海のジグソーピース No.206 <ユース・サミットを終えて>
[2021年01月06日(Wed)]
新年あけましておめでとうございます。昨年は新型コロナウイルス感染症に振り回された1年でしたが、今年こそは平和な1年であって欲しいと思います。
さて、2020年12月6日、7日の2日間、オンラインで開催された「2020 Youth Summit for the UN Ocean Decade」に参加しました。このサミットは50以上の国・地域から200名以上の13歳から25歳の若者が集まり、2021年から開始する国連海洋科学の10年に向けて、現在行われている科学研究や文化的研究の紹介、先住民族のリーダーや各国政府の著名人による講演などを通じて、世界の課題や解決策について学ぶというものです。また、最後には参加したユースによるプレゼンテーションがあり、若者ならではの視点で問題解決に向けて話し合いました(サミットの概要はこちらをご覧ください)。
(写真1)ユース・サミットでの発表の様子(Mr. Yonatanによるプレゼンテーション)
今回の会議に参加して分かったのは、世界には環境問題に対して高い意識を持った若者が沢山いることです。プレゼンターの中には、私がこれまで接したことの無いような意見を持った方がいました。たとえば、水耕栽培によって新鮮な野菜を食べてほしくて、スナックは絶対に食べるなと話している人や、民族が信じている話をしてくれた人もいました。また、日常ではない体験をしてきた人も沢山いました。津波で家族を亡くした女性や、どこからか海に流れてきたオイルを清掃した女の子など、聞いたことがあったとしても遠く感じていましたが、実際にそれらの人々を目の前にするとより現実味を帯びて聞こえてきました。
私を含め日本人はある意味で論理的で、冷静に物事を見るところがあると思いますが、それと同時に直感的な行動が普段少ないかないとも思います。このサミットでは、どちらかというと直感的に動けるユースが多く、印象的なプレゼンほど盛り上がっていました。もちろん、サミットを通して専門的な知識を得られましたが、それよりも個々人が実際に体験したことの共有が、本当に心に刺さりました。このような姿勢は、日本人も培っていく必要があると思いました。
サミットでは海洋環境の問題に対する話題が多いと思っていましたが、実際はSDGs全体の話も多く、人種差別であったり、貧困であったり、土壌汚染であったりと様々な問題を扱っていました。また、それらは複雑に関係しあっていて、一つだけで考えられる問題ではないことも分かりました。
この参加経験を通して私が感じたのは、様々な環境問題を考えるうえで、感受性が豊かな幼少期の特別な体験や、自然を肌で感じる機会など、ネットではできない実体験をするのが大切ということです。私が小学生の頃、親は頻繁に千葉県白浜町に連れて行ってくれました。外房の海は透き通るほどきれいで、岩場は多くの生物の隠れ場になっていました。岩場で釣りをしたり、天草(てんぐさ)を取って寒天を作ったり、岩にぶつかる波で遊んでみたり、様々な経験をしました。そんな海をより学びたいと思い、大学では、ダイビング・ライフセービング・ウォーターセーフティー実習のティーチングアシスタントをし、海洋学を学ぶためハワイ大学へ留学もしました。そして今年の4月に海洋政策研究所の一員となりました。
今回のサミットでは多くのユースと知り合いました。そのSNSを見ると、彼らもまた環境問題や海に関する投稿をしていたり、サーフィンをしていたり、身近に環境問題を考える機会が沢山あるように思いました。しかし、現代社会とくにコロナ禍にあっては、そのような機会が少ないように思います。やはり、教育として若い頃に様々な現場体験をすることが大切であると思いました。そこから、海洋に興味を持つ若者が増え、健全な海洋が未来に続けば良いと私は思います。
(写真2)ウォーターセーフティー実習、ボードを使った救助練習の様子(著者撮影)
海洋事業企画課 橋本 菜那





