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世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


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野田総理への期待と課題 [2011年08月30日(Tue)]
野田氏が新総理になったことを受けて、CSISのMichael J. GreenがForeign Policy 8月29日付で、また、AEIのMichael AuslinがThe Diplomat8月30日付で、新総理への期待と課題を論じています。

すなわち、グリーンは、野田氏は内外共に大きなハードルに直面しているが、私は野田氏の選出を喜んでいる。野田氏は、安倍や前原同様、安保政策では保守派であり、父親が自衛官だったことから、米日同盟や防衛のこともよく判っている。中韓は東京裁判の正統性に疑問を呈する野田を懸念しているが、現実的な野田は、安倍同様に中韓にも手を差し伸べるだろう。その上、自由貿易論者の野田はTPPを支持しており、財政面でも保守的だ。国際主義者の邪魔ばかりしている小沢一郎にひざまずくことも拒否している、

日本の政治は混乱しているが、夢みるポピュリストの鳩山や、政策問題をよくわかっていなかった菅に比べれば、少なくとも日本の指導者の質は改善している、と言っています。

また、オースリンは、野田氏の強みは、@54歳と若く、真の改革派と言える、A財務副大臣・大臣としてこの2年間日本の経済問題に取り組み、早くから財政赤字にも警鐘を鳴らしてきた。ただ、消費税増税を言っているが、所得が伸びず、貯蓄率も低下している中での増税は政治的に危険かもしれない。従って、国民から、財政規律と歳入増を組み合わせた、日本の財政バランス回復のための長期計画を持っていると見られる必要がある、また、B中国の軍事力増強を警戒、日本は地域の安定維持で役割を果たすべきだと主張、さらに、自衛隊を軍隊と認めるべきだとするなど、外交・安保について現実的な見方をしており、鳩山が悪化させてしまった日米関係を修復してくれることが期待できることだ、

他方、彼は全会一致で選ばれたわけではなく、政策を進める以上に党内派閥の管理に時間を取られかねない。さら、党内には野田よりも若い前原、枝野、細野、長島昭久などがいて、世代間競争があり、次世代に橋渡しする暫定政権になってしまう可能性もある、

ただ、野田が日本にとって極めて重要な時期に首相になったことは確かであり、国際経済体制の防波堤、そして米主導ブロックの重要メンバーとしての日本の役割が今ほど必要とされたことはない。日本は国内問題を解決し、国際的な場でもっと意味のある役割を果たすべきであり、そのためにも野田は日本を見守るすべての人から支持されるべきだ、と言っています。


両論説とも、野田総理が直面する問題の大きさを指摘しつつも、野田総理に好意的です。日本専門家の両人がこうした見解を表明しているのは、野田総理が外交・安保政策について、現実的で日米関係重視であることが米国で評価されていることの表れと思われます。

たしかに、これまでの発言を見ると、野田総理の外交・安保政策についての考え方は足が地に着いた堅実なものと評価できます。これまでの発言の延長上で政策展開をしてもらえれば、対米関係はよくなるでしょう。他方、中韓との関係は少しぎくしゃくする怖れがありますが、管理可能と思われます。

増税については、経済の状況を見ながら、ということでしょう。まだ国債が買われる状況なので、国民のお金を取り上げるか、国民から借金するかのどちらが適切かはじっくり考えればよいことです。いずれにしても財政再建至上主義に陥ってはならないでしょう。

なお、野田氏は日本では稀に見るユーモアのセンスを持っているようです。「民主党代議士会で、「そうは見えないかもしれないが、身の引き締まる思い」と述べ、会場の笑いを誘っていましたが、ここには自分を客観視できる資質が見受けられます。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:53 | 日本 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
21世紀の海を制するには [2011年08月28日(Sun)]
米ディプロマット誌でJames R. Holmes米海軍大学准教授が、米海軍は西太平洋における戦闘で優位を得るために、対艦ミサイルを開発・装備するとともに、日本海軍に勝ち、ソ連海軍と競争して勝った時の大胆さと創意を再発見しなければならない、と言っています。

すなわち、米国の軍事的優位は、各国の管轄下にない海と空、グローバル・コモンズにおける優位に支えられてきた。ところが、ソ連海軍が駄目になった後、米海軍は、自分たちはグローバル・コモンズを支配しているとの前提に立っていたため、重点を沿岸での任務に置いてきた。しかし、中国が海洋に進出して来たため、ここにきて、これまで当然視していたアクセスのために戦う必要があることを認めるようになり、ようやく海洋支配について真剣になってきた、

今後、海軍は軍艦の武装を強化し、海洋支配の習慣と伝統を再学習しなければならないが、これは新しい武器を展開し、リスクを冒す文化を再建することを意味する、

物的な面では、音速以下の速さで800km先を標的とするものと、マッハ5の高速で320km先の目標を攻撃する、2種類の長射程対艦巡航ミサイルの開発中だ、

これらが実用化されたら、アジアの地図はどうなるか。中国の第2砲兵が有する対艦弾道ミサイルの射程は1500〜2700kmとされるので、その射程内に米艦船は入ることは阻止される一方、中国の艦船も米国の攻撃から安全ではなくなる。その結果、「第2列島線」の西側は、米中双方の水上艦船にとって危険な海域になり、これにどう対処するかで、その時々米中のどちらが優位になるかが決まることになろう、

もっとも、重要なのは兵器だけではない。米海軍は西太平洋での戦闘で優位を得るために、対艦ミサイルを装備するとともに、日本海軍に勝ち、ソ連海軍と成功裡に競争した大胆さと創意も再発見しなければならない、と言っています。


論説は、中国による海軍の増強と地上発射対艦弾道ミサイル(DF-21)の増強によって西太平洋における米海軍の優位が脅かされ、これまで前提としていた米海軍の行動の自由が制約を受けることを念頭に、それへの対処として米国が新しい対艦巡航ミサイルを開発していることを紹介するとともに、「第2列島線」の西側が、中国海軍にとっても米海軍にとっても危険な水域になることに警鐘を鳴らしています。

ホームズは海軍大学の人間なので、海軍がどう対応するかに焦点を絞って論じていますが、DF-21などについては、通常兵器搭載長距離ミサイルや空軍力での攻撃も考えられるのではないかと思われます。従って、海空両面の対処を考えるべきでしょう。

ただ、いずれにしても、米軍がグローバル・コモンズを誰にも邪魔されずに自由の使えた時代は、少なくともアジアでは早晩なくなる可能性があるため、新しい兵器、戦略、戦術が求められています。ホームズの問題提起はそうした観点から適切と言えるでしょう。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:13 | 米国 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
中国への適切な対応 [2011年08月26日(Fri)]
米国の論壇サイト、Project Syndicate 8月26日付で、豪州のGareth Evans元外相(現在は豪州国立大学学長)が、米国の対中優位が後退する中で、米国の同盟国である豪州、日本、韓国等は何をすべきか、を論じています。

すなわち、世界一の経済大国になる日も近いと思われる中国が、西太平洋における米軍の支配に反発を強める中、韓国から豪州に至る中堅国は、経済的には中国に依存する一方、軍事的には米国に依存するねじれ状態にある。米中が武力対決に至ったら、これらの国はどうすればよいのか、

中国は力と明確な目的意識を持つ相手は尊敬するので、中堅諸国は中国に対し、一団となって、@核抑止能力と大海軍を擁したい中国の気持ちは理解するし、台湾に対して強い国民的感情を持っているのもわかる、しかし、A軍備に透明性がなければ、理解にも限度がある。中国の核能力の増強は地域諸国の軍備増強を誘発し、地域の安定を害する、また、C中国が(台湾を含めて)領土要求を武力で通そうとすれば、地域で信用を決定的に失うことになる、領土や主権紛争は理想的には国際司法裁判所で扱われるべきだし、それが駄目なら凍結し、資源共同開発等の平和的解決を図るべきだ、さらに、B地域諸国と米国との同盟関係はこれからも不変だ、ということを伝えるべきだ、

また、米国には、「絶対的な軍事的優位を求めようとすると、かえって安定が阻害される。通常兵力面ではもっとバランスがあってよい」ということを伝えたい、と述べ、

かつてクリントン大統領も、「米国はその圧倒的な力で、世界の頂点に居座り続けることはできるが、もっと良いのは、その力を使って、米国がもはや世界の頂点ではなくなった時にも平穏に生きていけるような世界を今作っておくことだ」と言った、と指摘しています。


豪州の識者は先を見通そうとすることに熱心であり、先走り過ぎるほどの提言を行って、自国の意義を高めようとすることがあります。エヴァンス元外相のこの論説も、「米国は下降し、中国が上昇する」という、最近お決まりのパターンの言説の有効性をよく吟味せず、拙速ぎみの議論を展開しています。

そこで、「米国は下降、中国は上昇」を吟味してみると:
@現在の米国経済の状況は、貿易・財政赤字の削減のために欧州、アジアにおける米軍のプレゼンスが大幅に縮小され、経済面ではスタグフレーションが進行した、ベトナム戦争後の1970年代の状況に似ている
Aしかし、米国は、生産技術、企業家精神、勤労精神を有し、人口や需要が常に増加するという、基本的に強力な経済基盤を有している。金融業への過度の依存を脱し、財・サービスの生産を促進すれば、スタグフレーションを脱することができる。問題は、議会が共和党優位の中でオバマ政権がどこまで実行するかだろう
B他方、中国経済の実力は、○官僚達が出世のために経済実績を誇張して報告する、○粗悪な製品や財テク用高級マンション等、生活水準向上につながらないものがGDP統計に入っている、○経済成長の殆どが貿易黒字と建設によるものなので、米国経済が後退すれば中国経済も後退する。無理に内需拡大で対処しようとすれば、今回のようにインフレを生む、○C政府・党による企業管理が強すぎて効率を阻害している等々ため、見かけよりもかなり割り引いて考える必要がある、ということが言えるでしょう。

従って、西側が中国経済の可能性を囃したて過ぎて、中国が自らの実力を過大評価し、外部に対して強圧的になるだけなら、いずれ中国が躓くだけですが、西側も中国の実力を過大評価して一人相撲を取り、自らを不利な立場に追い込むようなことは避けるべきでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:00 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
中国空軍の増強 [2011年08月24日(Wed)]
ウォールストリート・ジャーナル8月24日付で、米AEIのMichael Auslinが、中国空軍の増強に警戒し、対応すべきだ、と論じています。

すなわち、中国の空母の処女航海に注目が集まっているが、中国空軍の増強にも目を向けるべきで、これは米国のアジア・太平洋地域におけるプレゼンスを脅かす最大の要因になりかねない、

昨年の米空軍の報告書も、「中国空軍は能力のある戦闘兵力になりつつある。劇的な変化が起こったし、起こりつつある」として、現在、中国空軍は1600機以上の戦闘機を有し、中国海軍も別に300機以上の戦闘機を有しているが、こうした航空機の数よりも能力に注意を向けるべきだ、と指摘している、

実際、中国は第5世代のステルス戦闘機J-20を開発中で、作戦に使えるようになるには10年はかかるだろうが、中国が東アジアの空を覆うというのは、それほど極端な想定ではない、

また、中国は2004年に「統合航空・宇宙作戦」を中心とする戦略を打ち出し、ハイテク空軍力を作ろうとしている。この戦略は米国の空・海軍力を否定することを目指すものだ。さらに、日本やグアム等の基地を攻撃するミサイルも増強している、

こうしたことを背景に、中国空軍は大胆になってきており、6月には米偵察機を追いかけて台湾海峡の中間線を越えたし、今年初めにはフィリピンの領空も侵犯した、

米国は航空優位を維持するためにもっと多くのことをする必要がある。老巧化したF-15やF-16では、中国のより近代的な航空機に対抗できないし、中国が開発中の空母攻撃ミサイルは、米国の空母を西太平洋から押し出してしまいかねない。しかも、性急なF-22生産中止決定によって、航空優位を保ちうる唯一の航空機の数が減ってしまい、F-35の開発も当初の予定より大幅に遅れ、高価になっている。従って、ペンタゴンはF-35の数は減らすべきではない。また、給油機も必要だし、沖縄の嘉手納基地とグアムのアンダーソン基地も強化される必要がある。さらに、中国本土攻撃をミサイルに頼るのは不安なので、長距離爆撃能力も開発すべきだ、と述べ、

要するに、米国とその同盟国は最新の空軍力を持つべきであり、従って、日韓がF-35を選ぶようにあらゆる努力をすべきだし、台湾への新型F-16の提供を拒むのは間違っている、と言っています。


一貫して東アジア重視の論陣を張ってくれているオースリンですが、この論説で重要な点を指摘しています。問題は、中国の空軍力増強が地域の軍事バランスを崩す恐れがあるものの、米国の防衛予算が大幅削減に直面する中で、オースリンが言うようなことが実行可能かどうかでしょう。結局、米国が資源配分の際に、国内の社会保障支出と対外的経費のバランスをどうするか、対外的経費のなかで中東と東アジアのバランスをどうするかということです。

日本は中国の軍事力増強、米の財政困難とその意味を踏まえ、一方で米国に東アジア重視を促すとともに、日本自身の空軍力を含む防衛力の増強を考えるべきでしょう。また、集団的自衛権は行使できないなどの空論は、早く排除すべきしょう。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:04 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米国のシリア介入反対 [2011年08月23日(Tue)]
ファイナンシャル・タイムズ8月23日付で、米外交問題評議会のEd Husainが、オバマは逡巡した挙句、遂にアサド退陣を要求したが、シリアの反対政府派の声はどこまで信用してよいか分からないし、さらに、アサドが退陣した場合のシリアの将来は全く不透明なので、これは間違っている、と言っています。

すなわち、オバマは、国内の評論家やシリアの反対派の圧力に屈してアサドの退陣を要求したが、この決定は誤りだ、

先ず、中東は反米感情が強いので、米国が退陣を要求したというだけでアサドの立場は逆に強まり、反政府派は米国の手先、シオニストの工作員と呼ばれるようになる、

また、アサド反対がシリア国内でどれだけ強いかも不明だ。二大都市のダマスカスやアレッポは比較的平穏を保っているし、アサドは、軍の指導者やモスクの宗教指導者、中産階級、ビジネス界の間で支持がある。米国はイラク進入前にチャラビに騙された例もあり、反政府派の言うことを鵜呑みにするのは危険だ。それに、内戦になれば、各民族、各派閥が分立して収集がつかないことになるだろう。トルコ、サウジ、中露が対シリア制裁に後ろ向きなのも、そうした理由からだ、

結局、米国としては、米大使が反乱の拠点のハマを訪問して反政府派との連帯を表明したように、間接的に意思を表明するやり方の方が効果的だ。もっとも、これまでのところ、最大の反アサドの圧力となっているのは、シリアの人々に自らの運命を決するよう促してきたアルジャジーラ放送だ、

しかし、たしかに、長期的な変革はアラブの内部から来るべきなので、アルジャジーラの指摘は正しいが、非常に不安定なこの地域にあっては、短期的には、不本意ながらアサド政権が一番ましな選択だ、と言っています。


全く同感であり、オバマの発言は誤りだったと思われます。リビアの時も、地上兵力を派遣しない以上、妥協による解決の余地は残しておくべきであり、世論に押されてカダフィとその親族追放を呼号するのは、自らの手を縛ることになると懸念されました。

幸い、リビアでは、時間はかかりましたが、経済制裁でカダフィ側がじり貧となり、反乱側が勝利しました。そのリビアの成功が、今回のオバマ発言を促したのでしょうが、アサドはカダフィとは較べものにならないぐらい強い国内統制力を持っているので、リビアの例は参考にならないと思われます。とすれば、今回のオバマ発言は、言っただけで内容を伴わない空振りになる、あるいはこの論説も言うように、ただ空振りとなるだけでなく、逆効果になる可能性もあるかもしれません。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:45 | 中東 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
中国の尊大さ [2011年08月23日(Tue)]
米AEIのウェブサイト8月23日付で、同研究所Michael Auslinが、バイデン副大統領の訪中の際、中国側の態度の尊大さが目立った、中国は、強大になるにつれて国際的に横暴になって来ているが、それは米国が軍事費を削減して、アジアで弱くなるのを待っているかのようだ、と論じています。

バイデンの訪中の際のバスケットボール試合での中国側の暴行や、バイデン・習近平会談の冒頭挨拶が始まると、中国側の治安要員が力づくで外国人記者や米政府側スタッフを追払ったことなどは、相手に意図的に屈辱を与えようとしたものと考えられる、

中国は国力の増大に専念して来たが、その過程で世話になって来た国際体制のルールは、今や自分たちには適用されないと思っている。あるいは、それは中国がまだ弱いことの裏返しかもしれないが、米国政府が中国を甘やかし、防衛費を削減している間に、中国は、米国を侮辱してアジアから引き揚げさせようとしているのかもしれない、と分析しています。


バイデン訪中の際のバスケットボール試合は、写真を見ても、中国側が米国側を挑発し、暴行しているのは明らかです。中国が、明らかに中国の国際的イメージを損ない、中国の国益を害するようなことをしているのは、オースリンが言っているベイジノロジー(クレムリノロジーの中国版)の理論的分析では説明がつきません。

ただ、外国人に対して尊大であり、挑発的であればあるほど、「それでこそ日本人だ」という評価が与えられた、戦前の日本のことを思い出せば理解はできます。民主党の小沢代表が米国大使に対して尊大な態度をとったときは、日本のマスコミはそれを批判しましたが、戦前、松岡外相の時の外務次官の米国大使に対する尊大な態度は、「それこそ日本人」として称賛されたと言います。

尖閣における中国人船員の態度なども、上部からの指令によるというよりも、挑発的、尊大に振る舞えば、必ず背後の支持、称賛が得られるという雰囲気、またそうした中での処世術から来たものだったと推測されます。

尖閣問題の後の、各種日中交流の停止も、中央からの指令によるというよりも、保身のためには日中交流は停止した方が安全だという、末端組織の自主的判断によるものが多かったと言われています。

こうしたことは国際政治の本質とは関係ない話ですが、世論の国である米国や日本に与える悪印象とその影響は避けがたいものがあるでしょう。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:30 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
リビアの教訓と今後の課題 [2011年08月23日(Tue)]
8月22日、23日の米各紙社説は、米国の対リビア政策について、今までとかくの議論はあったが、結果として正しかった、と評価しています。

すなわち、ニューヨーク・タイムズは、反乱側がもっと外部の援助を必要とした時はあったが、オバマが欧州主導に任せたのは正しい決定だった、と言っています。理由は説明していませんが、それでうまく行ったのだから、結果としてオバマのしたことは正しかった、という趣旨でしょう。

ウォールストリート・ジャーナルは、米兵が一人も死んでいない勝利だが、米国の空軍力と情報力無しではこの勝利は無かっただろう。また、英仏やカタールまでが参加した戦争への参加を躊躇したのは、恥ずかしいことだったが、米国は当初のベンガジの虐殺の回避にも貢献している。米国の軍事力は伸びきっていて、全ての内戦に介入するわけにはいかないが、今回のリビアは、正しい理由の下の可能な方法による米国の参加は、事態に影響を与え得ることを示している、と論じています。

ワシントン・ポストは、カダフィ政権の崩壊は、中途半端なものであっても米国の介入が事態の成り行きに大きな影響を与えることを示している。勿論、リビアは米国の重要な国益とは無関係で、カダフィ政権が続いても困りはしなかったが、リビアが民主化すれば、民主化途上のエジプト、チュニジア始め、中東の民主主義に大きな影響を与えることになるだろう。また部分的にでも介入したため、米国がリビアの新政権に対しても影響力を持ち得ることになったのはプラスだ、と言っています。

ロサンジェルス・タイムズは、オバマ政権は、リビアについては、圧政を見過ごすことと、米国人の血を流して自由を守るという選択肢がある中、その中間を選んで成功した。ただ、リビアで成功したのは、リビア政権に基本的な弱みがあったからであり、同じ方式を、強力な国内治安能力を持っているシリアに適用するわけにはいかない、と論じています。


各紙共、リビア情勢の今後の展望と望まれる政策、報復の自制、治安維持等について一応は論じていますが、未知の要素が多すぎて、いずれも原則論の域を出ていません。一つ面白いのは、リビア情勢がこれでのところ、米国の希望する結果になっていることであり、それに至る米国の政策は良かったのか、良かったとすればそれは今後の指針となるかどうかが議論されていることです。

実際は、今回の決着は、長期戦に堪え得ない今の米国にとっては望外の成功だったと言っても良いでしょう。特に、当初ベンガジの虐殺を避けるために空軍の介入を決定したのは正しい判断だったと思われます。一木一草なく、雲もない砂漠の戦闘で制空権を持つことは、ベンガジへのカダフィ地上部隊の侵入を防ぐ最善の方法でした。その後、地上戦闘に介入する余力のない米国は、NATOと成り行きとに任せて事態を見守るしかありませんでした。そして、NATOが地上軍を派遣しない以上、はかばかしい進展は期待できず、膠着状況が長く続くと思われましたが、経済封鎖を受けた政府側がじり貧となり、意外に早く崩壊が訪れました。

今から思えば、反乱側はNATOの保護があるので、何時かは勝つ状況にあり、早かれ遅かれ今回のような決着を迎えたでしょう。

オバマ政権としては、それ以外に選択はなかったわけですが、結果としては成功でした。それをオバマの功に帰するかどうかは米国の政治の問題であり、日本としては、良かった、ということでしょう。なお、リビアは人口が少ない割に資源が豊富であり、経済面で恵まれている点は有利な要素と言えます。



Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:44 | 中東 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
対リビア作戦の評価は時期尚早 [2011年08月22日(Mon)]
Foreign Policyのウェブサイト8月22日付で Peter Feaver米デューク大学教授が、リビアについて喜ぶのは早すぎる、オバマ大統領にとってリビア作戦での真の試練は、カダフィがいなくなった後、いかに安定した政治体制を築くか、であり、そのためには米国の強いコミットメントが不可欠だ、と警告しています。

すなわち、カダフィ政権はついに末期を迎えたが、これには、NATO、特に米国が当初の方針を変えて軍事作戦を強化する方向に向かったことが大きく関係している。初期の段階で米国がとった「必要とされるものよりやや少な目に行う」戦略は機能せず、リビア情勢に数か月の麻痺状況をもたらした、
 
つまり、米国の介入は遅れた介入であり、それが国際的な連携を妨げた。初期のころ、反政府勢力がトリポリに迫ったときに、国際的連携が出来ていれば、カダフィ体制は数日か数週間で崩壊していただろう、

米国の介入理由が、「市民保護のためであり、反政府勢力の支援ではない」という矛盾したものであったこともマイナスに働いた、

これ以上だらだらと状況が長引いていたら、NATOの作戦にも綻びが生じ、英仏の二大プレイヤーたちもこれ以上作戦を遂行できないところに追い詰められていたかもしれず、かろうじて間に合ったというのが実態だろう、

「カダフィの去った後、大量殺戮を防ぐのはリビア人の責任だ」とオバマは言い続けているようだが、実際に力の真空から大量殺戮が生じるようになったら、米国はどう対応するのか、

米国にとっての真の試練は、カダフィ後に如何に安定的な代表制からなる政治秩序を築くか、であり、そのための協力を惜しんではならない。それをやって、初めて初期の混乱も許されるだろう。イラクの例が示すように、独裁者の打倒よりもはるかに難しいのは、その後にくる事態への対応であり、次の局面が終わるまで、喜ぶのは早すぎる、と言っています。


フィーヴァー教授は一時、ブッシュ政権下でNSCの戦略計画部門の特別顧問を務めた経験があり、その時の特にイラクでの経験が、このような文章を書かせたのでしょう。

しかし、イラクを引き合いに出すまでもなく、リビアで42年間続いたカダフィ独裁政権に代わる新しい統治体制を築くことがいかに困難な事業であるかは容易に想像がつくことです。ただ、フィーヴァーも言うように、今回カダフィ政権が崩壊したことは良いニュースであり、喜ぶべき展開であることに変わりはありません。



Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:19 | 中東 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
リベラル派のオバマ大統領に対する怒り [2011年08月22日(Mon)]
米タイム誌で、Fareed Zakaria同誌総合編集長が、オバマ大統領に対し、リベラル派は裏切られたと怒り心頭だが、オバマは中道的現実派であり、最善のものを求めるあまり、得られる適度のものを犠牲にしてはならないことを理解しているのだ、と言ってオバマを擁護しています。
 
すなわち、最近、リベラル派がオバマへの批判を強めているが、その背景には、オバマがとった景気刺激策、金融機関の規制強化、医療制度改革、財政均衡政策に対する不満がある。しかし、リベラル派は、オバマの景気刺激策は生ぬる過ぎたと言うが、それはオバマが財政赤字を考慮したからであり、大規模金融機関を解体しなかったのは、米国経済には金融機関の活発な活動が必要だということを理解していたからだ。同様に、オバマは、福祉コストの抑制が米国の財政状況の改善には欠かせないことを理解しているからこそ、福祉コストを抑えたのであり、歳出削減を行うのも、財政均衡には増税と組み合わせて歳出を削減する必要があることを理解しているからだ、

こうしたオバマの姿勢は、弱さや一貫性のなさ、あるいは迎合の表われではなく、常識的な判断をしたことから来ている、と述べ、

「法的な枠組みの中で発展し、長く培われ、試されてきた中庸の距離にある価値観に目を見据えるべきだ。そうした中道的姿勢は批判を受けがちだが、それこそまさに善のために行動することだ」、という元エール大学学長の言葉を引用して、米国民はオバマの常識を理解するだろう、と言っています。


債務上限切り上げ交渉が一応の決着をみてから、リベラル派のオバマ批判は激しさを増しています。ザカリアが紹介するように、これまで財政刺激策から医療制度改革まで、リベラル派から見ると、望む域に達しなかったことへの憤懣が蓄積していたのが、ここにきて一気に爆発した感があります。リベラル派の評論家が競って批判を繰り広げており、中でも話題になったのが、「オバマは右派の悪者を叩くべきところを、彼らに迎合した」、「米国は、何を信ずべきか分かっていない、あるいは再選のためにはいかなる立場をもとる大統領と、過激な共和党の両方の人質になっている」、とする8月6日付ニューヨーク・タイムズの論説です。

こうした批判に対するザカリアの反論はもっともであり、確かにオバマがとった政策は、必ずしも正しくはなかったとしても、思想的に極端なものは見当たりません。しかし、問題はその姿勢でしょう。オバマは、米国民に、米国は特別な国、自由民主主義の長だというプライドを持たせて奮い立たせ、自信を持たせること、何よりも自由と独立を重んじる米国民の琴線にふれることができません。また、失業率が高く、経済の見通しも暗く、国民が不安に怯えているからこそ、余計米国の強さを強調するリーダーシップが求められているにも拘わらず、オバマからはそうしたおごりにも近い明るさも感じられません。政策の中身自体よりも、こうした要因がオバマ不信の原因ではないかと思われます。



Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:29 | 米国 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米国による高度軍事技術独占時代の終焉 [2011年08月18日(Thu)]
Foreign Policyのウェブサイト8月18日付で、Andrew Krepinevich米CSBA所長が、米国が優位を誇っていた先端軍事技術は次々にコピーされて、米国の独占物ではなくなってきており、米国と同盟国の優位は急速に失われるかもしれない、と警告を発しています。
 
すなわち、米国は、湾岸戦争では精密誘導兵器の独占的優位を誇ったが、今や中国が追いつこうとしており、そうなると、西太平洋の米軍基地はもはや安全でなくなる。

また、米国のように高度なITインフラを持つ国はサイバー攻撃に弱く、米国にとって最大の危機は、核攻撃よりも、サイバー攻撃だろう。さらに、衛星や米国が有する海底施設の安全も脅かされる可能性があり、そうなったら、経済活動は麻痺してしまう、
 
米国は新分野で優位を求める必要があり、特に、最近のレーザーの発達は目覚ましい。しかし、これもまた中国からの競争に曝されている。また、米国のロボット技術は進んでおり、今後更にこの面の能力を高める必要がある。それにしても、世界の安全に対する脅威は、それに対する態勢を整えるのに間に合わないスピードで増大しており、米国の優位が失われる危険性がある、と警告を発しています。
 

軍事技術の革新が、後発国の追いつきを容易にするということについては、第一次大戦前の弩級戦艦の出現が最も古典的な例です。湾岸戦争でのパトリオットとトマホークの活躍をみて、これで中国など世界中の防衛関係者が発想を変えるだろうということは、充分予想されるものでした。

西太平洋の空母機動部隊を脅かすものとして最近話題になっている中国の対艦弾道弾は、初めは弾道弾で長距離を高速で飛び、目標地域で誘導兵器に代わるものですが、これはもともとは、ビンラディンを発見した挙句に取り逃がした米国が、ミサイルを湾岸に飛ばし、そこから誘導兵器でピンポイントに目標を攻撃するために開発した技術を真似たもののようです。

一度inventsしたものはuninventできません。弩級戦艦を開発した英国は新興ドイツの追い上げに苦しみ、原子爆弾を発明した米国は核拡散に苦しむことになるというように、それは先発国の宿命です。先進国としては、新たにinventし続ける以外に選択肢はありません。

問題は、それが防衛費削減の時期に起こっていることであり、クレピネヴィッチの憂慮は理解できます。

これも、今後防衛費の再増額を主張する有力な論拠となるでしょう。防衛費の増額が功を奏した例としては、レーガンのスターウォーズにソ連がついて行けず崩壊した例があり、古くは、日本がワシントン会議で軍縮を受諾したのも、建艦競争に堪え切れなくなったからです。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:01 | 米国 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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