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海洋政策研究所ブログ

海洋の総合管理や海事産業の持続可能な発展のために、海洋関係事業及び海事関係事業において、相互に関連を深めながら国際性を高め、社会への貢献に資する政策等の実現を目指して各種事業を展開しています。


Ocean Newsletter No.584発行 [2024年12月05日(Thu)]
No.584が完成いたしました。

『Ocean Newsletter』は、海洋の重要性を広く認識していただくため、
海洋に関する総合的な議論の場を皆様に提供するものです。 
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●フェロー諸島:その特徴と国際関係、日本との絆
フェロー諸島自治政府副首相兼外務・産業・貿易相◆Høgni HOYDAL

フェロー諸島は北大西洋にある群島で、起伏に富んだ景観と豊かな海洋資源、ヴァイキングの遺産で知られ、特に安全保障と気候変動の観点から、北大西洋において戦略的位置を占めている。
フェロー諸島は日本とは持続可能な資源管理における結びつきをもっている。
小さな島国だが、豊かな海洋資源をもつフェロー諸島は、気候変動や安全保障、経済発展という課題を切り抜けるためにも国際協力に貢献していく考えだ。

●地域あっての地域捕鯨
〜フェロー諸島のキリスト教化と相互扶助〜

一橋大学大学院社会学研究科教授◆赤嶺淳

北大西洋のフェロー諸島では、捕鯨専業者が存在せず、住民が自主的に参加する「地域捕鯨」(コミュナル捕鯨)が行われている。
ヒレナガゴンドウを対象とする、この捕鯨は9世紀にノース人が導入したものと考えられている。
300年以上にわたり、詳細な記録をたどれる、世界でも希な捕鯨である。
鯨肉は無償で島民に分配され、孤島に暮らすフェロー諸島人の食生活の重要な一部となっている。
この捕鯨は、地域社会全体を覆う相互扶助の精神に根ざしており、キリスト教とともに人びとのアイデンティティと結びついている。

●崖の島・フェロー諸島
元 北極域研究共同推進拠点(J-ARK Net)研究協力者◆岡田なづな

北大西洋に浮かぶフェロー諸島は、ダイナミックな自然が作り上げた唯一無二の景観で訪れる人々を魅了し続けている。
その美しい景観以上に筆者をひきつけたのは、人々の自然との向き合い方である。
ごく一部ではあるが、滞在中に垣間見たフェロー諸島の人々の日常を紹介したい。

●事務局だより
公益財団法人笹川平和財団海洋政策研究所主任研究員◆高翔

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Ocean Newsletter No.583発行 [2024年11月20日(Wed)]
No.583が完成いたしました。

『Ocean Newsletter』は、海洋の重要性を広く認識していただくため、
海洋に関する総合的な議論の場を皆様に提供するものです。 
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●海と人との共生をめざして
(公財)笹川平和財団海洋政策研究所研究員◆嵩倉美帆

日本財団と(公財)笹川平和財団海洋政策研究所との2団体で主催している「海洋教育パイオニアスクールプログラム」は、海と人との共生をめざし、全国の学校や教育委員会を対象に海の学びを支援している。
これまでに約1,500校がこの支援を活用し、海をテーマとした多様な学びが行われている。また、毎年開催している海洋教育研究会においては、各校の実践事例の共有や関係者のネットワークの形成を通じ、海洋教育に関する理解を深めている。
海洋を巡る環境危機が増す中、海洋教育の重要性が再認識され、次世代に向けた支援が求められているといえよう。

●志賀島とかかわり・つながり、そして共にまえへ
福岡市立勝馬小学校校長◆田中展史

今夏、志賀島にある福岡市立勝馬小学校で「海洋教育研究会2024」が実施された。勝馬小では、自己の未来を拓く子を育てるため地域の教育資源を活かし、海をフィールドにカヤック、磯観察、海岸清掃など特色ある教育活動に取り組んでいる。
全国から関係者が集い、志賀島について共にかかわり、つながり、考える中で、海の学びの発展性や地域の自然や歴史、文化の学びをどのように創っていくかを深めることができた。

●海なし県から「海洋教育研究会2024」に参加して今思うこと
岐阜市教育委員会◆鈴木大介

「海洋教育研究会2024」に参加したことで、地域素材を活用した海洋教育の可能性を再認識することができた。
海が身近ではない土地においても、山や河川を通した学習を活用することで、海洋教育の理念を実践し、子どもたちに豊かな学びを提供することができると確信している。
今後も、地域の特性を活かした海洋教育を推進し、未来を担う子どもたちの成長を支えていきたいと考えており、そのためにも情報共有や関係者との交流が重要だと実感している。

●サヨリの完全養殖を成功させた高校生の挑戦
香川県立多度津高等学校海洋生産科教諭◆大坂吉毅

香川県立多度津高校の海洋生産科栽培技術コースでは、新たな魚種の養殖方法の開発や、オリジナルの養殖魚のブランド化に取り組んでいる。
生徒が海藻に付着する魚卵を見つけたことから始まったサヨリの養殖では、課題を乗り越え、完全養殖に成功した。
通常天然物が入荷しない12月に出荷可能となり、「瀬戸のキラメキ」と名付けて売り出している。

●廃棄される深海魚を地域の資源として活用し未来へ紡ぐ
学校法人希望が丘学園鳳凰高等学校◆中村太悟

南さつま市では漁で混獲される深海魚が廃棄されていたが、資源の有効活用やフードロス削減をめざし、鹿児島大学や地元企業と協力してプロジェクトを立ち上げた。
本校普通科の生徒も参加し、深海魚に愛称をつけるワークショップや調理実習、レシピ提案などを行った。
生徒は活動を通じて深海魚への理解と親近感を深めている。
さらに、深海魚の教材化や3D図鑑の作成を進めて、限りある地域資源を未来へ紡いでいきたい。

●事務局だより
公益財団法人笹川平和財団海洋政策研究所主任◆小熊幸子

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Ocean Newsletter No.582発行 [2024年11月05日(Tue)]
No.582が完成いたしました。

『Ocean Newsletter』は、海洋の重要性を広く認識していただくため、
海洋に関する総合的な議論の場を皆様に提供するものです。 
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●海と「災い」のデジタルアーカイブ
東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授◆渡邉英徳

筆者らはこれまでに、地球温暖化による海面上昇と国土の危機、さらには東日本大震災の津波など、海にまつわる「災い」をテーマにしたデジタルアーカイブを、地域の人々と協力し合って制作してきた。本稿ではこれらの事例について解説する。

●海を見ていた椅子
〜漁村文化の原点から三陸復興を考える〜

東北大学災害科学国際研究所シニア研究員◆川島秀一

「津波常習地」と呼ばれる三陸沿岸では、一生において大漁と災害、幸と不幸が繰り返し訪れるという覚悟性があった。
簡単に海と陸を遮断する巨大な防潮堤さえ造れば済むような問題ではなかった。
人の命を奪う同じ海が恵みをもたらし、生きる糧と生きる意味を与えていてくれたからである。
本稿では、三陸に限らず、海と人間との関わる原点から、震災復興の在り方を問いながら、海辺に生活することから何を守るかを考え直した。

●四国防災八十八話マップによる災害伝承の取り組み
徳島大学環境防災研究センター副センター長、教授◆上月康則
徳島大学環境防災研究センター助教◆松重摩耶

減災のためには、過去の災害の経験や教訓を風化させずに伝承していくことが重要である。
四国防災八十八話・普及啓発研究会では、イラスト入りの防災マップを作成して、四国の各所で普及啓発活動を続けてきた。
そして、災害伝承が、防災・減災の意識を高めるだけでなく、地域の文化やアイデンティティを継承する役割を果たしていることに気が付いた。

●海洋の健康診断表と日本沿岸海況監視予測システム
気象庁大気海洋部環境・海洋気象課海洋気象情報室予報官◆坂本圭

気象庁は、沿岸防災、水産業、海運、気候変動対応などに資するため、さまざまな海洋情報をホームページ「海洋の健康診断表」で発表している。
また、海洋観測データと海洋シミュレーション・モデルを組み合わせた海況監視予測システムを開発・運用し、海洋情報の基盤データとして用いている。
本稿では、2020年に導入した「日本沿岸海況監視予測システム(MOVE-JPN)」の概要と、海洋の健康診断表で発表する海洋情報を紹介する。

●都市を襲う台風の変貌
〜近年の台風被害と防災対策の新潮流〜

横浜国立大学総合学術高等研究院台風科学技術研究センターセンター長◆筆保弘徳

100年前と比べて台風の日本上陸数に大きな変化はないが、近年上陸する台風の勢力は強まっていて、そのリスクも昔と変わってきた。
2018年の台風21号や2019年の台風15号のように、ひとたび台風が脆弱な都市に襲来すれば、社会機能は危機的な状況に陥る。
現代の科学技術を駆使した防災減災に資する情報やツールを適応させて、自然災害に強靭な街づくりをすることが急務となる。

●事務局だより
瀬戸内千代

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Ocean Newsletter No.581発行 [2024年10月21日(Mon)]
No.581が完成いたしました。

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●重層的な日本・太平洋島嶼国関係構築の取り組み
(公財)笹川平和財団海洋政策研究所島嶼国・地域部部長◆塩澤英之

太平洋島嶼地域情勢は、地政学的競争の拡大、太平洋島嶼国の主権強化、地域に関与する開発パートナーの増加などにより複雑化している。
日本は人的つながり、漁業、開発協力などを通じて太平洋島嶼国と親密な関係を築いてきたが、地域情勢の変化とALPS処理水問題の影響により、地域における影響力が低下した。
そのような状況下で、2024年7月に開催された第10回太平洋・島サミット(PALM10)と(公財)笹川平和財団による太平洋島嶼国ウィークスは、両者の信頼関係の回復と将来に向けた重層的な関係構築に向けた新たな出発点となった。

●太平洋、サモア、そして伝統文化
サモア国立大学上級講師、太平洋研究教育局(REP)エグゼクティブディレクター◆Brian T.Alofaituli

サモアの知識体系(SKS)は、サモアの無形・有形の文化遺産を用いた複合的な「知の在り方」であり、海洋保全に文化的背景を与える。
本稿では、文化、歴史、発展、近代性、グローバリゼーションに織り込まれたサモアの知識体系(SKS)の価値を簡単に紹介する。

●太平洋島嶼国向けのエネルギー分野における人材育成
(独)国際協力機構国際協力専門員◆小川忠之

太平洋島嶼国はエネルギー自給率が低いことやエネルギー・セキュリティ確保などエネルギー分野にさまざまな課題を抱えている。
太陽光発電等やディーゼル発電設備(DEG)の最適な組み合わせにより相互補完する「ハイブリッド発電システム」は気候変動影響を最小限としつつ、電力安定供給を実現させるものであり、島嶼国または地域内で、持続的に維持管理していく体制を構築するための人材育成と技術協力が重要になっている。

●事務局だより
公益財団法人笹川平和財団海洋政策研究所主任◆藤井麻衣

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Ocean Newsletter No.580発行 [2024年10月11日(Fri)]
No.580が完成いたしました。

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●アジアの海洋若手専門家による重要な取り組み
ユネスコ政府間海洋学委員会(IOC-UNESCO)コンサルタント兼ECOP Asiaコーディネーター◆Raphael ROMAN

ECOPプログラムは、「国連海洋科学の10年」の国際ネットワークプログラムとして2021年に承認され、2024年5月時点で5地域と40以上の国に拠点がある。
アジアでは1,100人以上のECOPが、資金やトレーニング機会の不足、帰属コミュニティの不在などに取り組んでいる。
ECOPの関与の拡大が依然として最優先課題だが、日本ではリーダーが育ち、国際海洋科学の分野横断的な協働に貢献しようとしている。

●バルセロナ会議が描いた「国連海洋科学の10年」の道筋とECOPの役割
(公財)笹川平和財団海洋政策研究所研究員、ECOP JAPANコーディネーター◆田中広太郎

「国連海洋科学の10年」における最初の3年が過ぎた2024年4月、スペイン・バルセロナで2024 Ocean Decade Conferenceが初の対面会議として開催された。
今後のビジョンと課題の共有がなされる中で、参加者の出身・セクターに関する多様性の向上に加えて海洋若手専門家(ECOP)にもスポットライトが当てられ、これまでの進捗が窺えた。
一方で日本からの、ひいてはアジアからの参加と貢献など課題も残る。
若手が持つ原動力とつながりを生かした、「誰一人取り残さない」ための行動が期待される。

●「誰もが安全に楽しめる海」の実現に向けて
(公財)日本ライフセービング協会事業戦略室◆上野 凌

「国連海洋科学の10年」への取り組みの1つのテーマである「安全な海」において、溺水防止に関する国際的な動向および国内の現状を踏まえ、多様化・通年化する海岸利用者の事故防止に向けた取り組みと産官学の連携による溺水防止啓発の必要性について提言する。

●編集後記
(公財)笹川平和財団顧問◆阪口 秀

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Ocean Newsletter No.579発行 [2024年09月20日(Fri)]
No.579が完成いたしました。

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●帆船の航海が育む海洋リーダー
〜持続可能な海の未来を創る人材育成プログラム〜

(公財)笹川平和財団海洋政策研究所特任部長◆小原朋尚

(公財)笹川平和財団海洋政策研究所(OPRI)では、海洋が直面する問題を解決し、将来において持続可能な海洋の利用を実現するために2030年以降に活躍する次世代の海洋リーダーを育成するプログラムを展開している。
このプログラムは2022年から5年間で100名の若者を支援することを目標としており、クルーズ船や帆船による航海実習に加え海洋に関する国際会議などへの参加を通じて、海洋が抱える課題の発見と共有、課題解決に向けた手法の設計と関係者間の合意形成を推進できる海洋リーダーの育成を目指している。

●帆船でのGLOBEによる海洋リテラシー教育とリーダー育成
アラスカ大学フェアバンクス校科学教育スペシャリスト◆Christina Buffington

GLOBEは世界中の科学者や教育者と協力して、青少年がGLOBEデータを収集、提出、分析する機会を作っている。
私はGLOBEプログラムの研修を受けたインストラクターの一人として日本─パラオ親善ヨットレース2024の伴走船「みらいへ」に乗船し、GLOBEデータの収集で若者たちを指導した。
研修生と気象観測や海洋の環境調査を行いながら、この帆船の旅を通して共に成長できたことを報告したい。

●海の健康度を評価する
〜海水温度と溶存酸素濃度を「みらいへ」船上で分析〜

チッタゴン大学法学専攻1年◆Miraz Hossain Chowdhury

(公財)笹川平和財団海洋政策研究所(OPRI)が行う帆船「みらいへ」での海洋教育プログラムに参加する幸運に恵まれた。
この航海での体験実習では、国際的な科学教育プログラムであるGLOBEのデータベースに寄与するデータやサンプルの収集を行い、私たちが将来研究に取り組む上で有益な経験ができた。
「みらいへ」で培ったグローバルな結束には海洋の持続可能性に寄与する高い潜在力がある、という重要な教訓を実感した。

●編集後記
(公財)笹川平和財団海洋政策研究所長◆阪口 秀

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Ocean Newsletter No.578発行 [2024年09月05日(Thu)]
No.578が完成いたしました。

『Ocean Newsletter』は、海洋の重要性を広く認識していただくため、
海洋に関する総合的な議論の場を皆様に提供するものです。 
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●海のレジャー的利用の展開
東京海洋大学学術研究院教授◆中原尚知

日本経済の停滞の一方、多様で豊かな生活を求める中でレジャー活動が注目され、そのひとつに海のレジャー的利用がある。
多くの人が海を訪れたいと感じているものの、海洋レジャーへの参加人口は減少傾向にある。
この背景にはレジャーの多様化といった要因もあるが、存在する海のレジャー的利用ニーズに機会提供側が応えられていない可能性もある。海のレジャー的利用による豊かな生活への寄与を実現するためには、ニーズの拡大方策と潜在的ニーズへの対応方策の適切な組み合わせが必要である。

●日本の海のレジャー的利用をめぐる管理・調整
東京海洋大学学術研究院准教授◆原田幸子

海洋レジャーの利用が増加し、海面利用をめぐって各地で漁業と海洋レジャーの衝突が起こっていたが、近年は対立を越えて、調和、共存、共栄が図られるようになってきた。
海洋レジャーを規制するような法律がない中で、地域の実情に応じて、未然にトラブルや事故を防ぐ仕組みが各地で作られている。

●「海水浴」の起源と歴史
九州看護福祉大学看護福祉学部鍼灸スポーツ学科教授、(公財)日本ライフセービング協会教育本部地域教育推進委員◆國木孝治

「海水浴」の歴史を紐解くと、「海水浴」は病気治療や療養を目的として、江戸時代後期から明治期にかけて西欧から伝播、導入されたことが所説より導き出される。
本稿では、西欧の医学的認識を介して伝播された「海水浴」や来日外国人によって行われた「海水浴」の歴史について論じたい。

●事務局だより
公益財団法人笹川平和財団海洋政策研究所主任研究員◆高翔

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Ocean Newsletter No.577発行 [2024年08月20日(Tue)]
No.577が完成いたしました。

『Ocean Newsletter』は、海洋の重要性を広く認識していただくため、
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●ブルーカーボンによる社会変革
NPO法人海辺つくり研究会理事長◆古川恵太

さまざまな海洋・沿岸域の危機が迫る中、「ブルーカーボン」生態系の保全・再生は、地球温暖化の緩和・適応策として、またネイチャーポジティブを実現するための取り組みとしても注目されている。
2023年11月に、国際ワークショップが開催され、研究の最前線と、活動の現状、そして未来に向けたメッセージが共有された。

●海草・海藻藻場のCO₂貯留量算定に向けたガイドブックの公開
(国研)水産研究・教育機構 沿岸生態系暖流域グループ長◆堀 正和

ブルーカーボン生態系のうち、海草・海藻藻場は水産分野において重要な沿岸生態系として長年管理されてきた場所である。
日々の漁業者によるメンテナンスから、分布の維持・拡大に向けた漁協や自治体単位での組織的な取り組みまで、藻場を持続的に利用するための管理が実施されてきた。
このような水産分野での地域管理が、気候変動対策の枠組みでどのような価値を持つか、それらを可視化するCO2貯留量の算定手法が公開された。

●海と人、人と人をつなぎ、豊かな自然を守り伝える
(一社)ふくおかFUN代表理事◆大神弘太朗

福岡市の博多湾は物流や人流の中心地であり、豊かな漁場を有する。
しかし、海底環境の悪化や環境依存によるアマモ場への影響も大きい。
(一社)ふくおかFUNはダイバーを中心に活動し、アマモ場の保全と再生に取り組む。
さらに、多様な主体との連携を通じて海洋環境の持続可能性を追求している。

●海藻は人を海へ誘う
(公財)函館地域産業振興財団・副理事長、北海道立工業技術センター・センター長◆安井 肇

ガゴメは、函館の沿岸が主な生育域で、葉(長さ1.5〜3m、幅20〜50cm)の全面に複雑な凹凸模様があり強い粘りが多く出る、珍しいコンブの仲間である。
フコイダンなど水溶性粘性多糖類を多く含み、多様な食品、健康食品、美容製品の高機能素材として産業化に貢献できる魅力ある海藻資源になることを紹介する。

●事務局だより
公益財団法人笹川平和財団海洋政策研究所主任◆藤井麻衣

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Ocean Newsletter No.576発行 [2024年08月05日(Mon)]
No.576が完成いたしました。

『Ocean Newsletter』は、海洋の重要性を広く認識していただくため、
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●海洋生物のミネラリゼーションと脱炭素
東京大学大学院農学生命科学研究科教授◆鈴木道生

石灰岩の主成分は、貝類やサンゴなどの海洋生物が「バイオミネラリゼーション」と呼ばれる生体反応によって作り出した炭酸カルシウムである。
このバイオミネラリゼーションのメカニズムを解明して、炭酸カルシウムを効率良く合成する技術を開発すれば、増えすぎた大気中の二酸化炭素の濃度を下げることに貢献できる。

●生態学の知見を取り入れたサンゴ礁保全再生のアプローチ
國立臺灣海洋大學海洋環境與生態研究所所長◆識名信也

サンゴ礁は多種多様な海洋生物の命を育む生態系である。私たちにも多くの恵みを与えてくれる。
近年、衰退していくサンゴ礁を再生するために、サンゴの増殖・植え付け事業が盛んに行われている。
本稿では現行のサンゴ礁保全再生事業の課題を整理すると同時に、既存の枠組みに生物・生態学の基礎知見を取り入れた新たな保全再生事業のアプローチを提案する。

●藻場、ウニノミクス、生態系回復への取り組み
ウニノミクス(株)◆武田ブライアン剛

ウニノミクス(株)は、磯焼けの原因となっている増え過ぎたウニを買い上げて、陸上で養殖し販売することをビジネスとしている。
本稿ではその事業の内容及びJブルークレジット取得が事業の強い裏付けとなったことや、今後のJブルークレジットへの期待について記する。

●インフォメーション
第17回海洋立国推進功労者表彰

●事務局だより
瀬戸内千代

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Ocean Newsletter No.575発行 [2024年07月24日(Wed)]
No.575が完成いたしました。

『Ocean Newsletter』は、海洋の重要性を広く認識していただくため、
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●海洋掘削を通じた海のダイナミクスへのリテラシー促進
(国研)海洋研究開発機構高知コア研究所上席研究員、日本地球掘削科学コンソーシアム(J-DESC)理事◆諸野祐樹

「国連海洋科学の10年」で掲げられている海洋に関係するミッションの達成に貢献すべく、日本地球掘削科学コンソーシアム(J-DESC)は、国際深海科学掘削計画(IODP)の日本国内組織として海洋底下に隠されたさまざまな謎の解明を通じ、人類社会に貢献する科学に取り組んでおり、海洋科学と海洋掘削科学のリテラシー向上を目指している。

●測深技術の進歩と海洋底科学
東京大学大気海洋研究所教授◆沖野郷子

マルチビーム測深技術の発展により、海底地形の詳細な描像が可能になり、海洋底の科学は大きく進展した。
今後は、未測の海域に調査を広げていくことと同時に、地震・火山等の活動を地形の時間変化から追えるようにすること、また基礎的なデータを公開していく仕組みを整えることが必要である。

●「国連海洋科学の10年」における水中文化遺産プロジェクト
東京海洋大学大学院(ユネスコ水中考古学大学連携ネットワーク)教授◆岩淵聡文

2021年に始まった「国連海洋科学の10年」では2024年2月現在、公募された51のプログラムとそれらを実際に現場で動かしていく330のプロジェクトが進行している。
プログラムの一つに「海洋科学の10年遺産ネットワーク」が主催する「文化遺産枠組プログラム」があり、そのプロジェクトの一つが「現地住民、伝統的生態学的知識、気候変動:象徴的な水中文化遺産としての石干見」である。

●編集後記
(公財)笹川平和財団海洋政策研究所長◆阪口 秀

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