海洋基本法制定に関わった国会議員・有識者等が集う第12回海洋基本法フォローアップ研究会が下記により開催された。
日時: 平成23年5月27日(金) 8:00〜10:00
場所: ホテルニューオータニ 「翠鳳の間」
議題: (1)東日本大震災復興に関する提案
(2)東日本大震災復興に関する海洋立国の視点からの緊急提言
研究会の運営体制は次のとおり(敬称省略)。
代表世話人 川端達夫、共同代表 中川秀直、座長 前原誠司、共同座長 大口善徳、小野寺五典、細野豪志
今回の研究会は、東日本大震災復興に関して海洋立国の視点から検討した。まず、次の6名の専門家がそれぞれの専門分野における、復興にあたって実施すべき海洋に関する施策・プロジェクトについて発表した。
放送大学副学長 來生 新 氏
東京大学大学院理学系研究科教授・研究科長 山形 俊男 氏
東京大学大気海洋研究所教授 道田 豊 氏
東京海洋大学副学長 竹内 俊郎 氏
東京大学生産技術研究所教授 木下 健 氏
(社) 海洋産業研究会常務理事 中原 裕幸 氏
その後、質疑・討論を行って、「東日本大震災復興に関する海洋立国の視点からの緊急提言」をとりまとめた。同提言は直ちに川端代表世話人、中川世話人・共同代表等から枝野官房長官に提出された。日本財団笹川会長、海洋政策研究財団秋山昌廣会長、寺島紘士常務理事も同席した。
緊急提言は7つの提言からなり、その要旨は以下のとおり。提言本文は添付資料
を参照。
1 陸域・海域を対象とした総合的な沿岸域の復旧・復興
被災地域は海とのかかわりが深く、その復興は、陸域・海域を一体的に捉えた「沿岸域
復興総合計画」を策定して取り組むべき。被災地域の県・市町村は「○○沿岸域復興総
合計画」を策定。地先水面は市町村区域に編入し、地方交付税の算定基礎とする。森川
海を一体的、計画的に管理すべき。
2 海溝型地震・津波の早期検知・予測・警報システムの構築
特に早い段階から津波の正確な予測・警報ができるよう、広域的観測網(広帯域強
震計、沖合津波計)を整備する。
3 大震災後の持続的海洋調査・観測・監視システムの構築
三陸沿岸海域は、巨大津波で大きな撹乱を受け、生態系への影響も甚大。また、福島
原発事故による放射性物質の海域流入は、海洋の広域に拡散、さらに生態系に負の影
響を与える懸念。そこで、水産業を支える沿岸海洋生態系に関し、撹乱の実態把握、回
復過程の解明を関係機関が連携して、直ちに調査研究を始めるべき。また、太平洋海域
の広域的な海洋観測・監視を、大学と研究所が統合的かつ長期に実施し、科学的調査
研究も行うべき。放射性物質の海洋流入に関し、海水や魚介類の観測・監視を広域かつ
系統的に行うとともに、モデルの開発、食物連鎖を通じた移動濃縮の研究と評価をすべ
き。これらを実施するための、観測船、調査船、海面高度計衛星の確保、AUV・ROVなど
の導入を推進する。
4 被災地域の水産業の復興
漁港・漁場・漁村の災害復旧と瓦礫の撤去、養殖の施設やシステムの復旧が必要。
また、壊滅的被害と漁業者の高齢化を考慮した、漁協中心あるいは企業経営の導入な
どによる漁業の再建の取り組みを推進すべき。
5 海洋における再生可能エネルギー等の開発及び利用の推進
大震災被災地は、海洋再生エネルギーの開発・利用に高い可能性があることに鑑み、
洋上風力発電導入促進などを念頭に「海洋再生可能エネルギー利用推進計画」を策定
すべき。風と波のエネルギーポテンシャルの高い地方の沖合に総合実証実験海域を設
置する。「漁業協調型洋上風力発電」の早期実現。需要増大に対応し大陸棚の天然ガ
ス・メタンハイドレード開発を加速すべき。離島・半島などでエネルギーの地産・地消およ
び地域活性化の効果のある洋上風力発電の導入の促進。
6 震災復旧・復興のためのガレキの撤去と活用
漁港、沿岸、沖合のガレキの詳細調査を実施し、海域管理者が撤去。また、ガレキ処理
の一環として、津波減災用のバリア・アイランドや人工漁礁群を造成する。
7 浮体の緊急対応・復旧への活用
新たに外洋航行可能な浮体式広域防災基地を三大港湾に整備し、災害時にはこれを
切り離して被災地沿岸に曳航して活用する。また、下水処理、海水淡水化、発電など異
なる機能を持つ各種浮体を各地の港湾に整備し、災害時に被災地に曳航して活用する。