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世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


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英国防費削減 [2010年06月29日(Tue)]
ウォール・ストリート・ジャーナル6月29日付社説が、英国は財政緊縮のおりから、軍事予算をさらに削減しようとしているが、このことは英国の力に深刻な影響を及ぼす、と警告しています。

即ち、英政府は膨れ上がった負債を理由に、今秋、防衛費を削減すると思われるが、英国の国防費は、イラク戦争とアフガン戦争に参戦していたにも関わらず2008年(入手出来る最新データ)に既にGDP比で2.2%と、1930年代以来の最低水準に落ちている、

しかもその一方で、キャメロン首相は、国家安全保障の改善に尽力し、海外における英国の影響力を拡大させたいとも言っている。しかし、両方はできないのが現実だ、と指摘し、

英国は、いざというとき軍事力行使に打って出る能力を保持してきたからこそ、世界における、そしてワシントンや国連の場における地位を今日まで保ってこられたのだ。目先の倹約に汲々とするあまり軍事費を一層削れば、英国はもはや一人前の国として有効な勢力たり得なくなるだろう。英国自身もやがてそれを後悔することになる、と言っています。


日本人としては2.2%からの削減を難詰されるのが「一人前の」国なら、1%以上にしたことのない国は何者になるのかと思わざるを得ません。

また、キャメロン首相は「自由と民主主義の拡大」を主張し、「世界の変革を助ける」と言うが、貿易・対外援助・外交といった手段のみでこれらを推進していけるのなら非常に結構な話だ、と言っている部分は、安倍・麻生政権が「自由と繁栄の弧」を標榜していたことを思い出させます。

実は、NATO加盟国は最低GDPの2%を軍事費にすることになっていますが、遵守する国が減ってきています。米国はこれに批判的ですが、対ソ防備の必要がなくなった今も、NATOが2%を義務づけていることはむしろ驚きです。そしてこれらの国の軍事費は今日もっぱら、安全保障や国際公共財管理のため使われているのであり、日本の怠慢が逆に際立ちます。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:28 | 欧州 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
中台経済協力枠組み合意 [2010年06月29日(Tue)]
台北タイムズが6月29日付社説で、中台間の経済協力枠組み合意、ECFAについて、非民主的な方法で結ばれた恥ずべき危険な合意だ、と真正面から批判しています。

すなわち、通常、経済協定は締結までに何年もかかるのに、今回の協定は6ヶ月もかけずに、非民主的な方法、つまり、公平さを保証するWTOの傘の下ではなく、秘密交渉で結ばれ、国民党が四分の三を占めるラバー・スタンプの議会で審議されただけだった。野党は国民投票を要求したが、政府は納得できない技術的理由で拒否した、

こうなったのは、2008年の選挙で、台湾の人々が、大陸との統一の夢を捨てない国民党を選んだからだと言える。もっとも、国民党は李登輝の下で台湾化していたし、選挙民は、党内の親北京派が国民党を牛耳るとは思っていなかった。その李登輝自身は、ECFAと馬英九への反対を明らかにしている、と述べ、
 
台湾人は国民投票によって、自らの将来を決する権利がある、と結んでいます。


新聞などで報道されているECFAの減税の品目数などを見ると、少なくとも表面的には、中国側の譲歩の方が大きいようです。中国は、細かい経済的実益よりも、平和攻勢の効果の方に重きを置いた感があります。

しかし、台北タイムズがこれだけ正面から反対し、李登輝氏も反対を表明したということは、作成の過程においてこの社説が言うように、親中国派が主導権を取った事実があるのかもしれず、それに対する反発も含めて、危険なものを内蔵する協定である可能性はあります。いずれにしても、中国は人治国家であり、協定の文面だけから今後を予測することは危険を伴います。やはり、成り行きを見極めるしかないでしょう。

ただ、今回の合意については、より根本的なところでさほど危機感を持たなくてもよいのではないかと思われます。と言うのも、経済関係というものは、いかに密接になっても、重大な政治的決断に影響を与えた歴史的例は無いからです。第一次大戦前も、欧州各国の経済関係がこれほど密接になった状況でもはや戦争は無いと言われ、それが大戦前の西欧文明爛熟期のインテリの通念だったようですが、戦争開始時のカイザーやツァーは勿論、英仏など欧州列強の首脳の頭の中には、経済相互依存に対する考慮などはカケラもありませんでした。

中国が一党独裁国家であり、台湾が自由民主主義国である限り、いかに経済関係が密接であっても、台湾の指導者が中国の主権を受け入れることは考えられません。今回の合意で、中国側が政治的計算から持ち出しのサーヴィスをしたのなら、台湾はそれを有難く頂戴しておけばよいだけの話でしょう。





Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:12 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
アフガン戦略の再検討 [2010年06月23日(Wed)]
ワシントン・ポスト6月23日付でHenry A. Kissinger元米国務長官が、今後のアフガン戦略について提言をしています。

それによると、来年夏にアフガン側に治安責任を移し、撤退を始めるという現行の政策は現実的ではない。アフガンの中央政府が弱体なのは、カルザイのせいではなく、アフガンの社会構造によるものであり、短期間にそれを正すのは無理だ。政治的努力は軍事的努力より長期を要する。そこで、今の米国のアフガン戦略は、@軍事的な努力は地方レベルで行う、A地域的な外交枠組みを作る、B人為的撤退期限を放棄する、という方向に修正すべきだ、と提言しています。

そして、テロを容認するアフガンの脅威を米国以上に受けるロシア、中国、インド、パキスタンなどは、米国と利害が一致するので、地域的外交枠組みは実現可能だ。アフガンの資源をめぐる争奪戦を事前に防止する効果もある、と言っています。


アフガン戦争は今やベトナム戦争よりも長く続いていますが、カルザイ政府の腐敗や非効率、タリバンの持久力その他で上手く行っていません。キッシンジャーはアフガニスタンでの達成目標の引き下げ、人為的な撤退期限の放棄を主張するとともに、地域的外交枠組みを作り、それを活用して対処することを提言しています。

確かに、来年7月の撤退開始は非現実的だというキッシンジャーの指摘はその通りであり、米国の継戦意欲が失われたような印象を与えれば、それだけでアフガン戦争はうまく行かなくなるでしょう。

しかし、地域的外交枠組みは一見すると良い提言ですが、その具体的な姿がよくわかりませんし、それがどのぐらい状況の好転に貢献できるか疑問があります。むしろ、参加国が戦争には貢献はせずに、米・NATO軍のやり方に注文をつける場になりかねません。また、中ロが米国と共通の脅威に直面しているのは事実ですが、米国に協力するかどうか疑問ですし、何よりも印パが同席する場で、アフガニスタンについて合意するのは困難です。

また、イスラム過激派を勢いづかせる敗退を避ける努力は当然すべきですが、イスラム過激派の脅威は、せいぜいテロの脅威であり、戦略的脅威ではありません。そのテロ対処のためにアフガニスタン全体を平定する必要はありませんし、例えアフガン平定に成功しても、今度は他所でテロリストが跋扈しかねません。アフガニスタンでは国内の治安措置とテロリストの隠れ場所への攻撃、イスラム過激派とのイデオロギー闘争などに注力していけばよいでしょう。

それにしても、米国がイラクやアフガニスタンで消耗するのは、世界の安定という観点からは望ましくありません。特に、日本周辺では中国の台頭に伴う問題があるので、米国が出来るだけ早くアフガン戦争を切り上げることが望まれます。敢えて言えば、オバマが来年7月に撤退開始にあくまでこだわって実施し、その結果、米国に東アジアにより多くの関心を払う余裕ができるのであれば、それは日本のためになります。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:10 | 中央・南アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
イラン民主化の夢 [2010年06月22日(Tue)]
ウォール・ストリート・ジャーナル6月22日付で、米スタンフォード大学のイラン専門家、Abbas Milaniがイランの民主化について論じています。

それによると、イランの民主派指導者ムサヴィは、6月初めに反政府デモを呼びかけた後、それを撤回したので、失望を招いたが、その後、西側ではほとんど気付かれなかったが、注目すべきマニフェストを発表している、

その中でムサヴィは、宗教を世俗の権力から切り離す世俗主義を唱え、さらに、国際的な人権基準の尊重、そして宗派・人種・男女の別を問わない法の前の平等を主張している。かつてシャーを倒したイラン革命勢力の中で、ムサヴィは宗教派と一線を画す、民主派を代表する人物と言える。ホメイニの下で、急進的な首相であったムサヴィは、今や真の民主主義を主張している。イランの民主化は、イラン問題の唯一の解決策であり、世界はムサヴィを支持しなければならない、と論じています。

イランには、20世紀初頭、当時アジアでは、日本、中国、トルコ、イランにしかなかった立憲政治を試みた伝統があり、また、層の厚いインテリ層がいます。その多くは、民主主義の立場からホメイニ革命に参加しましたが、その後、宗教派の専制を逃れて、欧米に亡命しています。彼らの見果てぬ夢がイランの民主化であり、ミラニもその系統の人物でしょう。

ホメイニ革命は予想以上に長く続いており、この民主化の夢がいつ実現するかは全く予測不可能ですが、いつかは実現されるでしょう。なぜなら、長い目で見れば、この種のピューリタン革命、文化大革命のような精神革命にはおのずから寿命があると思われるからです。そして、そうなった暁には、イラン民主化のインパクトは、まずは湾岸諸国に、やがては中東全域に及ぶことになるでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:42 | イラン | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
ロシアの西側接近という幻想 [2010年06月22日(Tue)]
ワシントン・ポスト6月22日付で、ブッシュ政権時に国務次官補代理を務めた、独マーシャル・ファンドのDavid J. Kramerが、ロシアに入れ込みすぎることに警鐘を鳴らしています。

すなわち、好戦的ではない、経済に主眼を置いたロシアの外交政策文書が最近「リーク」されたことで、ロシア大統領はロシアをより親西側スタンスに変えようとしていると思う向きもあるが、この文書も注意深く読めば、こうした甘い考えを裏付けるものではないことがわかる。例えば、この文書も、全体ではロシア勢力圏の確立をはっきりと支持、旧ソ連諸国を統合する必要と、地域外勢力がロシアと旧ソ連諸国との関係に介入する動きには積極的に反撃する義務を強調している、

また、オバマの「多国主義」を称賛する一方、米国内におけるオバマの政治的立場の「弱体化」に警鐘を鳴らしている、と述べて、メドヴェージェフ訪米の意味を読み間違えないよう、警告しています。


最近のロシアを動かす基本要因は、@2012年の大統領選挙とA石油依存のロシア経済の改革であり、そのための西側との協力関係の拡大ということに集約できます。

メドベージェフ大統領は昨秋以降、リベラル、経済刷新・石油依存脱却を旗印に掲げ、保守・秩序維持重視とされるプーチン首相との違いを示そうとしています。彼がプーチンに対抗して大統領選挙に出馬するかどうかはまだ不明ですが、その準備は整えつつあり、今回の訪米はその一環と言えます。

他方、オバマ政権は経済回復とイラク・アフガニスタン介入の決着に最重点を置いており、ロシアと不必要な対立をしている余裕はありません。しかも、イラン・北朝鮮制裁やアフガニスタンへの物資輸送についてはロシアの協力を必要としています。

従って、この論説が言うような対ロ警戒論は意識しながらも、ロシアに対しては当面、協調・協力が基調になるでしょう、米国による台湾への兵器供与決定以来、米中関係が冷めたままのように見えることと対照的です。

ただし、オバマ政権も、「ロシアはわれわれと利益も価値観も異なる」ことは重々承知していますし、ロシア側も、西側への協調姿勢を強め過ぎれば、国内政治上もたなくなることを知っています。さらに、ロシア経済刷新のための協力と言っても、西側が政府レベルでできることは限られていますし、これまでの幾多の例が示すように、ロシアの改革への試みが官僚主義と汚職によって潰えることはほぼ必至です。

従って、西側の「対ロ協力」も、ロシアの「対西側協調」も、内実はレトリックと雰囲気が大部分を占めることになるでしょう。ただ、西側にとっては、リベラル・対西側協調路線に自分の政治生命を賭けたメドベジェフは都合のいい存在であり、これを持ち上げていくでしょう。日本も当然、これに乗ることを求められ、乗ることとなるでしょうが、どの国も本気ではないことは認識しておく必要があります。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:15 | ロシア・東欧 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
財政制約下の米国防戦略 [2010年06月22日(Tue)]
米戦略予算評価センター(CSBA)所長で戦略家のAndrew F. Krepinevich, Jr.が、経済不況や財政負担増の中で、米国が世界の覇権国として軍事力を維持するには、新たな戦略が必要だと論じています。論文は、5月13-14日にプリンストン大学で行われたシンポジウムで発表、CSBA のPerspective 6月号に掲載されたものです。

クレピネヴィッチは、経済不況、対テロ戦争の負担、社会保障費の急増などが、整合性ある防衛予算の編成を困難にしている。かつてポール・ケネディは「帝国の拡がりすぎ」と言ったが、現状は「社会保障の増大し過ぎ」だ、と指摘した上で、

100年前、当時の覇権国、英国は、経済力の相対的沈下の下で数々の困難な選択をしなければならなかった。すなわち、それまでの two-power standard 戦略(英国は、世界のどの地域でも、第二、第三の海軍国の海軍の合計よりも、優勢な海軍を維持する)を捨て、西半球については米国、アジアについては日本の優越を認めた。また、そのために、日英同盟、後には英仏協商を結び、さらに、技術革新のテンポを速め、競争国が英国に追いつくための負担を増大させることに努めた、

それに較べてオバマ政権は、問題点を挙げるばかりで戦略というものを持っていない。過去の英国と同じように同志を糾合すべきだ。金が無ければ、頭を使うべきだ、と言っています。


この論文は、オバマ政権に新しい事態に対応する戦略が無いことを指摘し、同盟国と協力して防衛負担を分担せよ、という以外に具体的な提案はしていません。要するに、この論文の主眼は同盟国との防衛分担にあります。

大英帝国の歴史的経験を踏まえた思いつきの議論のようにも聞こえますが、これは現実を反映した本格的な戦略論と言えるように思えます。イラク、アフガン戦争で疲弊し、経済危機に見舞われた米国の軍事体制が、中国の勃興を前にして、財政的制約に苦しんでいるのは事実です。

実は、こうした戦略を実行に移すのは、米国にとって初めてのことではありません。1970年代、デタントに酔った西側諸国は、初めて出現した環境問題と社会保障への財政支出のために、防衛費を削減、この間二度の石油ショックで膨大な収入を得たソ連は軍拡に集中し、米国に追いつき追い越す態勢となりました。事実、1980年代初頭の米国の対NATO外交、対日外交は防衛費増額要求に終始したと言っても過言ではありませせん。そして、西側諸国は米国の期待に応え、ソ連を崩壊に追いつめました。

日本は今後の日米関係において、日本の防衛費の問題が必ず議題に上ると覚悟しておくべきでしょう。過去7年にわたって日本の防衛費が減り続けているのはどう見ても異常な事態であり、日米防衛分担を論じる際、この問題は必ず米側から提起されるでしょう。








Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:05 | 米国 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
中国人民元の弾力化 [2010年06月20日(Sun)]
ファイナンシャル・タイムズとウォール・ストリート・ジャーナル6月20日付社説が、中国中央銀行がドルペグ制を止めて人民元相場を弾力化すると発表したことを取り上げています。

それによると、FT社説は、今回の発表のタイミングと方法は巧妙であり、G20サミットを前に人民元切り上げ圧力を和らげ、貿易戦争の可能性を低めるだろう。また、世界が新たな均衡を求めている中で、強い人民元は中国労働者の購買力を高め、インフレ対策にもなるので、人民元の切り上げは中国自身の利益にも適う。ただ、人民元が市場の決める適切なレートにゆっくりと着実に落ち着くようにしないと、米国が満足しないのみならず、長期的に中国の利益にならない、と言っています。

他方、WSJ社説は、今回の決定で良かったのは、これで貿易戦争が回避されるかもしれないことであり、中国中央銀行が米国と離れて独自の金融政策がとれるようになったことだ。しかし、今回の措置で、世界経済が「均衡を取り戻し」、米国の貿易赤字が減る、あるいは米国に製造業が大挙して戻ってくるなどと期待するのは幻想だ。人民元を切り上げても、人民元に対する需要は止まるわけではなく、むしろさらなる元切り上げを予想して世界中からホットマネーが流入することになるだろう、と言っています。


今回の中国人民銀行(中央銀行)の声明は日本のメディアでも大きく報じられていますが、人民元の引き上げは年末までに3%程度の小幅にとどまるというのが大方の予想です。大幅な切り上げは中国の輸出企業に打撃を与えますし、ユーロ安で人民元の実効為替レートがすでに大幅に上昇しているという事情もあります。

そして、WSJ社説は、元の切り上げが米国の貿易赤字を減らすと考えるのは幻想だと言っており、過去のデータから言えば確かにそうなのでしょう。しかし、かつての円切り上げ問題の時もそうだったように、貿易相手国の通貨は実は政治問題です。今回も、「元を切り上げても貿易効果はない」と言ったところで、米国の関係議員はおそらく聞く耳を持たないでしょう。

オバマ大統領は中国の措置を「建設的な一歩」として歓迎しており、今回の声明でG20会合は乗り切れるかもしれませんが、小幅な上昇に終れば米国議会は満足せず、人民元問題はいつまた発火するかわからない政治的火種としてくすぶり続ける可能性があります。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:09 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
中国経済の行き詰まり [2010年06月17日(Thu)]
ウォール・ストリート・ジャーナル6月17日付で、スコットランド銀行主任エコノミスト、Ben Simpfendorferが、中国だけがここ数年の経済危機を乗り切ったように見えたが、それは中国の厖大な景気刺激策によるものであり、それが息切れして来た、と指摘しています。

すなわち、米国の景気回復が遅れ、欧州も財政危機に見舞われている中で、中国の動向が再び関心の的になって来ているが、中国の今までの成功は大規模な景気刺激策によるものであり、そうした策がそろそろ手詰まりになってきた感がある、

他方、過去の景気刺激策は、不動産バブルと銀行の不良貸付を産み出し、インフレも進行しているが、それに対する有効な策は打ち出せていない。どうやら中国は危機を乗り切ったというよりも、先伸ばししただけであり、今後は景気刺激策の後始末が必要な段階に入るのではないか、と論じています。


中国経済はそろそろ行き詰りだという分析は、過去10数年の間に何十回となく表れており、その度に国営銀行の不良資産などの話を聞かされてきました。この問題については、岡崎研究所はこれまで成長持続論の側に立ってきましたが、それは一つには、「情勢判断は心配すべきことを心配すれば良い。中国経済が行き詰まる、あるいは政治的に自由化して中国が分裂するというような問題は、中国が心配すべきことであり、日本が心配することではない。われわれの心配は、中国経済がこのまま躍進を続けて、軍事力が増大し、日本への脅威が増すことだ」というのがあるべき基本姿勢だろうという考えに基づいています。

また経済理論上も、一人当たりGDPが低くて、国民一人一人が少しでも豊かになろうと頑張っている成長意欲があるかぎり、中国は多少の障碍は突破して何とか成長を続けて行くのではないか、というマクロ的見方ができるように思えたためです。

結果的には、これまでのところはこの見方は大勢として間違っていませんでした。勿論、先のことはわかりませんが、敢えて言えば、中国にはまだしばらく成長余力があるように感じられます。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:44 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
中国とパキスタンの核技術協力 [2010年06月17日(Thu)]
ウォール・ストリート・ジャーナル6月17日付で、ロンドン大学キングス・カレッジのHarsh V. Pant教授が、中国が2基の原子炉を輸出することでパキスタンと合意したことを取り上げています。

それによると、中国のパキスタンへの原子炉輸出は、NPT非加盟国への核技術輸出を禁止する核供給グループ(NSG)のガイドラインに反するものであり、承認されれば核不拡散上問題だ、

中国は今回の輸出は2004年に中国がNSGに参加する前に合意されたことだと主張しているが、2008年、米印が核エネルギー協力協定を締結した際、中国はパキスタンに原子炉を輸出する意図を明らかにしている。米がインドを贔屓するのなら、中国も同じことをするというわけだ、

中国がこれまでもパキスタンの核兵器開発に協力してきたことは、カーン博士が認めており、両国の核協力は、核兵器国が非核兵器国に分裂性物質や兵器設計図を渡した唯一の例だ。しかも中国はNPT参加後もこの協力を続けた、

他方、パキスタンは当然、民生用核の利益を得たいと思っており、米印協定と同様の協定を米国に要求している。ブッシュ政権はパキスタンの過去の拡散を理由に拒否したが、オバマ政権の態度ははっきりせず、中国はオバマ政権なら突き動かせると計算している、

これからNSGの会合が開かれるが、これは、米国が核技術輸出規則を強制する意思と力をまだ持っているかどうかが試される場になるだろう、と言っています。


ブッシュ政権時代、米国は民生用原子力利用への保障措置だけでインドへの原発輸出を認める協定を締結しましたが、これこそパントのいうNPT体制を「葬ること」につながる危険を内包していました。

つまり、パキスタンがインドと同様の待遇を要求するのは目に見えており、米国がパキスタンの過去の行状を理由に拒否したとしても、中国がパキスタンの要求に応じることは当然予想できたはずです。この時に、いわばルビコン川は越えられてしまったと言えます。

インドは「拡散をしていない民主主義国」だから良いが、パキスタンはだめだ、という米国の議論は、イスラエルの核に対する米国の態度も考えると、要するに、「良い」国は核開発をしてもよいが、「悪い」国は駄目だという議論でしかなく、こうした議論で中国を説得できるか、非常に疑問ですし、パキスタンも納得するはずがありません。こうした政策にはもっと一貫性が必要です。

なお、パントが、今回の原子炉輸出はNPT体制を「葬る」一要因になる、としているのはやや少し大げさでしょう。インドもパキスタンもイスラエルもNPTの枠外にあり、今後も加盟する可能性はないと思われます。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:50 | その他 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
キルギスの民族衝突で見られる米ロ協力 [2010年06月16日(Wed)]
ワシントン・ポスト6月16日付けでコラムニストのDavid Ignatiusが、キルギスで起きたキルギス人とウズベク人の民族衝突が米ロ協力の機会を生んでいる、と論じています。

すなわち、中央アジアで危機が起きたと聞くと、条件反射的に米ロ関係の緊張化を思うが、現実は逆で、米ロ協力の機会が生じている。当初キルギス政府から介入を求められたロシアは単独介入を拒否、そして驚いたことに、米国も、旧ソ連諸国から成る集団安全保障条約機構かトルコを含む有志連合による介入が適切だとした。その後、米ロは共同で国連に状況説明を行なっている、

こうした米ロのアプローチは、中央アジアで米ロが影響力を競う、「グレート・ゲーム」とはかけ離れたものだ。米ロは中央アジアでは、地域を不安定化する過激イスラム勢力や犯罪集団を共通の敵とする天与のパートナーと考えることができる。実際、ロシアは、米国がキルギスのマナス基地をアフガニスタンへの中継地点とすることを嫌っていたが、現在では、イスラム過激派の反乱が北に広まらないよう、米国がアフガニスタンで成功することはロシアの利益にもなると見ている、と述べ、

中央アジアで「グレート・ゲーム」が協力にとって代わられるのは望ましいことだ。この協力がさらにイランとの対峙にまで拡大されれば、新たな「集団安保」の始まりになるだろう、と言っています。


この論説は中央アジアでの米ロ協力を過大視するあまり、ロシアがキルギスタンを自らの勢力圏に取り込もうとしていることへの目配りが足りないように思われます。「グレート・ゲーム」的な考えを止めたのは米国だけで、ロシアは決して止めてはいません。

ロシアがキルギス現政権側に立って単独介入するのを止めたのは、費用がかかり過ぎるほか、ウズベキスタンが反発する可能性を考慮したからでしょう。ロシアにとっては、米国が集団安全保障条約機構を支持したのは、大歓迎です。そして、米国が、マナス基地さえ使えればよく、ロシアがキルギスへの影響力を強めても文句は言わない、という方針であるなら、それはそれで政策として成り立ちます。ただ、キルギスは独立国家としての実体を失うでしょう。

確かに、米国よりもロシアにとってより深刻な問題であるイスラム過激派を米国が叩いてくれるのはロシアにとってありがたいことであり、そこに米ロ協力の余地はありますが、こうした協力が対イラン政策にまで広がることを望むのは甘すぎる期待です。

どの大国の政策にも競合的側面と協力的側面があり、問題はそれを国益やあるべき国際秩序の観点からどう調整するかです。キルギスで協力的側面が表れたことを過大評価し、米ロ間の競合的側面を見逃せば、後でロシアの行動に驚かされることになるでしょう。










Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:45 | 中央・南アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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