけられ、「里海推進室」という担当部署もでき、協議会が立ち上がっています。現在は、市民ひとりひとりにビジョンを共有してもらうこと、地域のブランド化の推進、利害関係者との調整能力のレベルアップなどが課題として認識されています。
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小浜市は、昨年度、沿岸域総合管理研究会の成果として、沿岸域総合管理のあり方について、協議会の設立などを含む提言書を作成し、市長に提出しました。市長はこれを受け止め、市民にメッセージを送るとともに、市として今年度からの協議会立ち上げに向けて検討を進めています。
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備前市は、岡山県、日生町漁協と連携し、アマモ場の再生、海洋牧場のルール作りなどを進めるとともに、市の総合計画への「沿岸域の総合管理」の記載、「里海づくり」政策監の任命といった対応を進めてきました。現在は、備前市における沿岸域総合管理の進め方、活動の内容について検討を進めています。
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宿毛湾では、当財団と宿毛市、大月町が連携し開催してきた沿岸域総合管理研究会と海の健康診断評価委員会での検討内容について、報告書として共有し、沿岸域総合管理の次にステップに入るための検討を進めています。具体の活動として、市民が行える持続的な環境・生物調査なども模索しています。
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宮古市は、復興が最優先ですが、市の総合計画を策定中で、沿岸域総合管理の手法・考え方をどのように盛り込むかを検討しています。また、合併して市域となった山間部の地域の人々によって海辺で津波による被災を受けた人々が助けられたということもあり、森・里・海辺に住む人々の連携が模索されています。参加していた志摩市長から「復興の里海」という考え方もあるのではないか、という提案もなされました。
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閉鎖性海域の大村湾一帯を沿岸域総合管理の適用候補地とする長崎県は、県・市・ステークホルダーの連携により、第3期の大村湾環境保全・活性化行動計画を策定しました。こうした計画を効果的に実施に移していくため、沿岸域総合管理の手法の適用を検討しています。

2010年に沿岸域総合管理モデルプロジェクトを始めてから5年目。各地域の発表は、一段と具体性を帯び、お互いにさまざまな質問や提案を忌憚なく交換できる間柄に育ってきたようです。
ICMパワーアップ研修会(第2日目) [2013年11月29日(Fri)]
2013年11月26日(火)。
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沿岸域総合管理パワーアップ研修会の2日目は、実践を始めた各サイトからの参加者が、サイトでの進捗状況報告と現時点で乗り越えたいと思っている課題について、チュア・ティア・エン博士や海洋政策研究財団の寺島紘士常務理事、アドバイザーとして参加された沿岸域総合管理モデル実施委員会委員長の來生新教授、日本海洋政策学会学術委員会委員長の坂元茂樹教授らと意見交換を行いました。
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最初の発表は、志摩市農林水産部里海推進室の橋本勝弘政策係長。志摩市が沿岸域総合管理の手法を用いて「新しい里海創生によるまちづくり」事業を立ち上げるに至った経緯、志摩市里海創生基本計画http://www.city.shima.mie.jp/kurashi/cat147/post_215/の策定内容、さまざまな関係団体の代表がひとつのテーブルを囲み、昨年度から定期的に開催されている「里海創生推進協議会」での討議内容等が紹介されました。(参照:新しい里海のまち・志摩ホームページ http://www.satoumi-shima.jp/) 取組を進める上での課題としては、@市民や関係団体の理解の増進、A自治体職員・関係者の能力向上、B財源の確保の3点が挙げられました。
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二番目の発表は、小浜市産業部次長兼農林水産課の河野研課長。小浜市沿岸域の自然・社会の基本的状況を知るために、昨年度、小浜市沿岸域総合管理研究会の開催と併行して実施した「海の健康診断」の結果を踏まえ、本年度の研究会では、来年度の協議会の設立を目標に、研究会からの提言をまとめつつあり、「自然環境の保全」「自然の恵みの産業、教育等への利用」「関係者間の連携強化」「望ましい沿岸域の姿の実現」等、その概要が紹介されました。また、研究会運営にあたってのこれまでの反省点と共に、すでに限界まで削減されている予算と人員の中で、どのように沿岸域総合管理を推進していくか、という今後の行政上の懸念が述べられました。
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三番目は、「岡山県備前市日生町における沿岸域管理に向けた取組について」という題で岡山県農林水産部水産課の後藤真樹主任の発表。漁協を中心としたアマモ場再生活動と岡山県の海洋牧場の整備、備前市沿岸域総合管理研究会での検討内容やその広がりについての紹介のあと、備前市まちづくり部産業振興課の橋本誠二水産係主査から今年度に策定された備前市総合計画で沿岸域総合管理について記述されたことが発表され、備前市における沿岸域総合管理の進展に対する期待が高まりました。
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宿毛市産業振興課の酒谷幸夫課長補佐からは、「宿毛湾の取り組みと今後の展開について」というタイトルで発表がありました。宿毛湾は、珊瑚礁など多種多様な海洋生物に恵まれ、養殖も含めて高知県の漁獲高に大きく貢献している豊かな湾です。現在、沿岸域総合管理研究会の中で、海の状況把握を行って沿岸域の現状の確認する一方で、海域の漁業と陸域の農林業が連係して環境・資源保全および観光など産業の振興に向けて話合えるような、継続的な沿岸域総合管理をめざして協議会の発足に向けて検討していることが述べられました
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アドバイザー、オブザーバーの皆さんも交え、沿岸域総合管理をすすめるためのスタッフの能力構築やファシリテーター機能の育成など具体的な共通課題について、忌憚のない意見の交換がなされ、パワーアップセミナーの名に負けない充実したワークショップとなりました。
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ICMパワーアップ研修会(第1日目) [2013年11月28日(Thu)]
2013年11月25日(月)。
前PEMSEA(東アジア海洋環境管理パートナーシップ)議長のチュア・ティア・エン博士による沿岸域総合管理(ICM)研修会を開催しました。海洋政策研究財団による沿岸域総合管理モデル事業が、今年から第2期目の「実践の段階」に入ったことを受け、今年の講義は「沿岸域総合管理パワーアップ研修会」と称して5ヵ所のモデルサイト(志摩市・備前市・小浜市・宿毛湾・宮古市)からの参加者を中心に、実践上の課題などを含め、活発な意見交換をしやすいプログラムにしました。
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初日は、最初に、海洋政策研究財団寺島紘士常務理事より、海洋基本法が掲げる沿岸域総合管理の内容、期待される効果および研修会への期待について話がありました。その後、チュア博士による「ICMシステム:持続可能な沿岸域開発のためのアプローチ」というタイトルでの講義。チュア博士は東アジアで多様な政治・経済体制における数多くの沿岸の地方自治体でICM実践を指導されてきましたが、その20年以上にも及ぶ体験から抽出されシステム化されたノウハウ、更に、実践的で貴重な叡智が伝授されました。
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内容は、ICMの歴史、コンセプト、実践のためのガイドライン、地方自治体の役割、政策の方向付け、法制化、長期戦略・行動計画立案、市民の意識向上の促進、情報管理システムの開発、資金調達の方法など多岐にわたり、各サイトからの出席者からは実践の進捗状況に即して、具体的でストレートな質問が次々と出され、熱い意見交換となりました。
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