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世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


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中国の南北統一容認発言? [2010年11月30日(Tue)]
英ガーディアン紙11月30日付で、Simon Tisdall同紙副編集長が、また、同日付ニューヨーク・タイムズでDavid E. Sanger同紙記者が、ウィキリークス漏洩文書の中に中国が南北朝鮮の統一を容認する内容のものがあったことを取り上げています。

すなわち、ティスダルは、これまでワシントンでは中国は南北統一を認めないと思われてきたが、ウィキリークスの漏洩文書には、韓国の千英字・大統領補佐官が複数の中国官僚から、米軍が韓国内にとどまるのであれば、中国は南北朝鮮統一を認めるという発言を聴取したこと、中国は2006年の北の核実験後、北朝鮮を米国との間のバッファーとすることはあまり望ましくないと考えるようになったらしいこと、ただし、この見解が一部の官僚だけでなく、中国政府内で広く共有されているかどうか、千氏もわからないとしていることが書かれていた、

さらに、ウィキリークスによる漏洩が報道された後、欧州駐在の中国官僚が、「長期的には朝鮮半島の独立した平和的な統合」を支持する、中国は北朝鮮に好き放題の行動を許しているという印象を与えるわけにはいかない、と述べ、別の中国官僚も、中国は最近の北の行動に嫌気がさしている、北とは友好関係を維持したいが、北に振り回されたくはない、と述べたと指摘しています。

他方、サンガーは、ウィキリークスによって、中国ですらいかに北の意図や行動をつかんでいないかが明らかにされた。例えば、2009年6月に中国の専門家は「濃縮はまだ初期段階」と見ている、と中国の外務省高官が述べたが、その時にはすでに大規模な濃縮工場が建設されていたことが北朝鮮側の発表で明らかにされた、と指摘しています。


両記事から、中国はかなり北に振り回されており、そのことに、中国指導部ばかりか国民もいら立ちを覚えており、中国政府は、北を擁護しても恥をかくだけ、下手をすれば自国民の反発を買うと恐れていることが読み取れます。

そのため、米国では、ウィキリークスによる公電漏洩はアメリカの外交力を弱め、世界における立場をより難しいものにしたと見られており、また、イランなどが公開内容を利用することが心配されていますが、中国に関しては、漏洩内容が逆に中国の立場を弱めるとも見られています。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:22 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
ウィキリークスによる情報漏えい [2010年11月30日(Tue)]
ウォールストリート・ジャーナル11月30日付社説とワシントン・ポスト11月29日付社説がウィキリークスによる情報漏洩問題を取り上げています

WSJは、今回の漏洩は前回漏洩されたアフガンやイラク文書のように人の生命を危険にさらすものではないが、イエーメンとパキスタンに関しては実害があり、米外交にダメージを与える。今後、外国の高官は米大使館の人間に率直に話さなくなるだろう、

今回の事件の教訓の一つはインターネット時代に秘密を守るのは難しいということだ。容疑者のマニング上等兵があれだけ大量の公電へのアクセスを持っていたのは驚くべきことだ、

政府が秘密を持ち過ぎることには反対であるし、北朝鮮とイランのミサイル協力などは国民に知らせる方が良かったが、それでもアサンジュのような人間は止める必要がある、と述べ、

国務省は、アサンジュは米の法律に違反していると言っているが、漏洩者や出版元が罰せられたことはこれまでほとんどない。アサンジュのような人物を曖昧な法で罰すると、ジャーナリストの処罰にも波及しかねない。議会と政府はアサンジュのような挑発者に焦点を合わせた死刑罰も含む法を作るべきだ。アサンジュは自己正当化をしているが、彼がやっていることは民主主義への敵対行為だ、と言っています。

他方、WPは、今回の漏洩はさほど害があるわけではないが、米国務省と外交を傷つけ、イエーメン、パキスタン、サウジなどとの関係を損なう。今後、外国要人は率直に米外交官に話さなくなるだろう、

ワシントンではウイキリークスへのサイバー攻撃やアサンジュの訴追が言われているが、これは過剰反応であり、それよりも議会や政府、特に国防省は、なぜイラクの基地にいたマニング上等兵がこれだけの外交公電にアクセスを持ち、ダウンロードできたかを急いで解明すべきだ。国務省からの漏洩はないのだから、国防省についてもしかるべき方策を講じることはできるはずだ、と言っています


今回の漏洩は米国にとって大きな失策であり、国際政治に与える影響は大きいものがあります。米国がこのような機密も守れないとなれば、信用は地に落ちるでしょう。米国は超大国ですから、米外交官に知らせるべきことは伝えなければなりませんが、それ以外の本音を言う人はいなくなるでしょう。ただ、WSJの社説もWPの社説もそうした問題を一応指摘はしていますが、危機意識に少し欠けるきらいがあります。

また、両社説ともにマニングがどうしてこれだけの国務省公電にアクセス出来たのか疑問を呈しているのはその通りでしょう。9・11テロ後、情報共有が足りなかったとの反省から、情報配布基準を従来の「知る必要」から、「共有する必要」に変える動きがあり、それがこうした不祥事につながっています。米国は情報管理・配布基準を再度見直すべきでしょう。

ただ、インターネット時代だから情報が漏洩しやすくなるという主張は、情報伝達手段の問題と情報の配布や管理の問題を混同した俗論です。




Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:02 | 米国 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
ウィキリークス事件と米国の機密管理 [2010年11月29日(Mon)]
ファイナンシャル・タイムズ11月29日付で、国際コンサルタント会社の代表で米カーネギー財団客員研究員でもあるDavid Rothkopfが、ウィキリークスの問題を、役所が機密文書を作り過ぎるという側面から論じています。

すなわち、今回のリーク事件で数々の議論が沸き起こっているが、300万人もの人間に保秘義務があるようなシステムでは、真の秘密が守られるはずはなく、問題は、本来公表されてもよい大量の文書が毎年不必要に機密されていることにある。ウィキリークスはその欠点を衝いただけであり、保秘体制の改革が必要だ、と論じています。


保秘体制は官庁によって大きく異なります。例えば、日本の外務省で「秘」、または「極秘」指定の文書の多くは、防衛省では「取扱注意」程度です。国家の安全に関する機密を扱わなければならない防衛省では秘密の基準は自ずから異なってきます。

ところで、今回の尖閣のビデオ流出事件でも明らかになったように、保秘問題が裁判所の問題となった時に真っ先に争われるのは、それが実質秘に該当するかどうかです。

最新鋭武器の性能に関するもの、あるいは、それが公表されると情報源が暴露され、スパイ組織が壊滅するようなものは、真の機密であり、その漏洩は犯罪です。しかし、本来内部教育用、あるいは、必要ならば外部広報用に作られた尖閣のビデオなどは、法廷で実質秘と認められることはなく、せいぜい取り扱い注意程度のものでしょう。

他国の元首の悪口なども、その性質上、取り扱い注意事項ではあるでしょうが、到底実質秘にはなり得ません。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:21 | 米国 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
TPPの可能性と課題 [2010年11月28日(Sun)]
今週ニュージーランドで第4回TPP拡大交渉が行われるのを受けて、ウォールストリート・ジャーナル11月28日付で、在北京の米国人国際弁護士、Eric EmersonがTPPの可能性と課題について論じています。

すなわち、TPPは経済的意義だけでなく、戦略的意義も持つことになるものであり、膨張する中国の影響力へのカウンターバランスとしての米国との関係強化の手段として期待が高まっているが、拡大構想の実現までにはまだ多くの障害が残っている、
 
例えば、日本が参加すれば、TPPの幅は劇的に広がるが、日本は、現在の9カ国拡大交渉が決着しないと、国内で合意を形成出来ず、すぐには参加できない可能性がある。そうなると、9カ国は日本が後になっていざ参加しようという時には、これまで日本から取れなかった基準認証自由化等の条件をTPPの既成合意として日本に突きつけることができるが、他方、やり過ぎて日本に負担が大きすぎると受け止められてしまうと、日本は参加しないという事態になってしまう、と述べ、

さらに、より根本的な問題として、目標が野心的であり過ぎること(例えば、通商規制の統一)、また、ベトナムのように中国を念頭に置いて、政略的目的から参加を考えている国にとっては、合意の実質よりも、中身はいい加減でも合意の事実そのものの方が重要になることを挙げています。


日本の現在の政治状況ではTPP参加のような大きな話は処理不可能にも思われます。マスコミへの情報提供、世論醸成を心がけつつ、TPP拡大交渉の成り行きを注視し、将来の日本の参加にとって不利な条件が設定されないよう、裏からの静かな外交を展開していくしかないかもしれません

他方、米民主党の支持基盤には、自由貿易による輸入拡大で被害を受ける層が多いため、次の大統領選挙を視野に入れたオバマ政権が、今後もTPPやFTA推進を続けるかどうかわからないという事情もあるため、TPP拡大構想の早期実現は予断を許さないでしょう。

ただ日本は、TPPにはアジアにおける米国のプレゼンス確保という国際政治面の意義があることを忘れてはならないでしょう。米国は太平洋の彼方にあり、人種的にも文化的にも異質に見えますが、実際は政治・経済・安全保障・価値観等の面で最大のアジアのメンバーと言ってよい存在であり、米国なしにアジアの安定と繁栄はあり得ません。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:11 | その他 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
北朝鮮の挑発と将来への準備 [2010年11月25日(Thu)]
ウォールストリート・ジャーナル11月25日付で、米AEI日本研究主任のMichael Auslinが、戦争行為である延坪島砲撃と核開発に対しては、非難以上の強い対応をする必要がある、と論じています。

すなわち、これまで6者協議で米から種々の譲歩を得てきた北は、今回も砲撃とウラン濃縮によって日米韓を交渉に引き戻そうとしているが、オバマ政権は交渉再開を拒否してきた。その一方、これまで北にきちんと圧力を加えなかっのは、金正日が死んで新しい指導者が現れるのを待っていたかのようであるが、息子の金正恩が核の放棄に応じるとは思えない、

従って、米国と同盟国は、@ 北が過去の合意を実施しない限り、北とは交渉しないことで合意し、A. 交渉を再開する場合は、中国抜きですべきだ。中国は北制裁を実施せず、米韓日とは目標を共有していない。中国に期待できるふりをするのは止めるべきだ、

他方、米韓中は、金正日亡き後起きるだろう内紛、指導体制の崩壊、難民流出に備えて、ただ問題を協議するのではなく、作業グループを設け、軍事、政治、経済、人道問題に対処する計画を作成すべきだ、と述べ、

いずれにせよ、米国と同盟国は北にその行動の責任を問う強い姿勢を示すべきだ、と言っています。


今回の延坪島砲撃やウラン濃縮開示は、北朝鮮の瀬戸際政策であり、@米韓日を交渉に復帰させ、A金正恩に軍事面での実績を積ませることを意図したものでしょう。こういう時に慌てて交渉に戻るのは、北の乱暴なやり方に報償を与えることになります。従って、オースリンの交渉拒否論は適切な主張です。

また、中国は北朝鮮を緩衝国として維持することを狙っているのであって、非核化はずっと優先度の低い目標です。従って、中国が北に核放棄で圧力をかけてくれるという期待は幻想にすぎず、幻想は早く捨てるべきです。その意味で、交渉を再開する場合は、中国抜きで米韓日が交渉すべしという意見も適切です。

ただ、金正日亡き後の北の混乱に備えた計画作りに中国が協力することを前提にしているのは、甘い見方と言わざるを得ません。米韓日と中国とでは北についての考え方が異なり、中国は作業グループの設置どころか、北朝鮮の混乱を前提にした協議にも応じる可能性はほとんどないでしょう。

北の今回の動きに対しては、11月28日より米韓が軍事演習をすることになっています。中国の反対を無視して黄海に空母を入れて北に軍事的恫喝を加え、それに対して北が声明通りに反撃してきたら、強烈な反撃を加えるという強い決意を示さなければ、抑止が効かなくなりかねません。また、中国には、北を抑えないと、朝鮮半島の安定はないことを知らしめるべきでしょう。

今や核保有国であり、運搬手段も持っている北を抑止することを最重点に考えていく必要があります。事態を甘く見るのは禁物であり、宥和政策は将来に禍根を残すでしょう。










Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:05 | この記事のURL | コメント(1) | トラックバック(0)
北の核開発と砲撃事件 [2010年11月23日(Tue)]
Foreign Policy11月23日付ウェブサイトで英リーズ大学のAidan Foster-Carterが、また、同日付Fox NewsでChristian Whiton元米国務省上級顧問が、北朝鮮によるウラン濃縮施設の公表とそれに続く越境砲撃について、硬軟両様の対照的な論を展開しています。

それによると、フォスター・カーターは、報復のための核施設爆撃は1994年のクリントン時代の経験から見ても選択肢ではあり得ず、結局はどんなに不愉快であっても対話路線に戻るしかない、と論じ、対するに、ウィトンは、北朝鮮の挑発は見過ごすべきでなく、同盟国と協力して強硬な態度を打ち出すべきだ、と論じています。


通常はハト派が理想主義でタカ派は現実主義ですが、ここでのフォスター・カーターは、ハト派の立場を代表すると同時に、冷徹な現実主義者でもあります。そして、つまるところ、ハト派路線は、中国の仲介に期待しつつ北朝鮮との対話の戻るしかないということに帰着し、また、タカ派路線は、中国との対話よりも韓、日、豪などの同盟国との連帯を強め、北朝鮮に対して強硬姿勢を示すべきだということに帰着します。

北朝鮮による3月の魚雷の発射、今回の砲撃と、これらはいずれも直ちに軍事的報復には結び付かない、言わば巧妙な策でしたが、今回砲撃が実行されたことで、これが無視された場合は、次のステップとして、北によるソウル近郊砲撃や日本向けミサイル発射の可能性も考えざるを得ない状況になったと言えます。

そうした中で、日本としてはいかなる態度をとるべきでしょうか。先ず、朝鮮半島問題は第一義的には韓国と米国の問題であり、日本は現状では直接の当事者ではないことは常に念頭に置くべきでしょう。韓国人に対して、半島の統一の困難を指摘すれば、日本は、「朝鮮半島に強大な国が出現するのを望んでいない」、統一を願うと言えば、「日本は統一によって韓国経済が疲弊するのを期待しているのだ」と言われかねません。従って、「朝鮮半島の人々が希望する方向を日本は支持します」と言うのが最も賢明であり、また、日本は直接当事者ではないのですから、それしか言えないでしょう。

特に、「冷静な対応を」というような表現は慎むべきです。日本は結局何も出来ないのですから、「冷静に」と言えば、それは韓国や米国に対して控え目な反応を要求することになり、余計なおせっかいとなります。同盟国の意向尊重と必要に応じての協力に徹することが、日本にとって最も賢い政策と思われます。



Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 11:46 | 東アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
ドイツがユーロを消滅させる? [2010年11月22日(Mon)]
アイルランド危機を招くきっかけを作ったのはメルケル首相の発言と言われていますが、ファイナンシャル・タイムズ11月22日付で同紙コラムニストのGideon Rachmanが、ドイツがユーロを消滅させるシナリオを描いています。

すなわち、ギリシャのソブリン危機が収まる間もなく、アイルランド危機が訪れ、次はポルトガルやスペインが危ないと言われるなど、ユーロの信頼性に深刻な影が落ちているが、EU諸国は、メルケル独首相が、将来の金融危機においては民間投資機関もコストを負担するようEU条約を改定することを主張したことが市場を揺さぶり、今回のアイルランド危機を招いたと見て、ドイツの身勝手さに怒り心頭に発している、

ギリシャやアイルランドなどにしてみれば、ユーロに加盟しているために独自に為替政策などを施行できないという不満がある。と言って今更自らユーロを脱却することも、また他国が加盟国を追い出すこともできない。ところが、そうした中で、強い経済、つまりドイツ側から離婚を申し出る可能性がある、

その場合、シナリオは二つ考えられる。一つは、ユーロ圏内で危機が次々に起こり、EUが貸した金は返ってこないとドイツの納税者たちが思い定めた時、もう一つは、ドイツが望むような条約改定をEU26か国の一部が認証しない場合であり、ドイツはその時点で自分たちは他の加盟国救済のために最善の努力をしたが、皆が賛成しないなら仕方ない、と欧州統合の努力を捨てる、というものだ、

もちろんいずれのシナリオにも様々な仮定があり、一つでも狂えばシナリオは実現しないが、ユーロ創設もたくさんの仮定――それもあまり正しくない――の積み重ねの上に実現したものであり、ドイツがユーロを見捨てる可能性はある、と言っています。


ギリシャ危機が本格化し、@ギリシャのような問題国の一時的ユーロ脱却、A二層ユーロ圏といった構想も出る中で、欧州経済専門家たちの間では、ユーロ崩壊もありうるという論評さえ現れ始めています。

そこには、問題の震源地は国家財政や民間金融機関に問題を抱えるPiigs諸国だが、問題をさらに深刻化させたのは、Piigsから救済を迫られるドイツが難しい条件をつけるからだという認識があります。

しかし、そもそもの原因は、ユーロ創設時に加盟各国が統一通貨のもたらす恩恵や義務等をそれぞれ勝手に解釈し、問題が起きた時に対応する制度や組織を固めなかったことにあると言えます。日米の銀行は、アイルランド金融機関との関わりが少ないので、直接的影響は受けないでしょうが、ユーロ圏経済が次々と市場に狙い撃ちされ、特にスペインのような大きな経済国が救済を要するような事態になれば、創設されたEUとIMFの救済枠では手に負えなくなります。そうなれば、米国経済にも影響が及び、どうにか息をついた世界経済の将来も危ぶまれることになるでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 11:48 | 欧州 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米国の財政浪費 [2010年11月19日(Fri)]
Foreign Affairs11-12月号で、Roger C. Altman元米財務副長官とRichard N. Haas米外交問題評議会会長が、米国の財政赤字の根本原因は放漫財政にあり、米国が覇権国の地位を保つためにはより厳しい財政規律が必要だ、と論じています。

すなわち、米国は従来、財政的には保守的だったが、民主党が左傾し、共和党が右傾した結果、議会では社会保障の強化を主張する勢力と減税を主張する勢力が共に力を持つ状況となり、そこに、金融危機が起きて、米国の赤字は史上最悪となっている。今や豊かなはずの米国は世界最大の債務国だ、

といって、破綻が来る確証もない。利子は記録的に低く、インフレの気配は無いし、ユーロが問題を抱えていることから、米国国債が国際的な避難場所となっている。従って、この静かさは2-3年続きそうにも思えるが、米国財政の現状からすると、そうは行かないだろう、

唯一の救済策は均衡財政であり、2015年までに均衡を回復しなければならない。問題は、この財政均衡を、現在の高い失業率の中で実現して行かなければならないことだ。そのためには、利子の支払いと最低限必要な社会保障費以外は、国防費も含めて歳出を削減し、かつ、増税する必要がある、

米国は、財政を立て直すべき歴史岐路に来ている。かつてポール・ケネディは、過剰な対外活動による帝国の衰亡を論じたが、イラク、アフガンの戦費を合計しても、米国の年間年次赤字の10-15%にしかならない。米国経済を破綻させているのは、対外活動ではなく、国内の浪費だ。米国民は借金中毒から立ち直らねばならない、と言っています。


日本で聞き慣れた財務省の説教のような論文です。たしかに、共和党が右傾し、民主党が左傾する中でブッシュ時代の大幅減税を延長し、同時に医療保険制度を充実したのでは、赤字になるのも当然であり、その対策としては、超党派協議会を作って財政再建の具体策を探るしかないでしょう。

ところで、財政赤字の問題については、それこそ専門家によるたくさんの論文があり、その結論は決まって、「いつまでもこのままで行くわけにはいかない」というものですが、不思議なことに、過去少なくとも十年(あるいは何十年も)以上同じことが繰り返して言われているのに、一向に破局は来ません。

これについては、日本の場合は、「外国に借金しているわけではないので、国民が債権を引き受け続ける限りは大丈夫」という説がありますが、実際は、米国の場合も、外国からの借金は確かに増えていますが、今のグローバリズムの時代、外国がドルを引き受け続ける限りは日本と事情はあまり変わらないようにも思われます。

そして、財政的には、米国が、現状のようにGDPの4%(冷戦絶頂期は6%)程度を軍事費として維持できる限り、その覇権は続くことになります。さらに、今後、イラク、アフガン戦費の負担がなくなり、その分を装備近代化に回せるようになれば、米国は長期にわたって覇権を維持できるのではないかと思われます。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:27 | 米国 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
超党派による米財政再建案 [2010年11月17日(Wed)]
オバマ大統領の諮問機関、財政改革委員会が米国の財政再建を目指す超党派提案を発表、その素案を作った「超党派政策センター」(2007年発足のシンクタンク)債務削減タスクフォースの共同議長、Pete V. Domenici元米上院予算委員長とAlice M. Rivlin元米連邦準備制度理事会副議長が、ワシントン・ポスト11月17日付に寄稿しています。

2人は提案の概要を述べた上で、「現状維持という選択肢はありえない。われわれは共通の利益のために全員がほんの少しずつ犠牲を払わなければならない。米国の経済的安全保障と将来の繁栄は、われわれが分相応な生活を送ることにかかっており、超党派の協力はより強力かつより繁栄する米国を実現する道を提供してくれる」と言っています。
 

同タスクフォースの顔触れは多彩で、元連邦議員や州知事、市長、労働組合代表や租税制度専門家などを含む総計19人であり、提案には米国を復活させようという思いが強くにじみ出ています。

提案内容は、現在の最高35%の6段階累進個人所得税率を15%と27%の2段階にする事実上のフラットタックスを導入、合わせて6.5%の消費税も導入し、3年でプライマリーバランスを達成、国防費も凍結抑止するなど、中長期にわたって米国財政を構造的に改めようとするものです。

また、債務を削減するには、税制改革だけでなく、福祉、軍事、農業にも手をつけなければなりませんが、超党派提案は敢えてこれらの難題にも立ち向かおうとしており、まさに聖域なき改革と言えます。

では実現可能性はどれほどかと言えば、常識的に考えれば、レーガン減税・税制改革の時以上に紛糾し、達成はそれだけ困難になると思われます。しかも当時のロステンコウスキーらのようなボス交能力を備えた政治家が今の米議会にいるのか疑問であるうえに、大統領が実行能力に欠けるオバマときては、役不足であることは否めず、従って、至難であると言わざるを得ません。

しかし、困難に立ち向かい、祖国再生という崇高な目標に献身したいと願う心情は疑いようがなく、この点は米国民を動かすでしょう。危機意識が深まれば、ここに示されたような線で米国が復活に向けて動き出す可能性はありますし、それは日本の国益にもなります。米国の財政再建を助けつつ日本も益すよう、何ができるか菅政権にも真剣に考えてもらいたいものです。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 20:11 | 米国 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
オバマ政権の超党派外交 [2010年11月16日(Tue)]
ウォールストリート・ジャーナル11月16日付で、Joseph I. Lieberman米上院議員が、米国にとって最重要の国家安全保障問題は、アフガン戦争、イラクの核問題、そして米国のアジア復帰であるが、オバマはこれらについて超党派外交を推進すべきだ、と論じています。

すなわち、オバマがこれまでやってきたことを見ると、結構、クリントン、ブッシュの超党派中道路線を継承している。今後も、民主党左派の反戦主義と共和党右派の孤立主義を排して、超党派外交を推進すべきだ、と述べ、

実際、アフガン問題については、情勢は確かに好転しているが、来年7月にどの程度米軍引き揚げが可能かは不明であり、超党派の協力が必要だ。また、イラン制裁も超党派の支持の下に推進されている。さらに、アジアでは中国の強硬姿勢の前に米国の同盟国・友好国が、米国が指導力を発揮し、アジアとの経済関係を深めることを望んでいるのだから、今こそ超党派の外交政策を進めるチャンスだ、と言っています。


リーバーマンは、もともと民主党に所属しながら、上院において保守的立場からの是々非々を貫いて来た人物であり、この論説も従来の立場の延長ですが、たしかに、リーバーマンの言うように超党派外交を行う客観情勢は熟しているのかもしれません。

アフガニスタンでは、オバマは昨年暮れに、渋々ながら遂に増派を決定し、今年暮れのアフガン情勢見直しに際しては、ペトレイアス将軍の意見を尊重せざるを得ない状況にあります。また、イランについては、当初はアフマディネジャドとの直接対話を標榜していましたが、今となっては論外であり、現在は制裁強化を実施しています。さらに、アジア太平洋では、クリントン国務長官主導のアメリカのアジア復帰路線の上に乗っています。つまり、超党派外交を行なう基盤は十分できていることになります。

ただ、実質は既に共和党と同じ様な外交をしているのですが、本来のオバマの意思には反した対外政策を行っているわけであり、これに超党派外交のレッテルを貼ることをオバマ政権がよしとするかどうかはまた別の問題でしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:24 | 米国 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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