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世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


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なぜ中国は民主化しないのか [2011年04月26日(Tue)]
米AEIのウェブサイト4月26日付で同研究所のDan Blumenthalが、中国が民主化しないのは、中国が本当の資本主義ではないからだ、と論じています。

米国は中国が資本主義になり、その後民主主義になることを前提にしてきたが、中国には民主主義はない。中国の制度を「国家」資本主義、「権威主義的」資本主義という人もいるが、中国は権威主義的ではあっても、資本主義ではない。

なぜなら、資本主義は市民に、@豊かになる機会と、A財産権の保障、自由な活動、身分ではなく創意工夫による報酬を受けることを含む最大の個人的自由を与えると共に、B同情心、寛大さ、自立、自制などの公的な美徳を推進するものであり、これらはすべて政治的自由や民主主義制につながる。ところが、中国の場合、@は提供されているが、AもBも与えられていない、

資本主義は市民に自己改善と自立を(自己規制や同情心という美徳で制約しつつ)許すものであり、資本家は民主化過程で国家の不正や略奪に対抗してきた。しかし中国では企業家は国家に依存するか、国家から特権を与えられている存在であり、民主化を求める「階級」は出現していない。従って、民主主義は形成されそうにない、

中国共産党は市場原則を一部取り入れ、経済成長に成功して物質的利益を与えることで国民の多くを買収してきたが、多くの中国人にとってこの社会契約は不満なものになっている。改革がないと、中国は単に繁栄する独裁制にとどまるだろう、と言っています。


中国がなぜ民主化しないのかは検討に値する問題です。これはそれについての一つの試論であり、ブルーメンソールは、何が資本主義であるかについて特定の考え方を持ってきて、今の中国はそこから外れているから、民主化が起きないのだと説明しています。しかし、なぜ中国が彼の言う資本主義から外れているのかの説明はありません。ただ、経済成長に伴って中国が近い将来民主化する、という幻想を排除するには役立つ論説です。

共産党支配の維持を最優先に考えている中国共産党が、どういう理論で自らの統治を正統としているのかはよくわかりません。民族主義的願望の実現や経済成長を共産党の正統性の根拠とするのは、理論的にはよくわからない議論ですし、過去の実績に正統性を求めるのは、大躍進や文化大革命など酷いものが多くて無理でしょう。

現実には、今の中国共産党は安定の保持を強調して、権力維持を目指している感があります。要するに、中国共産党は権力にしがみつくことを自己目的化した集団のようであり、だからこそ民主化に危険を感じて、弾圧に狂奔している一方、国民の方はこれまでと比較して生活水準が上がっているので、共産党支配を容認しているということではないかと思われます。

共産党のこの権力維持指向と国民によるその容認は微妙な均衡を保っており、脆弱ではありますが、権力層が権力にしつこくしがみつくのはよくあることであり、そう簡単には変わらないと見てよいようです。ただ、法治もなく、知的所有権も保護されないところで、イノベーションは起きませんから、中国の発展にとって共産党独裁が邪魔になる時がいつかは来るのではないかと思われます。




Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:16 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
「アラブの春」とパレスチナ問題 [2011年04月26日(Tue)]
ウォールストリート・ジャーナル4月26日付で、独ツァイト誌の元編集発行人、Josef Joffeが、「アラブの春」の本質は、抑圧者対被抑圧者の紛争であり、このことからも中東の中心的問題はパレスチナ紛争だという考えが間違っていることがわかる、と論じています。

すなわち、パレスチナ紛争が中東の不安定の根本原因だと言われてきたが、「アラブの春」で反米や反イスラエルの叫びはなく、ベンガジでは「米国は友人だ」というスローガンさえ見られた。民衆はムバラク、ベンアリ、カダフィなどに反対し、自由を求めているのであって、パレスチナ問題のために命をかけているわけではない、

パレスチナ問題最重視論では、イスラエルの譲歩がなければ、アラブ民衆は米国の友人である独裁者を排除しかねないとされてきたが、本当は、独裁者たちが自らの権力維持のために外敵への民衆の敵意をかき立て、抑圧や国内の惨めな現状から注意とエネルギーを逸らそうとしてこれを利用してきたのだ、

つまり、パレスチナ問題が専制政治を育むのではなく、専制君主たちが対立を煽っているのだ。パレスチナの人々は国家を持ってしかるべきだが、「先ずパススチナありき」は原因と結果を逆にしている、

民主主義と自由を望む民衆は、独裁者と違い、外部の敵を必要としない。イスラエルはムバラク退陣に混乱した対応をしたが、民主主義こそ、冷たい平和ではない真の平和につながることをイスラエルも認識すべきだ。もっとも、民主主義が中東で根付くまでにまだまだ時間はかかる、と言っています。


この論説はアラブの民衆がパレスチナ紛争について抱く感情や反イスラエル感情を軽視しています。確かに現在の「アラブの春」でパレスチナ問題は争点になっていませんが、エジプトが民主化した後、イスラエル・エジプト関係が冷たい平和から真の平和に移行する可能性があるというのは希望的観測に過ぎず、むしろ、冷たい平和からより強い対立関係になる可能性の方が強いと言えます。

エジプトの9月の議会選挙やその後の大統領選挙では、イスラエルとの関係が必ず争点になるでしょう。親イスラエルを標榜する人物が当選するとは到底考えられず、従って候補者は対イスラエル強硬策を唱えて票を集めようとするでしょうから、「民主主義は外部の敵を必要としない」とは言えません。

他方、イスラエルは、エジプト国民の不満のスケープ・ゴートにされ、イスラエル=エジプト平和条約が破棄されることを懸念しており、こちらの方がはるかに現実的な心配です。イスラエル人の多くは、アラブ諸国の民主化に疑念を持っており、民主化すれば真の平和が来るとは思っていません。

また、民衆の最大の関心は民主化であり、パレスチナ問題には関心がないことがデモのスローガンから見てとれるという判断も、あまり根拠はありません。これは、独裁者打倒が緊急の重要課題だったというだけのことであり、スローガンがなかったことにあまり深い意味を読みとるべきではないでしょう。

要するに、パレスチナ問題の解決がアラブ諸国の政治の穏健化につながるのであり、パレスチナ問題の解決はやはり重要です。それを否定するようなこの論説の主張にはにわかには賛成しがたいと言わざるを得ません。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:33 | 中東 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
豪州の対アジアビジョン [2011年04月25日(Mon)]
ウォールストリート・ジャーナル4月25日付で、ハワード政権時に首相補佐官を務めたAndrew Shearerが、ギラード首相の北東アジア歴訪の意義について主として安保面から論じています。

すなわち、豪州は、中国に貿易面で大きく依存しながら(貿易相手国として一位)、中国の軍事力増大や高まる政治的要求(例えば南シナ海での領有権の要求)に対する手立ても講じなければならない、という二律背反の状況に置かれている。しかも中国の人権姿勢や、豪州で増加している中国系移民の扱い等、両国の間には紛争を招きかねない特有の問題がある、

そうした中で、今回の日豪首脳会談で、安全保障面での協力を強化するとの合意が成立したのは大きな成果だ。豪州は、日本の大震災で軍用機による救援活動を行ったが、これはこれまでの日豪米間の安全保障面での対話が実を結んだものだ。また、豪州は韓国とも安保面で密接な協力関係があり、これは朝鮮戦争で豪州軍が中国軍と戦って以来続いている、

ギラード首相の今回の歴訪は、豪州国民の間で北方アジアへの関心が高まっていることの反映だ。豪州は地理的には北方アジアから離れているが、国民の半分は今後20年の内に中国が軍事的脅威になると思っており、90%が米中間で紛争が起きて豪州も米国の同盟国として巻き込まれるだろうと予想している。また、北朝鮮が韓国に本格的戦争をしかけた場合は、豪州国民の52%が軍隊を派遣することを支持しており、中国軍が北朝鮮を支援した場合は、支持率は56%に上昇する、と述べ

中国に対しては協力と抑止の両構えで臨むべきだが、ギラード首相の歴訪は、豪州、日本、韓国等、米国との同盟関係にある諸国が、米国が提供してくれる安定に安住することなく、海上の自由通航を維持するために協力を強化していくべきことを示している、と結んでいます。


豪州は、人口は2200 万人ですが、GDP 総額ではロシアに遜色ない経済力(資源が豊富なだけでなく、工業製品の輸出力もある)を有し、国連平和維持軍の常連です。他方、地理的には孤立した「白人国」であることから、安全保障に敏感であり、アジア太平洋地域の国際的枠組みのあるべき姿について、白人的な明確で論理的なメッセージ――欧米で受け入れられやすい――を発することが多く、APEC発足でも、枢要な役割を果たしています。日本にとってそうした豪州は仲間にすれば心強い存在です。

もっとも、この論説では、「中国軍事力の脅威」が盛んに言われていますが、豪州と中国の間にはインドネシアが存在し、広大な経済水域の防衛を重要な任務とする豪州軍にとっては、今のところインドネシアの方がリアルな潜在的脅威でしょう。

しかし、論説も言うように、日本、豪州、韓国が米国との同盟関係の下に相互協力を深めれば、それは日本の安全保障の強化につながります。さらに、カナダ、NZ 等、価値観と経済・社会体制を共有する太平洋諸国も含めて、これらの国が国連等で時に応じて共同行動をとれば、日本の外交に有力な手段が加わることになるでしょう。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:59 | 豪州 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
中東民主化への西側の対応 [2011年04月21日(Thu)]
インターナショナル・ヘラルドトリビューン4月21日付でフランスの外交官出身のJean-Marie Guehenno元国連事務次長が、西側諸国は中東各国のイスラム主義組織を政治勢力として受け入れるべきだと論じています。

すなわち、現在アラブで起きていることは1989年のソ連崩壊時に見られたような西欧民主主義をモデルとする運動ではなく、アラブ諸国内の「持たざる者」と「持てる者」の間の社会的不正義・不平等を正す、潜在的に反西欧的な運動だ。こうした運動は「イスラム過激主義」を過去のものとする可能性を秘めているが、そのためにはまず西側諸国がイスラム教の価値を受け入れ、ムスリム同胞団などを政治勢力として認める必要がある、

また、より民主的なアラブ世界を作るためには、2000年以降のパレスチナ問題に関する政策を一旦見直す必要がある。いずれにしても、西側諸国が中東地域の問題について中心的役割を果たすことはもはやなく、今後西側諸国には、「関与と自制のバランス」を保つことが求められるだろう、と言っています。


ゲエノは、「アラブの春」は民主主義を目指すのか、それとも社会的正義・平等を目指すのかという視点に立って、2011年のアラブ諸国と1989年のソ連・東欧諸国を比較していますが、これは、西側にとっては実はあまり意味がなく、重要なのは、今アラブ・イスラム地域で起きていることは、本質的に「反西側」になり得るという点です。

ただ、ゲエノが、西側諸国は現在の中東地域における問題を「イスラム主義者」対「世俗主義者」の戦いと見るのは止め、各種イスラム組織を政治勢力として受け入れない限り、イスラム過激主義を封じ込めることはできないと示唆しているのは、基本的に正しい議論でしょう。

また、ゲエノが、これまで米国・イスラエルが主導してきた「ハマスなどのテロリスト組織とは取引しない」という中東和平プロセスの基本的アプローチに対して根本から挑戦しているのは、いかにもフランスの外交官らしい姿勢です。

しかしその一方、彼の議論には幾つか弱点もあります。第一は、最近のチュニジア、エジプト、リビアなど北アフリカ各国の騒乱と、中東和平プロセスの混乱とを十分区別して議論できないでいることです。和平プロセスの長い経緯を無視するような見方は、米国やイスラエルでは決して説得力を持ちません。 第二は、湾岸地域への言及が全くないことです。イスラムの問題を議論する以上、パレスチナ問題だけではなく、イランと湾岸問題を議論することは不可欠かつ不可避の筈ですが、ゲエノの議論は、「北アフリカ」対「欧州」の枠を超えていません。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:48 | 中東 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
福島後の原発 [2011年04月19日(Tue)]
シカゴ・トリビューン4月19日社説が、福島の原発事故で原子力批判が高まっているが、化石燃料の利用にも多くのリスクが伴うものであり、二酸化炭素ガスを排出しないエネルギーとしてはやはり今後も原子力が中心とならざるを得ない、と論じています。

すなわち、福島の原発事故によって世界の原子力産業が揺れており、最新の世論調査では、米国民の6割が新しい原発の建設に反対している。これは2009年11月から48%の増加だ、

しかし、米政府と電力会社が原発のあり方を早急に見直すのは当然だが、福島の事故で勢いがついた原発反対派が主張するように、原発を制限したり、廃止するのは近視眼的だ。原発は米国の電力の20%を供給している。風力や太陽光等の再生可能エネルギーも重要性が増しているが、二酸化炭素を排出しない発電源の中心はやはり原子力だ、

それにしても、原子力産業にとって、今回の福島の事故は最悪のタイミングで起きた。米国では、石油危機後、原子力の人気が上昇していたさなかの1979年にスリーマイル島原発事故が起きており、そのため、原子力への米国民の信頼は大きく揺らぎ、新規の原発計画はストップした。その後、さらにチェルノブイリ事故が起き、原子力=高リスクという構図が米国民の心理の中に根を下ろしてしまった、

その結果、米国の既存の104基の原発の半分以上が建設後30年以上となり、過去20年間に建設されたのはわずか3基というように、米国の原発は老朽化が進んでいて、安全性が懸念される。

原子力はリスクが伴うが、そうしたリスクは、化石燃料の二酸化炭素排出に加えて、原油の流出や炭鉱事故等のマイナス要因も含む、化石燃料のコストと対比して考えるべきだ、

現在の不安が鎮まり、原発が再び受け入れられるようになれば、新しい原発の設計が関心の対象となるだろう。40年以上前に設計された福島のような原発がもはや建設されないことだけは確かだ、と言っています。


今回の福島の原発事故で原発批判が高まるのは当然ですが、原発廃止論は近視眼的です。原発はリスクを伴うものであり、また、老朽化や建設コストが高いという問題もありますが、化石燃料にも環境問題があり、その使用のコストは低いものではありません。そうした中で、この社説は、新しい設計に基づく原発はより安全であろうと原発を擁護するバランスの取れた議論を展開しています。

ただ、今回の事故で生じた放射能への警戒感は、感情的とも言えるものであり、社説が指摘する地球温暖化や石油の海洋流出、炭鉱の事故への警戒感と比べると、はるかに強く深刻です。原発のリスク、すなわち放射能による被害の限度を理性的に説得することは容易ではありません。当分の間は反原発派をはじめとする原発反対の動きが強まり、原子力の有用性が客観的に評価されるようになるまでにはかなりの時間がかかるでしょう。



Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:07 | その他 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
行き詰まるリビア介入 [2011年04月17日(Sun)]
ネット・マスコミのThe Daily Beast 4月17日付で、Leslie H. Gelb米外交問題評議会名誉会長が、米国はリビアへの武力介入拡大は避け、外交的手段で収拾をはかるべきだ、と論じています。

すなわち、NATOは国連安保理決議に縛られて空爆を拡大できないでいるが、このことは、イランや北朝鮮が米国を見くびることにつながりかねない。では、NATOは反政府派への兵器供与を拡大し、「顧問」の増派を行うべきだろうか。しかし西側首脳は、反政府派の素性がよくわからず、アルカイダが浸透しているかもしれないという不安を持っている、

そこで米政府は、@カダフィ軍の基地への撤退、A反政府側の政治的枠組みの明確化、B反政府側のうち素性の確かなものへの兵器供与、Cリビア原油ボイコット、Dカダフィの在外資産凍結の継続、Eカダフィ周辺者を語らってのカダフィ追放等を盛り込んだ休戦を実現しようとしており、これが正しい方策だと思われる、

これでもうまくいかない可能性はあるが、その場合は、拡大しても失敗するだけだろうから、現在のレベルの軍事介入を続けるのが最良策だろう。そして、そもそも軍事介入を主張したのはフランスとイギリスなのだから、主たる作戦は両国に任せればよい、と言っています。


米国は軍事介入を極力控える政策を取っていますが、日本の地震・津波に際して最大限の対応をしたように、孤立主義ではなく、必要性、正当性、世論の支持があれば、海外での軍事行動も行います。リビアの場合は、米国民が軍事介入を支持していないし、ゲルブも言うように、「英仏が音頭をとった」介入であり、目的が必ずしも民主化ではないことが透けて見えるというように、正当性も十分ではありません。反政府派の素性が明らかでないこともマイナス要因です。従って、論説の結論はしごくまともなものと言えるでしょう。

リビア情勢を見通すうえで不明な要素は、@カダフィ側が「西側」と行っていると思われる隠密交渉の内容、Aリビアのみならず、一連の中近東諸国で起きている民主化運動の背後に、欧米のNPOがどれだけ関与しているか、そして、Bイスラエルの動きです。

地元民の中には、これまで利権・ポストにありつけず、「民主化」を唱えてはその実、利権の奪取に狂奔する者がおり、それが、2000年代旧ソ連諸国で相次いで起きた「色つき革命」の構図でした。案の定、革命後に民主化は実現していません。

また、リビア情勢は、米欧間の隙間風をますます強いものにするかもしれません。オバマが大統領に当選した直後、「欧州諸国がアフガニスタンでちゃんと貢献しなければ、オバマは欧州を相手にしなくなるだろう」という懸念をNATO事務局が語っていましたが、その懸念が現実のものとなってきています。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:34 | 中東 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
中国の対外強硬姿勢 [2011年04月15日(Fri)]
Foreign Policy4月15日付で、米AEIのDaniel Blumenthalが、最近の中国の強硬姿勢の背後には、軍事力の増大と強力な指導者の不在という事情、そして感情的なナショナリズムがあり、この傾向は当分続くだろうと分析しています。

すなわち、諸外国に対するこの数年の中国の無礼な振る舞いは、強大化する軍事力、弱体な指導部、そして中国自身が創り出した排外的ナショナリズム、という悪しき三重の処方箋によって説明できる、

獲得した軍事力を隠すよりも誇示する方針は、今年初めにゲーツ国防長官が訪中時に、新開発のJ-20戦闘機の試験飛行をぶつけたことによく表れている、

他方、今の中国指導部は、他に優越する権力や正統性を持つ人物がいないまま、コンセンサス方式で動いているのが実態で、様々な決断は、リスク回避のみを念頭に下される(北朝鮮や経済改革)か、傷つけられたナショナリズム感情に突き動かされて下されている(南シナ海での紛争や日本との摩擦)、

そして、党や弱体な指導部の関心が経済改革に向かう中、タカ派に傾きがちな軍が外交政策でも強い発言権を持つに至っている、
 
また、党が1989年の天安門事件以降、中国文明の優越性と、日本や米国等の強国に味わわされた屈辱を強調する大規模な「愛国教育」を行ってきた結果、若者世代の多くは天安門の虐殺など聞いたこともなく、米国の全政策は中国封じ込めが目的だと信じ込んでいる。つまり、被害妄想のナショナリズムの風土が生まれており、これが、中国外交政策を束縛するどころか動かしかねない状況になっている、

強大な軍事力、弱い指導力、そして傷つけられたナショナリズム感情の組み合わせは、あらゆる事柄に波及する問題であり、おそらくこれが当面の間、中国の外交風景となるだろう、と言っています。


たしかに最近の中国の不要、不当に強硬な姿勢は、中国の国益に多大な害をもたらしていると思われ、この論文にあるその背後の理由の分析は概ね正鵠を射ているでしょう。一言で言えば、中国は天安門以来、自由主義思想を抑圧してナショナリズムを煽り、それが軍事力の増大を背後とする軍部の発言権によって後押しされ、指導部が弱体なのでそれを抑えきれない状況だ、ということです。

ただ、この論説の分析に異論は全くありませんが、来年の党大会後、あるいは、その前でも権力闘争の結果が固まった後は、中国が強硬姿勢から再び転じる可能性があることは、付け加えたいと思います。

米中関係は、長い冷戦時代の米ソ関係とも比較して論じることが可能ですが、1970年代、ソ連の急速な軍備拡張にもかかわらず、その平和攻勢によって、西側の同盟や防衛態勢が緩んだデタント時代がありました。来年以降は、中国の脅威増大に備えるとともに、中国の平和攻勢対策をも考えねばならない状況になるかもしれません。 



Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 10:13 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
中国経済悲観論 [2011年04月14日(Thu)]
Project Syndicate4月14日付でNouriel Roubini米ニューヨーク大学教授が、中国経済にソフトランディングは無理だと断定し、その理由を、表向き政府が何を言おうが、結局は投資に次ぐ投資に依拠した経済運営が続いていること、さらに、そのことが必然的に巨大な供給力過剰を生んでしまうことに求めています。

すなわち、2013年以降、中国経済はソフトランディングするどころか「煉瓦の壁」にぶつかるだろう。理由の一つは、リーマン危機後、成長のエンジンである輸出が対GDP比11%から5%に減少した時は、固定資本形成を対GDP比42%から47%に引き上げて乗り切ったが、この比率が昨年以降ほぼGDPの50%に達していることであり、ここまでくると「巨大な供給過剰と不良債権」問題に必ずや直面する。これらはいずれ深刻なデフレ圧力をもたらさずにはいない。あらゆる歴史的前例は、過剰投資が金融危機や長いスランプを招くことを示している、
 
中国の経済政策はこれらの傾向を是正し、投資から消費へ、すなわち企業セクターから家計へと富の創出源を移すはずだったが、国営企業が政治的にあまりに強く、家計がひどく弱い(人為的な低金利政策によって長らく家計から企業への所得移転がなされ、通貨安政策も家計を犠牲に企業を助ける方向に作用した)ために、そうした転換はできそうにない。これがハードランディングが予想される第二の理由だ、

そのため 元高、金利自由化、国営企業民営化といった必要な政策は実施が極めて難しく、中国は今後も投資に依拠した経済を続けざるを得ない。従ってクラッシュの危険もますます拡大するだろう、

結局、製造業、不動産、インフラにおける供給力の過剰はすでに明白だが、投資主導の成長の継続が供給過剰に輪をかける。いつかもうそれ以上の固定資本形成ができなくなった時の落ち込みをその分大きくなるだろう。来年の指導層交代までは高い成長率を維持できるかもしれないが、その代償は極めて高いものとなる、と言っています。


ルービニは、2008年リーマン危機があり得ることを早くから指摘したのみならず、発生の機制や時期まで言い当てたことで、一躍世界の注目を集めた人物です。いつかクラッシュするだろうと言うのは簡単ですが、どのような経路でいつ頃ということまで言い当てるのは、めったにできることではありません。

たしかに、人為的低金利政策がインフレ下に継続すると、預金者は実質的に利子を取られ、借り手企業は実質的に利子をもらうかたちになります。ここで通貨安政策が続くと、やはり家計は企業に自らの犠牲によって補助金を与えるのと同じになります。これらはルービニも言うように、すべて日本経済戦後高度成長の背後にあった事情であり、日本では過剰投資が生まれ、それが東京五輪後の昭和40年不況をもたらしました。

このように、中国の現在は日本の過去と表向き似ていますが、違いは、中国の場合のスケールの馬鹿でかさであり、かつ、構造転換に伴う政治的摩擦をやわらげる柔構造が統治機構にないことだと言えるかもしれません。

 

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:00 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
中国の言論弾圧 [2011年04月14日(Thu)]
エコノミスト誌のウェブサイト4月14日付け論説が、最近の中国の反体制分子に対する厳しい抑圧は、指導者たちの自信ではなく、神経質なまでの危機意識から生まれており、さらに、かつてとは違って抑圧が常態化しつつある、と論じています。

すなわち、これまで中国では厳しい引き締めの後は若干の「雪解け」があり、雪解け時には「北京の春」と言われるような状況も出現した。また、西側は、中国の経済開放はやがて政治の開放につながるとの前提のもとに、中国とのビジネスを正当化してきた、

しかし、最近の抑圧は、規模が大きく、期間も長く、さらに、天安門事件の後でさえ、勾留には一定の手続きがとられていたのに、恣意的な強制措置が当たり前になる、というように、方法も酷くなっており、抑圧が常態化している、

国内にこれといった体制打倒の動きがないのにこうした状況になっているのは、外からは万能のように見える指導者たちが疑心暗鬼になっているからだ、

今のところ、指導者たちは、土地を奪われた農民、失業中の大学卒業生、不満をもつブロガーたちを各個撃破する能力を持っているが、将来、経済成長が行き詰まり、彼らが連携するようなことがあれば、大きな勢力になり得る。また、中国には革命家の血統を引く「太子党」を中心とする特権階層、新毛沢東派ともいうべきイデオロギー重視の人々、鬱積する怒りを抱えた多くの貧しい人々が混在しており、こうした複雑な状況下では、首脳部が交代しても、抑圧を続けるほかないかもしれない。従って、少なくとも短期的には、経済の開放は政治の開放に結びつかないと見るべきだろう、と言っています。


この論説は、中国の経済がまだ「隆々」としていると思っている人々にとっては、受け入れ難いものかもしれませんが、中国の現実はここで言われているものに近いように思われます。

3月の全人代では、呉邦国・常務委員長が、明らかに中東の「ジャスミン革命」を念頭に置いて、「体制が揺るげば、内乱が起きる」と述べて、強い危機感を表明しました。これは、天安門事件で使われた表現に近く、もちろん、独裁体制への批判分子を封じ込めるための強い決意、とも言えますが、突き詰めれば、指導部が体制維持に自信や余裕がないことの裏返しでしょう。

中国の経済開放がやがて政治開放を促すという「ソフト・ランディング」説は、少なくとも今日の中国の現実からはますます乖離しつつあるように見えます。他方、論説の言うような、農民、失業中の大学卒業者、一部ブロガーなど、体制批判者や不満者たちが、将来、横の連携をとって「一つの勢力」を作れるかといえば、今の中国の治安当局・軍部の動向などを見ると、当分、その現実性は極めて低いと言わざるを得ないでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:33 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米同盟政策の改変 [2011年04月11日(Mon)]
米戦略予算評価センターのウェブサイト4月11日付で、Jim Thomas同副所長が、米国の同盟関係を永続きさせるには、同盟諸国側の防衛力増強と防衛体制の見直しが必要だ、と論じています。

すなわち、米国は20世紀半ば頃に孤立主義から同盟政策へと劇的に変わったが、米国があまりに強大だったため、20世紀末から21世紀初めにかけてその実質は同盟関係というよりも保護関係になっていた。しかも、この依存関係は、冷戦が終わっても、同盟国が国防費を削減したために、かえって深まっている。ほとんどのNATO諸国の防衛費はGDPの2%以下であり、アジアでは、韓国と豪州は国防費を増やしているが、日本は1%で低迷している、

しかし、欧州では脅威が減少したものの、中国の脅威の増大は本物であり、他方、米国の国防費は、今後相当期間削減されることになるので、こうした保護関係は本当のパートナーシップにならなければならない。特に前線の諸国は、侵略当初の防衛に対してより大きい責任を持つ必要がある、

それに、逆説的だが、同盟国が当初の防衛に責任を持つほど、米国は前進基地の維持が容易になり、米国のコミットメントの信頼性も高まる、

具体的には、米国は、@同盟国の防衛力強化の組織的中心となって、防衛技術の輸出規制を見直し、精密武器弾薬や情報の供給者とならねばならない、また、A最大の脅威は東アジアにあるので、NATO関連の経費は節約して、インド、太平洋地域に集中し、米軍専用ではない共同使用の基地を拡大すると共に、第二列島線にも基地を設けるべきだ、

他方、島国である日本は、広域海洋哨戒、対艦ミサイル、移動可能な対空、対ミサイル防衛、潜水艦戦の能力を築き、特に、南方諸島や海峡の防衛に力を振り向けるべきだ、と述べ、

米国が衰退する時期は来るかもしれないが、米国の優越を維持しようとする努力を怠ればそれは早く来る。それを回避するには、米国と同盟国両方の努力が必要だ、と結んでいます。


これは、安全保障の主要関心地域はもはやヨーロッパでなくアジアであり、最大の脅威は中国であるという、極めて真っ当な議論を、対テロ戦争などのわき道に寄らず展開して、その対策を提示している、バランスの取れた正攻法の論です。

日本に対しても、防衛費の少なさを他国と同列に非難しつつも、期待を南方諸島防衛、ミサイル、海上戦力中心としているところは現実的です。

米国の国力の相対的低下とアジアにおける緊張増大は当然の趨勢であり、日本としては、この論文を待たずとも日本への期待の高まりは当然覚悟すべきでしょう。なお、トーマスは、同盟国に対して米国が防衛技術を開放するよう主張していますが、日本は、それを受け入れるために、武器輸出三原則の見直しが必要になるでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:20 | 米国 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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