2015年10月6日。
笹川平和財団海洋政策研究所では、2010年度から沿岸域総合管理をまちづくりに活かしたいという意欲のある地方自治体とともに沿岸域総合管理実践(ICM)の活動を行っています。10月6日と10月7日の2日間にわたり、「沿岸域総合管理ネットワーク会議」を開催しました。
志摩市・小浜市・備前市・宿毛湾・宮古市の5カ所のICMモデルサイトと今後ICMの導入を希望している長崎県・大村湾から、担当者とそれを支える研究者が参加し、実践から得た知見や課題を共有しました。
初日の午前中は、最初に、海洋政策研究所寺島紘士所長が開会の挨拶と会議の趣旨、沿岸域総合管理の歴史と実践の意義をあらためて確認したあと、チュア・ティア・エン東アジア海域環境管理パートナーシップ(PEMSEA)名誉議長から50年間にわたる東アジア各地での沿岸域総合管理の実践から得た教訓を中心に基調講演を行いました。

午後は、各サイトからの発表が行われ、最初は浦中秀人里海推進室課長代理と協議会会長の高山進三重大学名誉教授。志摩市は2013年から始まった沿岸域総合管理のPDCAサイクルの一巡目を来年度に終えます。従って、今年は、2期目の里海推進基本計画(沿岸域総合管理基本計画)策定作業を行っています。他のサイトからは、所属団体の代表で構成している志摩市の協議会での利害調整についてや、2期目の計画策定についてどのような改訂をしているか、海洋レジャーと漁業の調整、また、志摩市がすすめている里海学舎構想についてなど、ICM先進自治体の志摩市に質問が相次ぎました。
2つ目の発表者はメンバーを絞り込んで比較的少人数の協議会を平成26年度に立ち上げた小浜市。農林水産課の御子柴北斗課長、NPO「海のゆりかごを育む会」代表の西野ひかる氏、福井県立大学の富永修教授から発表がありました。市長からの委嘱を受け、実際に動く人々による協議会、また、若者・女性の意見を受け止めやすい協議会にした、というポイントが紹介されました。また、協議会の下部組織として、高校生も参加する若者による「未来会議」を置き、未来の人たちが望むことを形にできる仕組みにしたとのことです。市の水をすべて地下水でまかなえるほど湧水が豊富な小浜市。陸域のみならず、海域での湧水の研究も行っています。他のサイトからは、「未来会議」についての質問が多く出ました。
3つ目の発表者は宮古市のNPO閉伊川大学校の水木高志氏と森・川・海MANABIネットワークシステムの板橋麻里子氏で、それぞれの活動をわかりやすく紹介しました。さらに、当地でESD活動に取り組まれている東京海洋大学の佐々木剛教授が補足コメントを行いました。

4つめの発表はモデルサイト候補地の長崎・大村湾で、長崎県環境部環境政策課の山下三郎課長が長崎県が策定した「第3期大村湾環境保全・活性化行動計画」の取組について発表。長崎県からは環境政策課の村井勝行係長、大村湾5市5町が加盟する大村湾沿岸議員連盟から田中秀和大村市市議会議員、城孝太郎大村市市議会議員も、発表および活発に議論に加わられました。
各サイトからの発表には、60分〜45分と十分に時間をとっていたつもりでしたが、白熱した質疑応答で、まったく時間が足りないほどでした。