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世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


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歳出削減による米国の文民能力低下の懸念 [2011年07月30日(Sat)]
ワシントン・ポスト7月30日で、Daniel Serwer米ジョンズ・ホプキンス大学教授が、米国の歳出削減について、軍事以外の対外予算は削るべきではない、と論じています。

すなわち、米国人の半数は、連邦予算の4分の1が対外援助に使われており、10%に減らすべきだと思っているが、実際は、対外援助費は現在既に1%でしかない、

ところが、議会はそれをさらに削減すべく、政府が提案した2012年度予算の「国際関係支出」額を43%も減らそうとしている。しかし、これで節約されるのは270億ドルに過ぎない。他方、防衛予算については僅か3.5%の削減が提案されているが、それでも260億ドルの節約になる、

米国の安全保障への脅威の性質を考えると、これは賢いやり方ではない。現在、米国が直面しているのは、テロ、宗教的過激派、麻薬取引、核拡散、大規模伝染病など非通常型脅威であり、過去22年間に米国が外国軍を相手に通常の戦争を戦ったのはたった2回だ、

非通常型脅威は、アフガニスタン、イエメン、パキスタンの部族地帯、ナイジェリアの産油デルタ地帯、メキシコ北部など、統治が上手く行っていない国が発生源であり、こうした脅威には、無人機や海軍による対処では満足のいく成果は挙げられない。つまり、兵力は部分的な解決策でしかない、

このことを良く知っている国防省は、文民省庁の予算拡大も支持するし、軍にも経済開発などの文民的仕事をさせている。しかし、米軍の能力が高くても、文民的な仕事に軍を使えば、より多くの資金を使ってより少ない結果しか得られないのは必至だ、

米国の安全保障を守る経済的な方法は、問題を予見し、その拡大を防ぐことだ。米国は戦争が物事を複雑にしてしまう前に行動すべきであり、そのためには、文民的能力をぎりぎりまで削るのではなく、強化する必要がある。しかし、この20年間の経験にも関わらず、弱体な政府を防衛し、法執行面などで役に立つ訓練された文民の数は少ない。今後はより多くの文民の専門家や能力が必要になるのであり、議会や政府がそれを認識して対応することを願いたい、と言っています。


サーワー教授はよい指摘をしています。米国の予算が逼迫する中で、政府開発援助予算に大鉈を振るおうとする動きがありますが、現在増えているいわゆる非通常型の脅威に対しては、政府開発援助等の文民的対応が、少ない予算でより大きな効果を挙げることができる、というのはその通りでしょう。軍は自己完結的に動くのが原則なので、ちょっとしたことをやるのにも大掛かりになり、金の無駄遣いになります。

ただ、米国が直面する主たる脅威は非通常型の脅威だ、というサーワー教授の情勢認識には賛成できません。アジアには、中国の海洋進出、北朝鮮の挑発行為、ロシアの軍拡など、通常のパワー・バランスや脅威の問題があります。米軍がそれ相応の能力を持ってアジアに存在することは、アジアの安定にとって極めて重要であり、テロや破綻国家のみに焦点をおいて、米国への脅威を考えることには同意できません、

財政状況がますます厳しくなる中で、米国がどのような選択をするかは難しい問題ですが、日本としては防衛についての自助努力を強化しつつ、アジア情勢に対処する米軍の能力が減退しないよう働きかけることが重要でしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:42 | 米国 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
韓国への米戦術核再導入論 [2011年07月25日(Mon)]
米CSISのウェブサイト7月25日付けで、CSIS Pacific Forum所長のRalph A. Cossaが、韓国で起きている米国戦術核再導入論について、反対する立場から論じています。

すなわち、韓国では米韓同盟への支持が今ほど強くなったことはないが、そうした中で、多くの韓国人が韓国に米国の戦術核兵器を再導入すること、あるいは自前の核兵器を持つことを主張している、

これは米国の拡大抑止への信頼欠如を意味するのではない。ただ、韓国人の間には、米国の戦略核は戦術レベルには使えない、従って、天安沈没、延坪島砲撃など北の挑発を防止できないということへの不満、さらには中国の北支持に関する不満がある、

つまり、戦術核再導入論は、戦術核なら北と中国に対する十分な脅威になる、あるいは、再配備すると脅すことで、北との交渉材料や梃子になり、非核化につなげていけるという考えだ、

しかし、戦術核再配備や再配備の脅し、あるいは韓国の独自核は、むしろ逆効果になる可能性が高い。確かに中国に対しては、北への圧力を強める刺激にはなるだろうが、そもそも中国は北を本当に追い詰める気はない。それに、北はその公式発言を読む限り、米国の核は既に朝鮮半島にあり、それが実際に半島にあるか、あるいは他所にあって韓国防衛に使える状態にあるかの間で大した違いはないと考えている。その上、戦術核再配備は韓国世論の分裂につながり、北はそれにつけこむことができる。加えて、北の核武装についても口実を与えてしまう、と言っています。


このラルフ・コッサの報告は、韓国では米戦術核の再導入や独自核開発への支持が強いことを示しており、興味深いものです。コッサはそうした政策のデメリットについて考察していますが、韓国ではこうした議論が行われているのに対し、日本では全くと言ってよいほど行われていません。日本でもこうした議論はすべきでしょう。

核の問題についても、要するに、将来、日本に核兵器が撃ち込まれないようにすることが最重要です。米国の核を持ち込むかどうかも、そうした目的に沿うか否かで判断されるべきであって、非核3原則の堅持自体が重要という発想は、国際政治上の議論というよりは、被爆国としての感情論に依拠する論でしかありません。

また、米韓関係は日米関係よりも緊密で、重要度を増していますが、@米韓同盟が双務的な相互防衛条約に基づくのに対し、日米安保条約は防衛に関しては片務的で、米国は日本防衛の義務を負うのに、日本は米国を防衛する義務がない、A韓国でも反基地運動はあるが、普天間移転に際して見られるような騒動はなく、あっても韓国政府がきちんと収めている、B日本は集団的自衛権を持ってはいるが行使しないなど、米国から見るとイライラするような主張を今なお続けている、C韓国は武器輸出に積極的で、成長戦略の一つにしているが、日本は米国と共同開発した武器の第三国移転にも武器禁輸政策を基に種々文句を言っている、Dアフガニスタンに韓国は軍を出したが、日本は経済援助しかしていない、等を考えれば、それも当然でしょう。

どちらが頼りになる同盟国かは明らかです。日本はもっとまじめに核の問題を含めて外交・安保政策を考える必要があります。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 13:36 | 東アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米印関係の諸課題 [2011年07月24日(Sun)]
ウォールストリート・ジャーナル7月24日付で、Harsh V. Pant英King’s College London教授が、2008年の原子力協力協定の締結で強まった米印関係は、最近になってテロ問題、南アジア地域におけるインドの役割、原子力協力等に関する考え方の違いから軋みが生じている、関係発展のために米印はそれぞれ努力すべきだ、と論じています。

すなわち、インドは、パキスタンのテロへの姿勢に対して米国は甘いと不満を持っており、さらに、米国のアフガニスタン政策はアフガニスタンにおけるパキスタンの影響力を強めるのではないかと懸念している。他方、米国は、アフガニスタン情勢が混迷し、中国の台頭が東アジアの力の均衡を変えつつある中で、インドが地域においてその経済力にふさわしい役割を果たしていないことに不満を持っている、

それに加えて、最近、原子力供給国グループの総会で、濃縮・再処理技術の輸出規制のいっそうの強化が合意されたために、インドはそれがインドの原子力政策の手を縛ることになりかねないと懸念している、と述べ、

以上の諸要因の結果、米印関係の進展が阻害されている。進展のためには、インドは地域でより積極的な役割を果たすべきであり、他方、米国はパキスタンでのテロ活動により厳しく臨むと共に、原子力についてはより現実的な政策をとるべきだ、と言っています。


原子力供給国グループの合意の詳細は不明ですが、米印関係を阻害する今の一番の問題は、「核のない世界」を目指すオバマの思考の硬直性でしょう。論説は、この合意が実施されると、インドの原子力計画は大きな支障をきたし、インドは自らの意に反してNPTに署名せざるをえなくなるかもしれない、と言っていますが、インドがNPTに署名することなど考えられません。そうなると、今回の原子力供給国グループの合意が論説の示唆するようなものであるとするなら、インドが歓迎した画期的な2008年の米印原子力協力協定の意義がなくなることになりかねません。「核のない世界」を目指すのは結構ですが、それはあくまでも長期的目標であり、論説も言うように、米国はそのために当面のインドとの協力強化という戦略的考慮を犠牲にすべきではないでしょう。
(8月11日〜17日は夏休み。次回の更新は8月18日です)
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:21 | 中央・南アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
中国の強硬姿勢の理由 [2011年07月22日(Fri)]
ウォールストリート・ジャーナル7月22日付社説が、バリで開かれるASEAN地域フォーラムを前に、ここ2年の中国の強硬な態度は何に由来するのかを分析しています。

すなわち、沿海の航行を妨害するなど、最近の中国の強硬な行動に、東南アジア諸国は脅威を感じ始めている。しかし、これは周辺諸国を米国の方へと追いやるだけで、中国にとってけっして得策ではない。中国が米国と対決できるだけの軍事力を蓄積するにはまだ何年もかかり、その間は中国も平和的に台頭する必要があるはずだ、

それにも関わらず、挑発が続くのはなぜか。おそらくそれは、@過去の主張のからみ、A国内政治の影響、そしてB中国の戦略的文化から来ているのだろう。
.
そうした中国の行動の特徴は、論理の一貫性や相互主義を認めないことだ。自国の排他的経済水域に他国の艦船が入るのは拒否する一方、自分は日本の排他的経済水域に入っていく。また、孫子の兵法以来の人の意表を突くという戦略なのか、朝鮮、チベット、インド、ヴェトナムといずれも予告なしで戦争を始めている。漁船に偽装する方法も使う。そのため、周辺諸国は、中国がいつどういう形で出て来るのか予想がつかない。さらに、超大国の引き揚げの機を捉えるところがある。1974年に西沙群島に出て来たのは、米軍のべトナム撤兵の時であり、南沙群島に出て来たのは、ソ連のカムラン湾引き揚げの後だった、

東南アジア諸国はこうした中国のことをよく知っている。だからこそ、今回のバリ会議では、中国が何を言おうと、クリントン国務長官が個別の接触で東南アジア諸国から受け取るのは、米国は東アジアとの外交的、軍事的結びつきを強めて欲しいというメッセージだろう、と言っています。


ASEAN地域フォーラムでは、中国はある程度は柔軟姿勢を示すだろうと一般に予想されていますが、ここ一、二年の大きな流れとしてこの論説が言っていることは正しいと思われます。孫子の兵法が妥当かどうかは疑問なしとしませんが、2010年以来中国の態度が挑発的になって来たことは事実です。

中国の態度が硬化した理由としては、2009年に米国が中国を甘やかしたことの反動が、中国軍事力の急激な成長を背景として、2012年の党大会を前にしての中国内の権力闘争に影響を与えた、ということが一番考えられるように思われます。

つまり、2009年11月のオバマの初訪中のために、中国の機嫌を損ねないよう汲々としていた米国は、ダライ・ラマのワシントン訪問を空振りに終わらせ、台湾への武器売却を延期、新疆、チベットの弾圧にもはかばかしい抗議はせず、北京オリンピックの開催を祝福しました。推測の域を出ませんが、おそらくは、こうしたことが2009年を通じて、「米国は出れば引っ込む」と中国に思わせてしまったのではないかと思われます。勇気付けられた中国のタカ派は発言力を増し、2012年の党大会を控えての権力闘争の中で、それが元に戻らなくなり、南シナ海などでの中国の行動にも反映されているということでしょう。

そうであるなら、2012年の党大会の後、あるいは、その前でも権力闘争が一段落すれば、中国がまた微笑外交に戻る可能性もあるということになります。強硬外交よりも、微笑外交の方が扱いが難しいのは、外交の習いであり、その時は西側として十分注意してかかる必要があります。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:08 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
革命後のエジプト [2011年07月21日(Thu)]
ワシントン・ポスト7月21日付とファイナンシャル・タイムズ17日付の社説がエジプト情勢について論じています。

WPは、革命後のエジプトは、経済が瀕死状況で、ストや抗議が頻発、また、9日には、軍は革命を裏切っているとする抗議者と政権側が衝突している、

しかし、良く見ると、エジプトは混乱しつつも着実により自由な国に向かっている。先週は権力を乱用したとして数百人の警察官が解雇され、今週の内閣改造では世俗的リベラルが登用され、議会選挙も、民主派に政党づくりの時間を与えるために9月から11月に延期された。また、軍は基本的自由を保護するために新憲法に関する「原則宣言」を出すと言っている、

勿論、エジプトの民主主義への移行が確実になったとか、米国などの役割はなくなったということではない。エジプト軍は統治責任を譲るつもりだが、経済面を含めて特権は保持し、イスラム系政党が権力の座につくことも阻止したいと思っている。この点では、軍に将来の政権に対する拒否権を持たせない、としている民主派を米国は支持すべきだ。また、米欧はシャラフ内閣に経済改善に努力するよう圧力をかけ、IMFや世銀の借款拒否や補助金政策を止めさせ、市場経済を推進するように求めるべきだ。そして米国はエジプトと自由貿易協定を締結すべきだ、と述べ、

エジプトは今後何ヶ月も何年も無秩序に見えるだろうが、民主主義国となるチャンスはまだある、と締めくくっています。

FTは、タハリール広場の抗議者たちは過去の不正の是正が遅いことに不満を持ち、軍が自分の利益を図っていると疑っているが、暫定政府もこうした懸念に応えようとしている。シャラフ首相は旧体制に近い閣僚を罷免する内閣改造を行い、拷問に関わった者などを解雇し、内務省の改革も約束した。軍もムバラク時代の上級幹部の刑事訴追を迅速化した方がよい、

問題は、エジプトのリベラル派が、過去の不正の是正と将来をどうバランスさせるかだ。まだバラバラなリベラル派政党は選挙への準備をし、少数派の権利保護や司法の独立も含めて、憲法起草を指導する原則に焦点を当て、不自由なイスラム国家の成立を防止すべきだ、と言っています。


両社説はエジプトの現状を踏まえつつ、エジプトの民主化実現への楽観を表明していますが、エジプトは混乱しつつも民主化に向かっているとのWPの評価は大筋で正しいと言えるでしょう。新憲法の採択は既定路線であるし、その中に基本的人権の尊重規定がおかれる事も確実と思われます。

アラブ世界においてソフト・パワー面でもハード・パワー面でも圧倒的な存在を占めるエジプトの民主化は、じわじわと他のアラブ諸国にも影響を与えていくでしょう。

憲法については、@国家と世俗性、つまり国家とイスラムとの関係をどう規定するか、また、A軍の位置づけ、つまり、国家の安全を守る機構として特別の地位を与えるのか、さらに、国家の世俗性の保障者とするか、という問題があります。この二つの問題は、イスラム教国家特有の大変難しい問題です。

FTの社説は、イスラム国家否定論を言っていますが、イスラム国家自体が民主主義とは相容れない、という考えは、キリスト教徒の偏見と思われます。イスラムは人間平等、博愛の精神を有し、民主主義と親和的な面もあり、イスラム過激派やイスラム原理主義者のイスラム解釈を前提にイスラム国家を否定することはありません。国民の多数が望めば、シャリア法の適用も排除することはないでしょう。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:26 | 中東 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
駐豪米軍基地は時期尚早 [2011年07月19日(Tue)]
在日基地は、今後海軍力の角逐が起きるだろう海域から遠すぎる上に、中国の短中距離ミサイル射程内にあるので危険であり、豪州に米軍基地を置くのがよい、とする米国海軍大学の研究者トシ・ヨシハラの主張に対し、豪州国立大学関連のウェブサイト、East Asia Forum 7月17日付で、同大学国際政治戦略研究学科の研究員、Ron Huiskenが反論しています。

すなわち、今こうした主張をすることは、今まさに出してはならない類の誤ったシグナルを送ることになる。中国の軍事力増強に応じて第二列の防御線を作り、その範囲内に陣地を固めようというのがヨシハラの主張だが、ワシントンがそういうことをしている、という印象を与えれば、第一列にある同盟国や友邦国は状況の再評価を始めてしまうだろう、

米中の力関係は、長期的に見てあまり面白くないものであるのは確かだが、かといって恐れるには及ばない。この地域には米国の友邦がいくつもあり、それらの国は米国の積極関与を望んでいるのに対し、中国にはそうした友邦は存在しないからだ。これらの国を用いて平和と安定の構造をアジアに作り直すことは、やってみる価値がある、

ところが、米国は中国に影響されて路線を変更しようとしている、という印象を与えてしまったら、この可能性を潰してしまうことになる、

これまでの兵力の配置の変更はやってもいいが、大事なことは「いつもと同じ」印象を与え、同盟国の懸念に応じる態勢を示すことだ、と述べ、

それでも豪州に米軍が来るというのなら、国民の支持を背景にこれを迎え入れるべきだ。そのことはASEAN諸国に豪州の意味を再確認させることになろう、と言っています。


フイスケンが言っているのは、要するに、豪、日、韓、インドネシアやインドと組んで中国に対する堅固な姿勢を築き、新しいルールを作ることを心がけることこそ米国に今必要な方策であり、それもしない内に早々と尻尾を巻くような姿勢を見せてはかえってひどい逆効果を生む、ということです。

それはその通りだろうと思われます。しかし、他方、ヨシハラにはそれなりの蓄積があり、決して奇抜な言説を弄したのではないことも指摘しておく必要があるでしょう。ヨシハラの専門は、中国軍事文献を原語で大量に読むことであって、その彼が見るところ、中国軍事ドクトリンは、横須賀その他重要在日基地に向けた限定的核攻撃すら排除していません。高まる一方の中国ミサイル攻撃力について、最も多くの知見をもつ一人は明らかにヨシハラです。

ただ、だからといって、一足飛びに前線を後退すべしと論じたところに、相当の飛躍があり、フイスケンはその点を突いて、その前に同盟ネットワークを再構築して、孤立した大国、中国に迫っていく、というような多様なアプローチがあり得る、と論じているわけです。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:20 | 豪州 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米中相互不信 [2011年07月14日(Thu)]
ウォールストリート・ジャーナル7月14日付で、米AEIのMichael Auslinが、中国の台頭により、ワシントンが現実的なアプローチを取り始めたのは肯定すべき動きだ、と論じています。

すなわち、米中の間では軍事交流が停止と再開を繰り返してきたが、米中間には継続的で深い相互不信があることを受け入れる時に来ている。軍事交流への期待を減らすことが、より成熟した米中関係と米国の利益をどう守るかの真剣な議論につながる、

米中間の軍事交流が駄目になった契機は色々あるが、主たる問題は台湾だ。先月オバマ政権が台湾への武器供与への反対を明らかにして、マレン統合参謀本部議長の訪中が実現した。ところが、マレン訪中の際に南シナ海問題が浮上、中国は米国とフィリピン、ベトナムなどとの合同軍事演習を批判し、米国の軍事費を減らすべきだと言った。一方、マレンは、米中が共通の目標のために協働すべきだと繰り返したが、スーダン、北朝鮮、ビルマ、イラン、台湾、海洋権益等で米中共通の立場はできていない、

米中間の協調が欠如する理由は簡単で、米中はアジアやさらに世界で影響力と力を競うライバル同士だからだ。米国が中国に対しより現実的に対応し始めているのは歓迎すべきことであり、米国は中国の行動が不安定化を招いていることを中国にはっきり伝える必要がある。また、安定への最大の危険は誤算から生じるので、何が紛争につながるかを明らかにするために、レッド・ラインはどこかを公に論じるべきだ、

中国がその主張を変える見込みはないが、米国がアジアでの前方展開や米大陸から遠く離れたところでの作戦能力を強化し、アジアの同盟国の自己防衛努力に協力することで、中国の行動を変えさせることは可能だ。またこれが、中国を責任ある国として行動させ、米中関係をバランスのとれた関係にもって行く最善の策だ、と言っています。


このオースリンの論はもっともと思われます。大雑把に言って、米国には中国の台頭に対しこちらも対抗してバランスを取っていくHEDGE論と、中国の台頭に適応していくACCOMMODATE論の二つがあり、オースリンの論は前者の立場に立つものです。また、それが、中国の野心を牽制し、アジアの安定につながると思われます。

現在の米中関係(日中関係も)は、冷戦中の対ソ連戦略での協調・協力関係として始まっており、そうしたいきさつと、さらに、相互依存の米中経済関係が出来ていることを反映して、今なお、協調、協力をベースにした米中関係がありうるかのような考え方があります。キッシンジャーなどはその典型です。

しかし、国際情勢は冷戦時代とは様変わりし、中国は自己の利益を大胆に追求する国になっています。特に、人民解放軍は、アジアの米軍を中国の発展に対する障害と見ていると断定してよいのではないかと思われます。日米安保についても、中国の姿勢は評価から嫌悪に変わっています。

米中の利害は衝突していること、それは対話や相互理解増進で解決できるような問題ではないことを認識することが重要であり、これは日中関係についても同じです。また、中国は民族主義的勃興期にあることも認識すべきでしょう。

戦略的互恵関係という言葉に惑わされず、長期的かつ戦略的な思考をベースに、中国の行動を良く見て、是々非々で時には強く対応していくことが必要です。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 13:36 | その他 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
台頭する中国への米国の対応 [2011年07月13日(Wed)]
米National Interest誌のウェブサイト7月13日付で、Harry Harding米バージニア大学教授が、中国が民主化さえすれば、米中関係はうまくいくという考え方は単純すぎる、米国のなすべきことは、アジア太平洋地域で有利なパワー・バランスを維持し、同時に、経済、軍事、外交における米国自身の復活を図ることだ、と論じています。

すなわち、最近米国では、中国の民主化を促進することが、中国の攻撃的権威主義の野心を抑制する最善の方法だ、と主張する人が多い。しかし、中国が真に民主的な制度を持つようになることは、当分ありそうにない。それに、中国のナショナリスティックな国民感情は、既に中国の政治文化の中に根付いてしまっており、中華帝国が民主化したからといってなくなるものではない。民主化する可能性が50パーセントあると仮定しても、民主化してしかも協力的になる可能性はせいぜいその半分の25%だろう、

一方、中国としては、17-19世紀の明朝や清朝時代のようにアジアを支配したいかもしれないが、21世紀にそれをするのは極めて困難だ。北京の野心がどうあれ、アジアには急速に成長する国々がひしめきあっている上に、中国以外にロシア、日本、インド、米国という4つの大国が存在し、地域共同体としてのASEANも主張を強め始めている。さらに、パキスタン、オーストラリア、韓国などの中間的勢力もいる。こうした場所で中国が支配的になって覇権を握るのは容易ではないし、それを望む国も少ないだろう、

米国の行うべきことは、この地域において有利なパワー・バランスを維持することであり、そのためにも、経済、軍事、外交面で米国の持てる本来の力を復活させなければならない。中国との関係では、投資をふくむ経済の相互依存関係や、さらには、既存の国際機関の中に中国を引き入れて、より多くの制約条件を課していくのがよい、と言っています。


ハーディングの意見は、中国に対しより強硬な対応をしようとするHEDGE論と、より融和的対応をしようとするACCOMODATION論という二つの考えの中間に近いように思われます。ハーディング自身、中国の民主化を期待していると述べつつ、先ずやるべきこととして、米国のアジア・太平洋での役割を果たすために、米国自身の総合的力を高めなければならない、と言っており、この論説のポイントはここにあります。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:36 | その他 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
ドイツの成功に学ぶ [2011年07月13日(Wed)]
Foreign Affairs7月号で、Steven Rattner米財務長官付顧問が、ドイツ経済は、オバマが目指している失業率の削減でも輸出の増大でも米国を凌いでいるが、その秘密は、シュレーダー以来の経済政策、高品質物づくりの中小企業の存在、そしてユーロにあり、米国もドイツの成功モデルを見習って技術訓練計画を推進すべきだ、と言っています。

すなわち、ドイツ経済が成功したのは、シュレーダー政権が2005年に策定したAgenda2010による、労働時間の削減と雇用が増大などの政策が功を奏したこともあるが、重要なのは、Mittelstandと呼ばれる物づくりの中小企業の存在だ。Mittelstandは、機械の部品のそのまた部品や、高品質のブランド製品を製造し、何百万人も雇用している。また、ドイツ人によれば、Mittelstandは個人企業なので、短期的利潤よりも企業の長期的成長の方に関心がある、

また、1999年のユーロ導入もドイツ産業の利益になっている。ドイツの輸出入余剰の80%はEUから来ている。EUが南欧の弱い経済を抱えているため、ユーロは弱く、逆にドイツがユーロから離脱すれば、ドイツの通貨は直ちに30−40%値上がりするだろうと言われている。ユーロの弱さのドイツ経済に対する景気刺激効果は非常に大きく、今やドイツはインフレを心配するほどだ、

米国も、グーグルやフェイスブック、その他、技術や金融について競争力を持っており、高度の技術者を養成する計画に重点を置くべきだ。オバマは輸出の倍増を言っているが、ドイツの例から学ぶことは多々ある、と言っています。


物づくりの中小企業を持つ強さの描写などを読んでいると、まるで日本のことを言っているのではないかという錯覚を覚えるほどですが、その分析を日本の場合と比較すると、最大の違いは為替にあるようです。もし円が30−40%下落して、1ドル110円程度で安定していたら、自動車などの日本の主要輸出産業や日本経済はどうなっていただろうか、と想像するだけで十分です。また、もし日本と韓国がユーロのような共通通貨の下で競争していれば、日本の立場はずいぶん有利であったことも想像に余りあります。

さらに、この論説から感得できるのは、長期の経済停滞を憂慮する米国もまた、技術教育など、政府主導の産業政策の必要を感じ始めていることです。日本は1990年頃の日米経済摩擦によって、日本経済の体質改革を迫る米国の要求を大幅に受け入れ、政府による介入の余地を局限し、企業の長期的利益よりも、株主の利益を優先する体制に変えようとしましたが、それは、論説も言っているように、物づくりの中小企業にはそぐわない体制のように思われます。

また、世界中がそうした自由な体制ならば、それはそれで公正な競争でしょうが、重商主義の権化のような中国や韓国を相手にし、さらに、米国自身も政府による産業振興を考え始めていることを考えれば、日本もまた総合的な産業政策を持って良いのではないかと思われます。今回の震災によって必要となったエネルギー産業の抜本的改革などは、その契機となり得るかもしれません。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:59 | 欧州 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
イスラエルは1967年国境を受け入れよ [2011年07月10日(Sun)]
ニューヨーク・タイムズ7月10日付でEphraim Sneh元イスラエル国防副大臣が、イスラエルの安全を保障する一連の措置をとることを条件に、イスラエルは基本的に1967年国境を受け入れ、パレスチナ和平を実現すべきだ、と論じています。

すなわち、ネタニヤフは1967年国境に戻るのは受け入れられないと言っているが、1967年国境が軍事的に防衛不可能だということを口実に和平への唯一の道を閉ざすのは間違いだ、

この国境は、@ヨルダンと西岸の境界へのイスラエル・パレスチナ合同治安部隊の配備、Aパレスチナの非武装化、Bイスラエル=ヨルダン=パレスチナ共同防衛条約等の安全保障措置等と組み合わせれば、防衛可能になる、

また、今イスラエルが直面している脅威は、イランが提供するロケット弾、迫撃砲、ミサイルだが、これらが西岸に入るのを防ぐには、西岸とヨルダンの境界を浸透不能にすべきであり、それには、イスラエル・パレスチナ合同治安部隊が有効だ、

西岸に入植地を作り、それを守るために占領を続けるのは破局につながる。つまり、イスラエルはアラブとユダヤの対立する二つの民族から成る国家となり、第三のインティファーダが起こり、アバッスの交渉政策が崩壊して、西岸でもハマスが権力を握ることになるだろう、

こうした運命を避けるために、イスラエルは米国の提案を受け入れて紛争を終わらせ、急速に変貌しつつある中東で孤立した国家となるのではなく、活動的な一員となるべきだ、と言っています。


このスネーの論は、イスラエルの和平優先派の考え方を述べたものです。イスラエル国内では、和平を結ぶことが安全保障につながるという主張と、安全の保証がない限り和平は結べないという主張がずっと拮抗してきましたが、現在では、安全の保証が第一と言う考え方が強く、和平によって「良き隣人」を作るという考えは、中東が激動し、先行きが不透明であることから、あまり支持されていません。7月10日の米・ロ・EU・国連による会合は何の声明も出さずに終了しており、9月の国連でパレスチナ国家承認の議題が出されるのは確実であることから、直接交渉が進展する可能性は極めて小さいと言えます。

スネーが危惧する、イスラエルが二つの民族から成る国家になる、インティファーダが又起きる、ハマスが西岸でも勢力を増す、ということは多分現実になるでしょう。また、民主化されたアラブ諸国は、イスラエルに対してかつて以上に敵対的になり、こちらの方がイスラム過激派やイランの問題よりも重大な問題になるかもしれません。ネタニヤフは小さなリスクを回避しようとして、かえって大きなリスクを招きよせている嫌いがあります。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:00 | 中東 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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