胡錦濤の指導力の脆弱性
[2011年01月18日(Tue)]
ニューヨーク・タイムズ1月18日付で同紙記者のDavid Sangerらが、中国の軍や巨大国営企業は時として政府の方針に従わずに行動し、胡錦濤は完全に権力を掌握しているとは思えない、と解説しています。
それによると、胡錦濤は共産主義中国になってから最も弱い指導者かもしれない。先日、ゲーツ米国防長官との会談の最中にステルス爆撃機のテスト飛行が行なわれ、胡がそれを知らされていなかったことは、胡の周囲に対立する権力の中心があることを示唆している。
米政府は当初、胡は通貨や北朝鮮等の問題を避けようとしていると見ていたが、その後、共産党は一枚岩でなく、毛沢東やケ小平時代に比べて軍人や閣僚、大企業が大きな影響力を持つようになって、胡は畏敬されていない、と結論づけるに至っている、
特に軍は時に外交でも独自の方針を打ち出すことがあり、国営企業の多くもそうだ。例えば、胡は人民元を徐々に切り上げて行くと言ったが、中国商務省は、切り上げは中国経済にとって打撃になると直ちに表明、また、胡は市場開放を繰り返し保証したが、実際は関連当局がエネルギー、通信、銀行分野で中国国営企業と競争することを一層困難にしている。さらに、中国軍部のタカ派は、ここ2年南シナ海などで高圧的態度に出て、長年の注意深い中国外交の成果を台無しにしてしまった、
このようにどの尺度をとっても、胡は行動を制約された指導者であり、ケ小平のように抜本的改革を行うことなど考えられない。彼は集団指導制の下で取り引きするネゴシエーターであり、かつて完全に権力を掌握したことはなかったと思われる、
中国の文民統制を疑うものはいないが、問題は、胡や後継者の習近平などの指導者が、米国との緊密な関係の保持といった政府の大きな外交方針に軍を従わせることが出来るかどうかだ、と言っています。
胡錦濤が権力を完全には掌握していない中で、軍や巨大国営企業は必ずしも政府の方針に従わず、そうしたことが米中関係の進展を阻害しているとの分析です。この記事が出たのは胡の訪米直前であり、訪米によって少なくとも当面米中関係は改善されましたが、この分析の妥当性が否定されたわけではありません。
訪米では経済分野の協力が強調されましたが、その試金石の一つとなるのは、国内市場の開放でしょう。解説記事は、中国政府が開放の方針を打ち出しても、エネルギー、通信、銀行などの分野で国営企業が開放に反対していることを示唆しています。
しかし、胡の指導力との関連でより重要なのは軍です。解説記事が言うように胡が軍を完全に掌握していないとすれば、最近の中国の強面外交は、必ずしも政府の方針ばかりではなく、軍の独走があったことを意味します。そしてこの分析が正しいとすれば、それは米中関係だけでなく、日中関係、ひいては中国の対外関係全般に少なからざる影響を及ぼす可能性があります。
それによると、胡錦濤は共産主義中国になってから最も弱い指導者かもしれない。先日、ゲーツ米国防長官との会談の最中にステルス爆撃機のテスト飛行が行なわれ、胡がそれを知らされていなかったことは、胡の周囲に対立する権力の中心があることを示唆している。
米政府は当初、胡は通貨や北朝鮮等の問題を避けようとしていると見ていたが、その後、共産党は一枚岩でなく、毛沢東やケ小平時代に比べて軍人や閣僚、大企業が大きな影響力を持つようになって、胡は畏敬されていない、と結論づけるに至っている、
特に軍は時に外交でも独自の方針を打ち出すことがあり、国営企業の多くもそうだ。例えば、胡は人民元を徐々に切り上げて行くと言ったが、中国商務省は、切り上げは中国経済にとって打撃になると直ちに表明、また、胡は市場開放を繰り返し保証したが、実際は関連当局がエネルギー、通信、銀行分野で中国国営企業と競争することを一層困難にしている。さらに、中国軍部のタカ派は、ここ2年南シナ海などで高圧的態度に出て、長年の注意深い中国外交の成果を台無しにしてしまった、
このようにどの尺度をとっても、胡は行動を制約された指導者であり、ケ小平のように抜本的改革を行うことなど考えられない。彼は集団指導制の下で取り引きするネゴシエーターであり、かつて完全に権力を掌握したことはなかったと思われる、
中国の文民統制を疑うものはいないが、問題は、胡や後継者の習近平などの指導者が、米国との緊密な関係の保持といった政府の大きな外交方針に軍を従わせることが出来るかどうかだ、と言っています。
胡錦濤が権力を完全には掌握していない中で、軍や巨大国営企業は必ずしも政府の方針に従わず、そうしたことが米中関係の進展を阻害しているとの分析です。この記事が出たのは胡の訪米直前であり、訪米によって少なくとも当面米中関係は改善されましたが、この分析の妥当性が否定されたわけではありません。
訪米では経済分野の協力が強調されましたが、その試金石の一つとなるのは、国内市場の開放でしょう。解説記事は、中国政府が開放の方針を打ち出しても、エネルギー、通信、銀行などの分野で国営企業が開放に反対していることを示唆しています。
しかし、胡の指導力との関連でより重要なのは軍です。解説記事が言うように胡が軍を完全に掌握していないとすれば、最近の中国の強面外交は、必ずしも政府の方針ばかりではなく、軍の独走があったことを意味します。そしてこの分析が正しいとすれば、それは米中関係だけでなく、日中関係、ひいては中国の対外関係全般に少なからざる影響を及ぼす可能性があります。