CANPAN ブログ検索
Loading
  • もっと見る

世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


プロフィール

特定非営利活動法人 岡崎研究所さんの画像
Google

Web サイト内

カテゴリアーカイブ
最新記事
最新コメント
△小泉純一郎前首相の医師久松篤子
英米関係は共通の理念に支えられる (10/08) 元進歩派
実績をあげているオバマ外交 (09/21) wholesale handbags
タクシン派のタクシン離れ (07/04) womens wallets
豪の新たな対中認識 (07/04) red bottom shoes
バーレーン情勢 (07/02) neverfull lv
石油価格高騰 (07/02) wholesale handbags
金融危機後の世界 (07/02) handbags sale
米国の対アジア政策のリセット (07/02) neverfull lv
ゲーツのシャングリラ演説 (07/02) handbags sale
パキスタンの核の行方 (07/01)
最新トラックバック
リンク集
月別アーカイブ
https://blog.canpan.info/okazaki-inst/index1_0.rdf
https://blog.canpan.info/okazaki-inst/index2_0.xml
朝鮮戦争とイラク戦争 [2010年08月30日(Mon)]
ニューヨーク・タイムズ8月30日付で、イラク戦争の開始に大きな役割を果たしたPaul D. Wolfowitz元米国防副長官が、イラクの地政学的重要性を指摘し、今後とも米国の援助は必要であり、またイラク側が望めば長期的な軍事協力も行うべきだ、と論じています。

すなわち、イラクはイランが存在する中東にあって地政学的に重要だ。米国は東アジアの安全保障の要である韓国では戦後も米軍を駐留させている。現在のイラクは朝鮮戦争直後の韓国よりも民主的であり、イラク側が希望するなら、米国は約束を守って来年末に撤兵すべきだが、政治、経済援助は今後とも続けるべきだし、いつでもイラクとの軍事協力にはいれる用意をしておくべきだ。多くの犠牲を払って得た成果を維持するためにも米国の長期的コミットメントは必要だ、と言っています。


保守派やネオコンの関心の中心はイラクの地政学的重要性にあります。ネオコンが当初期待していたのは、第二次大戦後の日本やドイツのように、米国と軍事同盟を結び、米軍の基地を許容するイラク国家が中東の中心部であるチグリス・ユーフラテスの合流点に出現することでした。しかし、米軍の駐留継続や基地の維持は、現在の情勢では、今後とも引き続き必要なことであるにも関わらず、現イラク政府やイラク議会のアラブ・ナショナリズムの下では、それを言えない状況のようです。

しかし、これは、来年末の全面撤兵期限が近付けば、状況の抜本的改善がない限り、何とかしなければならない問題です。そこで、ウォルフォヴィッツは、イラク側の意向は尊重しなければならないが、もしイラク側が駐留継続を希望するなら、それを受ける覚悟が必要だと論じているわけです。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:05 | イラク | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
アフガン情勢の見通し [2010年08月30日(Mon)]
Foreign Affairs誌9‐10月号で米ブルッキングス研究所のMichael E. O’Hanlonが現在のアフガン情勢を客観的に分析、来年7月にアフガン駐留米軍の任務が終わることはあり得ず、2012年にはまだ5万以上の米軍が残ると予想する一方、作戦が成功する可能性はある、と言っています。

すなわち、タリバンは勢力を回復した後、戦術を変え、現地住民の信頼をかち得る優秀な反乱軍に変貌したが、これに対してオバマ政権は増派で対抗、ヘルマンド州などではかなりの成功を収めたが、カンダハールなどの状況は改善していない、

また、汚職腐敗が甚だしく、米援助資金のかなりの部分が毎日ドバイに送られている。特にカンダハールでは、米軍物資の輸送がカルザイの親族のためのマフィアのような利権構造になっており、カンダハールの部族が非協力的なのは、こうした利権から疎外されたことが一因となっている。ただ、米軍撤兵のカギとなる治安部隊の増強については着実な進展が見られる、とアフタガニスタンの現状を分析し、

対反乱戦略の原則によれば、反乱対策に必要な兵力は、パシュトゥン地域に40万配備すれば足りる。それには、30万のアフガン兵と10万のISAF兵を確保すればよく、内65,000人が米兵とすると、2012年には5万以上の米軍がアフガニスタンに駐留していることになる、と言っています。その上で、

バイデン副大統領は来年7月の大幅撤兵を予想しているが、マレン統参議長マレンやゲーツ国防長官ゲーツは状況次第だと言っており、オバマ自身も、最悪の場合はアフガニスタンを捨てて撤退する可能性はあるものの、現状では、撤兵は状況次第であり、何年もかかると考えているだろう。アフガン情勢の先の見通しはつかないが、今後数年間今の努力を続ければ成功の可能性はある、と結んでいます。


冷静客観的な見通しです。今後米世論によほど反戦ムードが高まり、オバマがそれに影響されない限り、情勢はこの見通しの通りに推移すると思われます。日本政府のアフガン支援もこうした中・長期的見通しの上に立って行なうべきでしょう。

アフガン情勢については、治安部隊の増強が全てのカギではないかと思われます。ベトナム戦争の時も、米軍が援助を続けていれば、ベトナム軍は自立し得ただろうというのがキッシンジャーなどの見方です。

端的に言えば、地方の戦闘の短期的帰趨などは度外視して、アフガン治安部隊の増強だけに力を入れていけば、数年ないし10年後にはアフガン中央政府の軍事力は圧倒的に強くなり、そうなれば、地方の反乱軍も中央に帰順せざるを得なくなります。キッシンジャーなどによれば、ベトナムの情勢はまさにそういうものでした。ところが当時の米国は、時のベトナム政府の非能率や腐敗に耐えきれず、世論の反対にも抗し得なかったのです。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:03 | 中央・南アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
気候変動とロシアの近代化 [2010年08月26日(Thu)]
ファイナンシャル・タイムズ8月26日付で、世界的な政治・社会学者のAnthony Giddensが、ロシアは今夏ロシアを襲った猛暑を契機として、CO2排出抑制にもっと真剣に取り組むべきであり、そうすることはロシアの戦略的利益にもなる、と論じています。

すなわち、この夏、異常な猛暑のためにロシア各地で森林火災が発生、モスクワ周辺では地中の泥炭が発火して街は数週間も煙に覆われた。また、日照りのために小麦生産の約25%が失われた。従来、気候変動に無頓着だったモスクワもその脅威を痛感したはずだ、

それに、実はモスクワは少し前から姿勢を変え始めており、メドヴェージェフ大統領は昨年、CO2排出量の大幅削減を表明、さらに、原発への依存率を2030年までに25%に高めると言明している、

ロシアはこうした地球温暖化への新たな危機意識を、ロシア経済近代化計画に結び付けるべきだ。なぜなら、@気候変動はいずれ経済的損害をもたらすだけでなく、A国際社会と協力してCO2排出を減らすことはロシアの経済成長を促す可能性があるからだ、と述べ、

今の石油・ガス産業はもはや斜陽産業であり、ロシアは炭素捕捉・貯蔵等の新技術を導入してこの分野の先進国になることを目指すべきだ。膨大なコストはかかるが、これについては、他国や国際機関に支援を求めることができる。それに、世界には他にもロシアを援けるべき強力な理由――シベリア凍土の溶解による被害を抑えなければならない――がある、と言っています。


ギデンズは、「環境汚染防止技術や機器の開発・生産を、ロシア経済近代化に役立てる」ことを主張していますが、ロシア政府はそれに必要な調整・執行能力を持っていません。例えば、輸出の目玉である鉄製品の大半は旧式の工場で生産されていますが、多くは民営化されているため、環境汚染防止を強制するのは難しい状況にあります。

また、「シベリアの永久凍土溶解による大量のメタンガスの発生を抑える」よう安易に呼びかけていますが、これは人力で抑え得るものではありません。さらに言えば、ロシアの気候異常が来年も続くかどうかはわからず、ロシアでは危機意識ははや消えていると思われます。従って、ギデンズの言う、「環境問題についての対ロ支援」には限界があると言わざるを得ないでしょう。

ただ、「環境」は既に日ロ政府間の協力メニューに入っているので、日本としては、ロシア政府の主たる関心は「環境」にはないことに留意しつつ、@排出権取引の拡大を図る、A日本の「炭素固定・貯蔵技術」を売り込む等はできるかもしれません。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:06 | ロシア・東欧 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米国のサウジへの大量武器売却 [2010年08月24日(Tue)]
中東の軍事情勢に詳しいCSISのAnthony H. Cordesmanが、同研究所の8月24日ウェブサイトで、今後数年の米国の最重要戦略の一つは、イラク撤退に伴い、ペルシャ湾岸地域の安全保障体制をどう再編するかだ、と言っています。

すなわち、米国と湾岸地域との安全保障協力は、@イランは戦略的競争相手として米国に挑み続けてくる、Aテロ・過激主義との戦いは10-20年の長期戦となり、湾岸はその中心の一つになる、Bイラクの軍事大国復活には10年はかかるので、米国の戦略パートナーになり得るのはサウジだ、C米国の輸入石油への依存は4半世紀後も今と変わらない、D米国内で国防支出削減への要求が強まっており、同盟国との関係強化が必要だ、E米国と同盟するアラブ諸国とイスラエル間の緊張を最小限にすることが肝要だ、Fサウジは和平案も提示しており、米国がサウジに武器を売っても、イスラエルの安全保障に与える影響は限定的だろう、を考慮に入れる必要がある、と述べ、

米国はすでに湾岸諸国と合同訓練や対テロ協力などで軍事協力を行っている。サウジに今後5年で新F15戦闘機84機、アパッチ攻撃ヘリ60機、UH-60型ヘリ72機等を売却するのもその一環であり、少なくとも今後10年は米=サウジの事実上の軍事的パートナーシップが維持されるだろう、

今回の売却は、湾岸諸国の抑止力を強化して湾岸での米国の軍事的プレゼンスを縮小すると同時に、この地域での米国の戦略的地位の確保に役立つ、と言っています。


ペルシャ湾岸の安全保障状況は、イラク、イラン、サウジアラビアの三大国の力のバランスに左右されます。イラクが弱体化し、イランの影響力が大きくなった今、サウジの重要性が増したのは明らかであり、米国がサウジを湾岸での重要な戦略的パートナーと考えるのは当然です。

ただ、自らをイスラムの総本山と任じるサウジは、国内に米国の基地を認めず、両国の軍事的パートナーシップは事実上のものに留まらざるをえません。これを補うため、米国はクウェート、バーレーン、カタールに基地を設け、バーレーンが第五艦隊に母港を提供しています。

しかし、サウジが米国にとって湾岸での最重要パートナーであることは間違いなく、今回の武器売却で両国の関係は一層強化されるでしょう。

なお、武器売却はオイルダラーを還流させる意味でも重要です。大量の石油を中東から輸入している米国は、それをまかなうために中東に何か輸出する必要があり、最も手っ取り早いのが武器輸出です。つまり、米国にとって今回の武器売却は一石二鳥と言えます。









Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 23:17 | 中東 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米中危機暴発の危険性 [2010年08月24日(Tue)]
AEIの8月24日付ウェブサイトで、中国専門家のMachael Mazzaが、最近の中国の攻撃的な姿勢を指摘し、今後、1999年の中国大使館爆撃事件のような偶発事件が起こった場合、中国は国内を抑えきれなくなるのではないか、と危惧を表明しています。

すなわち、中国政府は国民の前に弱腰を見せるわけには行かなくなっているが、特に心配なのは、中国メディアの反米・民族主義的な動向だ。中国内の評論は、今回の黄海での米韓演習は1962年のキューバ事件に相当すると決めつけており、そうした論調を見ると、米国は19・20世紀にアジアを侵略した西欧や日本と異ならないとされているようだ、

こうなったのは、@オバマ政権が当初中国を甘やかし過ぎたことと、A中国が経済危機を比較的うまく乗り切って自信を得たことに原因がある。また、中国国内には社会的、経済的緊張があるが、中国政府は国内の不満を抑圧するだけでなく、2005年の反日デモの時のように、そうした不満を対外的に発散させることができるという事情もある、

このように、中国政府の攻撃的な態度とメディアのジンゴイズムは相競っており、こうした状況は、危機が起こった場合、中国政府の対応の手を縛ることになる。さらに、中国経済が破綻した場合、中国共産党は外からの脅威を強調することになるかもしれない、

従って、1999年のユーゴの中国大使館爆撃や2001年の米スパイ機と中国戦闘機の接触事故のような事件が起きれば、以前よりも事態の収拾は困難になるだろう。今後南シナ海や黄海における衝突などで中国政府部内の意見が分かれる場合、政府が世論に迎合する可能性もある。北京の指導者がこうした状況を克服して責任ある行動をとることを期待したいが、他方、米国もこうした状況に対して準備して置くべきだ、と言っています。

 
中国のメディアに表明された世論が中国政府の政策にいかなる影響を与えるかは、興味深い問題です。かつては、一党独裁国家として、世論は誘導されるものでこそあれ、政府の政策に影響を与えるものではありませんでしたが、最近はインターネットの普及等により、状況は変わって来たのではないかと言われています。

現在の中国の高姿勢は、オバマ政権の最初の一年、特に年末のオバマ訪中までの時期に、米国が中国を甘やかし過ぎたのが一因であることは否定し難い事実でしょうが、中国内部の構造的過程としては、それが軍を中心とするタカ派を勇気づけたからなのか、あるいは、メディアの反米ナショナリズムを調子づかせたからなのか、あるいは、その両方なのか、その情勢判断は難しいものがあります。

ただ、2005年以降、中国政府が反日デモを徹底的に取り締まった例を見ると、中国はまだまだ共産党の一党支配の強い国家であり、最終的には、国益に基づく計算が世論の動向によって影響を受けることは少ないと判断してよいように思われます。




Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:39 | その他 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
メコン川流域諸国との協力の重要性  [2010年08月24日(Tue)]
米Foreign Policyの8月24日付ウェブサイトで、豪州の中国専門家John Leeが、最近クリントン国務長官がメコン川流域諸国に援助を申し出たことについて、この援助は南シナ海などの海上戦略が達成し得ない大きな意味を持つと論じています。

すなわち、最近、クリントンがカンボジア、ラオス、タイ、ベトナムの外相にメコン川下流計画への187百万ドル の援助を約束した。対象分野は教育・保健・インフラ・環境などであるが、複数の中国国防省の官僚は、これは、世界的海軍連合にも達成できない意義を持つ可能性があると筆者に語った、

中国は東南アジア諸国に対して尊大に振舞ってはいるが、外交では援助などによる懐柔政策をとっているので、米国のメコン流域諸国援助はこれへの対抗策になり得る。東南アジアの人々の日々の暮らしに影響を与えるような米国の援助は、中国に対抗する賢い方法だ、と言っています。

 
論説の副題は、「米国が真剣にアジアにおけるプレゼンスを強化したいのなら、南シナ海など置いて、メコン流域に集中すべきだ」、というセンセーショナルなものです。もっとも、趣旨は、中国に対抗して経済・社会・人道援助等で地域住民の心をつかむべきだとするものであり、筆者はあるいは、軍事的・戦略的政策よりも、経済的人道的な政策重視のリベラル志向の人かもしれません。

ただ、これは米国の大きな戦略的動きの一部だろうと思われます。つまり、1月のクリントンのホノルル演説以来の米国の東南アジア復帰、もっとはっきり言えば、中国包囲網形成の戦略の一部であり、ここに引用されている中国国防省の反応は、クリントンの意図を正確に読んだ上でのことと思われます。

勿論、「中国包囲網」などと言えば、米政策当局者は直ちにその意思はないと否定するでしょうが、米国がメコン川流域の繁栄に積極的関心を持つということは、それが脅かされた場合、メコン川流域諸国の側に立って発言し行動するということです。メコン流域諸国としては、心強い後ろ盾をもって中国に当たれることになり、中国国防省要人の分析と反応は当然かつ正確なものだと言えるでしょう。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:12 | 東南アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
イスラエルの核と中東の秩序 [2010年08月24日(Tue)]
国家安全保障会議の中東・南アジア部長を務めたBruce Riedelが、National Interest誌で、イスラエルによるイラン攻撃を阻止するには、米国がイスラエルに核の傘を提供する等、イスラエルの抑止力を強化し、イスラエルが中東での核兵器独占の維持に固執しないようにする必要がある、と論じています。

すなわち、イスラエルが自国の安全保障の重要な要素と見てきた中東での核兵器独占が、今イランから重大な挑戦を受けている。イスラエルは、@右派も左派もイランの核兵器は国家存続への脅威と見ている、A外交や制裁が効果を上げるとは思っていない、B米国が武力行使するとも思っていないため、核兵器独占を維持しようとイラン攻撃に踏み切る可能性がある、

しかしこれは大惨事につながる。イランは米国も攻撃を支持したと考えて、米イスラエル両国に報復するだろう。しかも、攻撃はイランの核開発を遅らせるだけで、撤廃はできず、イランは侵略の犠牲者として、おそらくNPTを脱退するだろうし、対イラン制裁への支持も消えるだろう、

米国には先端軍事技術の提供をやめるなど、イスラエルへのテコを持っており、それを使うべきだ。しかし、イスラエルに攻撃をやめさせるということは、中東での核兵器独占を断念させるということであり、それを説得するには、イスラエルの抑止力を強化するしかない、

他方、イランの行動には問題があるが、イランは1979-81年の人質危機の時も、カーターが軍事的対決の姿勢を示すと後退、1988年のペルシャ湾での米イラン海軍の対決でも停戦に応じており、イラン・イラク戦争でも大量破壊兵器を使わなかったように、破局につながる行動は避けてきた。イランを抑止することは可能だ、

そこで、2000年のキャンプ・デービッドで提起された、米イスラエル相互防衛条約をもう一度検討できよう。イスラエルの核は抑止力になるが、イスラエルを攻撃すれば米国から報復されるとイランが知れば、もっと抑止されるだろう。ワシントンが今行動して、イスラエルの核能力を強化することだけが、イスラエルによるイラン攻撃を抑止し得る、と言っています。


米・イスラエル安保条約は2000年のキャンプ・デービッド会談後、イスラエル政府内で検討されましたが、イスラエル人の「民族的体験は他民族の安全保障約束など信用できないことを示している」として反対論が強く、成立しませんでした。ライデルがこの間の経緯を知らないはずはなく、なぜこういう提案を今イスラエルが受け入れると思っているのか、謎です。

イスラエル人はホロコーストの経験ゆえにイランの核への警戒感は強く、イラン攻撃に踏み切る可能性はあります。現在の弱い制裁や外交の行き詰まりにイスラエルが苛立ちを強めていることは間違いありません。

イスラエルのイラン攻撃は石油輸送の大動脈、ホルムズ海峡の通行をかく乱し、世界経済、日本経済に重大な影響を与えます。イスラエルにイラン攻撃を断念させるためには、イスラエルの懸念を真剣に受け止めた措置を考える必要がありますが、なかなか良い知恵がないのが現状です。



Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:09 | 中東 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
中パ核協力への懸念 [2010年08月20日(Fri)]
ニューヨーク・タイムズ8月20日付で、カーネギー国際平和財団のMark Hibbsが、中国の対パキスタン原発建設協力について、中国と対立するのではなく、話し合いによって規制を実現することを提唱しています。

すなわち、中国が原発2基の建設でパキスタンに協力しようとしているのは、原子力供給国グループ(N.S.G.)の協定(核拡散防止条約に加盟していないパキスタン等への核爆弾開発への転用の恐れのある原発関連機器・技術の輸出を禁じている)に違反するものだ、

しかし、中国をN.S.G.から排除すると、最悪の場合、N.S.G.に拘束されなくなった中国が、核開発をどんどん押し進め、闇市場が生じることになりかねない。つまり、中国にはN.S.G.の中に留まってもらう必要がある、

そこで米国は、米国自身がインドについて行なったように、この件をN.S.G.協定の例外扱いとし、今後のパキスタンへの輸出については規制する方向で中国と交渉すべきだ。また、中国にしても、現在、世界で作られる原発の60%以上を建造しようとしているが、それには外国企業の助けが必要であり、中国側も原発輸出についてフリーハンドは持っていない、と述べ、

10年後には中国は米国に次ぐ世界第二の原子力発電大国、さらには、世界のプルトニウム取引の主要拠点となっている可能性があり、中国が核拡散防止の重要プレーヤーになるのは間違いない。米国はそうした中国の核開発を孤立させるのは避け、関与していかなければならない、と結んでいます。


中国の対パキスタン原発協力は、南アジアにおけるインド・中国・米国・ロシア間の長年の勢力争いの文脈の中で見る必要があります。今回の中国の動きは、米印原子力協定の締結で米印関係が大きく前進し、さらに、米軍のアフガン駐留の先が見えてきた中で、中パの提携がいっそう強化されることを意味しています。つまり処理はそれだけ複雑になり、うっかり仲介に乗り出せば、米中印パキスタンのいずれ、もしくは全てから恨みを買うことになりかねません。

しかし、経済不振に苦しむ米国は、中国に対するバーゲニング・パワーが落ちています。他方、中国の方は、2012年の首脳部交代を控えて、毅然たる対米姿勢を求める国内の圧力に抗しがたい状況にあるでしょうから、米国との対立をぎりぎりまで許す可能性があります。

従ってこの問題は、双方が譲歩しにくくなる公開の場ではなく、内輪の話し合いで解決するのが適当と思われます。中国側も、パキスタンが核開発を進めれば、核がウィグル系テロリストの手中に落ちる可能性があることを認識すべきでしょう。

なお、ロシアもパキスタンとの関係推進に腐心しており、ロシアの技術で原発建設に協力するなど、ロシアがジョーカー的役割を果たす可能性もあります。ロシアは、長年の準同盟国インドが米国に傾いたため、インドの準敵国パキスタンとの関係を強化することで、南アジアで政治的影響力を保つとともに、経済的利益も上げようとしているのでしょう。中ロは、表面的には友好関係を維持していますが、根底には対抗関係・警戒心があり、南アジアにおけるロシア外交の活発化は撹乱要因になり得ます。



Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:07 | その他 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米国の限界と友好国の負担増 [2010年08月18日(Wed)]
ロサンジェルス・タイムズ8月18日付で、米Center for American ProgressのLawrence Korbと、米レキシントン研究所のLoren Thompsonが、米国には海外で単独の軍事活動を行う余裕はない、費用と予算赤字増大に伴い、米国は海外での軍事的コミットメントを再考すべき時だ、と論じています。

すなわち、米国にとって問題は、防衛費を削減するか否かではなく――これは必至だ――、米国の経済力の減退によって米国の役割が縮小する中で、どうグローバルな安全保障を維持するかだ、

脅威はますます多様化してきたが、今やワシントンは安全保障のコミットメントについてもっと選択的にならなければならない。そして、選択的になっても侵略者を勇気づけない唯一の方法、つまり、国際的な安全保障を確保する唯一の方法は、ドイツ、日本、インドなど同盟国や友好国により大きな役割と負担を担ってもらい、米国の退却で生じる戦略的空白を埋めるしかない、と言っています。


コルブは進歩的なCenter for American Progressの軍事分析官であり、トムプソンは保守的なレキシントン研究所の軍事分析官です。政治的傾向の異なる二人が連名でこの論説を書いたことは、米国内でこうした意見がかなり広く共有されてきていることを示唆しています。

また、論説にも書かれていますが、ゲイツ国防長官がF-22など高額の武器の調達を中止し、軍事費を削減しようとしているのも、こうした議論と軌を一にしています。

日本やNATO諸国の安保「タダ乗り論」は昔からありますが、昨今の米経済の相対的な減退によって、米国が過剰な負担感を感じる度合いは以前とは比較にならないほど強くなっています。昔とは状況が違ってきたわけです。

また、政治的にもオバマ政権は、対外コミットメントよりも国内経済や国内福祉の改善重視であると思われ、そうした傾向はアフガン戦争の失敗でなおさら助長されるでしょう。

日本は、米国が対外コミットメントを縮小していく蓋然性が高いことに十分な注意を払う必要があります。実際には、様々な事情から米国の対外コミットメントが縮小するスピードはそう速くはないかもしれませんが、日本が防衛費を削減し続け、集団的自衛権問題など安保に関わる改革を進めていない現状は憂慮すべきことです。中国が台頭する中で、日本は東アジアの軍事バランスの回復のために応分の責任を果たす意思を固め、諸政策を展開していくべきでしょう。米国も疲れてきていることを認識すべきです。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:10 | 米国 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
「南北統一税」構想 [2010年08月17日(Tue)]
ウォール・ストリート・ジャーナル8月17日付社説が、韓国の李大統領が統一税を示唆したことについて、まだ詳細は不明であり、統一に備える方策としては、企業減税による景気刺激策の方がよいのかもしれないが、統一のコストの問題に取り組む現実主義的な姿勢を示したことは評価できる、と称賛しています。

すなわち、韓国はこの10年間、北朝鮮は脅威でなく、統一はコストがかかり過ぎる、という考えをエスカレートさせてきたが、李大統領は統一税構想を示唆して、閑却されてきた統一コストの議論に一石を投じた。北朝鮮はこれを挑発と受け止めるかもしれない。しかし、韓国政権はこれまでも密かにではあるが、避難民の受け入れの準備などは考えて来た、

あるいは、これは増税で解決できる問題ではないかもしれず、むしろ企業減税によって韓国経済を繁栄させて統一のショックを吸収する能力をつける方が早道からもしれない。しかし、とにかく、この問題を閑却せずに、考えておくことは良いことであり、同じことは韓国の友好国についても言える、と言っています。

確かに、かつては民族の悲願だった朝鮮半島統一は、金大中、盧武鉉両政権の10年間で後退してしまいました。その始まりは、金大中政権初期に訪韓したヘルムート・シュミットが、東西ドイツ統一の教訓から、「統一の際の無条件な経済合体は問題がある、しばらく別々の経済主体のままで、漸次統合すべきだ」と述べたことにあったように思います。シュミットは統一に反対したわけではなかったのですが、この発言が大きなインパクトを与え、そのため一部には、先ず日朝正常化をさせ、日本の援助で北の経済が立ち直ってから統合を、という案さえ出たように思います。その後、盧武鉉政権になると、統一は完全に閑却され、北との平和共存、対北援助路線となりました。
 
それが李政権となって、昔の民族の悲願路線に戻ったわけです。特に、金正日の後継を巡って情勢の不安定化が予想される現在、当然、統一の可能性が浮上して来るので、統一コストの問題に目をつむることは許されない状況だと言えるでしょう。

また、社説も言うように、当然日本も負担分担の要求が来ることを覚悟しなければならないでしょう。日朝正常化の際の日本側の負担については、日本政府は数字に言及したことはありませんが、巷間1兆円ぐらいと言われています。この社説は、統一のコストを数年間で5兆〜50兆円と予想しています。勿論、主たる負担は韓国にかかって来ますが、日本に対する要求も厳しいものがあるでしょう。しかし、鴨緑江までが自由民主主義国となるという戦略的利益を考えれば、日本が相当の負担をする価値はあると思われます。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:19 | 東アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
| 次へ