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世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


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継続するアメリカンパワー [2010年05月31日(Mon)]
ロサンジェルス・タイムズ5月31日付で、米外交問題評議会のMax Bootが、中東地域と太平洋地域を訪問してきた結果を踏まえ、米国を「衰退する大国」とするのはナンセンスだと論じています。

すなわち、米国は世界各地に軍事基地を置き、米軍司令部は、中央軍司令部や太平洋軍司令部など、全世界をカバーしているが、中国も含めてこうしたことはしている国はほかにない。中でも、中東での米国の軍事プレゼンスは特に大きい。しかし、アラブの反米主義がよく言われるが、湾岸諸国はイランの脅威から自分たちを守ってくれるのは米軍しかないと考えている。中国の人民解放軍に期待するスルタンなど一人もいない、

事情は極東でも同じで、各国は中国と商売はするが、中国の覇権志向を警戒している。日本の鳩山政権も、沖縄基地問題で政策を変更して米国の抑止力減少をもたらす余裕はないと認めたし、核武装した北朝鮮を抑止し得るのは米だけだと承知している韓国は、米軍からの有事指揮権の返還を先延ばししてもよいと言っている、

勿論、各地の反米主義や、米国を脅かすイラン・中国・イスラム過激派等の脅威、そして債務・軍事支出減少・海軍の縮小等の米国自身の弱点を無視するものではないが、米国には前例のないパワー・プロジェクション能力があるほかに、地域の強国からの保護を米国に期待する多くの国の善意がある。これら国は米国に憤慨することもあるかもしれないが、隣国を恐れており、結局、それが世界で唯一の超大国という米国の地位を最終的に支えている、と言っています。


論説の言っていることに賛同できます。米国衰退論はこれまでも定期的に現れ、話題にもなりますが、米国が世界で築いてきた信頼関係や、その結果としての軍事基地網は大変な資産であり、他国には間単に真似のできないものです。21世紀半ばになっても、中国が米国のこうした地位に挑戦するのは難しいでしょう。

こうした米国に欧州や日本が協力していけば、世界の重要部分で「パックス・アメリカーナ」は大筋で今後も相当期間続くことになります。

日本は米国も疲弊してきていることを認識し、その負担を軽減するような政策展開をすべきでしょう。環境問題での協力を安保協力のように見なすなどの誤魔化しめいたことは止め、海軍力増強等のための防衛費増額や集団的自衛権問題の解決など、安全保障問題に正面から取り組むべきであり、そうすることは、アジア・太平洋地域の平和の持続につながります。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:18 | 米国 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
トルコ=ブラジルとイランとの核合意 [2010年05月26日(Wed)]
5月17日、イランがトルコとブラジルの仲介により、低濃縮ウラン1200kgを国内からトルコに搬出、代わりに研究用原子炉に必要な高濃縮ウラン燃料棒1200kg(医療用とされる)を受け取ることで合意したと発表、それについて、トルコ外相とブラジル外相がインターナショナル・ヘラルド・トリビューン5月26日付に連名で論説を寄せています。

それによると、両外相は、トルコとブラジルの仲介で成立した核燃料処理などに関する「テヘラン宣言」は、オバマ大統領が提唱した関与政策が成就したものだと言える、関係国は安易な対イラン経済制裁論は排し、この「テヘラン宣言」に基づいて互いに信頼を醸成し、話し合いによって問題を解決すべきだ、と言っています。


両外相の主張には、特に新味はなく、新たな具体的提案も見られません。論説掲載の翌日、5月27日にトルコのエルドアン首相のブラジル訪問が予定されていることから、これは、トルコ=ブラジル首脳会談直前の政策広報的効果を狙った可能性が高いと見てよいでしょう。

とは言え、ブラジル、トルコ両国、特にトルコ外相個人の思い入れと意気込みは痛いほど伝わってきますが、残念ながら「テヘラン宣言」は時期的に遅すぎ、かつ内容的にも不十分なので、事態の新たな展開に結び付くとは思えません。イラン核問題にトルコやブラジルがここまで深く関与してくることは予想しませんでしたが、これまでの経緯を考えると、今回の両国の動きは、G20の中ではともにある程度有力で、かつたまたま非常任理事国として安保理にいあわせた両国がスタンドプレーをしたという面が強いように思われます。

いずれにしても、今後両国は、両国にとって魅力的な現在の国際政治環境を最大限利用し、両国の存在感誇示のための努力を執拗に続けるでしょうし、他方、したたかなイランもこれほどのチャンスを見逃すことはないでしょう。

両国の努力は尊重すべきでしょうが、こうしたあまり意味のない動きをめぐる議論に時間を費やしていては、逆にイランに対する軍事オプションの現実化を早めてしまうのではないか、むしろこちらの方が心配です。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:42 | その他 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
天安撃沈事件後 [2010年05月25日(Tue)]
米戦略国際問題研究所(CSIS)のVictor D. Chaが、同研究所ウェブサイト5月25日付でインタビューに応じ、「天安」事件の今後の展開について論じています

すなわち、朝鮮半島の西側海域ではこれまでも南北の衝突はあったが、今回の事件の敵対行為は次元が全く異なる。失われた人命の数は、1987年の大韓航空機爆破事件に次ぎ、また、韓国軍に対する軍事攻撃としては朝鮮戦争以来、最も深刻なものであり、1953年休戦協定に違反している、

北の動機については、昨年11月の同海域での南北衝突で敗北したことへの報復、韓国を交渉に引き出すための威圧外交の一環、最近の海軍力強化を喧伝するための示威、北指導部内の混乱から来る対外強硬路線の追求、などが考えられるが、今回の事件の結果、米国などによる六ヵ国協議再開にむけた外交努力は中止され、韓国政府も、真相が解明されるまで協議への復帰はないと明言している、

また、李大統領は、開城工業団地を除く全ての南北間貿易の停止、米韓共同の海軍その他の軍事演習の実施、北朝鮮船の韓国海上交通路通過禁止、非武装地帯での拡声器放送・風船によるビラ散布等による心理作戦の再開、国連安保理への強力な制裁措置の要請などの対応策をとることも明らかにした、

他方、中国は未だにはっきりした態度を表明していない。中国に期待できるのは、最大限でも、安保理で決議案に拒否権を行使しないこと程度だろう、と言っています。


「天安」事件に対する中国のこれまでの対応はもたもたしています。中国は、1992年の韓国との国交正常化以来、南北両方と外交関係を持ち、前向きの変化をもたらす能力を持つ唯一の地域大国となりましたが、これまでも、韓国の関与政策に報いる対応をするよう北朝鮮に働きかける、あるいは、北朝鮮の敵対姿勢を抑えるべく影響力を行使することを一貫して避けてきました。中国の抱えるディレンマは理解できますが、このような「もたもたしながら何とか切り抜ける」戦略は、中国が東アジアにおいて、国力の増大に見合った指導力を発揮できていないことを示しています。中国が朝鮮問題で難しい選択をする能力を欠いているがために、六カ国協議において、他のメンバー国と協力するという中国の言葉と行動の間にギャップが生じるのだと言えます。

しかし、北朝鮮が無法な行動をとればとるほど、唯一の同盟国である中国への批判が高まるのは当然であり、北朝鮮が更に挑発行動を続ける場合には、中国としても北朝鮮を擁護することは難しくなるでしょう。




Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:19 | 東アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
シェール・ガスが地政学を変える [2010年05月25日(Tue)]
ファイナンシャル・タイムズ5月25日付で、同紙外交問題コラムニストのGideon Rachmanが、シェール・ガス(頁岩に含まれる天然ガス)の開発進展が、米国ばかりか欧州のロシア産ガスへの依存度を減らして、力関係に変化をもたらす可能性があり、その兆しは既に見られる、と言っています。

それによると、シェール・ガス開発に関わる経済的・技術的問題の多くが技術革新によって克服された結果、その生産量はこの3年で大幅に伸び、米国は10年ぶりにロシアを抜いてガス生産で世界第一位となり、LNG輸入用ターミナルはほとんど使われなくなった、

また、欧州でもイギリスやポーランドに埋蔵されている可能性があり、既に米国のエネルギー会社と開発協議が始まっている。それに、たとえ欧州で見つからなかった場合でも、アフリカや湾岸諸国からの米国向けのガスがEUに回ることで、対ロシア依存を減らすことができる、と述べ、

こうしたことの地政学的影響は既に出始めているかもしれない。例えば、ロシアは、米国と核削減条約を結び、対イラン制裁に賛同し、ポーランド大統領らが犠牲になった航空機事故にも前向きに対応するなど、最近友好的になったと西側の官僚たちは言っている。これは、ガス価格の下落や世界エネルギー市場の動きが影響していると一部では言われている、

勿論、いつの時代にも「夢のエネルギー」がもてはやされるものであり、シェール・ガスも夢かもしれない。またその抽出に使われる化学物質が環境に悪影響を与える心配もあるし、石炭より汚染度ははるかに低くても、化石燃料のシェール・ガスは温室効果ガスを排出する、

しかし、シェール・ガスは、西側社会が抱えるエネルギー安全保障問題の全ては解決しないし、気候変動の問題も解決しないが、悪いニュースが続く中で歓迎すべき朗報だ、と言っています。


この数年で世界のエネルギー依存の構図は大きく変わってきたようです。カタールで大量のLNGが生産されるようになり、米国や英国に輸出されていましたが、米国のシェール・ガス生産増や世界経済の停滞のために需要が低下、余剰分が中国などのアジア諸国や中東に回るようになり、さらに、供給増・需要低下が大幅な価格低下をもたらしているようです。

米議会はこれまで何故かシェール・ガス開発に熱心ではありませんでしたが、メキシコ湾汚染事故で逆にシェール・ガス開発は進むかもしれません。

現在、ドイツのロシアへの高いエネルギー依存が、たびたび欧州の政策一致の妨げとなっていますが、ロシアへのエネルギー依存度が減れば、EUやNATO内の結束が容易になり、また、イランなどを巡るロシアとの交渉も進めやすくなるでしょう。シェール・ガス開発の行方は、ラックマンが述べるように、米欧、ロシア、中国、中東間の関係を見る上で一つの重要な要因となってきたと言えるかもしれません。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:16 | その他 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(1)
欧州経済危機の米国への波及 [2010年05月24日(Mon)]
PBS(349のテレビ放送局を有する、米国の非営利・公共放送ネットワーク)の5月24日のNightly Business Reportで、世界最大の債権ファンド、PIMCOの最高経営責任者Mohamed A. el-Erianが、欧州の経済問題がソブリン危機から経済発展の停滞、そして先週末には金融機関問題へと波及した結果、米経済にも悪影響がおよぶ可能性があるとして、その理由を説明しています。

それによると、先週末までは、市場は欧州に債務と経済成長停滞の問題があることは織り込み済みだったが、週が明けると、金融機関問題もあることが明らかになった。金融機関は、@言わば経済という車のガソリンであり、経済の様々な部分を結ぶ機能を持ち、増幅作用がある上に、A政府の対策というのは常に後手に回ることから、金融機関が絡むと、問題が拡大し、周囲に広がることになる、

世界経済が再度落ち込むことがないことを願うが、期待されたV型回復やそれを実現する4%成長率は望めず、おそらくは2%ぐらいになるだろう。これは、4%という予測が世界中の資産見通しに読み込まれていたので、その影響が出るということだ、

現状は、車に例えると、深刻な不況を避けるために手持ちのスペア・タイを全て使い尽くした状態であり、それだけに、抵抗力が非常に弱まっており、政策ミスや市場での何らかの事故に耐える余力をほとんど失っている。おまけに、政治的にこれ以上の刺激策を行えない状況だ。それに、金融システムは、パイプの水の流れのようなものなので、一カ所が詰まれば、その影響は広く及ぶ可能性がある。そのため、スペインのほんの小さな銀行の問題が、米国の金融機関にまで影響を及ぼすことになるかもしれない。そうなれば、世界経済の中の非常に重要な一角全体が侵されることになる、

しかし、市場は過剰反応しているのではなく、ここにきてやっと欧州がかかえる問題の深刻さ、つまり問題がいかに広い範囲に感染する可能性があるかをはっきり認識しだしたのだ、と言っています。


自動車のたとえを上手く使った分かりやすい説明です。非常に暗い予測ですが、専門家の間ではここ数週間、米国は自らの財政赤字のゆえに「ギリシャになる」のではなく、ユーロ崩壊の可能性とともに、欧州経済の混乱やEUの対策の遅れが欧州や米国の金融機関に影響し、その結果、米経済に影響が及ぶことが言われるようになってきました。こうした不安が広がれば、恐れられていた世界経済の「第二の落ち込み」が起きる可能性が真剣に議論され始めることになるでしょう。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:56 | 米国 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
クルド地域は別世界 [2010年05月24日(Mon)]
米AEIのウェブ・サイト5月24日で同研究所のMax Bootが、イラクのクルド地域を旅行したが、テロもなく、よく統治された最も親米的な地域だと報告し、その安定を保つために、2011年以降もクルド地域だけは米軍が駐留出来るよう交渉すべきだ、と論じています。

すなわち、イラク3000万の人口の中で、450万人が住むクルド地域を訪れたが、ここは、軍服を着た米国人でさえも、ボディガード無しで歩ける唯一の地域であり、誰もがサダムフセインからの解放を感謝してくれる世界でも最も親米的な地域だ。経済的にも、イラク全体の石油収入の17%を活用して繁栄しており、新しいビル街も生まれている。政治的にも、バルザニがクルド地域を統治し、タラバニはバグダッドでクルドの利益を守るというように、ゲリラ戦士同士が珍しく手を握っている。さらに、外交的にも、周辺諸国を刺激する独立路線はひっこめ、トルコとも大いに交易している。汚職に関しても、イラクの他地域では契約の50%のリベートが普通なのに、クルド地域では20%だ、

もちろん、アラブ人に対する排斥が行われるなど問題はあり、中でも最大の問題は、他地域との境界線だ。これは米軍の存在によって守られており、この問題が解決する前に米軍が撤兵すれば、戦争になるとクルドの政治家たちは警告している。米国は2011年の完全撤退後も1万から1万5千の兵力は残すようイラク政府と交渉すべきだ、と言っています。
 
 

オバマ政権は一切言及していませんが、2011年の米軍全面撤退の最大の問題はクルド問題だと言ってよいかもしれません。クルドは米軍の恩恵を最も受けた民族ですが、オバマ政権は、ブッシュが始めたイラク戦争にも良い点はあったと認められない立場にあり、また大統領選挙中も選挙後も、イラク撤兵を終始スローガンにして来たので、今更クルドだけを例外にするわけにはいかないでしょう。

他方、バグダッド政府は、一貫してクルドのキルクーク油田地帯の占有を認めず、従って、クルド地域を米軍撤退の例外とする協定に、シーア派多数の議会が賛成する見通しはありません。

とすれば、戦争か何らかの形で、クルド民族に再び悲運が訪れることになりますが、米国はそれを看過できるでしょうか。考えうる唯一の方策は、米軍がバグダッド政府の黙認あるいは形式的抗議の下に撤退を無期延期することでしょう。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:51 | イラク | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
ウクライナ=ロシア関係 [2010年05月20日(Thu)]
ニューヨーク・タイムズ5月20日付で、キエフの政策研究国際センター分析官、Sacha Tessier-StallとKateryna Zaremboが、西側はまだウクライナを失ったわけではない、と論じています。

それによると、ヤヌコビッチ新大統領がロシアによるクリミヤの海軍基地使用延長を認める協定に署名したため、彼はウクライナをロシアの衛星国するつもりであり、西側はウクライナを失ったと言う者がいるが、これは事情を正しくみていない。

協定は、2019 年までのガスの値引きと2042 年までのロシア海軍基地使用との取引であり、これは、ウクライナのエネルギー分野の腐敗や非効率は温存してしまうものの、安価なガスに頼る産業界やエネルギー関連企業の支持を受けているヤヌコビッチにとっては政治的利益があった。しかし、今回の協定は、より本質的には、ヤヌコビッチの地政学的選択というよりも、ガスの費用も払えないウクライナの経済的脆弱性の反映と言える、

実際、NATO 加盟を主張していたティモシェンコでさえ首相時代にガス問題でモスクワと妥協しようとしたし、他方、ヤヌコビッチは、モスクワ主導の関税同盟参加に抵抗し、EU との自由貿易協定を優先しており、彼はモスクワの手先ではない、

従って、NATO 加盟は暫くないだろうが、ウクライナの欧州統合志向が終わったわけではない。ヤヌコビッチが前任者よりモスクワ寄りなのは確かだが、彼は、ロシアの隣国という地政学的に不利な状況、特殊利益、そして前からある問題によって今の状況に追いこまれたと言える、と言っています。


両名が言うように、西側が既にウクライナを失ったかのような論は必ずしも正しくないでしょう。ただ現状を放置すれば、失うのは確かです。ロシアはウクライナを取り込もうと懸命で、ガスの価格引き下げの見返りにロシア黒海艦隊の駐留の25 年間延長に成功し、更に、4 月にウクライナを訪問したプーチンは、航空・造船・原子力の3 分野での協力推進について「大規模な提案」を行っています。

ヤヌコビッチはロシアとEUをバランスさせようとしていますが、EUはプーチンのロシアのように迅速な決定が出来ず、したがって、東ウクライナの企業家たちが自己利益からロシアとの取引を重視し、それにヤヌコビッチが引きずられる傾向は今後も続くでしょう。他方、ロシアは経済危機にあるウクライナに支援を申し出ており、EUも、ウクライナが独立主権国家として存続することの重要性を認めて、迅速なウクライナ支援に踏み切るべきですが、ギリシャ問題などで弱っている今、EUにそれが出来るのか疑問があります。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:52 | ロシア・東欧 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
中国過大評価への警告 [2010年05月18日(Tue)]
ファイナンシャル・タイムズ18日付で、Joseph Nye米ハーバード大教授が、「まだ中国の世紀になったわけではない」と論じて、中国に対する過大評価を戒めています。これは中国過大評価を警告するトーンの論文として、今後各方面で引用されるかもしれません。

それによると、@中国が重きをなしているのは、将来中国は大国になるとの予想の下に皆が動いているからだが、20世紀初頭にドイツがGDPと軍事力で英国を抜いた時とは違い、今の中国はまだ米国にはるかに遅れをとっている、また、Aたとえ中国のGDPが米国のそれを抜いたとしても、一人当たりGDPの格差、農村の遅れ、少子化、民主化の遅れによる社会の不満、金融市場の未整備等の問題は残り、米国と本当に対等になるわけではない、さらに、B中国が経済力をつけてくれば、政治、文化、軍事面でも力を行使したがる傾向は出てくるかもしれないが、アジアにはアジア独自の勢力均衡があり、米国のプレゼンスも多くの国から歓迎されている。それに、中国が強く出れば、アジア諸国は連携してそれに対抗するだろう、と述べ、

米中協力は必要であるが、米国が過度に自信を失ったり、中国が自分の力を過信したりすれば、それも難しくなりかねない、と言っています。



ナイは、「紛争は不可避との思い込みが、紛争を引き起こす」という、古代ギリシャの哲学者ツキジデスの言葉を引用し、米中関係がそうした状況に陥らないよう、危険因子、すなわち、中国を過大評価して米国が自信を失ったり、不必要に好戦的になる、あるいは中国が自己を過大評価して過度の自惚れとナショナリズムに陥ることを排除しようとしているわけです。

このナイの主張には賛同できます。中国を過大評価することは、日本を過小評価することにもつながっており、日本としても中国の将来性を冷静に測定しておく必要があります。

中国経済については、@毎年8%とされる中国の経済成長率は、その「達成」に昇進がかかっている官僚達があらゆる手段で「達成」したように見せかけている可能性が大きく、信憑性に疑念がある、A地方官僚が地元銀行に「融資をさせて」企業に「作らせた」製品の中には、使いものにならないものも多いと思われ、無規律に増えた銀行融資のかなりの部分は不良債権化して中国経済を脅かしている、B国内経済の大きな部分は相変わらず大型国営企業によって担われているが、こうした企業では共産党官僚が権限を持ち、経済性を軽視した経営が行われがちだ、ということが指摘できるでしょう。

つまり、現在の中国は、輸出の上がりを国内建設で膨らませて、何とか社会全体の所得水準向上を図っていますが、ソ連型社会主義経済の殻をつけたまま、そして党・政府主導のままこれからも順調に成長していけるか、疑問があります。
                
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:21 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
新段階に来た中国海軍 [2010年05月18日(Tue)]
英国国際戦略問題研究所のニューズレターが、3月と4月に中国海軍(PLAN)が宮古島周辺を抜けマリアナ諸島方面に艦隊を進めたことに注目し、これはPLANの発展がいよいよ新段階を迎えたことの証左だと言っています。

記事は、今回の艦隊行動は、@いわゆる第一列島線(アリューシャン列島、北方四島、日本列島、沖縄、台湾、フィリピン、ボルネオを結ぶ線)を超える初めての本格的展開であること、A胡錦濤時代になって、南洋艦隊は著しい近代化を遂げて海洋主権を主張する主力として扱われるようになったが、今回はその上に、東海艦隊、北洋艦隊も加わって三艦隊が統合行動をとったことが注目される、と指摘、

PLANがこうした前例のない艦隊行動に出たのは、南シナ海におけるベトナムとの緊張激化のためであり、その背後には、三艦隊の統合運用が可能になったことが示すように、PLANが進化を遂げたという事情がある、と述べています。

そして、今回の艦隊行動で、PLANが大洋を常時航行して存在を示す海軍になりつつあり、中国外交の目的に資す役割を着々と担い始めていることが示された、と言っています。



沖縄列島がかつてないほど戦略的重要性を高めている事実を、これほど挑発的に示唆する出来事はこれまでありませんでした。ただ、記事は、今回の中国海軍の行動は、南シナ海におけるベトナムとの対峙が動機だとしていますが、これが、唯一の動機ではなかったように思われます、なぜなら、南シナ海でベトナムに威力を示したいなら、問題海域に直行すればよく、宮古を抜けて遠大な遠回りをする必要はないからです。

これはむしろ、普天間のごたごたを巡って沖縄を舞台に日米同盟が弱体化しつつある今の間隙を突いて、中国が日本と米国の反応を見ようとしたのだと考えることができるでしょう。

いずれにしても、中国海軍の艦隊が、第一列島線を初めて公式に、かつ本格的に突破した、という記事の評価は妥当であるだけでなく、極めて重要です。

つまり、今回の艦隊行動には、@米国に対しては接近阻止と領域拒否能力の向上を誇示し、A日本に対しては威圧的な力を示して、洋上交通をいつでも妨害できることを教え、B台湾を囲む海域および南シナ海において、近未来の主が誰かを示そうとする中国の意図があったと思われます。
 
ワシントンがこうした中国の動きに危機感を強めているのは間違いなく、いくつものコメントが出ていますし、フィリピン海軍基地復活の話も急浮上しています。ところが、ただ一人のんきに構えているのが、最も影響を受けるはずの日本です。先ずは、沖縄の高まる戦略的重要性を今こそ誰かが明確に語る必要があるでしょう。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 14:10 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米中の海洋覇権争い [2010年05月17日(Mon)]
ウォール・ストリート・ジャーナル5月17日付で米Claremont InstituteのMark Helprinが中国軍事力の太平洋進出に警鐘を鳴らしています。 ヘルプリンは、ハーヴァード、プリンストン、オックスフォ−ドで学びながら、英国のマーチャント・ネイヴィ、イスラエルの陸軍・空軍に勤務した、異色の軍事評論家であり、その論旨は常に軍事現実的、保守的です。
 
それによると、中国は、1988年から2007年までに1人当たりGDPを10倍増したが、軍事費は購買力価格で21倍にした。ところが、米国はその間、対抗する全ての面で軍事力増強が遅れた、

その結果、今の中国は、1,500の短距離ミサイルなどで米空母機動部隊の台湾接近を妨げる能力を持つに至っている。米国がF-22の生産を中止しなければ、まだしも制空権は維持できたかもしれない。米国側の台湾防衛能力が失われれば、台湾は武力の脅威だけで中国に屈し、香港のようになってしまうだろう。そうなれば、日本、韓国、東南アジア諸国、豪州までもが、米軍基地を廃止するなど、対中宥和政策を取るようになるだろう。こうなったのは、軍事力増強を怠ってきた今までの米国の政策の結果であるが、まだこうした事態を救う時間は5年か10年はあるだろう。しかし、そのためには、奇蹟的な指導力と意思が必要だ、と論じています。


米国の論壇は、中国の脅威を21世紀の国際情勢の最大の問題の一つと考え、それに対して警鐘を乱打する人々と、中国とは協調政策でやっていけると主張する人々に二分されている感があります。そうした中で、当面の脅威はテロリズムだとする主張は、暗に、中国の脅威直視を避けるために用いられている傾向があります。

しかし、20世紀初頭のドイツの脅威に対して、英国の反応が、「当初は単に憂慮だったのが、年を追って悪夢となった」ことを見ても、今の米国でも、時間が経つにつれて、中国脅威論の方が強まると予想されます。ただ、中国のスタートのレベルが低いので、まだ10年、20年の余裕はあるかと思われましたが、ヘルプリンは5年、10年と言っており、確かに、事態の流れは予想以上に速いかもしれません。

一つ興味深いのは、ヘルプリンが、台湾防衛がアジア全体の趨勢に及ぼす影響を重視していることです。従来から、どんな形であれ、米国が民主的な台湾を見捨てることになれば、東アジア、東南アジアにおけるアメリカのクレディビリティは地に墜ちると思ってきましたが、ヘルプリンは、もっぱら軍事的観点からではありますが、同じような判断をしているようです。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 14:02 | その他 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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