海のジグソーピース No.218 <よりサステナブルなシーフードを>
[2021年05月27日(Thu)]
皆さんはスーパーで魚の切り身や総菜を買うときに、何を基準に選ぶでしょうか。鮮度?値段?美味しそうか、そうでないか?つい最近あったエピソードを皆さんと共有したいと思います。現在の職場では、たびたび「違法・無報告・無規制漁業」(英語でいうとIllegal・Unreported・Unregulated – それぞれの頭文字を取って、IUU漁業)や「持続可能に獲られた水産物」が話題にのぼります。そのためか、スーパーに行くと「マリンエコラベル」や最近流行りの「SDGs(国連の持続可能な開発目標)」というワードに敏感になったりします。つい先日、久々に父とスーパーに行く機会がありました。一緒につまみでも買って、酒でも飲もうか、といった具合です。マリンエコラベル付きの魚の総菜を見つけたとき、「これ買おうよ!マリンエコラベル付きだよ!」と言ったら、父は「なにそれ?高いし、量も少ないから他のにしよ」とのこと。「マリンエコラベルって、やっぱり知られていないのかな」というのが、私のふとした思いでした(実際に消費者全体を調査したわけではないのですが…)。皆さんは、マリンエコラベルをご存じでしょうか。
マリンエコラベルは、その魚が持続漁業な漁業で獲られたことを証明するもので、代表的なものにはMarine Stewardship Council(海洋管理協議会)によるMSC認証 – 海のエコラベルがあります(図1)。MSCは、魚が水産資源の持続可能性が確保された方法で漁獲されているか、漁業が依存する生態系を維持した方法で漁獲されているか、また、地域・国内・国際ルールに則った方法で漁獲されているかを基準として、水産物に付与されるものです(MSCホームページ参照)。もしかしたら、皆さんも目にしたことがあるかも知れませんが、イオンの自社ブランド「トップバリュ」でも、MCS認証を受けた商品が販売されています(図2)。また、最近では日本の臼福本店(宮城県気仙沼を拠点に、遠洋マグロ漁業を展開)がタイセイヨウクロマグロ漁業で世界初のMSC認証を取得しました。先日、私は幸運にも、臼福本店代表取締役の臼井壯太朗氏から、MSC認証取得までの長い道のりに関するお話を伺う機会に恵まれました。そこで、臼井氏の東日本大震災で被災された経験、そこからどのように復興したか、そして、これらを通して思いを強くされた持続可能な資源・活力のある漁業を若い世代に残していこうという想いに感銘を受けました。
こうしたマリンエコラベルの普及は、直接的にも、間接的にもIUU漁業の存在を排除することにつながりますし、SDGsの14番目の目標である「海の豊かさを守ろう」にも貢献します。日本では2020年12月に水産流通適正化法(正式名称は特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律)が公布され、2022年12月に施行されます。この法律は、水産物がIUU漁業に由来しないことであることを証明するために、関係業者の間で情報の伝達・記録を義務づけるものです。このように、市場から持続可能な水産物を普及する仕組みが構築されつつあります。
しかし、一番重要なのは、やはり消費者が「持続可能性」をどれほど気にかけて、魚をスーパーで買うかということであるのかもしれません。家族にもまた、マリンエコラベル付きの魚の商品をすすめてみたいと思いながら、このブログの筆をとった次第です。ちなみに、臼井氏には当研究所の『Ocean Newsletter』にも「大西洋クロマグロに関する世界初のMSC認証取得」というタイトルでご寄稿いただいています。こちらもぜひご覧下さい。
海洋政策研究部 藤井 巌