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世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


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イラン制裁をめぐるインドのジレンマ [2012年01月26日(Thu)]
米ディプロマット誌のウェブサイト1月26日付で、米Center for a New American SecurityのRichard Fontaineが、米印は、イランについて認識も利害も異なり、そのため、イランの核問題が先鋭化する中で、米印の戦略的関係が袋小路に入ってしまう危険がある、と論じています。

すなわち、米国の対イラン金融制裁やEUの禁輸などが実施され、日韓も制裁に協力的な中で、米国はイラン石油の4番目の買い手であるインドの動向に注目している、

しかし、インドの認識は、イランの核兵器阻止を最重要課題と考え、イランの行動に懸念を持つ米国とは大きく異なる。インドは、@石油の12%をイランから輸入、A中央アジアとの交易がイラン経由で行なわれている(パキスタンを経由ができないので)、B国内に少数ながらシーア派がおり、選挙の際には結果を左右する力がある、さらに、Cイランとの間に文化的、国民的結びつきの歴史がある、

最近、インドはサウジの石油を買い始めており、イランの核兵器に反対を表明してはいるが、こうした米印間の違いは大きく、インド外相は先週、国連の制裁は受け入れるが、それ以外の制裁は受け入れないと言明、イラン石油輸入を継続するための代表団をイランに送ると述べた、

これまで米印は、イラン核開発への反対など共通点を強調してきたが、イラン制裁熱が高まるにつれ、両国の関係は袋小路に入る危険がある。米国の議員はインドが協力しないことに失望し、逆に、インドの議員はイラン政策で批判されて苛立つだろう。その結果、米印の戦略的パートナー関係は様々な面で困難になるになるだろう、と述べ、

両国の指導者は、イランの核兵器を阻止し、米印関係を維持するために、イランに関して早急に話し合い、両国間の違いを埋めるための方策を早急に見出すべきだ、と言っています。


この論説は重要な問題をとりあげています。米国がイラン中央銀行及びとそれと取引する銀行を制裁対象とした結果、イラン石油の輸入代金を決済することが難しくなり、インドはルピー決済やバーターをイラン側に提案しているようです。話し合いはついていないようですが、いずれにしてもインドはイランからの石油輸入を止める気はないと思われます。

結局、安保理決議によって国際社会全体がイラン禁輸に踏み切らない限り、インドがイラン石油の輸入禁止や削減を行うとは考えられません。フォンテーンが言う、米印間の話し合いは重要ですが、米印間には対イラン政策や、イラン石油への依存度で大きな違いがあるので、こうした話し合いで早急な結果が出るとは思えません。

米国は、中ロを説得して、安保理でイラン石油の全面的禁輸制裁を通すことができないため、金融制裁で効果を上げようとしていますが、少し無理があり、それが、中印がイラン石油を引き続き買うという形で現れているように思われます。

なお、日本はイランからの石油の輸入量の削減と日本の金融機関への制裁の不適用で今回の問題に対応しようとしていますが、大体EU並みの対応であり、それでよいように思われます。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:31 | 中央・南アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
アジアには海空軍、中東には陸軍が必要 [2012年01月26日(Thu)]
National Interestのウェブサイト1月26日付で、米Center for a New American SecurityのDavid W. Barnoらが、国防予算の削減はやむを得ないとしても、見直しのチャンスはまだある、実際、東アジアでは海空軍の展開が必要だろうが、アフガニスタンを含む大中東圏では地上兵力がまだ必要だ、と言っています。

すなわち、国防費削減について民主共和両党が合意出来ず、強制的予算削減が自動的に執行されることになると、今後10年間の国防費削減額は、予定されていた4870億ドルから、$9500億ドルに増大する。現行の国防省の国防計画は、前者に基づくものであって、後者は実行不可能であり、議会は自動的な強制的予算削減の実施を避けるべきだ、

他方、議会が予算の削減幅について論じている間、国防専門家はその実施の仕方を検討しなければならない。大中東圏では、陸軍と空軍が必要であり、アジアでは主として海空軍が必要とされる。海兵隊は両方に必要だ。予算が減る中で、実態を反映した軍の編成・配備が必要だ、と論じています。


論説が言っていることは、二つに要約されるでしょう。一つは、自動的な強制的予算削減は非現実的で、国防当局としてとうてい実施出来るものではなく、議会がなんとかすべきだということ、もう一つは、現行の国防計画では、米国は大中東圏から手を引き、国防態勢の削減も専ら陸軍中心となると考えられるが、大中東圏の任務はなくなっておらず、陸軍の削減もほどほどにすべきだと言うことです。

いずれも軍事専門家としての立場を考えれば、理解出来る論点です。軍当局として、10年間努力して来たイラク、アフガニスタンを全部放棄することは耐えがたく、また、一方的に陸軍に予算削減のしわ寄せが来ることも受け入れ難いでしょう。

強制的自動予算削減がそのまま実施されるとは、誰も考えていないでしょうが、どうなるかは選挙年の米国の政治いかんであり、誰にも予想できないし、議論も出来ない状況です。

一番早いチャンスは、大統領予備選が終わり、候補が確定されて、今度は本選で中道の票獲得が目標になった頃に、議会でも超党派合意が出来る可能性が生じて来た場合です。その時は、共和党が増税を受け入れ、民主党は社会保障費の一部削減を受け入れれば、妥協の可能性はあります。いずれにしても、部外者のわれわれとしては、米国という国が過去に何度も示した回復力の発揮に期待するしかありません。




Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:59 | 米国 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米軍備近代化の遅れ [2012年01月24日(Tue)]
ウォールストリート・ジャーナル1月24日付で、米AEIのMackenzie Eaglenが、1990年代に大幅に削減された米国の国防予算は、9.11以降は増額に転じたものの、専らテロ対策に使われ、兵器の近代化は遅れた、その上に今回の国防費削減が実施されると、米軍の兵器体系は老朽化してしまう、と言っています。

すなわち、ソ連邦崩壊以来アメリカの軍事予算は1990年代を通じて大幅にカットされていたが、9.11以降、アフガン及びイラク戦費が増額された。しかし、その増額は、将来へ向けての尖端技術には投資されず、従来技術の改良版にばかり投入された。また兵器の数も減ってきている、

例えば、空軍は当初、F-22を750機希望したが、それは、648、438、339、270と漸減され、遂に187機となってしまった。ヴァージニア級の攻撃潜水艦は、元々、より優れたSeawolf-classの潜水艦の代替だったが、従来の半分しか予算が手当てされていない、と指摘し、

今回の国防予算削減は、「米国の戦闘員に最善の武器を持たせる」という国家の義務を放棄するものだ、と論じています。


米軍事費削減の経緯とそれに対する危惧は、当然と思われます。1991年の冷戦終了後、米国防予算は漸減し、冷戦末期GDPの6%だったのが、2%にまで落ち込みました。そのため軍の士気の低下が著しく、ブッシュ政権では、9.11の前から軍備費増額が論じられていました。ところが、9.11以降は「新しい戦争」論がブームとなり、予算増は対テロ作戦に注入され、通常兵器の近代化は滞ってしまいました。ところが今度は、米国がイラク、アフガン戦争から手を引き、東アジアの中国の脅威に備えなければならない状況になった時に、米国の経済が停滞し、予算削減の時代となりました。

要するに、中国の軍事力増強を前にして、米国は10年間を空費し、その上に、先行きの見通しも立たないのが現状と言えます。

その結果は目に見えています。例えば、東シナ海における日中の軍事バランスは、90年代初めは、自衛隊200機のF-15に対して中国の第四世代機はゼロに近かかったのが、現在は400機近くになろうとしています。その間、日本が第五世代機F-22を導入していれば、今なお優勢を保てたはずです。日本が遅ればせながらF-35導入を決めたことを、米国の軍事専門家が挙って歓迎しているのは、それによるバランスの回復を期待しているからです。

たしかに、中国の軍備力増強の脅威は、まだ20世紀初頭のドイツの軍事力増強ほどのテンポではないようで、米国が現在の経済停滞を脱して、新たな軍拡を行うのを待っても間に合うかもしれません。つまりF-35の配備まで待てるということです。ただ、その間、日本としては、不測の事態に備えて防衛に万全を期すべきでしょう。それには集団的自衛権の行使を含む、日米防衛態勢全体の強化を必要とします。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:42 | 米国 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米企業の海外移転と米国の雇用問題 [2012年01月23日(Mon)]
インターナショナル・ヘラルド・トリビューン1月23日付で、NYTの記者、Charles DuhiggとKeith Bradsherが、アップル社のアイフォンを例にとりながら、最先端企業がなぜ生産拠点を米国から中国に移し、その結果、米国の雇用が増えないかを解説しています。

すなわち、昨年アップル社はアイフォン7000万台、アイパッド3000万台、その他の製品5900万台を販売したが、そのほとんどは米国外で生産された。アップル社と契約を結んでこれらの製品を作っている会社で働く従業員は70万人いるが、米国で働いている者はほとんどいない、

2007年頃、アップル社は全く新しい携帯電話を作ることを計画、傷のつかないガラス製のスクリーンなど、最高品質の部品を早く、安く、大量に生産する必要があったが、それができたのは米国ではなく、中国だった。訪中したアップル社の幹部に、中国の工場主は、広大な敷地、多数のガラスのサンプル、多数のエンジニア、従業員用の寮が用意されており、サプライ・チェーンも万端で必要な部品は何でも手に入ると告げ、新しい携帯電話の生産は中国で行われることになった、

技術系企業にとっては、部品調達や、何百もの企業が製造した部品やサービスをまとめるサプライ・チェーンを管理するコストに比べれば、労働コストは取るに足らない、

また、中国で操業する場合のもう一つ重要な利点は、米国では考えられないような数のエンジニアが提供されることだ。アップル社は、アイフォンの組み立てに必要な20万人の組立工を監督、指導するエンジニアが8,700人ほど必要と考えたが、米国でそれだけの数のエンジニアを調達するには9か月かかると試算された。ところが、中国ではわずか15日で集めることができた、

台湾のFaxconn Technology社の例も見てみよう。アマゾン、デル、ヒューレット・パッカード、モトローラ、任天堂、ノキア、サムスン、ソニーなどの下請けとして、世界の40%の家庭用電化・電子製品の組み立てを行っている同社は、中国にFaxconn Cityという工場群を持っており、従業員が23万人いる。その多くは週6日労働で、日に12時間働く者もおり、4分の1以上は会社の寮に住んでいる。また、必要なら、1日で3千人を新たに雇えるという。こんな場所は米国にはない、と指摘し、

過去10年、太陽光、風力発電、半導体、ディスプレイといった技術の多くは米国で生まれたが、多くの企業が主要工場を米国から中国に移し、雇用の多くは外国で発生した、と言っています。


記事は、アップル社がアイフォン等の中国で生産するのは、労働コストが低いためではなく、必要な多数の中堅エンジニアや半熟練工を容易に入手でき、サプライ・チェーンも完備しているためで、これらは米国では求められず、その結果、米国の雇用が失われている、と言っています。
 
企業が必要とする技能労働者の不足は十分認識されており、オバマ大統領は先般の一般教書演説で、雇用増進のために技能教育や職業訓練を充実させると述べています。

しかしこの記事によれば、米企業の移転理由は技能労働者の不足だけではなく、多数の従業員が週6日、時には1日12時間働き、多くが会社の寮に住むという厳しい労働環境という要因があります。これは途上国でのみ可能な環境と思われ、そうであるなら、米国の技能教育が充実しても、アップルのような企業の中国移転を防ぐのは難しいでしょう。こうした厳しい労働環境が中国でもいつまで可能かという問題はありますが、少なくとも当分は続くでしょう。

つまり、企業の海外移転の主たる理由は構造的なものなので、そのために発生する米国の雇用の減少に歯止めをかけるのは難しく、雇用の増大は他の分野、他の手段で講じられるべきなのでしょう。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:38 | 米国 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
中国指導層をめぐる争い [2012年01月23日(Mon)]
今秋の第18回党大会で党の最高権力機関たる政治局常務委員会(PSC)のメンバーが選出されるのを受けて、米戦略国際問題研究所の機関誌Washington Quarterly冬号で、ブルッキングス研究所のCheng Liが、目下この人事をめぐって熾烈な駆け引き、暗闘が行われていると述べ、対立する二大グループの特徴や政策の違いを紹介しています。

すなわち、今回の政治局常務委員をめぐる抗争は、一般の中国人が気付くほどあからさまな陳情攻勢が一部で顕在化している。例えば、重慶市党書記の薄煕来・政治局員は、自己宣伝のために公然と「文化大革命式」のキャンペーンを行ない、経済社会発展のための「重慶モデル」なるものを打ち出した。そして政治局常務委員9人中のうち5人が重慶を訪問し、このキャンペーンを支持したりした、

これに対し、温家宝・首相は、「文化大革命の遺物」に懸念を示すとともに、重慶市当局が都市化の名の下に農地を取り上げることに留保の態度を示した。この特殊な例が示すように、9人の最高指導者を選出する過程は極めて複雑、多面的であり、種々の駆け引きを必要とする、

PSCのメンバーとなるのに最も重要な要素は、「保護者‐被保護者」の結びつきだ。PSCから去っていく者は、影響力や利益を残したいので、自分の息のかかった忠実な弟子がメンバーになれるよう全力を尽くし、そのためには派閥や利益集団とも連携して協力する、

この30年間に中国の最高指導層は、毛沢東、ケ小平という強力な指導力をもつ個人の支配から集団指導制へと徐々に変化してきた。江沢民、胡錦濤に続く第世代の指導者(習近平や李克強)は、力と権威が仲間に拡散しているため、前任者たちよりも弱い指導者になるだろう、

そのため、中国の指導層は、ますます「太子党」と「団派(庶民派)」の二派間の「チェック・アンド・バランス」の形で政権を運営して行くことになりそうだ。前者は特権階級の出身者から成り、裕福な沿海地域で公務についた者が多い。習近平、王岐山、薄煕来等はこのグループに属する。後者には共産主義青年団に所属し、条件の悪い内陸部で公務についた者が多い。李克強、汪洋、李源潮などがこのグループに入る、

両者の勢力はほぼ均衡しており、25人の政治局員の中では、「太子党」は28%、「団派」は32%、政治局常務委員の中では各一人ずつ、中央書記処では各二人ずつとなっている、

政策面では、「団派」は組織、宣伝部門、農村工作について幅広い経験を有しているが、行政面、特に外国貿易、外国投資、金融等の重要な経済政策全般については、「太子党」の方がはるかに多くの経験を積んだ人物を擁している、と指摘し、

中国の最高指導部の政治は、当分の間、この二つのグループの対立と協調の中で進行することになろう、と言っています。


リーの論評は、中国政治の最高指導部の状況をやや単純化し、割り切って解説したものです。現実の中国政治はもっと複雑で隠微なものですが、目下のところ、二つのグループの対立と協調の枠組みの中で9人のトップ・リーダーを観察するのは、大きく間違ってはいないと思われます。

その中で、薄煕来や汪洋(広東省党書記)の外部にも見えるパフォーマンスは新しい動きとして注目されます。ただし、二つの派の政策の違いについては、それが権力闘争の口実に使われる面があることを考慮すれば、あまり強調しすぎるのは適切ではないでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:36 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
台湾総統選挙後感 [2012年01月17日(Tue)]
Foreign Policyのウェブサイト1月17日付で、AEIのDan Blumenthalが、台湾は今後とも民主主義国家として、本土とは別の主体で存在し続けるだろうし、米国はそうした台湾と密接な関係を維持すべきだ、と台湾総統選挙後の実感を述べています。

すなわち、ブルーメンソールは自らの感想を5つにまとめて:
@台湾は、中国をはじめ世界の諸国と活発な経済関係を持つ事実上独立の国であり続けるだろう、
A台湾放棄論は一部の理論家だけのものであり、道義に反するだけでなく、実際的でもない。米国が支援を止めれば、大多数の台湾人は台湾を離れるだけだろう。これは米国の名誉を傷つけ、米国が望むようなアジアの実現は大変な打撃を受けることになろう、
B中国にとっても専制国家であることは次第に具合の悪いものになってきている。中国人は台湾が民主主義のために経済成長も安定も犠牲にせず、今回で4度目となる自由公正な選挙も行なったことを知っており、中国はまだ民主主義への「準備」ができていないとする政府のご託宣に納得していない。中国にとって、民主的台湾の存在は次第に困った手本になるだろう、
C今後は、中国民族百年の屈辱を晴らすことと、台湾人の自由を守ることを両立させることが課題となり、連邦、 Commonwealth、制度のようなものが浮上してくるだろう、
D米国は、過去の努力を無にするようなことをしてはいけない。台湾と緊密に協力し、平和的、民主的解決が出来るまで、中国の政治が変わるのを待たねばならない、と言っています。

 
極めてバランスのとれた、現実的、常識的判断と思われます。この常識的判断に反した「象牙の塔の政治理論」があるとわざわざ指摘している通り、これは、常識論に反した議論が一部米政府部内や学界に存在することに対する批判でもあります。

確かに台湾は、ブルーメンソールが感じたように、中華民国か、台湾共和国かの選挙を繰り返す民主国家となったように思われます。もちろん、国民党独裁時代の残滓はあり、国民党が財政的に恵まれているのに対して、民進党は財政不如意の中で野党としてまた4年頑張らねばならないのは気の毒ですが、それも台湾民主化の一つの過程と言えるでしょう。

中国が米国との武力衝突に踏み切る自信がなく(軍備の増強は急ですが、4年後でも自信を持つには至らないでしょう)、民衆の圧倒的多数は統一に反対、という2大条件が続く限り、ブルーメンソールの言うように、現状を維持して、中国本土の考え方が変わるのを待つという戦略は十分実施可能でしょう。特に、その間、米国の台湾防衛の意思が続けば、安定した状況を確保できると考えられます。

なお、論説で一つ面白いのは、Commonwealthという考え方が示唆されていることです。過去に、英連邦(British Commonwealth) 内の各国のような関係という考えが台湾側から出てきたこともありましたが、現状では中国が頭から問題にしていない定義です。しかし、将来の中国の態度の変化の可能性にも期待して、一つの選択肢として残しておく価値はあると思われます。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:57 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
信用できない中国の経済指標 [2012年01月17日(Tue)]
米ヘリテージ財団のウェブサイト1月17日付で、同財団の中国経済専門家、Derek Scissorsが、中国の経済指標は信用できないとして、数字を挙げて説明しています。

すなわち、中国は先頃、2011年の経済成長率が前年の10.4%から9.2%に落ちたと発表したが、実際の成長率はもっと低いはずだ。理由の一つは、各種統計間の不整合だ。例えば、2010年に前年比32パーセントの伸びを記録した自動車販売高は、2011年には2.5パーセントに急落、造船新規受注トン数も2011年に前年比で52パーセント下落、原油輸入量も2010年に前年比17.5%だった伸び率が、2011年には6パーセントに低下している、

また、統計数字によって検証できること以外にも、中国経済の実態が公表される数字より悪いのではないかと思わせる状況証拠として、@金融が緩和に緩和を重ねていること、A外貨準備が昨年第4四半期に純減し、資本が逃避しつつある様子が見られること等が挙げられる、

かつて朱鎔基は、中国全体の成長率は各省の成長率を均したものになるはずなのに、国全体の数字を下回る省が一つもないのは不自然だ、と疑問を投げかけたが、10年以上経った現在、問題はむしろ悪化しているようだ、

例えば、失業率は政治的に機微なためか、元々発表されたことがないが、公表されている「都市失業者のうち登録済みの者」も、5%を上回ってはならないことになっているらしく、消費者物価上昇率にも同様の政治的配慮がなされている、

外国からの直接投資も、北京の言うように今も増え続けているのか疑わしい。直投の6割は香港からのものだが、その多くは支社から中国本土の本社に向けての送金であり、北京はこれも「外国からの」投資としてカウントしている、

また、中国では消費が伸び、投資が減る形でリバランスが進みつつあると楽観視する向きは、小売り売上高の伸びを挙げるが、小売り売上高には建設資材の売り上げや政府部門間のやり取りまで含まれる、と指摘し、

米国は商務省が中心となって、中国の成長率や失業率等の経済指標を独自に推算すべきだ。これらにも多くの見込み違いが含まれることになるかもしれないが、四半期ごとに中国の公式発表とは異なる数字がワシントンから出されれば、北京に対する警告になるだろう、と言っています。


Scissorsは中国の大型対外直接投資を公開資料から丹念にあぶり出し、記録するなど地道な作業をよくすることで評価がある人物です。

米商務省が独自に中国の経済指標を推算して発表するよう提案しているのは、それが中国自身に行いを正させるキッカケになると読んでいるのでしょう。これなら日本にもできそうな気がします。ただし、政治的意味合いからして、結果は大々的に宣伝する必要があるでしょう。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:32 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
中印のエネルギー安全保障 [2012年01月16日(Mon)]
プロジェクト・シンジケートのウェブサイト1月16日付で、英国際戦略研究所のSanjaya Baruが、アジアの新興の大国が成長を維持しようとする中、エネルギー安保がアジアの地政学の最前線に出てきた、と言っています

すなわち、中国の温首相が、イランに代わる石油供給先を求めてサウジ、UAE、カタールを訪問したが、その背景には、中東やイスラム世界で中国の存在感を高めるという目的もあった。実際、中国は、2006年のサウジ国王の訪中以来、広範なビジネス関係や戦略的つながりを作り、湾岸で最重要のアジアの国となっている、

事情はインドも同様で、インドもエネルギー安保のためにメノン国家安全保障補佐官をサウジ、カタール、クウェートに派遣した。また、この地域には6百万のインド労働者がいて、彼らが本国に送金する金は200-300億ドルにもなる、

しかし、中印の活発な外交は、何よりもエネルギー安保への懸念の反映だ。両国はこれまで安保理のイラン制裁に同調してきたが、両国にとって重要なのはエネルギー安保であり、両国は米国の対イラン政策がアジアの経済とエネルギー安保を犠牲にしないよう説得しようとするだろう、

他方、米欧の方も、OECD諸国の経済がさえない中、中印等の経済成長が世界の不況を緩和してくれることを望んでいる、

米、中、印がイラン核問題の解決のためにイニシアチブを発揮するのが望ましく、サウジは、この問題の平和的解決のために共に働くよう、これら3カ国に呼びかければ、建設的な役割を果たせるだろう、

アジアのエネルギー安保への懸念に対処する新たな発想が必要な時期に来ていると言える。また、こうした発想は、今後アジアの中から出てくるようになるだろう、と言っています。


論説は湾岸地域で中印、特に中国の存在感が大きくなっていることを指摘し、中印ともに、エネルギー安全保障が最大の関心事であり、イランの核問題についても、米国がそのことを踏まえて、中印とともに努力することが重要だと論じています。

イランの核問題については、「安保理常任理事国+ドイツ」とイランとの交渉の場があり、中国はこの枠組みに入っていますが、インドは入っていません。バルーは、イラン核問題解決のためにサウジが米、中、印に声をかけるのがよいと言っていますが、これは、この従来の枠組みにインドを加えるべきだと言っているように聞こえますが、従来の枠組みをどうするのかがはっきりしません。

また、論説では日本への言及がありませんが、日本は石油輸入の大部分を湾岸地域に依存しており、この地域の情勢について日本が何の発言権もないのは問題で、日本は湾岸でそれなりに存在感を高めて行く必要があります。

しかし、単に石油を買い、物を売る関係だけでは限界があり、政治的な役割を果たす国にならないと存在感は高まらないでしょう。1973年の石油ショックの際、当初サウジは日本を友好国とすることに難色を示しました。その時のサウジ側の言い分は、「英仏は武器を売ってくれている友好国だ、日本が武器を売ってくれるなら、すぐ英仏並みの扱いにする」、というものでした。サウジやイランのような国との付き合いでは、政治的、戦略的な話をする必要がありますが、日本はそうした話し合いの相手にならないと思われています。こういう日本を変えて行かなければ、湾岸での存在感など、望むべくもないのかもしれません。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:19 | その他 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米国経済の大停滞 その3 [2012年01月16日(Mon)]
コーエンはさらに、米国が金融危機を招いた真の原因は、今の米国は「容易に収穫できる果実」に乏しく、国民、特に中流階級の生活水準が本当はそれほど上がっていないのに、実際よりもっと豊かだと考えて自信過剰となり、リスクを取りすぎたためだ、と言っています。

すなわち、金融危機を招いた原因は、われわれが、意識的であるか否かを問わず、3%以上の生産性の上昇があり、それに伴う資産価値があるという前提の上に計画を立ててきたからだ。実際は3%よりはるかに低いのに、3%を前提とした計画を立てれば、早晩危機が訪れる、

ではなぜこんな過ちを犯したのか。1980年代初頭以来、レーガン革命による米国経済の再生、ソ連の崩壊と東欧諸国の民主化、その多くの国のEU参加、中国とインドの経済発展、ラ米諸国の民主化など、米国と世界経済にとって良いことが数多く起こった。そのため、この間、重要な新技術が開発されなかったにもかかわらず、自分たちの強さは不動のものと考えてしまったからだ、

実は、この間も、1980年代初めの貯蓄投資危機、1984年のコンチネンタル・イリノイ銀行の破産、1987年のブラック・マンデー、1980年代末の不動産バブルの崩壊、1994年のメキシコ金融危機、1997-98年のアジア金融危機、1998年のLong-Term Capital Management倒産、2001年のITバブルの崩壊等、悪い出来事もあったが、結果は全体としてそれほど悲劇的ではなく、管理可能だったために、安心してしまい、最後に本当の危機を迎えてしまったのだ、

つまり、危機の本当の原因は、個々の政策の誤りや、サブプライム・ローンではなく、投資家がリスクを取りすぎたことにある。サブプライム・ローン市場も、投機の対象となった絵画の市場も、崩壊した原因は自信過剰にあった、

自信過剰は、レベレッジ(資本に対する貸し出しの比率)が高いときにはさらに大きな問題になる。銀行への打撃が大きかった理由はまさにそれだ。

ところが、ほとんどの国の政府は、不動産や資産価格の上昇に満足してしまった。米国政府などは、本来、巨額の負債を認め、住宅バブルにブレーキをかけるべきだったのに、こうした流れを助長すらした。所得の中央値が伸び悩んでいるとき、手っ取り早く消費を増やすには、負債を増やすか、資産価値を増やせばよく、そうすれば、短期的には生活水準は上がり、人々はより豊かに感じる。これは、時間軸がせいぜい2、4、6年の多くの政治家にとっても好都合だった、

その結果、1993-1997年にはGDPの2.5%〜3.8%だった米国の住宅価格の値上がり額は、2005年にはGDPの11.5%になった。米国の住宅は、政治的に祝福されてわれわれの新しいATMとなったのだ。ただ、それを支える真の富は存在していなかった、

危機脱出は容易ではない。われわれの困難の根源は、収入を創り出す「容易に収穫できる果実」が乏しいことにある。そして、膨れ上がった住宅価格や株価を基に多くの計画を立ててきたわれわれは、実際は自分たちは思っていたより貧しい、という考えにまだ完全には慣れていない、と言っています。


金融危機が起きた原因をずばり説明しています。金融危機がなぜ起きたかについては、サブプライム・ローン、金融機関による過剰レベレッジ、規制・監視の不十分さ等々、これまで様々な分析がされてきましたが、コーエンは、それらの根底に、米国の生産性が低く、本当の豊かさをもたらす「容易に収穫できる果実」がないのに実際より豊かだと考え、自信過剰となってリスクを取りすぎたことがあると言っているわけです。従来の説明がいわば戦術的なものであるのに対し、コーエン説明は戦略的な説明だと言ってもよいでしょう。

問題の本質に鋭くメスを入れた感があります。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:28 | 米国 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米国経済の大停滞 その2 [2012年01月16日(Mon)]
また、コーエンは、「容易に収穫できる果実」があれば、政府は国民に物質的な恩恵を十分提供し、国民をより幸せにできるが、今はそれがないので、政府の財政事情は苦しく、医療保険、社会保険の給付に四苦八苦している、と言っています。

すなわち、所得が年実質2〜3%増えれば、政治はうまくいくだろうが、実際はそうした所得増はない。ところが、過去40年間、ほとんどの米国人は、政府が提供できるもの以上を期待してきた、

これは、過去何百年間、「容易に収穫できる果実」の恩恵を蒙ってきたため、より良い生活への期待が、米国人の歴史と国民性の一部になってしまっているからだ。そのため、実質所得が年1%しか伸びないと、米国人はイライラし、制度が悪い、あるいは政治家は何をしているのか、と非難する、

こうした政治環境の中で、右派への支持が高まっている。右派は減税が所得増の即効薬と考えており、近視眼的な有権者は、歳出削減を伴わない減税に飛びつく。しかし、減税をすれば、一次的に実質所得は増えるが、政府債務は膨れ上がり、いずれはツケを払わなければならない。また、政治家も、こうした歳出削減を伴わない減税が機能するはずはないのに、競ってそうした政策を打ち出す。

他方、左派は、所得の再分配を強く求める。富裕層の所得を貧困層に与えれば、確かに一時的に貧困層の所得は増えるが、いずれ富裕層に対する課税強化の効果は逓減する。すでに米国の所得上位5%の層が所得税の43%以上を払っている。景気刺激策、健康保険法など、オバマ政権の多くの改革も、資源を高所得層から低所得層に再分配するものだ、

その結果、政治論争は減税対再分配の形で進んでいるが、両者はもはや相手の主張に耳を貸そうとしない。誠実な中道派はどこに行ってしまったのか。「容易に収穫できる果実」はもはや無く、実質所得は緩やかにしか伸びず、現在のペースで借金を続けることはできないなどと言えば、先ず選挙で勝てない、

そこで、嘘と誇張によってしか、有権者に実際よりはるかに高い実質所得の伸びを約束できなくなった米国の政治は、嘘と誇張で満ちるようになってしまった。今や選択肢は「減税の誇張」か「再分配の誇張」だ、と言っています。


現在の米国の政治状況を的確に説明しています。つまり、技術革新が停滞し、実質所得が伸び悩んでいて、政治は多くを国民に約束できないのに約束せざるを得ない、つまり、政治家は有権者に支持されるためには、出来ないことも出来ると言わざるを得ない。その結果、現状は「減税効果の誇張」対「所得再分配の効果の誇張」の構図になっているというわけです。その背景には、よりよい生活への期待が国民性の一部となってしまっており、生活水準が改善しない、あるいはわずかした改善しないことは米国人には受け入れ難いという事情があるということです。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:27 | 米国 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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