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海洋政策研究所ブログ

海洋の総合管理や海事産業の持続可能な発展のために、海洋関係事業及び海事関係事業において、相互に関連を深めながら国際性を高め、社会への貢献に資する政策等の実現を目指して各種事業を展開しています。


海のジグソーピース No.214 <恰好いい!海の男 [2021年04月21日(Wed)]

 アメリカ海洋大気庁海洋大気研究所(NOAA, Oceanic and Atmospheric Research)のCraig McLeanさんは私の親友の一人です。写真を見てもお分かりのように、非常に男前で実際にダンディーな恰好いい方です。

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Craig McLeanさんのポートレート(出典:NOAA

 大きな国際会議の檀上で披露される説得力満点のスピーチにはいつも聞き惚れてしまいます。とにかく“恰好いい”方です。また、皆様もご存じかもしれませんが、Craig McLeanさんはNOAAの重鎮であるだけでなく、言わずと知れた国際海洋科学の重鎮でもあります。今年の1月1日から始まった「国連海洋科学の10年(Ocean Decade)」についてMcLeanさんは、



と語っています。

 McLeanさんと私が気心の知れた話をするようになったきっかけは、私の前職である海洋研究開発機構(JAMSTEC)とNOAAの定期会合のときでした。JAMSTECとNOAAは、長年に渡って連携協定(MOU)を結んでいる関係にあり、日米を交互に定期連絡会を開催してきました。しかし私がJAMSTECの理事になって初めて団長として参加したときの印象は、「形式的なことばかりで、何ら提携しているメリットも中身もない。」の一言でした。勿論、伝統ある(?)JAMSTEC-NOAA定期会合ですから、クロージングでは真反対の美辞麗句を並べました。

 夜の懇親会ではNOAA側の団長であったMcLeanさんと私の座席が並びでした。最初は、日米情勢、フクシマの話、食事に出てきた肉の話、ワインの話などが弾みました。頃合いを見計らって、私から単刀直入に「この定期会合はずっとこんなスタイルだったのですか?」と尋ねてみました。その後の会話は、

McLeanさん(CM):質問の意図は?
筆者(HS):それぞれの機関で進めている研究成果を陳列しているだけで、MOUを結んで定期会合をしている意味が全く見えない。
CM:全く同感だ。
HS:これだけの人数で日本に来る時間と予算の無駄遣いだと思わないか?
CM:無駄かどうかは一概に言えないが、ずっとこんな感じでやってきている。
HS:では、生産的だと思うか?
CM:正直に言えば、非生産的だ。
HS:だとすると、やり方もスタイルも全部変えたいが良いか?
CM:提案次第だ。でも、日本人はそういうやり方を望まないのでは?

などと、ややシリアスになってきたところで、とある方に、「楽しい懇親の場でそんなことを話すべきではない。」と日本語で会話を遮られため、雰囲気を察したMcLeanが「続きはまた別の場で」となって別れました。

 しかし、その後、何度も2人で話し合い、JAMSTECとNOAAの関係を完全に新しいスキームに移行させ、MOU下に共同研究計画を明確に立てて、その進捗を確認し、次の戦略を立てるための定期会合へと変え、毎回真剣勝負の場としました。そして、ある国際会議でお会いしたときに、私からMcLeanさんを昼食に誘いました。私にとっては、そのときこそが、まさに楽しい懇親の場でした。お互いに今の仕事に至る歴史なども語り合いました。

 男前のMcLeanさんの最初の職業は、NOAA調査船の船乗りだったそうです。船乗りになったきっかけは、 少年時代にお父さんに連れられて、1976年に開催されたアメリカ建国200周年記念行事でハドソン川を帆走した初代日本丸を見学したことだそうです。「恰好いい!」日本丸の勇壮にすっかり魅惑されて、その場で「将来は船乗りになろう!」と決心されたそうです。それから海に人生の全てを捧げて今の自分がある、と話してくれたときのMcLeanさんの目の輝きは忘れられません。

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1976年ハドソン川の日本丸(上)(出典:Nick Dewolf Photo Archive)と
現在の日本丸(下)(筆者撮影)

 そんなMcLeanさんにJAMSTECの理事を辞めてOPRIに転職する話を打ち明けたときに、電子メイルでこんなメッセージをもらいました。

Dear Hide

I am very saddened by this news. I have found great admiration and respect for your vision, your solid leadership, and the depth of our friendship. I have always found your ideas very refreshing and found myself easily convinced of their merit. (中略)
You and I shall keep our momentum going and reinforce your move to OPRI as a positive opportunity as we might continue our advocacy toward joint exploration of the ocean and the comfort in the belief that we will find solutions for society in the coming Ocean Decade. I value your friendship, and appreciate your sharing this news with me.
With my best wishes for your success,
Craig,

<日本語訳>
親愛なる秀さんへ

 このたびの知らせを受け、大変悲しく思っています。 私はあなたのビジョン、確固たるリーダーシップ、そして私たちの友情の深さに大きな賞賛と敬意を抱いています。 私はいつも、あなたのアイデアがとても新鮮で、その良さを簡単に納得することができました。(中略)あなたと私は、この流れを維持するとともに、OPRIに移籍したことを絶好の機会と捉え、来るべき「国連海洋科学の10年」が社会のための解決策をもたらすと信じて、海洋と快適さの共同研究に向けた声掛けを続けたいと思います。あなたの友情を大切にし、このニュースを私に伝えてくれたことに感謝します。
あなたの成功を心から祈っています。
クレイグ

 恰好いい海の男からこんな言葉をかけてもらって年甲斐もなく心が揺すぶられました。McLeanさんが日本丸の勇壮を見て感動した気持ちに近かったかもしれません。「よし、これから自分は、OPRIが世界一恰好いいシンクタンクになることを目標にするぞ!」決心したわけです!

海洋政策研究所長 阪口 秀

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