海のジグソーピース No.192 <海洋政策研究所の調査研究を振り返る―モーリシャスの座礁事故をきっかけに―>
[2020年09月02日(Wed)]
今年の夏休みもあっという間に過ぎてしまいましたが、みなさんはいかがお過ごしでしたでしょうか。私もどこにも行けない中でしたが、数年ぶりに書き物に集中できた夏休みでした。そんな中で注目していたのが、インド洋はマダガスカルの沖にあるモーリシャスでのタンカーの座礁事故でした。詳細はよく分かりませんが、流出油による深刻な被害が発生しているようです。このニュースを見ていて、ふと思い出したのが、海洋政策研究所が前身である日本造船振興財団として設立されて以来、助成や実施してきた調査研究の中に油濁関連のものがあることでした。そこで、今回は当研究所の成果物が多数保存されている日本財団図書館に登録されているこれまでの当研究所の調査研究の成果の中で、油濁関連のものをいくつかご紹介したいと思います。
1991年度から1993年度にかけて実施した「大規模油流出事故対応の防除技術・資機材の研究開発」事業では、「流出油拡散漂流シミュレーション・プログラムの開発に関する調査研究」と「流出油防除措置に関する調査研究」というプロジェクトを立ち上げ、流出した油がどのように広がるのかなどに関する調査研究を実施しました(研究成果については、こちらやこちら、こちらをご覧下さい)。1994年度は「海上油流出事故対応汚染防御の調査研究」事業として、中東産原油の風化状況を把握するための調査研究を実施しました。1995年度から1997年度は、「海洋微生物による流出油処理に関する調査研究」事業を実施し、海洋の微生物を用いた流出油の処理(生物学的環境修復(bioremediation)というそうです)に関する調査研究を実施しました(研究成果については、こちらやこちら、こちらをご覧下さい)。また、1997年度には「海洋における油流出事故対策に関する調査研究」事業も実施し、成果の取りまとめに関する国際会議(海洋における油流出事故対策に係る国際専門家会議)を開催しました。これらの調査研究はいずれも技術開発を主たる目的にしていますが、海運業への貢献という文脈で、現在当研究所が取り組んでいるブルーエコノミーにも通じるところがあるような気がします。
これらの調査研究は約四半世紀も前の成果ですが、「巨人の肩の上に乗る(nani gigantum umeris insidentes)」こと、すなわち先行研究をもとに発展することはあらゆる学問分野において共通しているでしょうから、現在でも何らかの貢献が期待できるのではないかと思います。既に当研究所では、このモーリシャスの事故に関する法的側面から見た課題や現地のマングローブ林をはじめとした環境への影響、再発防止策のあり方などに注目した調査研究を開始しています。近日中にはその成果をみなさんにお伝えできるかと思いますが、私も当研究所に所属する研究者として、これまで取りまとめた調査研究の成果に乗って、海洋環境や海洋産業の発展に向けた諸課題、そして喫緊の課題に取り組みたいと思います。
International Symposium on Marine Oil Spill Response, Tokyo 1997
(海洋における油流出事故対策に関する国際専門家会議)会議録の表紙
(日本語版はこちら)
海洋政策研究部 小森 雄太





