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世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


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専制的産油国への原油依存 [2011年02月28日(Mon)]
ファイナンシャル・タイムズ2月28日付で、Nick Butler英キングスカレッジ政策研究所所長が、不安定な独裁国家に依存する原油供給の現状に警鐘を鳴らしています。

すなわち、最近のリビア情勢に端を発した原油価格の動きは、「投機による石油価格の上昇」と「サウジの増産による現状復帰」といった従来のような一時的現象ではない。その背景には、原油供給が一部の独裁国家への依存をますます強めており、これが、国際原油市場を脆弱化させ、世界経済の回復にとって脅威になっているという事情がある。問題解決には、@原油備蓄の拡大と、A原油供給先の多様化が不可欠であり、B新エネルギー源、特に次世代の原子力発電の開発も重要だ、と指摘し、

リビア情勢は近く収まるかもしれないが、国際原油市場のリスクは一時的ではなく、より根本的なものであり、こうした現実を直視しなければ、市場の不安定と石油価格高騰は恒常化し、究極的には世界の経済成長が失われるだろう、と警告しています。


バトラーは、英大手石油会社BPの戦略担当副社長を務めた後、ブラウン政権で首相特別顧問を務めたエネルギー政策問題の専門家であり、その主張は至極真っ当なものです。現在のリビアの状況は一時的なものではなく、より根本的な問題を秘めていることについて疑問の余地はありません。また、今後、原油供給の不安定化が中東などの他の独裁国家にも波及する可能性を念頭に、問題解決の手段として、石油備蓄拡大や新エネルギー開発を提唱していることも極めて理に適っています。

問題は、バトラーが言っていることは、1973年以来、何度かあったエネルギー危機の際に唱えられた政策と基本的に変わっていないことです。要するに、言うのは簡単ですが、実行は極めて難しいということです。それに、1973年時点と現在が大きく異なるのは、インドと中国という2つの巨大消費国が出現したことですが、両国がバトラーの主張を単純に受け入れるとは限らない点も要注意でしょう。

バトラーの正当な主張は、西側諸国のエネルギーが今後も当分原油に依存し続けること、さらに、それだけでなく、恐らく次のエネルギー危機に対する特効薬もないことを、逆に証明しているようにも思われます。

なお、リビアについては、カダフィが退陣したとしても、問題が沈静化するとは思えません。懸念されるのは、カダフィ後のリビア内政の混乱が長期化し、最悪の場合、リビア原油がイスラム過激派などの手に移り、石油が再び政治的武器として使われる可能性が出てきたことです。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:36 | その他 | この記事のURL | コメント(1) | トラックバック(0)
財政破綻路線の現実 [2011年02月28日(Mon)]
1980年代と異なり、累積債務は今日すぐれて「先進国問題」となっていますが、わが国でも著名なPeter Petersonが、ファイナンシャル・タイムズ2月28日付でこの問題を取り上げ、放置した場合のドル暴落、金利暴騰、保護主義蔓延などの危機シナリオについて注意を促しています。

すなわち、先進諸国の累積債務は2035年までにGDP比180%に達しうる。中でも、米国が抱えるリスクは深刻だ。一つには、負債の50%近くが外国の手にあるからで、これは当然、ドル暴落への呼び水になり得る。ニクソンが金ドル交換停止に踏み切った1970年当時の負債比率は5%に過ぎなかった、

さらに金利の高騰リスクがある。借金が増えれば、借り入れコストが高くなるのは当然で、2035年時点で、米国連邦債務の利払い負担は、控え目に見ても、GDP比13%に達するだろう。これは、現在、連邦政府が教育、研究開発、そして、インフラに支出している額の総計の3倍を超える、

オバマ大統領は、投資と技術革新による「成長シナリオ」を提唱するが、それを実現したいなら、国防費を含むすべての支出を俎上に乗せて再検討し、債務の累積に歯止めをかけることに努めなければならない、と述べ、

実は、第一次世界大戦中とその戦後期に、似たような事態から先進各国が軒並み債務不履行に陥った前例があるが、その時の経験から、現在説かれているような債務削減へ向けた国際協調は実効性が非常に怪しい。結局は、各国政府が自ら努力するしかないだろう。何よりもすべきことは、債務削減に向けた青写真を早く示し、市場の信用を固めることだ、と言っています。

ピーターソンはニクソン政権で金ドル交換停止に至る政策過程にじかに立ち会い、同政権の末期には商務長官を務めています。その後、ウォール街で今日言うM&Aファンドの先駆けとなるブラックストーン・グループを興し、日本とも深い関係があります。社会保障コストの高まりやそれが財政に及ぼす悪影響について最も早くから、かつ一貫して警鐘を鳴らしてきた人物として、米国諸方面に厚い信用を築いています。今回の指摘は、彼自身の名を冠した在ワシントンの国際経済研究所による長期予測に依拠していますが、やはり相応の重みをもって受け止められるでしょう。

日本は、深刻な銀行不良債権問題が生じて、他より早くこの問題を処理せざるを得なかったことから、現在、先進国の中で最も健全な銀行セクターを持っています。ピーターソンが言うように、今後、先進各国を累積債務問題が襲うことはほとんど必定の今、他国に先んじて負債を積み上げた日本が、その削減でも先んじることができれば、来るべき金利暴騰時代を相対的に軽傷で乗り切ることができるでしょう。そのためには、警報が出されている今、備えを急ぐ必要があります。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:47 | 米国 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
リビアの石油の呪い [2011年02月27日(Sun)]
米AEIのウェブサイト2月27日付で、Paul Wolfowitz元世界銀行総裁が、リビアの「石油の呪い」は西側に汚点を残した、と論じています。

すなわち、石油等の資源は祝福よりも「呪い」であることがますます明らかになってきているが、その酷い例がリビアだ。石油は多くの産油国に腐敗をもたらしたが、リビアの場合は、恐怖と圧政をもたらした上に、リビア国外にも災厄をもたらした、

リビアでは、国民1人当たり1万ドル超の所得に相当する石油収入があるのに、国民は惨めな生活を強いられる一方、石油収入によって政府が国民を必要としない状況が生まれている。例えば、カダフィは傭兵を雇うことで、リビア人による正規軍を必要としていない、

また、リビアは、国外ではテロによって何百人もの欧米人を殺し、さらに、リベリア、シエラレオン、ウガンダ、チャド等、アフリカ諸国の内戦に関与して、何十万人もの死に責任を負っている、

こうした歴史に鑑みれば、諸事情があったとしても、米英などがカダフィの核放棄後、カダフィを名誉回復させたことは理解できない。中東の人々は、その裏に米英の石油会社の圧力があったと見ている。また、国連やアフリカ連合の実績も酷く、国連は2003年にリビアを人権委員会の議長に選出、アフリカ連合も2009年にカダフィを議長に選んでいる、と指摘し、

現在の米英などの不作為は、こうした過去の汚点をぬぐう機会を逸するものであり、将来の歴史家は、なぜ西側諸国、特に米国がカダフィ政権の終焉を呼びかけなかったのか、不思議に思うだろう。ここ数カ月の出来事は、独裁制の下の停滞によってアラブ世界の安定は保たれるという観念の誤りを示しており、アラブ人は自由を欲しないという誤った考えは一掃されることになろう、

カダフィ後の政権がどうなるかはわからないが、「石油の呪い」は排除すべきであり、その一つの方法は、石油収入が国民に直接行くようにし、政府は税金によって国民にサービスを提供するようにすることだ、と言っています。


ウルフォヴィツのこの論旨には賛同できます。資源収入に頼る国では、額に汗して働く企業が発達しないということはよく指摘されますが、こうした国は政治的にも民主化しません。資源による収入がある国、例えば、サウジやクウェートなどでは、国民は税金を払わず、国家からただで資金やサービスをもらうため、「課税がないから、代表もない」ということになります。ウルフォヴィッツが言うように、税金で経費を賄う正直な政府という考え方は、実現は難しいものがありますが、一つの健全な方向と言えます。

西側諸国は、石油への思惑もあって、直接民主主義の実践を標榜して、憲法も作らず、議会も作らず、挙句にとんでもない暴君と化したカダフィを容認してきましたが、これはやはり反省すべきでしょう。

それにしても、今回の中東の激動には経済的不満も含めて様々な要素があり、簡単な説明を拒否するところがありますが、人間はやはりパンのみならず、正義と尊厳を求めるものだ、という感慨を持ちます。



Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:19 | 中東 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
リビアへの人道介入 [2011年02月27日(Sun)]
ファイナンシャル・タイムズ2月27日付で、Gareth Evans元豪外相が、カダフィの虐殺を止めるために、飛行禁止空域を設定すべきだ、と論じています。

すなわち、国家が人道に反する犯罪から国民を保護する責任を果たさない場合、国際社会には安保理を介する集団的措置によって保護を提供すべき責任がある、というのが、2005年国連総会が全会一致で採択した「保護する責任」原則であり、リビアはこの原則を適用すべき明白な事例だ、

安保理はこの原則をに基づいてリビア制裁を決議したが、武力行使には至っていない。飛行禁止区域の設定や地上軍の派遣は、「保護する責任」を主張する者にとっても難しい決定だが、制裁で虐殺を止められない場合は、武力行使を考えるべきだ、

地上軍の派遣は迅速に同意は得られず、実行するのが難しい中で、飛行禁止空域の設定と執行は現実的な選択肢であり、直ちに案づくりに取り組むべきだ。問われているのは、「保護する責任」原則の信頼性のみならず、安保理の信頼性だ、と言っています。


これはもっともな主張と言えます。カダフィが徹底抗戦を呼び、傭兵や治安部隊を動員、ヘリや航空機を使って反政府デモを攻撃している今、飛行禁止空域の設定は必要です。そしてそれを実施できるのは、米国やNATOしかないでしょう。それに、カダフィは化学兵器を保有しており、それを使用する可能性があるので、これは急ぐ必要があります。

安保理が制裁決議を採択したということは、カダフィが国際社会から完全に見放されたことを意味し、リビアの反体制派を元気づけると共に、カダフィ側には痛手を与えます。その一方、資産凍結と渡航禁止が課されたことで、カダフィには亡命という選択肢がなくなり、徹底抗戦せざるを得ない状況に追い込まれてもいます。米国は、イラク、アフガン戦争での失敗から教訓を学び過ぎて、「熱ものに懲りてナマスを吹いている」嫌いがあります。ここまできた以上、カダフィがこれ以上国民を殺害しないよう、出来るだけの措置をとるべきでしょう。

ただ、カダフィ時代の法相が反カダフィ勢力の指導者になっているように、反カダフィ勢力の正体がまだはっきりしないので、肩入れに値するかという問題はあります。近隣アラブ諸国の評価を聞いてみる必要がありますが、アラブ連盟やアフリカ連合との協議でこの点はすこし明らかになるでしょう。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:26 | 中東 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
北朝鮮の飢饉という選択 [2011年02月24日(Thu)]
TODAYonline 2月24日付で、ブッシュ政権下で東アジア担当国務次官補を勤めたChristopher Hillが、韓国政府は、食糧援助を行うことによって北の体制の延命を助けることが良いのか、あるいは、北朝鮮の同胞の短期的な苦難に目をつぶって援助を与えずに北の崩壊を早めるべきなのか、難しい決断を迫られていると論じています。

すなわち、韓国では、後継問題と食糧不足により、北の体制は早晩崩壊するとの見方が強まっており、そうした中で、北への食糧援助を行うべきか否かが難しい課題となっている、

つまり、韓国政府は、援助を行うことにより、民衆に過酷な圧政をしいている北朝鮮政権の延命を助けることになっても良いのか、それとも、援助を拒否することで飢餓を招き、北の住民が犠牲となっても北の政権を追い込むべきなのか、選択を迫られている。これは、こうした選択が統一後の南北間の住民感情にどのような影響を及ぼすかという判断も含めた、難しい決断だ、と言っています。


このヒルのような、北に飢餓が発生するか否かが、韓国政府の決断いかんによるとするような論調は偏ったものと言えます。北朝鮮の住民に必要な食糧を保証することは、北朝鮮政府の責務であって、韓国政府の責務ではありません。北朝鮮は、核問題や、韓国に対して次々と行った挑発行為について、誠意ある対応を示すことで、韓国を含む国際社会から援助を受けることが可能となる情況を作り出すことが出来るはずです。また、食糧が足りないのであれば、軍の備蓄を放出することも出来るはずです。勿論、北の頑な対応を許している中国にも、責任があります。

また、ヒルは、韓国政府が援助を行なわなかったために飢餓が発生すれば、統一後の南北住民間に感情的しこりが残ると言っていますが、そうした可能性が大きいとは考えにくく、これも的外れな主張と言えるでしょう。




Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:39 | 東アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
石油価格高騰 [2011年02月24日(Thu)]
英エコノミスト2月24日付が、最近の石油価格高騰について、これは需給が逼迫したためというよりも、先行きの警戒感から来ていると分析して、種々の懸念されるシナリオを解説しています。

すなわち、中東の騒擾によって石油価格は、エジプトの革命前の$96から$111へと16%上昇した。これは需給関係から来ていると同時に、将来の懸念からも来ている。問題は、事態が1973年のオイル・ショックや、イラン革命、湾岸戦争時のようになることだ。

世界の石油生産におけるOPECのシェアーは、70年代の54%から現在は40%に落ち、中東の重要性は低下しているが、余剰生産能力があるのは、OPECだけであり、そのほとんどはサウジが支えている。あとは、クウェートとUAEに若干余剰能力があるだけだ。野村の試算では、アルジェリアからの輸出が止まるだけで、こうした余剰能力は吸収されてしまう上に、石油価格も$220に跳ね上がる、

従って、当面、サウジが増産するかどうかがカギだが、最大の危機はサウジ自身の供給が止まることだ。産油地帯にシーア派が多いのは心配だが、救いは、石油生産施設が住民の居住地から遠く離れており、防衛し易いことだ、

他方、備蓄は増えている。米国は750mバーレルの備蓄があり、中国も戦略的備蓄に努めており、現在世界的に需要の50日分近い備蓄があると思われる。こうしたことから、今後大きな変動があっても、それが永続的な影響を与えることはないだろう、と述べ、

ただ、イランのように、西側の技術者を追放してしまったために、革命前に600万b/dだった石油生産量が、未だに370万b/dまでしか回復していない例もあるので、油断はできない、と最後に警告しています。
 

常識的な解説記事です。イランの例は、サウジや湾岸諸国までが外国人技術者を追放するような政体になる、という極端な話ですから、備蓄もある現在、当面はそう心配しなくても良いでしょう。むしろ石油価格高騰が世界経済に及ぼす影響の方を心配すべきかもしれません。

なお、今後を予想すると、サウジは増産すると思われます。サウジは石油政策をとる際、常に、石油価格の維持を望むと同時に、石油価格を適度に抑えて代替エネルギーの参入を防ぐことを考えています。それに、今のところ、サウジが米国に対して代償を求めねばならないような大きな政治的、安全保障面の案件はないので、米国が増産を求めた場合、要請を断る理由はないように思われます。





Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:11 | 中東 | この記事のURL | コメント(1) | トラックバック(0)
民主化が招くイスラム化 [2011年02月24日(Thu)]
ニューヨーク・タイムズ2月24日付で、米外交問題評議会のCharles A. Kupchanが、欧州の近代社会は、政教分離の民主主義とナショナリズムによって生まれたが、イスラム社会では、それらが働く方向が西欧と異なり、その是非はともかく、その違いを理解すべきだ、と論じています。

すなわち、西欧では、近代化とは政教分離を意味し、西欧は、宗教改革後の民主化の進展によって世俗化した。しかし、イスラムは信仰であると同時に法である。イスラム世界にも世俗政権は存在するが、その世俗性は合意によるものではなく、強制によって保たれるものであって、民主政治になるにつれて、宗教の政治的発言力はむしろ強まる、と述べ、

1979年のイラン、1991年のアルジェリア、イラク、レバノン、パレスチナの選挙、トルコ、エジプトを例に挙げています。


民主化が進むにつれてイスラムの役割が増大するのは、その是非善悪を超えて中東の現実と言えます。また、ナショナリズムの役割もイスラム世界と西欧では異なります。
 
カプランは、だから西側は中東の政治的変化に抵抗すべきだと言っているのではなく、中東では単に「民主化」を叫ぶだけでなく、イスラム政治勢力の影響を増大させ、地域の不安定化を招く可能性があるので、中東政策はそうした事情を考慮して作るべきだと言っているわけです。

イスラム世界では、政教分離とナショナリズムは、西欧と同じようには働かないということを指摘した優れた分析と言えるでしょう。ただ、その分析を政策にいかに反映させるかについて具体的な提案はなく、ただ、そうした事実を直視せよ、と言っているだけです。

なお、この論説が言及していないことが一つあるとすると、それは、旧植民地諸国のナショナリズムは、反植民地主義と反西欧、そして冷戦下の共産国側のプロパガンダの影響もあって、反米主義だということです。エジプトの民主化が進めば、新しい民主政権は、程度の差はあれ、従来よりもイスラム的かつ反米的となるのは避けがたいと思われます。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 11:52 | 中東 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
エジプト民主化への次なるステップ [2011年02月22日(Tue)]
ファイナンシャル・タイムズ2月22日付けでMohamed ElBaradei前IAEA事務局長が、エジプトの民主化のためのステップとして、民生への移行を軍ではなく、大統領評議会が管理することを提案しています。

すなわち、独裁者は排除されたが、民主主義の実現は巨大かつ複雑な事業であり、これからの移行過程が重要だ。今は軍が「移行」を主導しているが、軍だけでは正統性のある民主主義の基礎は提供できない、として、

エジプトが民主主義に完全に転換するには、@基本的人権を保障する暫定憲法の制定、A文人2名と軍人1名から成る大統領評議会の形成とそれによる移行の主導、B旧体制の人間を排除した、有能な管理内閣の組織と管理内閣による自由で公正な選挙の準備、C独裁を支えた手段(非常事態法,、政党結成の制限、政治犯の勾留等)の廃止が必要だ、と主張しています。


エジプトでは軍が最高権力を掌握して憲法を停止し、議会を解散させるとともに、基本的には従来の内閣を継続させています。国民生活を考えれば、政府は必要でしょう。また、各地でストやデモがまだ続いているため、軍は、非常事態法は必要だと見て継続させています。しかし、時期が来れば政治から手を引くことを明確にしており、軍は、情勢を安定させた上で、大統領選挙の実施や新憲法の制定を考えているのではないかと思われます。

エルバラダイは、移行期の管理を軍から大統領評議会に移すことを提案しているわけですが、軍がこの案を採用する可能性はないように思われます。それに、こうした案は、軍と文民指導者の権力闘争になるので、あまり好ましくありません。むしろ、軍は民衆の声を聞く用意があると思われるので、軍を排除するよりも、軍と対話して民主化を進めていくのが良いように思われます。

いずれにしても、エジプト情勢はまだ紆余曲折があるでしょうが、エジプトの革命が成就したのか否かは、今後の民政移管のときに明確になるので、どのように移管されるかが、エルバラダイも言うように最重要です。

なお、エジプトが革命を成就して民主化すれば、アラブ世界におけるエジプトの地位から言って、アラブ世界全体が今よりは良い方向に進むことになるので、その意味でもエジプトの革命の成否は重要と言えます。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:28 | 中東 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
イスラム世界の民主化の自主性 [2011年02月20日(Sun)]
ロサンジェルス・タイムズ2月20日付で、米陸軍の軍人で、イラク戦争を一貫して厳しく批判してきたAndrew J. Bacevichが、今起きているアラブ世界の民主化は、米国主導ではなく、アラブ世界の国民が自ら行っているものであり、それによってテロとの戦いは戦略的に的外れなものになった、と論じています。

すなわち、中東の民衆は地域を変革しようとしており、それによって、「テロとの戦い」を戦略的に的外れなものとしてしまった。「テロとの戦い」は、@イスラム世界は変わらなければならない、しかし、Aイスラム世界は自ら変われないので、米国が軍事力を触媒としてそうした変化をもたらさなければならない、との二つの観念に基づいていた、

しかし、実際は、アフガニスタン、イラク、アフパックにおける米国の努力は、功罪相半ばするものだった。他方、イスラム世界の人々は変化を求めているが、米国に「解放」される必要はなく、自分たちで十分解放できることを示した。米国は歴史がどう動くかはわからないことを、謙虚に認めるべきだろう。ただ、救いがあるとすれば、アラブの民衆が夢見ていることは、米国民が夢見ていることとさして変わらないことであり、夢が一致すれば、文明の衝突は避けられる、

もし政治的自由と経済的機会を求めるイスラム世界の民衆が勝利すれば、それは米国のおかげでなく、米国にも関わらず勝利したということになるだろう。そしてイスラム世界の民衆が自らを解放することで、われわれ米国人も解放され、イスラム世界の命運を決めるという間違った聖戦はついに終わることになろう。そうなれば、われわれはイスラム世界の民衆に大きな借りができることになる、と言っています。


今回のチュニジアとエジプトの政変が、米国の政策のもたらしたものではなく、両国の民衆の自発的行動の結果であることは、バセヴィッチの指摘を待つまでもないでしょう。

しかし、イスラム世界での民主化の動きと「テロとの戦争」との関係付けについての彼の主張は的が外れているように思われます。確かに、イラク戦争は、サダム・フセインを追放してイラクの民主化を図る、というのが大義名分でしたが、アフガン戦争は、タリバンを叩くことが目的で、アフガン民主化は直接の目的ではありませんでした。また、「アフパク」戦争も、アフガニスタンやパキスタンの民主化を試みているわけではなく、さらに、現在デモが起きているイエメンで民主革命が成功したとしても、イエメンを基地とするテロ活動が直ちになくなるとは思えません。

つまり、イスラム世界で民主化が広がるとしても、テロとの戦いがなくなるわけではありません。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:27 | 中東 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
イランの反政府運動 [2011年02月18日(Fri)]
National Interest2月18日付で、米ジョージワシントン大学教授で、イランの民主主義支持派のHossein Askariが、エジプトとイランは共に独裁政権であるが、両国の軍の役割には明確な違いがあり、そのことは、イランで今進行中の争いがエジプト革命のような道は辿らないだろうことを示唆している、と言って、米国によるイランの民主化支援を呼びかけています。

すなわち、エジプトで民衆が当初求めたのはムバラクの追放であって、エジプトの軍は必ずしも政権と一体ではなく、それなりに民衆の支持もある。それに対し、イランでは、デモ隊は政権自体の追放、つまり、最高指導者だけでなく、政権と一体の革命防衛軍の追放も要求している。抗議運動が現実に成功すれば、イランはイスラム法に基づく現行憲法を破棄し、国民の意思を反映した新憲法の下に再出発することになるだろう、

だからこそイランの革命防衛軍は無辜の市民も平然と殺すのであり、従って、米国は、エジプトの軍に期待したようなことは、イランの軍に期待できない、と指摘、

米国は、全中東を通じて、民主主義支持を表明し、イランに対しては、従来のような核武装反対中心の政策でなく、イランの民主主義を支持すると同時に、現政権に対する経済制裁を強化すべきだ、と言っています。


たしかに、イランの核武装反対を米国の外交政策の中心に置くことは、誇り高いイラン民族の民衆工作として得策でありません。特に、核施設攻撃は、イランの中の反政府派をも、反米ナショナリズムの下に結束させる危険があることは以前から指摘されています。

また、従来から、核施設攻撃によるイランのナショナリズム刺激の弊害と、放置しておけばイランの核武装が進んでしまうこととの間にはジレンマがありましたが、サイバー攻撃などでイランの核開発が遅れていると言われる中で、久しく沈黙していた改革派のデモが、チュニジア、エジプトに触発されて再燃している今、イランの民主化への期待が強まるのは当然の勢いでしょう。


ただ、気になるのは、アスカリが、米国に対して全中東における民主主義達成の姿勢を明らかにすべきだと呼びかけていることであり、これは現状においては、実現が容易ではない目標を掲げることになります。
 
もっとも、イラク戦争の初期に米国が示した圧倒的な軍事力を前に、カダフィが米国の軍門に下り、レバノンでシダー革命が起こり、イランも核開発を停止して様子見をした時には、サウジも形ばかりの民主化受容を行って、その場を凌いだことがありました。今回もその程度のことで済ませられるのならば、サウジの現体制の基本に影響を受けることなく、現在の事態を凌ぐことも予想されます。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:47 | 中東 | この記事のURL | コメント(1) | トラックバック(0)
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