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世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


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90周年を迎えた中国共産党 [2011年06月30日(Thu)]
インターナショナル・ヘラルド・トリビューン6月30日付で、米ブルッキングス研究所のDavid Shambaughが、中国共産党は90周年を迎えたが、政治改革は逆行し、中国は昔の強硬路線に戻りつつある、と論じています。

すなわち、 今年、中国共産党は創立90周年を祝う大キャンペーンを行っているが、中国共産党はまだその忌まわしい「過去」と正直かつ全面的に向き合うことができず、そのことこそが現在の不安定の原因だ、

2009年秋のリーマンショック以降、中国では政治改革は停滞、中央政府の政策決定過程の透明性の拡大、汚職の撲滅、党内への民主主義の導入、報道の自由などに向けた改革努力は頓挫した。共産党は強硬路線を強め、改革から逆行している。90歳の共産党は90歳の老人のように、益々衰退し、恐れ、様々な延命策を講じているものの、その複雑さに圧倒されてしまっている、と言っています。


中国脅威論者が喜びそうな厳しい「中国共産党」論ですが、2009年の「リーマン・ショック」と2011年の「ジャスミン革命」などによって、近年中国共産党の諸政策が必要以上に保守化、強硬化しつつあると指摘している点は、極めて冷静な分析と言えるでしょう。

ただ、シャンボーはこの90歳の老人である中国共産党といかに付き合っていくかについて具体的な処方箋は示していません。老いて益々頑なになるだけなら、まだ対処の仕方もありますが、実際には中国は、来年、国家指導者が交代し、若い第五世代が政治権力を行使し始めます。この第五世代が、経験不足の官僚化した「二世政治家」のボンボン集団に終わるのか、それとも、これまでの硬直化した90歳の共産党を実質的に変え始めるのか。この点こそが、今年から来年にかけての中国共産党内ポリティックスの焦点となるでしょう。

シャンボーはおそらく「中国共産党はこのまま老化を続ける」と見ているのでしょうが、では中国とどう向き合うのか。対中強硬論だけでは中国は変わりませんが、下手に出れば、中国は逆に「つけあがる」だけでしょう。 米中の政治的、経済的、軍事的「覇権争い」が始まって久しく、この10年で米国知識人の中国理解はかなり向上し、基本的対中戦略についてもようやくコンセンサスらしきものが出来つつあるようです。しかし、具体的戦術についてはまだまだ議論は収斂していません。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:34 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
中国による空母配備の意義 [2011年06月27日(Mon)]
Foreign Policy 6月27日付で、米海軍大学のJames Holmes准教授が、中国の空母の配備はいよいよ実施の段階に入ったが、それは海軍国中国としての象徴的存在として意味があるだけでなく、数々の戦略的利点も有する、と言っています。

すなわち、今月ワシントンを訪問した中国参謀総長が、空母機動部隊を配備する方針を公式に明らかにし、中国の空母配備はいよいよ実施の段階に来た。中国の空母は米国のそれには及ぶべくもないものの、その配備は中国の海軍ナショナリズムにとって象徴的な意味を持ち、さらに、@琉球から東へ抜けて、台湾を東から脅かすことができるようになる、A南シナ海全域で、移動可能な航空基地になる、B南アジアへの進出が可能になる、C中国本土からの援護射撃を受けて、米艦隊の東アジア接近を困難にすることができるようになる等、種々の軍事的効果を持っている。また、災害救援にも使え、中国の大国としてのプレスティージの向上にも役立つ、と言っています。


中国の空母配備が、いよいよ時間の問題、現実の問題となってきました。従来は、中国の空母は、米国の空母機動部隊と較べて語るに足りない弱小の海軍力として軽視する傾向がありましたが、こうしてその用途を考えて見ると、本格的な戦争に到る前の段階において、数多くの政治的利用方法があることがわかります。その結果、東アジアにおける中国の影響力が増大することは必至と考えなければならないでしょう。これは、そのことを真面目に指摘した論説です。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:57 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米サイバー戦略の二重基準 [2011年06月26日(Sun)]
ファイナンシャル・タイムズ6月26日付で、シカゴ国際問題評議会のThomas Wrightが、サイバー戦争に関する米国の方針はダブル・スタンダードだと批判、米国はサイバー戦争についても戦時国際法的整理を進めるべきだ、と主張しています。

すなわち、米国は他国のサイバー攻撃を戦争行為と見なし、通常兵力による報復を示唆する一方で、自らのサイバー攻撃は通常のスパイ活動とみなしているが、これはダブル・スタンダードというものだ。例えば、米国とイスラエルの合作と言われるスタックスネットがイランの核施設に甚大な被害を与えたとされるが、これはイランに対する戦争行為ではないのか。これが、戦争行為の例外となれば、米国は他国に対しサイバー戦に関する透明性を求めることが出来なくなる、

最善の解決策は、米国が自国による攻撃も含め、全てのサイバー攻撃を戦争行為と見なすことだ。スタックスネット攻撃についても、その事実を認めるべきで、これについては、「他に選択肢がなく、事前通告には馴染まない」と堂々と釈明できるはずだ。国際慣習法もこの種の予防的攻撃を認める方向にある。このように、自国のサイバー攻撃を公表することで、米国はサイバー攻撃に対応する国際的な国家連合を作ることも可能になるだろう、

ただ、米国が公表する、しないに関わらず、イランは必ず報復するだろうから、強力なサイバー防衛能力と信頼に足るサイバー攻撃能力は開発すべきだ。また、サイバー攻撃に関し、通常兵力と同様に、国際的な規範と基準を整備すべきであり、米国はその上で中国に対しサイバー攻撃自粛を申し入れるべきだ。これが遅れれば、それだけ中国からのサイバー脅威は高まるだろう、と言っています。


ライトの「ダブル・スタンダード」論は、スタックスネットなど米国のサイバー戦遂行能力の実態を知る者たちにとっては既に常識であり、その意味では、出るべくして出た「正論」と言えます。また、サイバー戦争に関しては未だ国際法上の取り扱いが確立されていないため、サイバー戦争の規範と基準を整備すべしという主張も、方向としては基本的に正しいと言えるでしょう。

問題はライトも言うように、サイバー戦争を戦時国際法の中に取り込むことによって中国などからのサイバー攻撃の脅威を減少させることが可能かどうかです。

また、現在サイバー戦争に関しては米国が圧倒的優位を保っており、劣勢にある中国などはライトが主張するようなサイバー戦能力の透明化の推進には強く反発すると思われます。そうだとすると、ライトの主張は基本的に正しいとしても、合意の実現は、中国側のサイバー能力が更に向上し、国際的な枠組作りは中国にとっても有利になると考えられるレベルに達するまで、難しいでしょう。いずれにしても、サイバー戦争が今後ますます激化してくことだけは間違いなさそうです。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:47 | 米国 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
ASEANの展望と課題 [2011年06月21日(Tue)]
南シナ海で中国、フィリピン、ベトナム間の緊張が高まっている折、CSIS のウェブサイト6月21日付で同研究所のErnest Z. Bowerが、またThe Diplomat 同日付でAEIのGary SchmittとMichael MazzaがASEANの課題と展望を論じています。

バウアーは、南シナ海の安定を維持するために、ASEANは一体としての政治力を高めるべきだ、として、そのために、@私的資格での政治家、官僚、学者等による自由な意見交換の強化、A国際組織としてのASEANの機構の強化、B米国に「国連海洋法憲章」を批准するよう働きかける等、ASEANとしての外交の強化、C経済統合の強化を提言しています。

シュミットとマッザは、今や経済力でも軍事力でもASEAN諸国を圧倒するようになった中国は、南シナ海の問題で譲歩する必要性を感じていない。そうした中で、ベトナム、シンガポール、フィリピンは米国にすり寄りつつあるが、中国との関係を優先する国々も出て来ており、ASEANのリーダー格のインドネシアやシンガポールはイニシアティブを取りかねている。米国が財政赤字削減のためにこの地域の兵力を縮小すれば、この地域は中国とインドの間の勢力争いの場となってしまうかもしれない、と指摘し、

ASEANはこの30年間重要な役割を果たしてきたが、ここで今までのやり方を変えないと、中国やロシアといった周辺の大国にとってばかりか、加盟国自身にとっても意味のない存在になってしまう、と言っています。


ASEANは周辺の政治・経済状況が悪化するたびに、危機を指摘されてきました。今回の情勢も、世界金融危機後、米国経済復活の見通しが立たない中、中国が自らの経済力に増長して自己主張を強めたことによる一時的現象かもしれません。金融危機以前は、中国指導部は米国との関係から得られる経済的利益を重視し、そのために東アジアの現状維持は必要だとして、それを支持してきました。この中国指導部の立場は現在でも変わっていないようであり、米国経済が立ち直れば、軍部等の強硬な言動はもっと抑制されるかもしれません。

一方、日本はこれまで、ASEANを活用して、東アジアにおける集団的フォーラム(ASEAN+3、東アジア首脳会議等)の形成を図ってきましたが、これは、ASEANと敵対するのを好まなかった中国を関与させる上で有効なやりかたでした。ところが、ASEAN自身が中国との紛争の当事者になってくると、ASEANを出汁にして日米中韓等の間のバランスを図るやり方はとれなくなります。これは、日本や韓国にとってアジアでのバランス外交を進める上で、ASEANの扱いが難しくなることを意味しますが、反面、米国、中国、インド等の大国の間、さらにはASEANとの間で舞台回しをすべき日本の役割が高くなる可能性もあると言えるでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:01 | 東南アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
プーチン体制の行方 [2011年06月18日(Sat)]
ワシントン・ポスト6月18日付で米ブルッキングス研究所のRobert Kaganが、ロシア内政は安定しているように見えるが、内実は違う、注意を払って必要な政策展開をすべきだ、と論じています。

すなわち、アラブで独裁者が権力を失い、中国がジャスミン革命を懸念する中で、プーチンの周辺も、ロシアがこの民主化の波から免れられるか心配しているだろう。12月に選挙を控えて、プーチンの統一ロシア党は、支持率が2009年の56%から43%に落ちており、国民は腐敗に怒っている、

プーチンが賢明なら、野党にも選挙に参加させ、国民の不満のはけ口を作るだろう。それによって政権の正統性も強化できる。しかし、プーチンが賢くなく、恐れもあって、かえって更なる弾圧を行い、反西側民族主義を煽る可能性もある、

一方、オバマは改革派で親西側のメドベージェフが権力闘争に勝つことを期待し、ロシアのWTO参加を支持してきたが、プーチンがメドベージェフを押しのければ、打つ手はなく、プーチンは6年任期を2期務めることになるだろう、

オバマ政権内には、この腐敗した権威主義的なマフィア国家との関係維持に疑問を持つ人々もいて、議論が続いている。そうした中で、米議会ではリーバーマンとマケインが、ロシアに対し、選挙への野党の参加等を認めるよう要請する決議を出す予定だ。さらに、人権を侵害したロシア高官の資産を凍結し、査証を拒否する立法も超党派で提案されている、と述べ、

中東の騒乱で、ロシアの政治状況は無視され、変化はありそうにないとされているが、ロシアという国は外から見えるほど安定していたことはない。プーチンの取巻きたちが憂慮しているのもこのことだ。昨年の今頃は、誰もが、ムバラクはエジプトをしっかり掌握していると思っていた、と言っています。


ロシアは、プーチンとその取り巻きが政治権力を独占、経済的利益も政治的に配分されるようになっており、政治的・社会的安定は達成されていますが、民主化勢力は容赦なく弾圧され、無気力で活気のない、政治に無関心な社会になっています。国民は腐敗の蔓延に不満を抱いていますが、何を言っても無駄と諦めているところがあります。

メドベージェフは近代化政策の推進を唱えていますが、経済は相変わらず資源頼み、企業家は政治的な利権獲得に重点を置き、若者は海外移住を願う中で、ロシアは不労所得で成り立つサウジのような国になってきています。

結局、プーチンは安定化には成功しましたが、その過程で犠牲にしたものが多過ぎ、彼のやり方は賞味期限が過ぎたように思われます。しかし、シロビキ(秘密警察、軍部、検察庁、内務省などの関係者)による独占的利益分配体制はそれなりに強固であり、プーチン体制はそう簡単には崩れないでしょう。

ケーガンが言うように、野党に政治権力を争わせるのは一つの手ですが、プーチンがそれを許す可能性は低く、米議会がこの論説にあるような立法をすれば、ジャクソン・ヴァニック修正が米ロ関係の足を引っ張った歴史が再現されるでしょう。

ただ、米ロ関係が悪化しても、日本が失うものは特にありません。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:53 | ロシア・東欧 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
NATOの役割縮小 [2011年06月18日(Sat)]
ワシント、ン・ポスト6月18日付で、Richard N. Haass米外交問題評議会会長が、ゲーツ国防長官がNATOの軍事努力の不足を非難したが、世界の関心地域が欧州からアジアに移ったことは事実であり、欧州諸国が果たすべき役割は限られたものになりつつある、と指摘しています。

すなわち、ゲーツもその告別演説で指摘したように、米国は過去60年間、常に欧州の軍事努力の不足を歎いてきたが、既に国際政治の中心関心地域は欧州からアジアに移っており、冷戦の勝利に中心的役割を果たした欧米パートナーシップの役割は、今後、不可避的に大幅に縮小し、欧州の影響力は欧州圏外では大きく限定されることになるだろう。皮肉なことに、欧州自身の素晴らしい成功が、欧米間の絆が重要性を失っていく大きな理由だ、

従って、米国にとって結論は単純で、@欧州を非難しても米国が望むようなことをするようにはならない、ANATOに代わって、軍事も含めて今も世界で活動する意思がある欧州の少数の国と二国間関係を構築、あるいは維持することが必要になる、B大きな挑戦を突きつけてくる地域で欧州以外の同盟国がパートナーに浮上してくる。例えば、アジアでは、豪州、インド、韓国、日本、ベトナム、中東では、トルコ、イスラエル、サウジアラビアに加えてインドが重要な存在になるかもしれない、ということだ、と述べ、

米国民がすべきことは、欧州と欧米関係が米国の外交政策を支配した時代が終わったという事実を受け入れ、それに適応することだ、と結んでいます。


ハースは、国務、防衛のポストを歴任、ブッシュ政権初期に国務省の政策企画委員長を務めた有能な人物ですが、新たなアイディアを打ち出す人ではありません。この論説も極めてもっともではあっても、常識的で特に注目すべき点はありません。

ただ、ここで改めて考えてみると、ゲーツがNATOの防衛努力の不足を批判したのは、今でもアフガニスタンなどでNATO諸国の協力を必要としている米国の立場上、同情できますが、確かに欧州が主要舞台であった冷戦が去った現在、NATOはもう時代遅れなのかもしれません。

では、米国にとって何が時代に即しているかと言えば、アジアにおいては何よりも日本に対して防衛努力の増強を要求するのが本筋だと言うことになります。それを抑えているのは、過去半世紀の対日政策の教訓、あるいは日本の現在の政治情勢についての判断があるのかもしれませんが、客観的情勢から言って、米国が内心それを望んでいることは間違いない、という認識だけは持っている必要があるでしょう。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:53 | 欧州 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
台湾問題公聴会 [2011年06月16日(Thu)]
6月16日、米下院外交委員会で久々に台湾問題に関する公聴会が開かれ、冒頭で、共和党のIleana Ros-Lehtinen委員長および民主党のHoward L. Berman前委員長が、揃って民主自由民主主義の台湾支持を表明し、F-16の売却を支持しました。

すなわち、レイティネン委員長は、「今回の公聴会は、興隆する中国の現実は認めなければならない、という対中宥和の雰囲気が最近生まれているだけに、特に必要だ」、と述べて、F-16の売却を支持し、さらに、台湾の安全への議会のコミットメントが誤って解釈されないよう、台湾関係法を強化する法案を提出するつもりだ、と言っています。

ついで、バーマン前委員長が、米台関係は、冷戦時代はアジアにおける共産主義の拡大防止が目的だったが、冷戦が終わり、台湾が民主化したことで、共通の価値観を有する国家同士の関係に変わった。その台湾の戦闘機が老朽化しているので、台湾関係法に基づいてF-16を売却すべきだ、と述べ、

中台間の経済、文化関係の進展は歓迎するが、台湾側の緊張緩和の努力にも関わらず、中国が軍事的脅威を縮小しなければ、中国の武力放棄は期待出来ない。台湾の過去60年間の変化は、一党独裁体制の他のアジア諸国に対する模範となるものだ。来年の台湾の選挙は台湾の政治的成長の証しであり、中国本土が中台関係の将来を強制的に決めることはできない、というメッセージを中国本土に送ることになるだろう、と言っています。


レイティネンが「宥和」と言っているように、昨今、米国の政府、有識者の間では、中台経済交流に進展に期待し、中台は自ずから統一に向かうという希望的観測に基づく政策論が強くなってきた感がありますが、これは、それに対して、自由民主台湾を守るべきであり、そのためにはF-16を提供しなければならない、とはっきりクギを刺している証言です。

台湾の民進党政権時代、米国では、台湾が独立の方向に走り、米国が中台間の紛争に捲きこまれるのを怖れる気分が強く、そのため、中台の経済関係の緊密化によって事態が自ずから解決されるのを期待する雰囲気がありました。

しかし、これは、所詮希望的観測に基づく政策論であり、台湾海峡の危機は、元来、想定の範囲から外せない問題でした。2010年以降、クリントン国務長官らが中国に対して強硬な姿勢を示していたことから、いずれ、それは米国の対台湾政策にも及ぶと予想していましたが、果たして今回議会でレイティネンのような声が出て来ました。

もともと、米政府、有識者がいかに中台経済関係強化による自然統合論に期待しようが、中国が台湾に対して武力の行使もしくは脅迫を行い、台湾が抵抗の意思を示した場合は、自由を守る米国の伝統から言っても、議会は圧倒的に米国の軍事的介入支持に傾くだろうと思われます。

つまり、今回は、たまたま、外交委員会委員長が共和党の親台湾派だったことからこうした公聴会が実現しましたが、潜在的には、米国の世論、すなわち米議会の絶対的多数は、台湾人が反対する限り、いかなる形であっても民主台湾が一党独裁の中国に吸収されることには、反対するだろうと考えて良いように思われます。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:42 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
中国による対米サイバー攻撃 [2011年06月15日(Wed)]
0615中国による対米サイバー攻撃

ウォールストリート・ジャーナル6月15日付で、Richard Clarke元ホワイトハウス安全保障担当官が、中国政府が米国の官民のコンピューター・ネットワークを計画的にサイバー攻撃しているが、米国政府は政府のコンピューター・ネットワークを防御しようとするだけで、民間を中国のサイバー攻撃から守ろうとしていない、と批判しています。

すなわち、中国政府は米国官民のコンピューター・ネットワークを計画的に攻撃し、米国企業の研究開発、ソフトウェアのソースコード、製造のノウハウ、政府の計画を盗み取ることに成功しており、それによって米国の優位を切り崩している。2009年には、米国の電力網がサイバー侵入を受け、攻撃者は何時でも電力網を攻撃できるようになった。その目的は、米国経済の根幹に損害を与えると脅すことにより、米国の軍事優位に対抗することにあり、実際に、中国の軍事専門家たちは、こうすれば中国のような国も軍事的に優位な米国と同等の立場に立てる、と書いている、

ところが、議会はサイバー安全保障に関する重要法案を一つも成立させておらず、オバマ大統領も中国政府に懸念を表明していない。国防省は米国企業を守ることよりも、積極的防衛、つまりサイバー攻撃の方を重視しているようだ。しかし、それは中国が大々的なサイバー戦争を仕掛けてきた場合には有用かもしれないが、中国との日常的なサイバーゲリラ戦争に関しては、米国政府は専ら政府のネットワークを守ろうとするのみで、それ以外を中国のサイバー攻撃から守る責任は果たしていない、と言っています。


最近米国ではサイバー攻撃の脅威に対する関心が急速に高まっており、それに対する防護策の強化について、官民が具体策を発表・提言しています。そうした中で、この論説は、中国からのサイバー攻撃に的を絞って、米国の対応の遅れに警告を発したものです。

クラークはホワイトハウスの安全保障担当官として3代の大統領に仕え、特にサイバー安全保障に詳しく、昨年、Cyber War: The next threat to national securityand what to do about itを著わして、評判を呼んでいます。

クラークがこの論説で強調しているのは、中国のサイバー攻撃能力が米中の軍事バランスに及ぼす影響です。通常、米中の軍事バランスと言えば、核と通常兵器のバランスを指しますが、中国が、例えば、米国の電力網のコンピューター・ネットワークを支配できるようになると、それを脅しに使うことによって、米国の軍事優位を相殺できることになります。つまり、米国は伝統的な軍事力の比較だけでは、軍事優位を誇れなくなるわけであり、これは米国および同盟国の戦略にとって深刻な問題です。

サイバー攻撃能力の軍事力としての評価は、核兵器と同様の抑止が考えられるのか等の問題をはじめ、未だ始まったばかりですが、今後米国が中国の軍事力、あるいは米中の軍事バランスを評価する場合、伝統的な軍事力の他にサイバー攻撃能力を考慮に入れなければならず、現状ではそれが米国に不利に働くことは確かなようです。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:16 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
上海協力機構設立10周年 [2011年06月14日(Tue)]
米外交問題評議会のウェブサイト6月14日付で、同評議会のStewart M. Patrickが、設立10周年を迎える上海協力機構について、中ロのライバル関係もあって、主要な地域機構とはならないだろうが、無視もできない存在だ、と論じています。

すなわち、上海協力機構(SCO)は2001年に、中、ロ、カザフ、キルギス、ウズベク、タジクで発足、その後、インド、イラン、モンゴル、パキスタンがオブザーバーに加わり、白ロシアとスリランカが「対話パートナー」になった。最初は信頼醸成と中央アジアの安全保障が目的だったが、現在では、より広く安全保障、政治、経済問題に取り組むフォーラム、そして、反米、反西側感情を表明する場となっており、共同軍事演習も行っている、

しかし、中ロは、中央アジアにおける米国のプレゼンス反対では歩調を合わせているが、ロシアのグルジア侵攻後は関係が悪化、@中央アジアで影響力確保をめぐって競争する、Aインド加入にロシアは乗り気、中国は違う、Bエネルギーについて、ロシアは生産者カルテルを望むが、消費国中国は供給の保障を重視、C中国がSCO内の経済協力を重視するのに対し、ロシアはSCOをNATOへの対抗馬として重視する等、対立が拡大している、

そのため、SCOが軍事同盟に、あるいは西側同盟のライバルになることはありえない。ただ、米国などにとって問題なのは、同機構が、人権や政治的自由を拒否する「権威主義国家」の集まりであり、中央アジアに「権威主義の平和」を望み、「カラー革命」の弾圧や、ウズベク、中国新彊での弾圧を支持していることだ。従って、米国としては民主主義国のインドの同機構への参加を奨励すべきだろう、

米国はSCOに最初懐疑的だったが、今では関与を進めるようになり、特に、中央アジアの米軍基地について撤去要求が繰り返されないよう努めている。2005年にはオブザーバーになろうとして、拒否されたが、テロ対策や麻薬対策では同機構と協力しうる、

一方、SCOはアフガニスタンをオブザーバーに加えるかどうかを検討しようとしている。米国は、周辺諸国のアフガン復興参加を求めてきたが、アフガニスタンが中国の影響下に入るのは歓迎できない。しかし、SCOが南西アジアでプレゼンスを拡大するのは不可避であり、アフガン作戦の終了を控え、地域諸国間の対話の場を探している米国にとって、SCOとの協力も一つの選択肢だろう、と言っています。


論説は特に目新しいことは言っていませんが、SCOの現状と問題点を概説し、SCOを過大あるいは過小に評価することに注意を喚起しているという点で意味があります。

論説も言うように、「権威主義国家の集まり」であるSCOは、民主主義の拡大に抵抗する好ましくない面がありますが、地域の安定にはそれなりの役割を果たしています。つまり、敵視するほどの力はなく、今後持つ可能性もない、従って是々非々で付き合っていけばよい相手と言えます。

アフガニスタンがオブザーバーとして加われば、安定化効果はあるでしょう。ただ、SCOがアフガン復興に大きな役割を果たすと思うのは期待のしすぎです。

なお、SCO内での中ロの力関係は中国有利になっており、その傾向は当面続くと思われますが、ロシアが抵抗するので、そう簡単に中国に牛耳られる組織にはならないでしょうし、インドが加入すればなおさらです。

結局、中国の国力が伸びるに従って、中国の国際的な影響力は拡大しますが、SCO自体は中国の影響力を強める効果はあまりないように思われます。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:49 | その他 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米軍沖縄駐留の理由 [2011年06月14日(Tue)]
米ヘリテージ財団のウェブサイト6月14日付で、同財団の東アジア専門家、Bruce Klingnerが、普天間問題をめぐる日本の議論に欠けているのは、日本の国益、地域の軍事情勢、そして日米同盟に何が必要かという視点であり、もういい加減で、消極的なコンセンサス方式でなく、積極的に戦略的決断をして欲しい、と言っています。

すなわち、鳩山政権以来の普天間問題の推移は、韓、豪、台湾、ベトナム、シンガポール、インドネシアなども非常に憂慮させてきており、日本民主党政権はもう戦略的発想の上に立って決断をすべき時に来ている、

沖縄に米軍基地が必要なのは、@沖縄の基地は、米国が中国の脅威からアジアを守るという象徴である、A沖縄の米軍はアジアを守る態勢にある、B海兵隊は地域内のどこでも、ほぼ一日内に陸海空に展開出来る即応部隊である、C日本には海兵隊のような離島奪回の能力が無く、沖縄海兵隊は自らの血を流して、尖閣も含む日本の領土を守る決意である、D朝鮮半島有事等の危機に際して、韓国を守り、民間人の退避を援ける、E津波などに際して人道援助を行う、F年間70もの共同演習をこの地域で行っている、G日本は南西諸島防衛に関心を持ち始めたが、未だその実力は弱体である、からだ。

勿論、沖縄の海兵隊を撤去するには、中国や北朝鮮の脅威を取り除く、あるいは日本が自主武装して地域全体の安全を保証すればよいが、それはとても出来そうもない、

米国は、兵力再編のグアム合意や、空軍の訓練空域の移転などによって、沖縄の負担を減らす配慮をしているが、沖縄の政治家は、解決を引き延ばして、さらなる利益をえようとしており、そんなことで基地反対は収まらない。また、グアム合意は多くの妥協を重ねた産物であり、一部だけ実施するわけにはいかないし、同盟は、目的達成のためにあるのであって、負担軽減のためにあるのではない、

そうした中で、米国は、日本政府と沖縄の間に立つようなことになってはならず、兵力再編合意は日米両国家間の合意であり、日本の国家安全保障の問題は沖縄の地域的利益に優先することを、日本政府に対して強調すべきだ、と言っています。


沖縄の基地をめぐる多年の日米交渉を熟知している筆者が、もういい加減にしてくれ、と言ってブチ切れている論文です。その心情は理解できますし、反論できるような事実関係の誤認もまずありません。

と言っても、直ちに解決案のある問題ではありません。むしろ、日米の全ての当事者が、同じように感じながら、それを言っても解決に資さないので、現実との妥協点を見出す努力を積み重ねて来たという事実をもう一度認識させ、問題点をリマインドさせるという点で意味のある論文というべきでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:33 | 日本 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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