米経済の日本化を警告
[2011年10月31日(Mon)]
ロイターのウェブサイト10月31日付で、米PIMCOのMohamed El-Erian社長が、米国経済で「日本化」が進行中だが、米国は、雇用や消費が伸びない低成長に日本のように上手く処すことはできないだろう、と断じています。
すなわち、「日本で起きたようなことは米国では起きない」などともはや言えなくなってきた。米国は自国の経済問題に対処できない日本を馬鹿にしてきたが、今やバブル崩壊後の事態に対処するのがいかに難しいかがわかってきた、
バランスシートを縮めることが緊要となるから、金融や財政支出による米国史上最大の景気刺激策も効果を発揮しない。低成長が続くと、債務の削減も思うに任せず、経済は上向かないどころか下降を続けてしまう。その間に悪化する雇用不安は弱年層を直撃する、
加えて構造問題がある。政治が必要な改革を実行する能力を失ってしまっているし、国際経済自体が逆風下にある中で、ただでさえ困難なバブル後不況からの脱却はなお一層難しくなる、
これこそが、日本がここずっと経験してきたことだ。ただ、日本は難局に対して「相対的に上手く」処してきた。それを可能にしたのは、@日本社会の一体性と、それがもたらすセーフティネットであり、A対外純債権だ。米国にはこれが決定的に欠けているので、外からの資金フローの変動に対するクッションがない、
だから結果はより深刻で、経済的コストはより高くなり、金融の脆弱性もより深刻になり、社会的混乱も大きくなるだろう。これは既に「ウォール街を占拠せよ」運動で現実化している、
処方箋はまず何よりも、米国当局者が頭を切り替え、日本で起きたことが自分たちに起きるはずはないなどという考えを捨て、マヒ状態の政治を建て直し、必要な施策を打つことに尽きる。早ければ早いほどよい。ただし、米国は下手をすると日本より悪くなる、と言っています。
日本人としては、一方では米国に弱くなられては困ると思いつつも、ようやくわかってくれたのかと言いたくなります。ポール・クルーグマンらを筆頭に、「いかに日本は特殊であって米国は大丈夫か」を主張する者ばかりが目立ったのが近年の米国の風潮だったからです。
不況が2〜3年続いただけで、米国、英国、その他欧州主要国では街頭運動が起き、治安維持が危機にさらされかねない状態になりました。他方、日本は不況と20年付き合い、そうした中でも社会構造は概して破綻がありません。通りに出て乱暴を働く者もいませんし、9.11の大震災を経ても事情は変わりませんでした。かつ、その間には不良債権をすっかり処理し、今では先進国の中で最も身ぎれいな銀行セクターを持っています。こうした能力はもっと評価されてよいのかもしれません。
なお、ピムコは約108兆円と巨額の運用資産総額を誇る、世界有数のアセットマネジメント会社であり、同社の最高経営責任者兼共同最高投資責任者であるエラリアンは、誰もが耳を傾けたがるトップスター級のエコノミストです。そうした人物の日本評価は強い浸透力があり、これは、この先しばらく日本についての言説を規定することになるかもしれません。
すなわち、「日本で起きたようなことは米国では起きない」などともはや言えなくなってきた。米国は自国の経済問題に対処できない日本を馬鹿にしてきたが、今やバブル崩壊後の事態に対処するのがいかに難しいかがわかってきた、
バランスシートを縮めることが緊要となるから、金融や財政支出による米国史上最大の景気刺激策も効果を発揮しない。低成長が続くと、債務の削減も思うに任せず、経済は上向かないどころか下降を続けてしまう。その間に悪化する雇用不安は弱年層を直撃する、
加えて構造問題がある。政治が必要な改革を実行する能力を失ってしまっているし、国際経済自体が逆風下にある中で、ただでさえ困難なバブル後不況からの脱却はなお一層難しくなる、
これこそが、日本がここずっと経験してきたことだ。ただ、日本は難局に対して「相対的に上手く」処してきた。それを可能にしたのは、@日本社会の一体性と、それがもたらすセーフティネットであり、A対外純債権だ。米国にはこれが決定的に欠けているので、外からの資金フローの変動に対するクッションがない、
だから結果はより深刻で、経済的コストはより高くなり、金融の脆弱性もより深刻になり、社会的混乱も大きくなるだろう。これは既に「ウォール街を占拠せよ」運動で現実化している、
処方箋はまず何よりも、米国当局者が頭を切り替え、日本で起きたことが自分たちに起きるはずはないなどという考えを捨て、マヒ状態の政治を建て直し、必要な施策を打つことに尽きる。早ければ早いほどよい。ただし、米国は下手をすると日本より悪くなる、と言っています。
日本人としては、一方では米国に弱くなられては困ると思いつつも、ようやくわかってくれたのかと言いたくなります。ポール・クルーグマンらを筆頭に、「いかに日本は特殊であって米国は大丈夫か」を主張する者ばかりが目立ったのが近年の米国の風潮だったからです。
不況が2〜3年続いただけで、米国、英国、その他欧州主要国では街頭運動が起き、治安維持が危機にさらされかねない状態になりました。他方、日本は不況と20年付き合い、そうした中でも社会構造は概して破綻がありません。通りに出て乱暴を働く者もいませんし、9.11の大震災を経ても事情は変わりませんでした。かつ、その間には不良債権をすっかり処理し、今では先進国の中で最も身ぎれいな銀行セクターを持っています。こうした能力はもっと評価されてよいのかもしれません。
なお、ピムコは約108兆円と巨額の運用資産総額を誇る、世界有数のアセットマネジメント会社であり、同社の最高経営責任者兼共同最高投資責任者であるエラリアンは、誰もが耳を傾けたがるトップスター級のエコノミストです。そうした人物の日本評価は強い浸透力があり、これは、この先しばらく日本についての言説を規定することになるかもしれません。