CANPAN ブログ検索
Loading
  • もっと見る

世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


プロフィール

特定非営利活動法人 岡崎研究所さんの画像
Google

Web サイト内

カテゴリアーカイブ
最新記事
最新コメント
△小泉純一郎前首相の医師久松篤子
英米関係は共通の理念に支えられる (10/08) 元進歩派
実績をあげているオバマ外交 (09/21) wholesale handbags
タクシン派のタクシン離れ (07/04) womens wallets
豪の新たな対中認識 (07/04) red bottom shoes
バーレーン情勢 (07/02) neverfull lv
石油価格高騰 (07/02) wholesale handbags
金融危機後の世界 (07/02) handbags sale
米国の対アジア政策のリセット (07/02) neverfull lv
ゲーツのシャングリラ演説 (07/02) handbags sale
パキスタンの核の行方 (07/01)
最新トラックバック
リンク集
月別アーカイブ
https://blog.canpan.info/okazaki-inst/index1_0.rdf
https://blog.canpan.info/okazaki-inst/index2_0.xml
新台湾防衛論 [2011年09月29日(Thu)]
ウォールストリート・ジャーナル9月29日付で、米AEIのDan Blumenthalが、台湾防衛の新戦略を提案しています。すでに米台双方はこの線で動き始めているらしく、本記事はスクープ的なものと言えるかもしれません。

すなわち、米国は台湾に対し、新規のF-16戦闘機は供与しないという決定を下したが、これで北京は、米国の対台湾武器売却について、声高に反対すれば、「拒否権を行使できる」かのような印象を与えることになった、

しかし、米国はF-16のような「大物」の供与には尻込みせざるを得ないとしても、やれることはまだある。それが、目下ワシントンと台北が合同で策定しようとしている「新台湾防衛戦略」だ、

これは、台湾は中国と等量等質の軍事力を持たねばならないという観念を捨てるもの、つまり対称性の追求を放棄し、「非対称」の軍事力整備を追求するものだ。具体的には、中国のお株を奪うような「接近阻止」能力の獲得を目指し、台湾の周囲を機雷、潜水艦、高速攻撃船、高度の対空防備網、ミサイルなどで固めて台湾を城塞化する。こうした戦略には巨艦は必要ない、

また、城塞防備のためには、地雷や火器、その他の殺傷兵器の活用と十分なストックが重要になり、陸軍の狙撃能力を高め、警防団的組織などを武装させることも必要になる、と述べ、

こうした台湾軍の再編成こそが効果的だ、と言っています。


ここで言われるような台湾軍の大胆な再編成が効果的だとする裏には、地上部隊を台湾に上陸させて血なまぐさい戦いをする覚悟は、中国人民解放軍にはないだろうという判断があります。

とすれば、台湾としては、ミサイル第一撃に耐える能力(survivability)を持つと同時に、中国軍が簡単には台湾周囲の領域は立ち入れないようにする接近阻止能力を持てばよく、さらに、万一上陸してきた中国軍に対しては、多量の流血を強いるような備えをしておけばよいということになります。

だからこそ、「非対称」な軍備を持つとともに、「確実な戦闘力(combat credibility)」、「残存能力(survivability)」の3つを備えることが重要とされるわけです。しかもこの場合、米国は「大物」の装備を売る必要に迫られないので、その分、中国の喧しい反発を招かずに済むという利点もあります。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:46 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
日中関係の今後 [2011年09月28日(Wed)]
ナショナル・インタレスト誌で、米AEIのMichael Auslinが、日中関係については、双方の利益が合致する経済関係を優先して話し合い、信頼を醸成した後で、安全保障などの難しい問題に取り組むのが適切なアプローチではないか、と論じています。

すなわち、アジアの安定と繁栄は、日中関係がどうなるかによるところが大きい。その日中は、経済的には相互依存関係にあるが、政治的には、関与とアジアにおける影響力・領土・軍事をめぐる競争との間で揺れ動いている、

日中は世界第3、第2の経済大国であり、中国は日本の最大の貿易相手だ。また、日本企業は中国本土でほぼ1千万人を雇用している。しかし両国は競争関係にあり、相手の意図に不信を持っている。特に昨年は尖閣事件があり、悪感情を残した。そうした対決は稀ではあるが、最近の政治関係は肯定的というより否定的だ、

日中が関係改善するのが望ましいが、双方ともに重要問題で妥協する意思はない。東京では、中国との差を埋められると思う者はほとんどいないが、中国が日本の長期的安全保障に脅威を与えると考える人間は大勢おり、中国の軍事力増大が懸念されている、

そうした状況では、日中はまず、双方を結びつける貿易その他の経済問題を討議する方がよいだろう。それによって信頼を醸成し、その後でより困難な安全保障問題などに取り組むべきだ。もっとも、何十年にわたる軍事分野などでの相互不信をなくすのはなかなか困難だろう。結局、尖閣事件のような危機がなければ、日中は意味のある関係改善なしにまあまあやっていく、ということになろう、と言っています。


日中関係の今後については、尖閣問題等で中国が示した高圧的態度と、それへの民主党政権の不適切な対応もあって、日本国民の対中反発は根強いものになっています。従って日中関係の将来は楽観できないという点では、オースリンの言う通りです。

ただ経済的相互依存がある上に、中国は、日米同盟は強固だと考えているので、大きな危機が起こるとは予想されません。しかし、力のバランスが中国有利に傾いてきていることは否定できず、日本としては、力のバランスを回復するために、装備面でも防衛体制を強化し、集団的自衛権の不行使などの政治的制約も打破するなど、積極的に措置を講じて行く必要があります。

中国が台頭してきた今、周囲に脅威を与えない、軍事的に弱い日本がアジアの平和に資する、という第2次大戦後の発想は日ごとに妥当性を失ってきており、脅威を与えるか否かではなく、脅威にどう対応していくかが日本にとっての課題になってきたと思われます。

オースリンは論説の中で、日中を、実力が伯仲するかのように扱っていますが、国際的影響力は今では中国の方がずっと上であることは認めざるを得ません。かつて日米中正三角形論というものがありましたが、今の中国は、米中EUの三角形を考えており、日本のことは、国家意思が明確でない、影響力も今後どんどん減退していく中程度の国と見ているのではないかと思われます。

李鵬が昔、「日本のような国はいずれ消えてなくなる」と言ったことがありますが、そうならないように日本は集団的自衛権や武器輸出などの諸問題にもっと真剣に取り組む必要があります。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:55 | 東アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米国の対ビルマ政策 [2011年09月27日(Tue)]
ヘリテージ財団のWalter LohmanとRobert Warshawが、同財団の9月27日付ウェブサイトで、昨年は選挙を実施し、最近はアウンサン・スーチーを釈放するなど、このところビルマは改革で注目されているが、こうした動きは、ビルマがASEAN議長国になるためのPRキャンペーンに過ぎない可能性があるので、本当の改革があるまで、米国は制裁を堅持し、関与を制限すべきだ、と言っています。

すなわち、昨年11月の選挙は茶番であり、スーチーの釈放およびテイン・セイン首相との会談も、進展ではあるが、政権側はスーチー陣営の影響力は限られていると計算したのであろう。実際、スーチーの言動範囲は限られており、二千人の政治犯まだ刑務所にいる、

ビルマは、Freedom Houseが最低の自由度と位置づけ、Transparency Internationalが腐敗度で世界第2位としたように、制裁解除に値する国からはほど遠く、ミッチェル米特使も、ビルマ訪問後、成果はなかったとしている、

現ビルマ政権は、権力維持を最大の優先事項にしており、正統性がないためにむき出しの力でしか、政権を維持できない。ビルマが本当の改革に乗り出すまで米国は制裁を継続すべきだ、と言っています。


論説は、改革が不十分として、制裁の堅持など、対ビルマ強硬策の継続を主張していますが、問題は、これまでこうした強硬策は成果を上げていない上に、ビルマを中国側に押しやる結果になっていることです。

ビルマは、2014年にASEAN議長国になりたいがために化粧直しをしており、それを更に促進させる手があるのかどうかはわかりませんが、ただ排除一点張りでいくのではなく、関与や対話の機会をもつ方がよりよい結果につながるように思われます。

要するに、国内体制を理由に、関与を制限する政策は、再検討を要するように思われます。それに、国内改革の推進は、外国には手に余ることが多いものです。

ビルマは資源に恵まれ、地理的にも中東の石油を中国に運ぶパイプラインを建設できる位置にあり、重要な国です。日本は伝統的に良好な関係にありましたが、今はそうでもありません。米国やASEAN諸国、インドの考えもよく聞き、情勢分析も緻密にやって、国際政治上の利害得失を重視した、バランスのとれた政策を展開していくべきでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:51 | 東南アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
パレスチナ国連加盟申請 [2011年09月25日(Sun)]
ファイナンシャル・タイムズ9月25日付社説が、和平は最終的には当事国のみが達成できるが、「二国家解決」が国際的介入抜きで実現できると考えるのは幻想であり、パレスチナの国連加盟申請を契機に関係国は和平交渉を活性化すべきだ、と論じています。

すなわち、アッバスがパレスチナ国連加盟申請に踏み切ったことを欧米は非難するが、西側はこれを、この20年の和平交渉が失敗だったこと、そして「二国家解決案」は死にかけていることへの警告と受け止めるべきだ。それに、アッバスの姿勢は、アラブ世界で今広がっているムードに合致している、

他方、イスラエル政府は、アラブの覚醒がイスラエル周辺地域を変え、イスラエルに対して厳しい人々を増殖させている中で、パレスチナ占領を終わらせることが安全保障の最善の方法であることを理解できていない、

現実には、米国の拒否権行使によって申請が承認される可能性はないが、そうなれば、米国はアラブ世界で信頼性を失い、欧州はリビアでの成功の利益を失いかねず、関係国はみな傷つく、

1967年国境を基に土地交換による調整をしてパレスチナ国家を創る、という和平協定の大筋は前から明確になっているのだから、これを国連決議に盛り込むべきだ。最終的な和平は当事者にしかできないが、国際社会はその実現に向けて介入すべきだ、と言っています。


この社説が言っていることは的を射ています。アッバスにとって、今回のパレスチナ国連加盟申請はやむを得ない選択だったと思われます。オバマは、国際法に違反する西岸の入植活動を止めさせようとして、イスラエルの拒否にあい、イスラエル説得を断念したのであり、そうした状況の中で、直接交渉による解決を訴えてもアッバスとしては聞けないでしょう。

こうしたイスラエル寄りの姿勢のために、米国が中東和平仲介者としての信頼性を失いつつある一方、ムバラクが失脚した今、アラブ諸国やトルコはますますイスラエルに厳しい姿勢をとり始めています。

それに、アッバスの申請はパレスチナ人を熱狂させましたが、米国の拒否権発動のためにそれが通ることはなく、幻滅したパレスチナ人による暴力の再燃が危惧されます。そうなれば、エジプト新政権もエジプト=イスラエル和平を維持できなくなるかもしれません。ネタニヤフに強い圧力を加え、中東和平を進展させることが急務です。

なお、安保理でこの件が棚上げになった場合、パレスチナ側は総会でヴァチカン市国のようなオブザーバー「国家」の地位を求めるだろうと言われています。これを認めるのは、従来からのパレスチナ人民の自決権の尊重に合致することであり、日本としては賛成すべきでしょう。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:24 | 中東 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
プーチン復活 [2011年09月25日(Sun)]
プーチンのロシア大統領復帰に関連し、エコノミスト9月24日付とファイナンシャル・タイムズ25日付が社説を出しています。

エコノミストは、プーチンが大統領に復帰し、メデヴェージェフが首相になるという職責交換によって憲法は守られたが、別の観点からすれば、全ては茶番だ、

この3年を振り返ると、メドヴェージェフは改革の旗手にはならず、言論空間を少し広めただけだったし、プーチンはロシアの政治を自分の思い通りに変え、選挙結果が当局の欲したようになる政治システムを作り出した、

プーチンの復帰自体はニュースではなく、プーチンが資源依存からの脱却や、汚職摘発、不安定な地域への新政策を打ち出せば、本当の意味でのニュースになる。しかし、プーチンが現状維持を選べば、ロシアは歴史的により危険なことになるかもしれない、と言っています。

また、FTは、ソ連崩壊から20年を経て、ロシアの選挙民は実質的にプーチン1人となり、そのプーチンが自らの大統領復帰に投票した。もっとも、メドヴェージェフ大統領時代もプーチンが実質的に最高指導者だったのだから、この決定自体はさほど重要ではない、

ただ、メドヴェージェフは少なくとも現代化を提唱したが、プーチンは保守的であり、プーチンが約束した安定は時が経つにつれて、ロシアの発展を阻害するものになってきている。また、オバマもメルケルも、プーチンよりメドヴェージェフと話しやすい関係にあったので、プーチンの大統領復帰は後ろ向きの一歩だ、

そして、プーチンが国内の改革を躊躇すれば、権力から滑り落ちる危険の種を蒔くことになる。国民の不満は高まっており、若者は統制されたテレビではなくインターネットでニュースを見ている。そうした変化を考慮しないと、プーチンもアラブの独裁者のように、ソーシャル・ネットワークと街頭の力に驚かされることになりかねない、と言っています。


両社説とも常識的な見解を表明しており、賛同できます。プーチンはロシアを近代化する政策を打ち出せず、安定は達成したものの、その結果としてロシア社会にブレジネフ時代のような「停滞」をもたらしてしまいました。経済も「木の生えたサウジアラビヤ」と揶揄されるような資源依存体質になり、政治的支持の見返りに石油収入をばら撒くやり方が採られ、汚職は構造的なものになっています。

国民は反抗すればひどい目に合わされるので、反抗はしない代わりに、ロシアを見捨てる方向となり、ある調査では、なんと企業家の50%以上、学生の50%以上が国外移住を考えています。また出生率も低く、日本以上に人口が減ってきています。将来、石油価格が下がれば、ロシアはますます困難な状況に置かれることになるでしょう。

こうした社会情勢を見ると、ロシアは衰退期に入ったように思われます。これを逆転する必要がありますが、治安機関出身で統制メンタリティの強いプーチンには、おそらく難しいでしょう。そのプーチン時代が今後12年続くわけです。プーチンの政権基盤はとりあえず磐石ですが、今後困難に直面する可能性は大でしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:58 | ロシア・東欧 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
北朝鮮の核使用能力 [2011年09月22日(Thu)]
Nautilus InstituteのPeter HayesとScott Bruceが、Nautilus Institute Report に研究論文を掲載、北朝鮮が核を使うとしたら、米韓軍の侵攻を防ぐために北朝鮮内で核兵器を爆発させる、というのが唯一ありうるシナリオだ、と言っています

すなわち、自国への侵略・攻撃を抑止・撃退するために核を使う、という脅しを実行する能力が北朝鮮にあるとは思えない、

先ず、おそらく原爆5〜10個分のプルトニウムしかない北は、原爆1個を使っただけで核能力の10-20%が消費されてしてしまうため、使用はよほど効果を考えなければならない。また、衛星打ち上げ実験に失敗しているので、長距離ミサイルは当分当てにならず、中・短距離ミサイルも精度に欠けるので、ミサイル核攻撃が成功する確率は極めて低い、

爆撃機による原爆投下も、北の爆撃機は旧式のソ連製なので、撃墜される可能性が高く、あまり考えられない。小型船舶や小型潜水艦を使った海上からの核攻撃も、発見される危険が大きく、攻撃されて撃沈ないし捕獲されれば、原爆を失うことになるのでリスクが大きすぎる、

ただ、防衛的に核戦力を使うことはできる。それは、@米韓軍に攻撃されそうになったら、警告を発して攻撃を阻止するために、核爆発を行う、A米韓軍が北朝鮮に侵攻してきたら、米韓軍に対して使う、というものだ。しかし、@は放射能が韓国に広がる可能性が高く、米韓が激しく反応するだろうし、Aは北が核爆発に手間取ったり、通信管理を失ったりすると、米韓軍に核を奪われる可能性がある、

それに、核爆発が戦術的に成功したとしても、それは北の国家崩壊につながるだろう。北朝鮮軍は米韓軍の比ではなく、北が核を使えば、米韓は通常兵力で北朝鮮を解体し、核兵器を使用すればどうなるかを、潜在的核拡散国に対して示すだろう、

他方、米国が北を核攻撃するとしたら、潜水艦搭載ミサイルによる可能性が高いが、ミサイルの軌道によっては中国の反発と介入を招く危険がある、

このように、朝鮮半島の当事国はいずれも核兵器を使用する選択肢は狭く、結局、通常戦力が朝鮮半島の安定のカギであり、それは今後も変わらないだろう、と言っています。


論説は、核兵器は北にとって戦力的に役に立たず、米国も北を核攻撃できない、従って、米朝はもう一度交渉の席に戻り、朝鮮半島で核は有用でないことを認識すべきだ、と言っているわけです。

しかし、北のミサイル・システムは信頼性に欠ける、と言っていますが、短距離ミサイルが果たして全く信頼性に欠けると断定できるのか、十分吟味する必要があります。

また、唯一北朝鮮が核を使えるのは、米韓軍に攻撃されそうになったか、攻撃されたとき、米韓軍を威嚇もしくはこれに対抗するために、自国内で核爆発をさせることだ、と言っていますが、北がいくら手段を選ばずといっても、自国内で原爆を爆発させることはちょっと考えられません。

それに、仮に論説が言うように、北朝鮮の核能力はいざという時に敵の攻撃に使えないとしても、だから北にとって核は有用ではないということにはなりません。米国や世界が北朝鮮を重視するのは核があるからであり、核が究極の切り札であることは、誰よりも北朝鮮が一番よく知っているはずです。その切り札を北が手放すことは考えられません。

結局、そうした北朝鮮といかに関与すべきか、解は見出せていません。



Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:11 | 東アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
印越枢軸 [2011年09月22日(Thu)]
ウォールストリート・ジャーナル9月22日付で、英King’s College LondonのHarsh V. Pant教授が、南シナ海に印越枢軸が出現しつつある、中国は勿論それに反対であるが、印越がしっかりしていれば、これは中国の穏健化に役立つかもしれない、と論じています。
 
すなわち、インドの国営石油ガス会社の南シナ海進出に対して、中国は、これは中国の許可を要することだ、との警告を発したが、そうした中国に対し、今度はベトナムが、1982年の海洋法を盾にベトナムの権利を主張した、

インドは、そうしたベトナムに対し、中国に対する抑えとなる安全保障上の役割を期待している。それに、インドもベトナムもソ連技術の武器を使っているので、インドにとってベトナムは比較的援助し易い。また、両国とも米国と協力出来る可能性を秘めている、と述べ、

中国は印越接近を妨げようとしているが、印越が確固たる態度を示せば、これは中国の穏健化に役立つかもしれない、と言っています。


ベトナムは強悍なる独立国家です。モンゴルの征服を許さず、自力でフランス占領軍を駆逐し、米国に勝ち、中国軍の侵入も退けてきました。その一方、独力でも戦う用意はありますが、同盟国が必要な場合は、例えば独立戦争の時は中国、ベトナム戦争の時は中ソなどからの援助も利用してきています。今回のインドとの接近も、対中国という観点からは、ベトナムとして厭うところではないでしょう。

こうしたベトナムは、中国の興隆に対抗する東アジア戦略を考える時に、最も頼りとなる独立国家の一つです。米国にとっては、ベトナムが今でも共産党一党独裁国家であることや、ベトナム戦以来のしこりがあるために、協力関係に入りにくい面がありますが、昨年ヒラリー・クリントンは敢えて訪越し、南シナ海問題を取り上げています。

今後の見通しとしては、インドが中国の脅しに屈する、あるいは、中国との間で何らかの政治的妥協に達して南シナ海から引き揚げない限り、印越協力は、南シナ海の国際バランスの一要素となると思われます。



Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:45 | その他 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
オバマ政権の台湾政策批判 [2011年09月19日(Mon)]
米ヘリテージ財団の9月19日付サイトで、同財団のDean Chengが、オバマ政権はやっとF-16戦闘機の台湾への売却問題について決定を下したが、これは、台湾・中国双方から非難されるまずい決定であり、台湾の与党、野党双方との関係も損なってしまった、と言っています。

すなわち、中国軍の関心の焦点は依然として台湾であり、中台の軍事バランスはますます中国に有利になってきた、とする「中国の軍事力に関する年次報告」が米国防省から出されたばかりなのに、そうした中で、オバマ政権は、台湾には新型のF-16C/Dは売却せず、旧型のF-16A/Bを改良するという決定を下した、

決定に時間がかかった理由は定かではないが、オバマ政権は、中国から改良型についての黙認をとりつけようとしたのだろうか?中国は新型でも、改良型でも、反対することは当初から予想されたことだ、

他方、F-16C/Dの売却を繰り返し要請してきた馬英九は、米国の支持を得られなかったとして、選挙に不利な影響を被るかもしれない。そこで、バランスをとろうとしたのか、ファイナンシャル・タイムズの先週の記事によると、ホワイトハウスは台湾内政に干渉するような発言を行った、
  
それによると、「米国のある政府高官」が、野党総統候補の蔡英文が当選すれば、中台間の緊張が高まることになるので、蔡の当選は望まない、と言ったということだ。
 
こうした発言は、友好的な民主主義の台湾に政治的影響力を及ぼそうとする不適切な行動であるばかりか、中国の怒りを買わないために、オバマ政権はそこまでするのか、と思わせるものだ。オバマ政権は、米国のクレディビリティのためにも、この件について何をしようとしているのかを説明すべきだ、と言っています。


チェンは、今回のオバマ政権の決定は、中国、台湾双方から非難されるような好ましからざる決定だ、と言っていますが、実態をみれば、米国はあくまでも対台湾考慮よりも対中国考慮を優先したということに尽きるでしょう。中国は、表向きは、改良型も含めて台湾向けの兵器輸出の全てに反対する立場をとっていますが、内心ではF-16C/Dが売却されなかったことに安堵しているに違いありません。
 
ただ、国内法「台湾関係法」に規定されている義務を米国政府が果たすかどうかは、米国のみの判断によるものであって、中国の意向を斟酌して行うものではありません。従って、今回の決定にあたり、もしオバマ政権が中国側の意向をごく内々にせよ打診したとすれば、それは今後に悪例を残すこととなるでしょう。

また、馬英九と蔡英文との関係について、チェンが想像するような配慮が米国側にあったのかどうかはわかりませんが、もしホワイトハウスの一部にそのような考え方があるとすれば、これは、まさに米国のクレディビリティに関係してくる問題です。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:58 | 米国 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米豪同盟強化のとき [2011年09月15日(Thu)]
ウォールストリート・ジャーナル9月15日付で、豪ローウィ研究所のAndrew Shearerが、豪州は米軍基地に最適であり、豪州人もそれを歓迎している、11月のオバマ訪豪に際し、豪州政府は米軍の恒久基地受け入れを宣言すべきだ、と言っています。

すなわち、ダーウィン基地は、@中国から距離があるので中国の攻撃にさらされる危険が少なく、Aインド洋、太平洋、南シナ海に容易にアクセスできるので、米海兵隊の基地として適当だ。また豪州の西岸は、インド洋、中東のシーレーン防衛に役に立つ。それに、米国はフィリピンからは追い出され、日本の普天間基地は今や政治問題化している。他方、豪州は、世界最大の訓練場を提供できるし、豪州軍が米軍との共同訓練で高度の技術を習得できるメリットもある、

さらに、重要なのは、豪州人の多数が米軍を支持していることだ。ジラード首相支持の左翼グリーン・パーティーは反対するかもしれないが、ジラードは自らの支持率の急落について考えねばならないだろう、と述べ、

米豪両国は平和、安定、そして繁栄のために協力すべきであり、11月のオバマの訪豪は、恒久的な米国のプレゼンスを宣言する絶好の機会だ、と結んでいます。


今年はAnzus条約の締結から60周年に当たり、また11月にはオバマの訪豪があることから、その際に米豪は恒久的な基地協定を結ぶべきだ、と言っている論説です。

中国の軍事力が増すにつれて、豪州では安全保障論が盛んになり、米国との協力態勢が取り沙汰されるようになってきています。そうした中で、当然、フィリピンの米軍基地は既に失われ、日本の基地も紛議の対象となっているという事実が議論され、それが、米国は豪州により安定した基地を持つべきだ、という主張につながっています。

これまで豪州は、朝鮮半島や台湾等の紛争地点から遠く、基地として便利さから言えば、日本とは比べ物になりませんでしたが、最近、南シナ海やインド洋の問題が浮上し、また、鳩山政権時代に在日基地の存続が危ぶまれたこともあって、土地の広さや対米感情の良さ等から、豪州基地論が論じられるようになって来たわけです。

日本としては、日本本土の防衛はもとより、日本の安全にとって重要な朝鮮半島や台湾海峡の防衛の観点から、米国の東アジア、西太平洋防衛の関心の中心が日本付近から遠ざかるのは不安なことですが、中国の興隆を前に、地域諸国間に協力態勢が出来ることは望ましく、豪州の積極的参加は大いに歓迎すべきことです。

実は、今は忘れ去られていますが、安倍政権時代に、日豪関係がほとんど同盟関係に近づいたことがあります。それは、2007年3月に合意された日豪安保協力共同宣言であり、当時は日米安保条約に比すべきものと言われました。ところが、安倍内閣は間もなく去り、「自由と繁栄の弧」を標榜した麻生内閣も、リーマン・ショック後の景気対策に追われて、これに肉付けする余裕が無く、日豪安保協力は「一場の夢」となってしまいました。

日本にとっては、豪州が米軍の基地となって、東アジア、西太平洋に米軍を引き留める役割を果たす一方、それが日本離れにはつながらず、日豪安保協力が米豪協力をさらに補完する、というのが最も望ましい形と言えるでしょう。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:25 | 豪州 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
中国はユーロ危機を救えるか [2011年09月15日(Thu)]
ワシントン・ポスト9月15日付でNewsweek国際版編集長のFareed Zakariaが、中国がその膨大な外貨準備を使えばユーロ危機の回避に貢献できる、今や中国は国際社会の「責任あるステークホルダー」になる時だ、と言っています。

すなわち、ユーロ危機は、その規模と、銀行のみならず政府も当時者であること等から、3年前のリーマン・ショックよりも危険だ。当時、ポールソン財務長官は、市場を従わせられるバズーカ砲が必要だと言ったが、今の欧州にはバズーカ砲などない。唯一それに匹敵するのは、全世界で10兆ドルにのぼる外貨準備であり、中でもその量から言って重要なのは中国だ、

これまで中国のやり方は、注意深く漸進的で直接的な国益のために動くというものだったが、今や中国は国益をより広く考え、国際社会での「責任あるステークホルダー」になる時だ。欧州の危機はいずれ全世界に及び、第二の世界不況を招くかもしれない。そうなれば、欧米の消費者は支出を控えるようになり、中国も甚大な損失を被る、と述べ、

勿論、中国が責任を果たすのなら、代価を与えなければならず、今後IMFの専務理事のポストを中国に与えることが考えられる、と言っています。 


ユーロ危機は欧州だけでは回避できないのは確かなようであり、今や3兆ドル超の外貨準備を持つ中国の支援に頼るという案は、一考に値します。ただそこには多くの困難も考えられます。

先ず論説の期待するように、中国が国益を広く考えられるか、という問題があります。確かにユーロ危機が世界危機になれば、中国の輸出も大打撃を受けるでしょう。しかし、中国がIMFを介して巨額の外貨準備を提供しても、ギリシャの債務不履行を防げる保証はなく、ユーロ救済に乗り出すリスクは決して小さくありません。中国がそうしたリスクを取ることが出来るかと言えば、むしろ疑問です。

次に、中国と欧米のいわば「グランド・バーゲン」ですが、欧米がIMFの専務理事ポストを代価として差し出すことについては、IMF内の抵抗が考えられ、事が簡単に進むとは思えません。また、中国が、経済的危機にある欧米が中国に頼ろうとしていることを、中国の発言力拡大の絶好の機会と考えているのは間違いなく、IMFの専務理事のポストに留まらず、さらに多くの代価を要求してくる可能性があります。

また、ユーロ危機対策は急を要するので、「グランド・バーゲン」を成立させる時間的余裕があるかどうかも問題です。

ザカリアは論説の中で、ユーロ債の創設について、「紙の上ではきれいな解決であるが、実現はしないだろう」と言っていますが、その言葉はそのままユーロ危機の解決を中国に頼るという考えに当てはまるかもしれません。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:16 | その他 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
| 次へ