海のジグソーピース No.177 <海洋と気候変動:COVID-19危機からのBlue Recoveryを目指して>
[2020年05月13日(Wed)]
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の影響は、世界中のあらゆる人々・社会・セクターに及んでいます。そのような中、海洋政策研究所が長年取り組んでいる気候変動問題関連では、COVID-19感染拡大がもたらす経済活動の縮小等により、皮肉にも、2020年の二酸化炭素(CO2)排出量は当初予測値に比べ、飛躍的に減少するとの見方が発表されています(下図参照)。
ただ、この減少はCOVID-19危機がもたらした一過性のものであり、これから世界が目指すのは経済の回復です。世界の気候リーダーからは、COVID-19による危機を持続可能な形(sustainable)で乗り越えようというメッセージが発信されています。例年春頃(国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の補助機関会合(SB)の直前)に主要先進国や途上国の閣僚級が集まって開催される「ペーターズベルク気候対話」は、今年は初のオンライン開催となり、そこでドイツの環境大臣は「COVID-19危機以前の世界よりも気候変動に強靭(resilient)で気候に配慮した(climate-friendly)経済の世界に向かうべき」として”green recovery”を掲げました。COVID-19によって悪化した経済の回復と気候変動対策推進はトレードオフではなく、同時に行えるものだという強いメッセージです。
例年ペーターズベルク気候対話の後に開催されるUNFCCCのSB(例年5~6月頃開催)と締約国会議(COP)(例年11~12月開催)については、当研究所も毎年オブザーバーとして出席していますが、今年は第52回補助機関会合(SB52)が6月から10月に、第26回締約国会議(COP26)は11月から2021年(時期未定)に、それぞれ延期されました。
SB52では「海洋と気候の対話(Dialogue on ocean and climate)」(以下、海洋対話)が開催されることが決まっています。海洋対話の詳細についてはまだ明らかになっていませんが、3月末までを〆切としてUNFCCC締約国等に意見書の提出が要請されており、そこで出された意見を踏まえて詳細が決定されるはずです。5月7日現在、UNFCCCのウェブサイトでは、海洋政策研究所が提出したものも含む、合計41件(14か国・4国連機関・IGOs/NGOs/非認証団体で計23団体)の意見書が公開されています。
各意見書では、海洋対話の形式、扱うべきテーマ、次のステップ等について様々な意見が表明されています。14の国には、太平洋島嶼国、ノルウェーなどとともに日本も含まれており、UNFCCCと生物多様性条約のシナジーの重要性等を強調しています。10月の海洋対話において建設的な議論が行われるよう、海洋政策研究所としても、ひきつづき積極的に議論に貢献していきたいと考えています。
海のシンクタンクとして、“green recovery”にくわえて “blue recovery”、すなわち健全な海洋を保った上でのCOVID-19危機の克服を、我々は考えていかねばなりません。
海洋政策研究部 藤井 麻衣





