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世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


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米国のアジア回帰 [2011年12月30日(Fri)]
ウォールストリート・ジャーナル12月30日付でWalter Russell Mead米バード大学教授が、米国のアジア回帰政策は、民主党の左派から共和党の右派までが支持できる、現実的、人道的、開明的かつ前向きのものであり、文字通り太平洋の世紀を拓くものだ、と言っています。

すなわち、米国の衰退ばかりが論じられているが、米国は、気づかれないうちに、マーシャル計画やNATOの創設にも比すべき大きな意義のある、超党派のアジア政策を進めている、

その中心には、世界史で最も自由な通商システムに参加するようアジア諸国を誘っていることがある。中国にしても、中国が世界市場に依存すればするほど、かつてのドイツや日本のようにそれを破壊することに、利益を見いださなくなる。中国の勃興が第一大戦前のドイツと異なるところは、当時は、フランス、オーストリア、ロシア、トルコが衰退していた中でドイツだけが興隆していたのに対し、現在は、日本はともかく、インド、べトナム、韓国などいずれもこの国際システムの中で興隆していることだ、

過去2年間、中国は南シナ海での横暴な行動で近隣国を脅かし、その結果、オバマ政権は、おそらく今後の地域安全保障の基礎ともなるだろう外交革命を推進した、
 
これはNATOの時のような封じ込め戦略ではなく、中国に対して、中国の地域覇権追求を抑止しつつ、中国に国際社会参加の選択肢を与えることを目指している。米国およびその協商のメンバーは、中国に対し、自分たちとの協調的関係と競争的競争との関係のいずれを求めるの、という選択を求めることが出来る、

この政策は、米国の政治において、細かい点では党派的議論もあるだろうが、大筋で超党派の国民的支持を得られる、現実的、人道的、開明的、そして前向きのものだ、と論じています。


この論説では、協商(entente)という言葉が当然のように使われています。また、国防費をめぐる民主、共和両党の相克でうんざりしている米国のインテリにとって、こういう民主、共和のいずれも反対出来ない大戦略が打ち出されたことに、ホッとした感があるのかもしれません。たしかに、民主、共和両党間の確執が泥沼化している現状において、このような大戦略が政争の具にされずに通ったことは救いです。

比較するには、あまりに異質の問題かもしれませんが、日本で、武器輸出三原則の緩和が世上の注意を引かずに通ったことも、同様に画期的な事件だったと言えるかもしれません。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:08 | 米国 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
中国の香港政策 [2011年12月30日(Fri)]
ウォールストリート・ジャーナル12月30日付社説が、香港では3月に新しい行政長官が選出されるが、相対する二つの政治勢力はそれぞれ中国党中央の勢力争いを反映している、ただ、いずれの勢力も香港の自治を護るのに熱心ではなく、北京は、金の卵を産む鵞鳥を殺そうとしている、と言っています。

すなわち、香港の行政長官は、1200名の香港の政財界の代表によって選出されるが、ほとんどの選挙人は、「中国の友人」であり、中国共産党指導部の意向が選挙の結果を決めることになろう。もっとも指導部の選択はまだはっきりしてしない。なぜなら二人の主要候補は、事実上、香港の将来について異なる考えを持つ北京の二大派閥、胡錦涛の共青団派と江沢民の上海派の代理人だからだ、
 
ただ、いずれの派も香港の自治を護るのに熱心ではない。2017年には、行政長官は普選で選ばれることになっているが、北京はそれを恐怖の眼で見ている、

また、左派は草の根の組織を動員出来ると言っているが、北京はポピュリスト運動の強化は、投資を引き揚げさせ、北京が香港の経済を護らなければならなくなるので、警戒的だ、

こうした中、反対派が進出するようなら、北京は従来の約束も反故にするかもしれない。すでに習近平は、「二制度」より「一国」を強調すべきだと指示している。そのため、香港の役人たちは、米国総領事と面会した反政府派政治家を裏切り者と非難したり、学校に愛国教育を導入するなどして新路線に追随している、

本来、北京がすべきことは、香港の自治の約束を護ることだが、そんなことは北京の指導者たちの念頭には全くないようだ。彼らは金の卵を産むガチョウをあまり強く締めつけては元も子もなくなるという前任者たちが持っていた知恵を引き継がず、香港の繁栄の元である自由を圧迫しようとしている、と言っています。


社説の前半は、香港政治の詳細な分析ですが、結論は、それまでの分析とは無関係に、自治と民主主義を尊重すべきだとする建前論の説教になっています。

しかし、香港を論じればそうならざるを得ないでしょう。中国の体制が変わらない限り、北京が香港の民主化に積極的になることは考えられず、米国の論説としては、無力感を抱きつつも民主主義を説教するほかはないのでしょう。

また、たとえ、中国が香港の民主主義を護る約束を守ったとしても、それは50年間のことです。一国二制度を約束しながら、十数年を経てまだ実現していないという批判がしばしば聞かれますが、要するに、香港の自由はあと30数年の命脈だということです。30数年といえば、相当長い年月ですから、その間に中国の国内情勢や国際情勢に地殻的変動があるかもしれないことに、ほのかな期待が持てるに過ぎないということです。




Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:43 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
インドの人口動態 [2011年12月30日(Fri)]
米AEIのウェブサイト12月30日付で、同研究所Nicholas Eberstadtが、インドは2030年ごろには、兵役や労働に適する若年人口、また、高度教育を有する人口などにおいて、中国を上回る恐るべき国家となり、米国にも、教育水準の高い大量の労働力を提供することになろう、と言っています。

すなわち、人口動態で戦略的に重要なのは、@戦争に動員出来る15-24歳の人口、A高卒以上の労働人口、そしてB知的技術的水準だ、

まず15-24歳の人口に関しては、20年前は中国がインドの2倍半擁していたが、2030年には中国の7,500万人弱に対して、インドは1億人になる。また、高卒以上の労働人口も、1990年には中国の3分の1だったのが、2040年には中国を追い越す、

知的技術的水準を比べるのは難しいが、特許を指標にすると、通常、特許の数は、一人当たりの収入が倍増すると、4倍に増えるものだが、インドでは特許の数はその3倍のスピードで増えている。対するに、中国は通常の増え方をしている。中国が今後知的技術的な中心になれるかどうかには大きな疑問符がつくが、インドは既にその実現に向かって進みつつある、

米国にとってこうしたインドは中国よりも大きな市場、大きな貿易相手国となるだろう。また、教育程度が高く、所得水準の高いインド系米国人の数が急増している、と述べ、

ただ、インド国内には大きな格差が存在し、特に教育面でそれが著しいという問題点がある、と指摘しています。


人口統計や教育水準から、中国を上回るインドの重要性と発展性を指摘した論文であり、数字の裏付けがあるだけに説得力があります。おそらくここで言われていることは本当なのでしょう。英語力と数学力に裏付けされた、インド人の伝統的な抽象的思考能力が、爆発的に開花する機会を与えられているということでしょう。

従って、2008年の米印核協定以来の米国のインド接近政策は、十分に成功する下地があるということです。

日本は、英語面でハンディキャップはありますが、米国と協調してインドとの関係を深めていくことが長期戦略として必要だと思われます。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:12 | 中央・南アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米国防費削減批判 [2011年12月27日(Tue)]
National Interest のウェブサイト12月27日付で、米ブルッキングス研究所のMichael O’Hanlonが、米国防費の8-10%のカットならば、どうにかなるが、このままで行って1兆ドルに上る15-20%カットになったら、今後の国際情勢に対応できなくなる、次の大統領選は国内経済問題中心と言われているが、国防費問題こそ米国が直面する最大の課題だ、と論じています。

すなわち、今後10年で、平和時国防費を8-10%(約$500億ドル)節約するのは、困難ではあるが不可能ではない。つまり陸軍は一つの戦争だけに備え、海軍は285隻から250隻に削減し、核戦力維持の経費を節約すればどうにかなる。それならば、何とか軍人の給料カットを回避し、東アジアとペルシャ湾間の両方に備えることができるだろう、

しかし、このままで行って15-20%のカット(約$ 1兆ドル)になってしまうと、自分の計算では、単に軍事費を削減するだけでなく軍人の給料も下げねばならなくなる。また、ペルシャ湾と東アジア太平洋のどちらかを選ばねばならなくなるだろう、

つまり、地上軍は、その後不足ということが明らかになった(そのために2001年にブッシュ政権が成立して早々に軍事費が増額されている)1990年代レベルにまで下がることになり、海軍は西太平洋とペルシャ湾で危機が起きれば、どちらかを選ばざるを得なくなる。そして、防衛産業は衰退し、いざという場合に対応できなくなるだろう、

国際情勢が平穏ならばどうにかなるが、勿論、そんなことはわれわれが保証できることではない、

このように考えると、2012年の大統領選の主要問題は国内経済問題と言われるが、国防費の削減問題が未解決のままならば、これ以上大きな問題は無いだろう、と言っています。
 

国防費の大幅削減に警鐘を鳴らす論説はいくつもありましたが、ここまで具体的に論じたものはありませんでした。オハンロンは、極めて現実的な軍事専門家であり、おそらくオハンロンの計算は正しいのでしょう。

とすれば、何とかしなければいけない事態ということになりますが、何とかできる見通しは全く立っていません。共和党が増税を認めるか、民主党が社会福祉経費を切ることを受諾するしかありませんが、双方ともに譲る気配はありません。それに、共和党はもとより国防費削減反対ですが、大統領選挙を前にして増税に賛成するのは難しいと思われます。国防費削減の実施はタイミングとして大統領選挙後になりますが、国防費のように調達に長い時間のかかるものは、先行きが不明だと種々困難が生じるでしょう。

見通しのつけようがない中で、一つの希望は、民主、共和双方の大統領候補が確定した頃に、超党派の合意が達成されることです。共和党についてはロムニーが選出されることによって、展望が開けるかもしれません。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:52 | 米国 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
北極圏をめぐる勢力争い [2011年12月24日(Sat)]
ワシントン・ポスト12月24日付で、Heather A. Conley元米国務次官補代理が、氷結面積の減少に伴い、北極圏の海底資源の開発や商業用航行が可能になりつつあるので、米国はこの地域の軍事・経済的対処を強化すべきだ、と論じています。

すなわち、北極は変貌しつつあり、今や各国の軍事的駆け引きの場となっている。例えば、ロシアは2015年までに8隻の長距離核ミサイル搭載原子力潜水艦を就役させることを計画、デンマークも北極圏司令部の設置しようとしており、カナダも今後30年かけて艦船28席を建造し、北極艦隊を再活性化しようとしている。中国でさえ科学研究を行うために世界最大の非核砕氷船を建造中だ、

また豊富な海底石油やガス、鉄鉱石、ニッケル、銅、パラジウム、レアアースを獲得しようと、大企業や大国が激しい競争を展開している。米エネルギー情報局は、北極圏には世界の未発見の石油資源の13%、天然ガスの30%があると推定している。さらに、氷が溶けるに従い、貨物輸送量も飛躍的に増えており、あるロシア機関の推定によれば、2010年に11.1万トンだった貨物輸送量は、2012年には100万トンを越える可能性がある、

ところが米国の対応は遅れている。迅速な軍事力展開ができる体制にないだけでなく、アラスカでは砕氷船すら不足している、

こうした中、各国の軍事行動の間で無用の誤解が生ずるのを防止し、事故発生に対処する等のため、合議体を作ることが望ましい。1996年に環境保護と持続可能な開発に関する国際協力のための北極委員会が作られてはいるが、この委員会では軍事や安全保障について協議することは禁じられている、

米国にとって北極圏の安全を確保し、管理することは国家的要請であり、時機を逸する前に行動する必要がある、と言っています。


2011年は北極の氷が近年になく融けた年でしたが、これが恒常化すると(そうなるかどうか不明)、次の可能性が開けます。

先ず、資源開発ですが、国連海洋法が「大陸棚が続いていることを証明できれば、最大350カイリまでを自国の大陸棚とすることができる」と定めていることから、領土と資源にその生存を賭けているロシアが認定確保に熱をいれています。認定されれば、北極海の広い範囲がロシアの排他的経済水域となり、海底資源開発権はほぼロシアに属することになります。

また、欧州から北極・ベーリング海峡を通ってアジアへ至る航路は、今は夏期しか使えませんが、通年使用可能となれば、スエズ運河経由に比べて距離は3分の1短縮、燃料消費も40-50%減少すると言われています。北米東岸から北極・ベーリング海峡を通ってアジアへ至る航路も、パナマ運河経由に比し2割短いと言われています。

こうした事態は日本にも様々な影響を及ぼすことになります。先ず、日本は、北極周辺国の資源大手企業等と共に海底資源の共同開発を行うべく、人脈構築・情報収集を行って行く必要があるでしょう。また、北極委員会のオブザーバーになることも検討すべきでしょう。資源、航路について日本の利益に関することが議論される場ですし、ロシアに対する日本の立場を強化することにも貢献します。

また、北極・ベーリング海峡の航路が通年使用可能になれば、苫小牧、函館、舞鶴などを北極航路のハブ港とすることが可能になります。

さらに、ロシアは太平洋艦隊を増強する計画であり、このことも、ロシアが中国に対抗していくにせよ、共同演習等の協力を強化するにせよ、日本の安全保障にとってかなりのインパクトを有することになります。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:45 | その他 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
金正日後の北朝鮮 [2011年12月19日(Mon)]
ファイナンシャル・タイムズ12月19日付で、Victor Cha元米国家安全保障会議アジア部長が、金正恩への権力継承が上手くいくかどうかわからない、米国としては情勢の進展を見守り、準備をしておくしかないが、北朝鮮政権が崩壊に至る可能性はある、と言っています。

すなわち、北の政権が崩壊する契機として金正日の急死が言われてきたが、それがまさに起こった。金正日は継承準備に14年かけたが、金正恩は後継者指名から3年しか経っておらず、支持固めも十分できていない。金正日の妹、金敬姫とその夫の張成沢が正恩の周りを固めるとされるが、金敬姫は病気と噂されており、軍は金正恩の大将昇格に不満だと伝えられている。1994年の権力継承も困難だったが、今回はもっと困難だろう、

そうした中でワシントンがすべきことは、基本的には情勢を見守りつつ、準備することだ。米韓は、北の不安定化に対処するための軍事計画を持ってはいるが、現段階で軍事行動は不適切だ。と言って、金正恩を含む北指導部に今アプローチするのも不適切だ。内部の実情がわからないし、かえって不安定化を煽る危険性もある、

ところで非常に懸念されるのは核兵器のことだが、北の内部事情を掴んでいるのは中国だけだ。その中国は、これまでは北をめぐる米韓の対話の呼び掛けに対して消極的だったが、今は対話に乗って来ざるを得ないかもしれない。米中韓は北の情勢について同じ情報をもって対応すべく調整すべきだ、と述べ、

金正日後の北朝鮮がどうなるかわからないが、北には経済困難、食料不足、権力移行に伴う不安定化、住民の不満等、分析家が挙げる崩壊の諸要因がいくつもあり、金正日の死はそうした中でも決定的なものになり得る、と言っています。


北朝鮮の不安定化と崩壊の可能性を指摘している論説です。金正日は息子への権力移譲の途上で急死したので、金正恩は後継者として十分確立してない、という指摘は、そうかもしれません。確かに、金正恩は若すぎることや実績がないことから、最高指導者としての権威を確立するまでには時間がかかり、当面は張成沢や金敬姫が後ろ盾となって集団指導体制で行くことになるでしょう。

ただ、チャは、今回の権力移譲は1994年の金正日へのそれよりも困難だと言っていますが、金正恩にとって有利なのは、1994年当時は世襲に反対だった中国が今回はそれを是認、支持していることです。

また、今、米韓が北に対して軍事行動を起こすのは不適切だというのは、その通りですが、中国と協力して北朝鮮の安定化を図るというのは非現実的と思われます。中国とは対話や情報交換はすべきですが、中国は北から米韓の影響力を排除し、北を中国の衛星国のようなものにしたいと考えており、そうした中国と米韓とでは、思惑に差がありすぎます。

いずれにしても、北朝鮮のエリートは現在の体制の維持に既得権益を持っているので、体制の崩壊が起こるとしても、それはまだ先のことと思われます。今は情勢を見守り、北の不安定化への準備をするということでしょう。



Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:58 | 東アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
中国の国内世論と外交政策 [2011年12月18日(Sun)]
米ブルッキングス研究所のウェブサイト12月18日付けで、同研究所Yun Sunが、インターネット等に表現される中国の世論がどのように中国の政策に影響するのか、また、政府当局がそうした世論をどのように誘導あるいは統制するのかを分析しています。

すなわち、中国政府はインターネットについて三段階の統制手段を持っている。第一は政府によるモニターと望ましからぬ情報は配布するなという警告、第二は“インターネット警察”による常時監視と、不適当な情報の削除・ブロック、第三は政府が参加費を払っているネティズンによる政府に有利な世論形成のための投稿だ、

つまり政府は、ナショナリスティックな感情を煽ることも、抑えることも出来るのであり、従って、政府が敢えて介入しない場合は、その意図を推察しなければならない、
 
例えば、2010年初めに台湾への武器売却とダライラマ=オバマ会談が発表された際、中国はもっと抑えた反応も出来たはずだが、そうしなかった。その理由は、世界経済危機以来、中国が自信をつけて遠慮がなくなったこと、そして、中国の怒りを表明するのに世論を使うのが有効だと思ったからだろう。世論に応えねばならなかった、と中国政府は言うかもしれないが、その世論なるものの一部は、元々、政府自身が作り出したものだ、

また、2010年10月の尖閣問題に対する中国の反応は激しく、各地で反日デモが起き、日本への厳しい対応を求める声が強かったが、デモが許されたこと自体、国民の感情を発散させるべく、政府の暗黙の許可があったと解すべきだろう。デモは自発的なものだったとしても、政府は統制手段を持っているのだ。現に2005年のデモでは、政府はデモを禁止し反日言動を統制している、と指摘し、

要するに、言論や報道の自由の無い国の世論というのは、神話なのだ。ナショナリズムに訴えるのは、世論の支持を得る簡便な方法であり、選挙による国民の信託を受けていない政府は自らの正統性を維持するために、世論に訴える必要があるのだ、と言っています。



筆者の経歴は不明ですが、中国内部の事情をよほど詳細にフォローして来た人のようです。しかもその判断はバランスが取れて正確であり、何らかの立場に捉われている気配がないところを見ると、発言について中国政府から拘束を受けていない人のようです。

2010年初頭の中国の態度の急変は、筆者の言う通り、中国が経済面で自信過剰となった結果と推測されますが、それに加えて、2009年にオバマ政権が、オバマ訪中に備えて、台湾への武器供与やダライラマとの会見を差し控え、ウイグル暴動デモ弾圧への批判も抑えたことが、中国国内のタカ派を増長させた面もあったように思われます。そのタカ派は、今また2012年の政権交代前の権力闘争において、いったん得た発言力を譲らないということがあるのではないかと思われます。

2005年春の反日デモは、筆者の言う通り、急ブレーキがかけられましたが、これは反日デモが反政府デモに転化するのを政府が恐れたからでしょう。そのため、時の小泉首相による8月15日の靖国参拝に対して中国ではデモは起きず、インターネットでも反対論は一切登場しませんでした。

筆者の言うように、中国の世論なるものは神話であり、当局が統制できるものだというのはおそらく本当なのでしょう。インターネットの普及により中国で世論の影響力が増大することに期待する論もありますが、全体主義国家における世論というものは、ヒットラー政権の例を見ても、全体主義に奉仕する面の方が大きいのかもしれません。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 19:18 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
人民元の国際化? [2011年12月15日(Thu)]
ファイナンシャル・タイムズ12月15日付で、米外交問題評議会のSebastian Mallabyが、中国は対ドル依存を低めるため、人民元の国際化を推進しようとしているが、リーマン・ショックで中国経済が打撃を受けたのは中国が主張するようにドル依存のためではなく、中国の国内経済政策のためだった、中国は輸出依存体制からの脱却など、国内経済政策を変換すべきで、それをせずに人民元を国際化するのは困難だろう、と言っています。

すなわち、1年前はほぼ皆無だった人民元決済の貿易額が今年前半には9570億元になり、香港の人民元の預金額は6200億元と、2008年の10倍以上になるなど、人民元の地位の向上は著しいものがある。従って、近い将来、人民元が世界の主要準備通貨になると予測する向きがあるのも無理は無い、

このような人民元の台頭は、2008年後のいわゆる「ドルの罠」に対する中国の反乱に始まる。リーマン・ブラザーズの破産まで、中国は1.5兆ドルの米国金融資産を持っていたが、米国政府関係で最大の貸し手、Fannie Maeと Freddie Macが倒産したことで、中国が莫大な損失を蒙る可能性が明らかになった。同時にリーマン・ショック後のメルトダウンで中国の輸出に対する世界の需要が崩れ、中国の成長は2009年初めに大きく後退、中国指導部は、中国が米国の経済管理に依存しすぎていると判断した、

しかし、この判断は正しかったものの、中国は当然取るべき対策――米国の金融資産の増加をやめて人民元を切り上げる、輸出依存をやめて多極化する等――は取らずに、大規模な景気刺激策を取り、そのため構造的余剰は一時的に隠蔽されてしまった。その一方で、中国の困難の原因はドルを基軸とする金融体制にあるとして、その改革に乗り出した、

しかし、中国の莫大な外貨準備の積み上げの原因は貯蓄と輸出の過剰にあり、ドルの支配とは関係ない、

中国はドルに対抗するために人民元の国際化を進めようとしているが、これは実は中国の経済モデルのほとんどの側面と矛盾する。なぜなら、中国の成長の奇跡を支えてきたのは、資本規制、優遇会社への人為的に安いローン、そして管理された為替レートだったが、人民元の国際化はこれらすべてを弱めてしまうからだ、

実際、国際化すれば、外国の投資家が人民元を取得できるようになるため、人民元に上昇圧力がかかり、中央銀行は上昇阻止のため、人民元を売ってドルを買うことになる。つまり中国がドルの罠を避けるために人民元を国際化しようとすると、その結果、莫大なドルの保有がさらに増えるという逆説的な結果を生むことになるだろう、

このように、人民元の国際化は、中国の時代遅れの経済モデルとの戦いが進んでいないことをかえって浮かび上がらせることになろう、と言っています。


中国が国際金融における人民元の地位を高めようと思っているのは間違いありません。それはここでも指摘されるような「ドルの罠」に陥らないようにしたいということの他に、世界第二位の経済大国に相応しい政策を取るという考慮もあるためだと思われます、しかし人民元が完全に交換性を持たない限り、人民元の真の国際化はありえず、真の国際化は、論説が指摘するように、中国の現在の国内経済政策の根幹に抵触するので、中国が近い将来、人民元の真の国際化、すなわち管理されない変動相場制に移行するとは考えられません。

たとえ中国が人民元を国際化するといっても、それは徐々にかつ慎重にその方向に向かうということでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:11 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
「アラブの春」が産んだ宗派対立 [2011年12月15日(Thu)]
National Interestのウェブサイト12月15日付けで、テルアビブ大学のYoel GuzanskとBenedetta Bertiが、「アラブの春」による民意の自由化、解放は、むしろ宗派対立を噴出させることとなった、と論じています。

すなわち、元々、中東諸国は多様で異質な民族、宗教、宗派が混在しているが、「アラブの春」はそうした既存の亀裂をかえって深めている。もっとも、その現われ方は、チュニジアやエジプトではイスラム主義と世俗主義の対立の激化、リビアやイエメンでは部族主義に基づく対立、というように国によって違う。中でも、「アラブの春」を方向付ける最も重要な亀裂として浮上してきたのが、シーア派対スンニ派の対立だ、

これは、民衆の抗議運動の漠然とした要求内容、団結力ある市民社会の欠落、明らかに民衆の要求に応えていない政権等が、団結と目標の統一を促す手段として抗議運動がますます宗派的アイデンティティーに頼る状況を作り出しているからだ、

そうした中、シーア派対スンニ派の対立が顕著に現れているのが、シリア、バーレン、サウジアラビアだ。サウジは、シリアの騒擾を、イランの勢力を排除し、スンニ派を強化する機会と捉えている。また、イラクも、米軍の撤退によるイランの影響力の増大を危惧している。特に、もしイランがシリアを失えば、イランは益々イラクに足場を求めようとする可能性がある、

最も危惧されるのは、イラン=イラン支援の過激派連合と、サウジ=トルコのスンニー派連合との対立だ。目下、問題の焦点はシリアであり、アサド政権が倒れれば、シーア派とスンニ派の対立が全中東で燃え上がる可能性がある、と言っています。


これは、イスラエルの政治学者、地域専門家の分析なので、「アラブの春」とアラブの民主化自由化を称えるだけの米国の理想主義的な論説と違い、冷静な地域情勢分析として傾聴に値するものがあるように思われます。

ただ、シリアはそう簡単には崩れないでしょう。アサド政権は、アラウィ派の固い団結力の下に、軍、警察、情報機関が効率的に結束している強固な支配体制であり、今回の「アラブの春」も生き抜くだろうと思われます。

しかし、それだけに、万が一アサド政権が崩壊した場合の影響は、測り知れないものがあるでしょう。特に、最大の反対勢力であり、従来から苛酷な弾圧を受けて来たモスレム同胞団を中心とする勢力が政権を取った場合、それが対イスラエル、対米関係にいかなる影響を及ぼすかは、深刻な問題です。影響がエジプトの政局にまで及べば、エジプト=イスラエル平和協定の継続も危うくなり、第五次中東戦争の可能性も出て来ます。そうなれば、イランの介入、それに対するイスラエルのイラン核施設攻撃もありえ、中東全体が大動乱となる恐れさえあります。

今回のシリアの危機はおそらくそこまでは行かないでしょうが、このイスラエルの専門家の指摘も無視できないものがあると思われます。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:03 | 中東 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
北朝鮮が対米重視から対中重視に転換 [2011年12月08日(Thu)]
ロサンジェルス・タイムズ12月8日付で、米スタンフォード大学のRobert CarlinとJohn W. Lewisが、北朝鮮は、5月の金正日訪中を契機に対米関係改善の努力を放棄し、中国に依存することを決めたので、今後米朝間の対話が再開されたとしても成果は期待できない、と論じています。

すなわち、1年以内で3度目となる金正日の5月の訪中に際し、中朝の間で、2012年は両国にとって共に重要な国内政治日程(金日成生誕100周年記念と強盛大国の建設、中国共産党の第18回党大会)があるので、政治的安定が必要だとの認識で合意があったようだ。金正日は短期的には問題を起こさないことを公式、非公式に約束したようで、これは、軍事的挑発や、核実験、ミサイル発射などは行わないということだろう。ただし、合意はそこまでであり、金正日は要求通りの援助を中国から受け取ることはできなかったし、胡錦濤の方も北から非核化について意味ある譲歩は得られなかったようだ、

しかし、北朝鮮は、1990年代初めから続けてきた対米関係重視から対中関係重視に転換したと思われる。北朝鮮が問題を起こさないということであれば、それは結構なことのように思えるが、その間、核兵器や運搬手段の開発は進むことになる。北朝鮮は、時間がたてば、世界がインドやパキスタンの核保有を認めたように、いずれ北の核も認めるようになるはずだと考えているのだろう、と述べ、

北朝鮮が米国の要求する核開発抑制の為の事前措置に同意する可能性がないとは言えないが、そうした一方的措置は短期的な効果しかなく、双方の長期にわたる真剣な交渉が行われない限り、既に死に体となった六者協議と同様に大した意味は持たないだろう、と言っています。


論説の筆者達は、北朝鮮が対米関係重視の姿勢を放棄した以上、米国と北朝鮮との対話は意味が無いとしていますが、米国が食糧支援の用意を示していることに対し、北は、対話を望み、事前措置についても何らかの譲歩をほのめかしているかもしれないとも伝えられています。北朝鮮が当面悪さをしないということであれば、それはそれなりに良いことであり、あまり否定的にとらえるべきではないでしょう。交渉を続けている間に、北の状況変化によって核放棄の可能性が出てくることも全くあり得ないと断定する必要はなく、その間、一定の安定が得られるとすれば、意味はあるかもしれません。



Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:11 | 東アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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