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世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


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米韓関係最盛期の到来 [2010年07月13日(Tue)]
ブッシュ政権で北朝鮮に関するトップアドバイザーだった、戦略国際問題研究所のVictor Chaが、同研究所ウェブサイト7月13日付で、米国にとって日本の地位が下がっただけ、韓国の地位が上がった、と言っています。

すなわち、オバマ大統領は先頃トロントでG20が開かれた際、韓国の李統領と会談、そのあと、「米韓同盟は単に双方当事国にとってだけでなく、太平洋全体の安全保障にとってlinchpin(要の意)だ」と言った。これまで米当局者は日米同盟を指す場合にしかこの言葉を使わなかった、

こうなったのは、第一に、オバマと李の関係が極めて良いからだ。オバマ大統領は世界各国で人気は高いものの、個人的親交を結んだ指導者は数えるほどしかいなく、李大統領はその中の一人だ。そうなった背景には、オバマは昨年秋のアジア歴訪ではASEAN首脳たちから通商政策が何もないと非難され、日本では鳩山首相に日米同盟の再定義を切り出され、北京では、中国の指導者たちから若輩者と見下され、人民元や気候変動で協力を得られなかったのに、ソウルでは暖かい大歓迎を受けて、抜群の好印象を受けたということがある、

勿論、政策的にも2人の志向はぴったりだったらしい。これに、最近の韓国艦沈没事件の際の李の「抑制された、しかも周到な」対応が加わり、オバマは李への敬意を深め、米韓同盟の従来のパターンとは逆に、朝鮮半島危機への対処方について、韓国のリードを米国が受け入れるに至っている、と言っています。

その上で、しかし、米韓関係がこれほど良好になったのは、いわば偶然の産物だ。実は、就任直後のオバマ政権は、@中国との深い関与、A日本との安定した同盟、B北朝鮮と二国間ベースで関わり、既往の誓約を守らせる――をアジア政策の柱としていたのであり、韓国との同盟は、重要だが重大ではないという位置づけだった、

ところがこれらがすべて裏目に出た一方、韓国は、経済危機から真っ先に脱し、アフガニスタンにも再度軍事的にコミットし、気候変動ではワシントンに同調、さらにG20と核サミットの主催も引き受けた。こうした良い意味での韓国政府の変身が奏功し、韓国はここ当分の間、米国にとってアジアにおける最重要のパートナーになったのだ、と言っています。

これは、この間の日本が失った機会費用がどれほど高いものについたかを裏側から例証した論文として読めるでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:16 | 東アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
イスラエル情勢に変化? [2010年07月12日(Mon)]
ワシントン・ポスト7月12日付で米ブルッキングス研究所のMartin Indykが6月末にエルサレムと西岸のラマラを訪問、イスラエル、パレスチナ双方に和平への機が熟してきたことを示す雰囲気の変化を感じた、と言っています。

すなわち、ラマラは景気がよく、暴力に訴えるムードはないし、ガザでも封鎖の緩和で新たな始まりへの期待がある。そうした中でアッバスは、パレスチナが治安責任を負う地区へのイスラエル軍の侵入がなくなり、イスラエルが治安責任を負う地区でのパレスチナ警察の活動再開をイスラエルが認めれば、直接交渉再開についてアラブ連盟にも説明がつくと考えている、

他方、イスラエルでも、ガザ支援船事件の後、人々が国際的孤立を懸念、力のみに頼る政策への疑問を持ち始めている。ペレス大統領やバラク国防相も、ネタニヤフはオバマと共に共通の前向きの道を見つけるべきだと考えており、ネタニヤフもそうした主張を受け入れているように見える、

また、ネタニヤフの右派連立政権が和平を進めうるか疑問視されているが、実際に直接交渉が開始されたら、極右のリーバーマンも連立を離脱はしないだろう。リーバーマンもイスラエルの閉塞状況を変える必要を認めており、2国家解決でアラブ村落を土地交換によってパレスチナに引き渡す案を復活させている、

興味深いのは、イスラエルの指導者は、イランのウラン濃縮はうまく行っていず、秘密工作と制裁でイランの核開発を遅らせられると考えていることだ。つまり現在、イスラエルはイラン問題よりもパレスチナ問題を重視、外交イニシアティブに対しては世論の支持もある。また、アッバスにも直接交渉に用意があるように見える、と述べ、

中東においてさえ、危機は機会を生み出す、と言っています。


ユダヤ人のインディクはイスラエル米大使としてイスラエル人によく食い込み、国務省の中東担当次官補も経験した人物で、その意見は常に傾聴に値します。その彼が指摘しているパレスチナとイスラエルの雰囲気の変化は、特に世論レベルでは大体正しいと思われます。従って、この夏、アッバスとネタニヤフが直接交渉に乗り出す可能性は高いと判断してよいでしょう。

ただ、それで和平が進むかというと、かなりの困難が予想されます。なぜなら、@パレスチナは西岸とガザに分裂、アッバスのパレスチナ内での立場は弱く、ハマスはアッバスの交渉結果を承認しないだろう。和平進展の前にパレスチナの分裂をなくすことが必要と思われる、Aネタニヤフ右派連立政権には、リーバーマン以外にも宗教政党など譲歩に反対する勢力がいる。ネタニヤフ自身も、和平のために大幅譲歩する気はなく、政権基盤からいってもエルサレム、入植地、国境問題で譲歩するのは難しいからです。

米国が自らの案を示し、最終的にはそれを押し付ける気構えで臨まないと、直接交渉が成果を上げることは困難でしょう。イスラエルとパレスチナの雰囲気が和平を望む方向に変わってきたのは、インディクの指摘通りだと思われますが、和平実現には、痛みを伴う譲歩を自国民に受け入れさせる政治力が必要であり、アッバスにもネタニヤフにもそれはないように思われます。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:50 | 中東 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
中国が保有する米国債の行方 [2010年07月11日(Sun)]
ウォール・ストリート・ジャーナル7月11日付でMichael Pettis北京大学教授が、中国は世界最大規模の米国債を保有しているが、それを売却することは米国よりも中国自身にとってリスクが大きく、従って売却には至るまい、と言っています。

すなわち、中国が米国債を大量に売却しようとすれば、その方法としては、@他のドル資産を買い入れる、Aユーロ資産や円資産を購入する、B第三国から商品を輸入する、C中国で人民元化して、資産を購入する等がある、

しかし、@は米国市場への影響は小さく、米中にとってリスクは少ないが、Aは、多少なりとも購入を大規模に行えば、急速にドル安・人民元高となり、米国の対中輸出が増加、対中輸入は減少して中国は苦しい立場になる、Bは、中国の対米黒字を減少するが、第三国の対中黒字は増加するので、中国にとっては結果的に同じだ、Cは、ドル安・人民元高を招き、輸出業者を不利化し、失業率を高めてしまう、

このように、米国債の急減は、米国にとって不都合であるばかりか、むしろ中国により大きなダメージを与えるので、中国はドル資産を買いつづける可能性の方が大きい。

他方、米国は世界最大の貿易赤字国であると同時に、資本輸入国だ。欧州が資本輸入を増加させるのが難しい現状では、世界経済がバランスを失せずに回復する唯一の道は、外国資本が米国に大量に流入しつづけることだ。そして、そうした状況では、米国は、中国による米国債の売却という「核オプション」に直面するよりも、外国資本の「津波」に襲われる可能性の方が高い。この「津波」は、その分米国の貿易赤字を増加させ、失業も増加させるだろう。問題は資本流入が少ないことではなく、米国があまりに多額の資本の輸入を許容していることにある、と言っています。


中国は世界最大規模の米国債を保有しており、これが大量に売却されれば、米国は窮地に追い込まれる、というのが常識のようになっていますが、ペッツは、そんなことになれば、@かなりの確率で人民元高となり。中国は輸出産業がダメージを受け、失業率が上昇してしまう、また、A世界中の資本がギリシャ危機で行き場を失っているので、これが米国に向かう可能性が大いにある、B米国が資本輸入を継続しなければグローバル・バランスが成り立たないと言っているわけです。

この議論自体は非常に説得力がありますが、ただ、次の二点は考えておく必要があるでしょう。第一は、米国の大量の資本輸入は米国の大量の貿易収支赤字と同じことであり、問題は米国がこの不均衡にいつまで耐えられるかです。第二は、この論文では、中国が国内に投資収益率の高いプロジェクトを数多く擁しながら、大量の米国債への投資を続ける理由が一切触れられていませんが、中国は経済より政治優位の国であり、中国共産党が、自らも手ひどい傷を負っても、一旦ことあれば米国債を一挙に手放す、という政治的脅迫の手段として、米国債買いをしている可能性は否定できません。この点を見逃しているのは、金融のプロフェッショナルがとかく陥りがちな視野狭窄というものでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:18 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
中国の銀行の変貌 [2010年07月10日(Sat)]
英エコノミスト誌が社説で、中国の銀行の飛躍は目を見張るものがあるが、飛躍するにつれて国への依存は減り、徐々に西側の銀行に近い存在になるだろう、と言っています。

すなわち、過去10年の中国の銀行業の発展ほど、西側の金融の相対的衰退を象徴するものはない。中国の銀行は、国が株の過半数を持ち、共産党が幹部を指名、規制当局が融資規制や準備比率を課す国家型だが、これがうまく機能した、

今回の不況に際し、西側先進諸国では、中央銀行から資金を提供されながら銀行は貸し渋りをしたが、中国では政府が銀行に信用供与を増やすよう命令、銀行融資は2008年のGDP比102%から2009年には127%に急増、西側先進諸国ではこの中国の政策が見直され、マクロ・プルーデンス(金融システム全体の安定を図る)的管理」と呼ばれるようになった、

勿論、不良債権の問題はある。1998年以降、中国政府は五大銀行の不良債権救済に4200億ドルも支出、地方政府のインフラ計画への貸付はもっと心配だ。ただ、規制当局が銀行に資本の強化を要請したし、何よりも貯蓄率が高いので、不良債権問題で中国式銀行業が崩壊することはないだろう、

今後、中国が今の融資ブームを無事乗り切り、経済の重点を投資から消費に移すことができれば、銀行は個人や小企業向けへの融資を増やす必要が出てくる。また、顧客の金融手段が増えてくると、銀行融資の収益は圧迫されるので、株や公債の引き受けなど資本市場での活動を多角化する必要も出てくる。そして貯蓄率が低下し、人々が高リターンの株や債権の投資するにつれ、銀行の融資に対する預金という緩衝は減らざるをえなくなるだろう。そうなると、依然国の管理下にあるとはいえ、中国の銀行は世界の他の銀行によほど似てくるかもしれない、

また、国の管理も変わりうる。現在の拡大ペースで行くと、中国の銀行は数年に一度は資本注入が必要になるが、政府はこれにうんざりし、政府の持分の縮小を認めるかもしれない。また、銀行自身も政府主導の下では、大きな対外取引は難しいことが分かってくるだろう。中国の銀行の興隆は多少怖くもあるが、中国の銀行も市場原理に基づく金融に近づいているのだ、と言っています。


世界の銀行の時価総額ベストテンには中国の銀行が4行入るなど、近年、中国の銀行の興隆は目覚しく、最近の世界金融危機に際しての対処も見事だったが、国の支配下にある中国型銀行モデルが世界を席巻する心配はいらない、中国の銀行も次第に市場原理に近づいてくるだろう、というエコノミスト誌らしい社説です。

この社説を出すに至った契機の一つが、中国農業銀行の上場だったのは間違いないでしょう。同銀行は7月15日に上海株式市場に上場、16日には香港市場に上場予定で、資金調達額は1兆9千億円と、新規株式公開による調達としては史上世界最高になると見られています。

その中国の銀行への国の支配は次第に減少するという社説の指摘は、その通りでしょう。特に中国の銀行の国際業務が増大するにつれ、その傾向は高まると思われます。ただ、それにはかなりの時間がかかるでしょう。また、社説は、政府は銀行への定期的な資本注入に疲れてくるだろうと言っていますが、中国政府や共産党が、現在持っている監督権限を容易に手放すとは思えません。

さらにこの議論は、中国が経済の重点が投資から消費に移ることを前提にしていますが、こうした移行は容易ではなく、やはり時間がかかるでしょう。貯蓄率の低下も同様です。

こう見てくると、中国の銀行が市場原理に基づく金融に近づいていくだろうという社説の予測は、中国経済と金融を楽観視し過ぎていると言わざるをえません。





Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:08 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
宥和政策の再考  [2010年07月08日(Thu)]
かつて『大国の興亡』を著して、米国の軍事予算の増大に警告を発したPaul Kennedyエール大学教授が、National Interest 7月8日付で、外交では「宥和政策」は悪ということになっているが、場合によっては、忍耐し、譲歩、妥協することもありうる、と論じて、アフガン撤退戦略を示唆しています。

それによると、第一次大戦まで国際紛争は、ナポレオンを例外として、譲歩と妥協によって解決を図るのが普通だった。事実、米国の勃興に対して、英国はベネズエラと英領ギアナの国境問題、パナマ問題、さらにはアラスカ国境で譲歩する等、種々の宥和政策を行っている。その後の二つの大戦における米英関係を見れば、こうした英国の対米政策は成功だったと言える。また、ドゴールのフランスはアルジェリアを手放し、米国は朝鮮戦争や、ベルリン、キューバ危機で核に訴えなかったが、それは良いことだった、と言っています。

その上で、米国が今直面しているのは、中国の勃興とアフガニスタン問題だ。中国は、確かに既存の国境内で満足する現状維持勢力ではなく、世界政策を持つ現状打破勢力だ。もっとも意図というのはいつでも変わり得るので、重要なのは潜在力の増大だ。米国はそうした中国に対しては、外交的には礼儀正しくし、しかし軍備は決して怠っていないというメッセージを伝えておけばよい、

他方、アフガニスタンは歴史的・地理的に征服不可能な地域だ。将来はともかく、現状では、妥協に見せかけた撤退が、最悪の選択の中ではまだましな方法であり、それで米国の介入が終わりになるわけでもない。国家安全保障委員会や国務省の中で密かにアフガン撤退計画を作っている人々がいても驚くべきではない、と述べて、

米国は、強みも弱みもある国であり、21世紀には、前よりも国際的に小さな役割を果たす国になるかもしれないが、その過程では「宥和政策」という批判に堪えねばならないだろう、と結んでいます。


この論文の主旨はアフガン撤退論ですが、ケネディはそれを歴史的必然として、第三者的に論じています。すなわち、いずれはアフガン撤退とならざるを得ず、その場合は、軟弱政策として世間の非難を浴びるのは避けがたいが、そういうことは歴史上間々あることであり、それで米国の役割は、あるいは若干縮小することはあっても、終わるわけではない、と分析しています。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:19 | 米国 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米財政政策論争  [2010年07月07日(Wed)]
インターナショナル・ヘラルド・トリビューン7月3日付で経済学者のPaul Krugmanが、また同紙7日付でNYTコラムニストのDavid Brooksが、米国が緊縮財政策をとるべきか否かについて相対する考えを述べています。

ノーベル経済学賞受賞者で積極財政策を提唱するクルーグマンは、多くの人の考えは注意深い分析ではなく、偏見に基づいている。そして偏見には流行があり、世界の主要国が不況に悩まされているのに、なぜか、今こそ歳出を削減すべきだといのが今通念となっている。これは、単なる憶測もしくは政策エリートの想像の虚構に基づくものだ、と述べ、

例えば、投機家が米国を狙っており、景気刺激策をとれば投機家が動き出す、あるいは、緊縮財政で経済への信頼が回復すると言われている。確かに、米国は長期的な財政問題を抱えているが、今後2年の景気刺激策は、長期的な財政問題に対処する能力とはほぼ無関係だ。米議会予算局の幹部も、「失業率が高く、工場やオフィスの稼働率が低い今日、追加的な財政刺激策をとることと、生産のフル稼働や完全雇用に近づいているだろう数年後に財政を緊縮させることとの間に、基本的に矛盾はない」と言っている。現に、緊縮財政策をとったアイルランドは深刻な不況に陥っており、ラトヴィアやエストニアの状況はもっと悪い、と言っています。

一方、経済学者ではないブルックスは、多くの経済学者が、経済モデルに基づいて、米国は更なる景気刺激策が必要だと言っている。彼ら需要重視論者は、自分たちのモデルを全面的に信頼し、自分たちの考えに賛成しないものはすべて道義に反するか能無しと見ているかのようだ、

しかし更なる景気刺激策を支持しない有力経済学者は大勢いるし、大半の欧州の指導者や中央銀行は、今は負債を減らす時だと考えている。また、消費者は負債まみれのバブルから回復しつつあり、これ以上負債を増やすことを道義的に嫌っている。そして企業家は財政危機と将来の増税を恐れており、政府の刺激策による成長は本物とも持続するとも思っていない。そうした考えは間違っているかもしれないが、企業家がそう考えているのは事実であり、投資をし、労働者を雇うのは理論家ではなく、彼らなのだ。需要重視論者は、知能指数は高いかもしれないが、人々の心理についてはよく知らないらしい、

では現実問題として何をすればよいのか。まとめて言えば、傲慢になることなく、今年は向こう見ずな新規借り入れや支出削減はせず、ファンダメンタルズに目をむけ、生産性を高めない計画は切り、生産性を高める計画にはもっと支出すべきだ、と言っています。


クルーグマンとブルックスは直接論争したわけではありませんが、一部経済学者は現実を見ていないと手厳しく糾弾したブルックスの論説は、期せずしてクルーグマン論説を批判した形になっています。一方クルーグマンは、緊縮財政は経済に対する信頼の回復につながるというブルックスが強調する主張を幻想だと一蹴しています。

しかし現時点では、財政危機を恐れる米国企業家や国民の心理の重要性を指摘した、経済学者ではないブルックスの主張の方に分があるように思えます。財政危機を憂慮すること自体は合理的判断と言えますが、今はそれ以上に将来に対する不安感が重要な役割を果たしているように思えます。欧州も米国も、景気の二番底に対する懸念よりは、財政危機が制御できなくなることへの不安感の方が大きいということでしょう。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:01 | 米国 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米ロ接近が世界に及ぼす影響 [2010年07月06日(Tue)]
6月7日付けThe National Interest誌で、同誌編集主任で米海軍大学教授のNikolas K. Gvosdevが、7月初旬のクリントン長官のグルジア、ウクライナ、アルメニア、アゼルバイジャン、ポーランド歴訪について論評しています。

それによると、オバマ政権はロシア周辺諸国に対して、ブッシュ時代のような拡張政策はとらないが、支援は維持してこれらの国がロシアからの独立性を守るのを支える政策をとろうとしている。オバマ政権はこれまでも、米ロ首脳会談のあとはバイデン副大統領等をロシア周辺諸国に送り、これらの国が米ロ関係改善に猜疑心を持たないよう慰撫してきたが、今回は、バイデンがイラク問題で忙しいため、クリントンにその役割が回ってきたのだ、と言っています。


オバマ政権は発足当初から、ブッシュ時代のような拡張政策(民主主義と市場経済の性急な押しつけ、NATOの拡張)は取らないことを明らかにしており、また、先日のスパイ事件でロシア側が報復せずに「スパイ」交換で手打ちをしたことは、メドベジェフ大統領も対米関係改善にコミットしていることを示しています。

もっとも、リセット政策で米ロの方針が完全に一致することはないでしょう。ロシアが米国にあまりに癒着すれば、軍や諜報機関等のロシアのエスタブリッシュメントの存在意義が大きく失われてしまうからです。また、2012年の大統領選挙でプーチンが返り咲けば、ロシア側の政策が変わる可能性があります。

それでも、このリセット政策は以下の影響を世界に及ぼすことになるでしょう。すなわち、@NATOの存在意義がますます問われることになる。ただNATOに加盟しているバルト諸国や東欧諸国にとってはロシアの脅威は現実のものなので、NATOが崩壊することはない、A米ロ関係改善が進んでいる中で、中国は米国の台湾への兵器供与以来、米国への固い態度を崩さず、世界の中で中国がやや浮き上がった存在に見え始めている、Bロシアは極東における対中バランスを改善する必要をますます感じる一方、米国も、メキシコ湾の原油流出事件もあって、ロシア極東・シベリア開発に関心を示すようになるだろう。

そうした中で、日本の対ロ関係については次のことが言えるでしょう。すなわち、アジアにおけるロシアのプレゼンス強化を、米国が政治・経済両面において後押ししてくるようになれば、「アジアへのロシアの参入」を日本が認めてやるかどうかを、北方領土問題解決促進のカードとすることは難しくなります。また、普天間問題で米国に借りを作っている今、日本はこの面で米国を頼りにはしにくいでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:35 | その他 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
オバマの宇宙戦略 [2010年07月06日(Tue)]
ホワイトハウスが6月28日に発表した「国家宇宙政策」について、ニューヨーク・タイムズ7月2日付は、その国際協力的姿勢を支持する社説を出し、米ヘリテージ財団のBaker Springは、米国の安全を害するものだとして反対論を掲げています。

すなわち、NYTは、今回のオバマの宇宙政策は、ブッシュの一方的かつジンゴイスティックなアプローチと違って、国際的協力を主張したものであり、宇宙利用が重要になってきた今、宇宙利用を阻害・破壊するような行為を国際的協力で抑制しようとするものだ、と称賛しています。

これに対して、共和党の議会スタッフを務め、ABM条約廃棄の際のイデオローグ役も演じた、ミサイルの専門家であるBaker Spring は、オバマは大統領選挙中から、宇宙の非軍事化を提唱してきたが、こうした政策は、宇宙において米国が有する軍事的、情報的圧倒的優位を脅かす(例えば米国のミサイル防衛能力や衛星破壊能力を弱める)ものだ。しかも、米国の戦略兵器は主として宇宙利用兵器であり、通常兵器もまた衛星利用に頼るところが大きいので、オバマの新提案は戦略兵器や通常兵器にとっても障碍になる、と指摘し、

元々、宇宙軍備管理というのは、実現出来るかどうか怪しいものであり、それが、ブッシュ政権の結論だった。オバマは選挙公約は何であれ、これをいじるべきではなかった、と結んでいます。

宇宙の平和利用と言うのは、たしかに俗耳に訴えるものがありますし、中国の衛星破壊実験のような行動を規制することが実際に可能ならば、有意義でしょう。しかし、そのために、現在米国が一方的優位を有する分野で譲歩することになるのなら、それは米国とその同盟国の安全保障を害することになります。

おそらくは、オバマの提案はリベラルな理想主義の姿勢を示しただけで、具体的実質的な譲歩までは考えていないでしょうから、当面は無害であり、これは現状ではレトリック上の論争と言えるでしょう。ただ、国際協力を米国の安全保障よりも上位におくような表現に対しては、当然保守派から反発があるでしょう。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:27 | 米国 | この記事のURL | コメント(1) | トラックバック(0)
パレスチナ再統一の重要性 [2010年07月04日(Sun)]
米カーネギー平和財団のMichele DunneがForeign Policy誌で、中東和平を実現するには、機能不全のパレスチナ政治システムの問題に取り組み、分裂状態にあるパレスチナを再統一させることがカギになる、と論じています。

すなわち、パレスチナで重要なのは、ガザの封鎖などの経済問題よりも、政治システムの問題の方だ。ガザを支配するハマスと西岸を支配するファタハが和解し、ガザと西岸が再統一されない限り、二国家解決に到達することは出来ない。米国はこれまでの政策を転換して、ハマスとファタハの和解の邪魔をしないようにし、両派の暫定合意によるパレスチナ新政府の樹立に反対しないことを示すべきだ、と言っています。


既に終わったことを言っても始まりませんが、パレスチナの分裂は、米国とイスラエルが、2006年の選挙で勝利したハマスに政権を担当させなかったことに一つの原因があります。政権を担当させていれば、ハマスも次の選挙で勝つために、和平や生活向上など大多数のパレスチナ人が望むことを無視できなくなった可能性がありますが、米国とイスラエルはハマスをテロ組織と断罪する立場から、ハマス排除政策を採用、それがハマスを更に過激化させました。

この論説は、ガザのハマスを弱体化させて、パレスチナの統治機構建設とイスラエルとの和平実現を目指すというこれまでの政策では上手く行かない、ファタハとハマスの共同政権を許容すべきだと主張しています。

しかし、イスラエル側の抵抗や米議会の抵抗もあって、オバマ政権がこうした政策転換をすることはなかなか難しいでしょう。今月早々のオバマ=ネタニヤフ会談でも従来の路線を踏襲することが確認されています。

ただ、ドゥーネがいうように、確かにパレスチナの再統一なしには和平は困難であり、ハマス排除に力点を置いた政策から、パレスチナ統一政府作りを優先する政策に移行させるというのは、それなりに合理性のある選択です。ハマスがパレスチナ人から一定の支持を得ている政治勢力だという現実を無視しては、現実的政策はとれず、非現実的な政策では成功する見込みはあまりありません。この論説はそのことに注意を促す効果はあるでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:33 | 中東 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
ウクライナの位置づけ [2010年07月01日(Thu)]
クリントン国務長官のウクライナ公式訪問を前に、ニューヨーク・タイムズ7月1日付で、首都キエフの世界政策研究所のAlyona Getmanchuk所長がウクライナの現状を分析しています。

それによると、ウクライナの国情はわずか半年前に比べても変わってきている。先ず、ウクライナは米ロ「リセット」政策のおかげで気兼ねなくロシア寄りに舵を切れるようになった。しかもウクライナは自国をロシア「帝国主義」の犠牲者とは見ていない、

と言って、ウクライナにとっては西側との関係も大事であり、「西側との統合」への願望も表明している。米国は、ウクライナが今後もこれに反する傾向を示した場合は、財政支援やオバマ政権の精神的支援は与えられないとはっきり告げるべきだ。ただ、クリントンは、ウクライナのロシアに対する影響力は、ロシアのウクライナに対する影響力に劣らないことを忘れてはならない。以前はせいぜいEUとの協力しか言わなかったメドヴェージェフが、「欧州との統合」を標榜し始めた理由の少なくとも一部はウクライナにある、と言っています。


オバマ政権は経済回復、アフガニスタン・イラン問題への対処に主力を注ぐために、ロシアとは「リセット」による協調路線をとっています。他方、メドベジェフは石油に過度に依存するロシア経済の体質刷新に政策の重点を置き、政治面ではリベラルな親西側路線を打ち出して国内知識層の支持を獲得、2012年の大統領選挙を有利に戦おうとしています。

その結果、旧ソ連地域では、「現状を維持し、米国もロシアも互いの利益・体面を傷つけない」という暗黙の了解の下にゲームが展開され始めた感があります。6月のキルギス騒乱の時も、ロシアはキルギス臨時政府から要請されたにも関わらず、直接軍事介入は避けています。また、「ロシアのスパイ」が米国で多数摘発されても米ロは政治問題化させませんでした。

他方、ウクライナについては、論説も言うように、ロシア一辺倒になることは考えられず、当面は、@ロシアはウクライナを政治的・経済的に「統合」することを強く願っているが、力が足りない、しかし、Aウクライナは独立を維持したい。ウクライナは自分たちの経済的未来はEUとの関係(鉄製品等の輸出先)にあることを重々認識しており、EU加盟の目標はおろしていない。またロシアだけでなくIMFからも支援資金をもらいたい、他方、Bウクライナは西欧文明に近いものの、短期に同質化できない後進性を持ち、抱え込めば負担が非常に重くなるため、西欧もオバマ政権も本気でウクライナを抱え込もうとは思っていない、等の諸要素が織り成す微妙なバランスが破れることはないでしょう。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:33 | ロシア・東欧 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)