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海洋政策研究所ブログ

海洋の総合管理や海事産業の持続可能な発展のために、海洋関係事業及び海事関係事業において、相互に関連を深めながら国際性を高め、社会への貢献に資する政策等の実現を目指して各種事業を展開しています。


海のジグソーピースNo. 236 <UNEA-5:世界初プラスチック汚染に向けた国際協定の策定へ> [2022年03月23日(Wed)]

 現在、プラスチック製品は我々にとって日常生活の必需品です。1950年に世界のプラスチックの生産量は200万トンでしたが、2017年の総生産量は3.5億トンと大きく増加し、2040年までにその生産量はさらに2倍になると予想されています。国連環境計画のウェブサイトによると、1950年から2017年まで92億トンのプラスチックが生産され、そのうち約70億トンがプラスチックごみになったとのことです。また、Jambeck 2015によると、海洋に流出しているプラスチックごみの量は、世界全体で年間およそ800万トンにのぼるといいます。プラスチック汚染はすでに地球規模の環境問題となっています。

 さて、国連環境総会(UNEA)は、国連環境計画(UNEP)の意思決定機関であり、原則として2年に1回開催される国際会議です。2022年まで合計5回のUNEAが開催され、毎回プラスチックごみに関する議論がなされてきました。

 COVID-19の影響を受け、第5回のUNEA(UNEA-5)は2段階のアプローチで開催される(主語がUNEA-5なので、「開催される」が正しい)こととなり、“Strengthening Actions for Nature to Achieve the Sustainable Development Goals”というメインテーマで、持続可能な開発目標(SDGs)を達成するため、Nature-based solutions(自然に根差した解決策)を求めていました。UNEA-5の第1回会合(UNEA-5.1)は 2021年2月にオンラインで実施され、約150か国の代表、市民団体、NGOなどが参加し、主に緊急を要する手続き上の決定が行われました。そして、2022年2月28日から3月2日まで第2回会合(UNEA-5.2)がハイブリッド形式で開催され、約175か国の代表及びステークホルダー、メジャーグループなどが参加し、プラスチック汚染をはじめ、生態系の回復、生物多様性の保全、気候変動の緩和・適応などに関する14本の決議が採択されました(写真)。

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UNEA議長による決議を採択する様子(上)と
プラスチック汚染決議を採択した後に各国代表が喝采する様子(下)
(出典:国連環境計画ウェブサイト)

 その中、歴史的な決議として「プラスチック汚染を無くす:法的拘束力を有する国際文書にむけて(End plastic pollution: Towards an international legally binding instrument)」が採択され、生産から、設計、処分に至るまで、プラスチックのライフサイクル全体を網羅的に考慮すべきことが明記されました。また、2024年までプラスチック汚染に関する法的拘束力を有する国際協定を作成するため、2022年に政府間交渉委員会(Intergovernmental Negotiating Committee:INC)の設立を求めました。INCは2022年の後半から作業を開始し、法的拘束力を有する文書の作成が期待されています。この文書では、プラスチックのフルライフサイクルにおいて多様な代替品の提案、再利用可能またはリサイクル可能な製品や材料の設計、そして国際協力の強化といった内容を反映するべきことが要求されました。

 長い間、プラスチック汚染に特化した国際条約の策定が期待されてきましたが、UNEPがリードする形でようやく今回のUNEA-5.2において世界初のプラスチック汚染を無くすための法的拘束力を有する国際協定の策定に着手しました。UNEPの事務局長Inger Andersenより、この協定は、パリ協定以降の、最も重要な国際的な多国間の環境協定でもあることが強調されました。私が『海の論考(OPRI Perspectives)』に寄稿した「国連環境総会(UNEA)における海洋プラスチックへの取組と今後の展望」にも書いたように、今、世界中の国々では海洋プラスチック問題に対して様々な取組がなされています。これらの取組を受けて今後、海洋プラスチックに関する国際的な科学データの継続的収集、観測技術の促進、各国間の関連情報の交換、グローバルな専門家の意見交換、あるいは既存の取組の枠を超えた革新的なソリューションの開発なども一層進むと考えられます。世界の国々や人々が努力や知恵を結集し海洋プラスチック問題の解決に取り組む社会が、そう遠くない将来に実現することを期待しています。

海洋政策研究所 朱 夢瑶

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