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海洋政策研究所ブログ

海洋の総合管理や海事産業の持続可能な発展のために、海洋関係事業及び海事関係事業において、相互に関連を深めながら国際性を高め、社会への貢献に資する政策等の実現を目指して各種事業を展開しています。


海のジグソーピース No.182 <『海洋ガバナンス 海洋基本法制定 海のグローバルガバナンスへ』刊行!!> [2020年06月17日(Wed)]

 青梅雨美しいこの時節、皆さまいかがお過ごしでしょうか。雨の日にはステイホームで読書という方も多いのではないかと思います。そこで、今日は2017年まで海洋政策研究所の所長を務められた寺島紘士さんが執筆された書籍『海洋ガバナンス 海洋基本法制定 海のグローバルガバナンスへ』についてご紹介したいと思います。2017年7月のブログで、寺島さんが書籍執筆の準備を進めていると書きましたが、このたび西日本出版社から発売されました。

 いまでこそ海洋政策は日本でも広く認知されるようになりましたが、この言葉が一般化したのはごく最近のことです。海洋基本法が制定されたのが2007年ですから、わが国で海洋政策が本格的に発展したのはここ20年に過ぎません。その原動力となったのは、日本財団の笹川陽平理事長(当時)の主導で始まった海洋ガバナンスへの取り組みであり、そしてそれを研究と実務の両面で支えたのが寺島さんです。

 本書にはわが国の海洋政策発展の歴史が詳しく書かれていますが、海洋とは別の角度から見ても興味深い内容です。それは一つの新しい政策がどのように生まれ、発展していったのかという政策研究の資料としての価値です。海洋政策が発展する過程の特徴は民間主導であったことと言えます。民間シンクタンクの主導で始まった研究会が起点となり、アカデミア、産業界を巻き込み、そして超党派の国会議員が集結し議員立法で法案の提出に至ったこのプロセスは、わが国では非常に珍しい例で、これからの政策立案のあり方に一石を投じるものと言えるでしょう。

 本書は寺島さん自身が取り組まれた20年間を振り返る形で編纂されていますが、単なる寺島さんの回顧録ではなく、どのような背景のもと、どのようなタイミングで、どのようなキーパーソンと出会い、そこにどのような力が生まれ、それが次第に大きなうねりとなって新しい政策が生まれ、最終的に総合的なガバナンスの仕組みが形成されていった、という過程がわかりやすく整理されており、いわゆる専門書とは違って非常に面白い読み物に仕上がっています。

 海洋に関心のある人だけでなく、分野を問わずガバナンスというものに関心のあるすべての方々にも、さまざまな示唆に富んだ内容ではないかと思います。今年の夏、ステイホームで読書という方は、ぜひこの1冊を手に取っていただければと思います。

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『海洋ガバナンス』の装丁

副所長 酒井 英次

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