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世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


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豪の新たな対中認識 [2010年04月28日(Wed)]
ウォール・ストリート・ジャーナル4月28日付で、オーストラリアのラッド首相が中国に関する認識を述べています。なおラッド首相は中国語を話す中国専門家です。

それによると、中国のパワーと影響力が増大する中、中国をより深く理解し、中国と率直に関与する必要があるが、現状では、中国の台頭は既存の世界秩序への脅威だとする見方から、ワシントン・コンセンサスは北京コンセンサスに置き換えられるべきだとする見方まで、実に様々な見解がある、

中国は全世界で自らの利益を追求するだろうが、それはむしろ当然であり、私自身は、中国はここ数十年中国のために役立ってきた国際システムには反対せず、このシステムと協働することが中国の基本的利益に合致すると考えていると思う。例えば、中国は、G-20で協力し、気候変動問題にも取り組み、アジア太平洋諸国とも深く関与している。もっとも、アフガンやイランについてはもっと国際社会の努力を助けるべきだろう、

安定したルールに基づく秩序の維持・強化の利害関係者として中国が関与してくることは、中国にとっても世界にとってもよいことだ。また、われわれの側も新しい中国学を始める時であり、さらに、反中・親中の概念を越えて、中国との友情を損なわずに中国に意見を言えるようになるべきだ。中国とは、尊敬・理解・相互の価値観の承認に基づく率直な対話が必要であり、そういう関与と理解の新しい原則は、中国にとっても、豪州と西側にとって重要だ、と言っています。


ラッド首相は就任時には親中派の首相と考えられましたが、その後の政策を見ると、必ずしもそうではなく、中国にもしっかりと対応する人です。そしてこの論説では、中国は現在の国際システムには反対しないだろう、むしろ、それと協働することが中国の利益になると思っているだろうと言っています。しかし、この点については、そういう面もあるが、そうではない面もある、つまり、中国は革命輸出外交はずっと前に止めましたが、既存の国際システムを支持するのは、自らの利益に合致する限りにおいて、ではないかと思われます。

中国が国際秩序の維持・強化の利害関係者であるかどうかは、そうあって欲しいという願望から離れて、中国の行動を客観的に評価して確かめる必要があります。中国は米国がG-2のパートナーと持ち上げても、余計な負担を負わされることを警戒して乗ってきませんでしたし、気候変動や貿易交渉では、途上国の立場を強調して、責任を回避しようとしています。また、政治面では、ベネズエラ、スーダン、ミヤンマーなどの問題国と緊密な関係を築き、軍事面では、海軍力、核戦力で軍拡をどんどん進め、海洋法の解釈でも独自の解釈を打ち出して、中国近海での米軍の活動に制約を加えようとしています。

中国の台頭が平和的なものになるか、既存の国際秩序と折り合って行くかどうかは、米、日、豪などが中国の台頭にそれなりの対抗的措置をとっていき、バランス・オブ・パワーを維持することにかかっていると思われます。また、中国が共産党独裁国家であり、自由民主主義国家とは異質な存在であることも忘れてはならないでしょう。ラッド首相は相互の価値観の承認に基づく率直な対話と言っていますが、簡単に死刑を執行する等の中国の価値観を承認するようなことは止めて、日本の価値観は時期と場所を選んで主張していくべきでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 10:48 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(1) | トラックバック(0)
中国の地政学 [2010年04月25日(Sun)]
Foreign Affairs誌5‐6月号で、国際問題評論家のRobert Kaplanが中国の地政学を論じ、その中で、中国の海洋進出に対抗するために、米国が日本やインドなどの海軍力と提携すること、また、米軍基地に対する沖縄住民の反発を考慮して、オセアニアに米国の海軍力を配備することを提案しています。

カプランは、「中国は、大陸国の資源に加えて、外洋にも面しているという、ロシアにもない利点を持つので、世界の自由を脅かす黄禍となる恐れがある」という二十世紀初頭の地政学者マッキンダーの言葉を引用、

中国は、国境を接している地域ではさほど軍事力を必要としないので、今や大海軍を建設する余裕がある。しかも中国は、かつてのヴェニスや英国のように海上の自由の保障よりも、マハン流の海上覇権を志しているらしく、潜水艦や対艦ミサイル中心の非対称的海軍力を築こうとしている、と言っています。

また、カプランは台湾の戦略的意義を重視、台湾を、中国は祖国統一、米国は民主主義擁護という道義上の問題のように扱うが、実は台湾には不沈空母としての価値がある。2009年のランド報告によれば、中国は、米国がF22 を配備し、嘉手納の基地を使えたとしても、2020年までには台湾を占領する能力を持つ。なぜなら地理的に近い中国は、米国の軍事力が周辺の海域に到達するのを拒否できるからだ、

こうした中国に対抗するには、@インド、日本、シンガポール、韓国などと米国の海空軍が協力し、米国がアジアの不可分の一部となることであり、Aグアムなどのオセアニア地域を、ユーラシア大陸との軍事均衡に用いることだ、

米国は、中国がより自由な国になるまでは、台湾の独立を守るべきであり、米国が台湾を見捨てれば、日本をはじめ関係各国は米国のコミットメントを疑うようになるだろう、

なお、今の日米摩擦は、鳩山政権の経験の浅さから来るものではあるが、米軍基地自体は、第二次大戦や朝鮮戦争の時代遅れの遺産と言える。住民の反対もあることだから、海軍力の重点はオセアニアに移すべきだ、と言っています。


この論文の一番注目すべき点は、普天間をめぐる日米摩擦問題が正面から反映され、在日・在韓米軍基地は過去の遺産に過ぎず、地域住民も反対しているのだから、グアム中心の戦略に切り替えるべきだ、中国の影響力封じ込めにはそれで万全とは言えないが、まあ良いのではないか、と主張していることです。

これは、日本や韓国にとっては重大な戦略環境の変化になりますが、この新戦略で台湾を守れると言っているところを見ても、日本、韓国、台湾を見捨てる趣旨ではありません。

懸念されるのは、米国は世論尊重の国であり、沖縄住民の過半数が米軍基地に反対しているというような事実には極端に弱く、最悪の場合には、戦略論とは無関係に、米軍が撤退する可能性があることです。フィリピン上院の米軍撤退決議を受けて、米軍が直ちにフィリピンから撤退、それが中国の南シナ海進出を容易にした前例もあります。

こうした最悪の事態を回避する当面の方策は、普天間移転に関する既存の合意を実施して、最低限の現状維持を図り、米軍の新再編計画に協力することでしょう。

さらに言えば、最近、ある政治家が言ったように、日米同盟強化のためには日本の防衛負担の増加が必要ですが、財政が逼迫している中でタダで出来るのは、集団的自衛権の容認です。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:17 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
中国の対アジア太平洋拡張主義 [2010年04月23日(Fri)]
米AEIのMichael MazzaがAEIのウェブサイト、The American 4月23日付で 中国は海軍力建設で「真珠の首飾り」戦略と呼ぶべきものを展開しつつあると指摘しています。

それによると、中国は海南島からマラッカ海峡、南シナ海、インド洋、そしてホルムズ海峡に至る間の随所で巨費を投じて港湾建設を進めている。これらを真珠の粒に見立てると、海上交通路に沿う首飾りさながらうまい具合に散らばっている、

「真珠粒」の多くは、外観は商業貿易港だが、中国が軍事的偵察拠点として活用しているところもあり、また、大型船を接岸させることができれば、中国海軍艦船が来ても不思議はない。やがて大洋海軍化するだろう中国海軍は、今から自由に寄港できる要衝を押さえにかかっている、

そうした中、3月の全人代で、北朝鮮の東岸にある羅津港の埠頭の長期使用権を、実態不詳の中国企業がリース契約で取得したことが発表されたが、これは、首飾りが遂に日本海を睨む地点にまで伸びたということだ、と警告しています。


中国が日本海に橋頭堡を持ったことで、朝鮮半島情勢は、シナとロシアの勢力が入り乱れた19世紀末から20世紀にかけてのそれにいよいよ似てきた観があります。マッザによれば、南シナ海は既に中国の影響下にあり、北京が次に確保したいのは台湾と日本の尖閣列島です。だとすれば、羅津港に拠点を確保したということは、中国は南と北の双方から、問題水域を挟撃する可能性を手中にしかねないことを意味する、つまり、「北京は望むなら、(日本などとの)係争は威圧と実力によって片付けることができるようになる」と言っているわけです。

まさしくその通りであり、中国軍事力の拡大、なかでも海軍力の増強は、中国が「対日妨害能力」を強めていくということです。放置すれば、日本の戦略空間は酸素不足のかなり息苦しいものになっていくでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:10 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
欧露MD協力の推奨 [2010年04月22日(Thu)]
モスクワ・タイムズ4月22日付で、ラスムセンNATO事務総長が、新START条約は歴史的な合意であるが、欧州とロシアにも、大量破壊兵器とミサイル技術の拡散、特にイランの核およびミサイル開発という共通の脅威がある。NATO諸国とロシアは、バンクーバーからウラジオストックまでを守るミサイル防衛を共同開発し、共同で運営すべきだ。ロシアはNATOのミサイル防衛を脅威と見なすべきではなく、NATOとの関係強化の機会と考えるべきだ、と言っています。


NATO事務総長の論説なので、物事を欧州中心に考えるのは当然ですが、若干視野の狭い議論であり、ロシアについての見方が甘すぎる嫌いがあります。例えば、NATOとロシアがミサイル防衛で協力すれば、中国の対ロ攻撃力を損なうことになり、中国はそれに対抗するでしょうから、アジアでの軍拡につながりかねませんが、それへの目配りがありません。また、バンクーバーからウラジオストックまでを網羅する安全保障を主張していますが、アジアにおける米国の同盟国である、日韓の安全保障上の問題への目配りもありません。

それに、ロシアとの協力重視を言っていますが、ロシアはグルジアに小型満州国のようなものを二つ作り、キルギスではチューリップ革命を逆転させるなど、旧ソ連圏をロシアの勢力圏として復活させることを狙っています。

そうした中で、NATOのミサイル防衛を脅威とみているロシアに対して機微な技術・情報面で協力を申し出れば、ロシアに利用されるだけに終わる危険性があります。また、ロシアがイランの核やミサイルの脅威を受けているとする前提も、検証する必要があります。

冷戦は終わりましたが、NATO事務総長は、いわゆる西側諸国の安全保障を十分に考えるべきであって、欧州、北米、ロシアの安全のみを考えてユーロ・アトランティック安全保障を提唱し、それを日本の対岸のウラジオストックまで広げるという構想には、違和感を抱かざるを得ません。
                           
なお、ロシアは2月初めに新しい軍事ドクトリンを発表、ロシアへの脅威の一つとして、ロシアへの領土要求を掲げています。実は領土要求をしているのは日本だけであり、ロシアが日本を脅威を与える存在と見ていることも忘れてはならないでしょう。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:06 | その他 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
北東アジア世論調査 [2010年04月21日(Wed)]
1月に実施されたBBC世論調査の結果が4月18日に発表され、それについて、北東アジアの専門家であるアジア財団のScott A. Snyderが米外交問題評議会の4月21日付ウェブサイトで論じています。

それによると、今回のBBC世論調査の結果の中で、北東アジア関連で特に注目されるのは、中国およびロシアで北朝鮮への否定的な見方が急速に高まっていること、そして、日韓併合100周年の年にも拘らず、日韓両国民の間に驚くほど相手国への肯定的な感情が存在していることだ、

中国人の北朝鮮に対する肯定的な見方は昨年に比べ18ポイント下がり(肯定的29%・否定的44%)、ロシア人の北朝鮮に対する否定的な見方は15ポイント上がった(肯定的25%・否定的50%)。これまで北朝鮮に対し肯定的でも否定的でもなかった中ロ両国民の見方は、急速に否定的な方向に変わり、特に中国人の北朝鮮に対する肯定的な見方は過去4年間で最低の水準だ、

また、日韓両国の北朝鮮への否定的な見方は90%に達し、米国でも70%となっている。以上のように六カ国協議参加国の国民はいずれも北朝鮮に対して否定的であり、この結果から見る限り、北朝鮮の核をめぐる挑発に対抗できる世論の基盤はあるように思える、

しかし、最も驚くべき結果は、今年が日韓併合100年目にあたり、さらに、領土問題や教科書問題があるにも拘らず、日韓両国民の間に相手への肯定的感情が存在していることだろう。韓国人の対日観は、2年前の肯定的37%・否定的52%から、肯定的64%・否定的29%へと大きく改善した。日本人の対韓認識は肯定的36%・否定的9%で、どっちつかずの面はあるが、バランスの取れた肯定的な見方と言えよう、

日韓両国民の間に草の根レベルでの肯定的な感情が存在することは、両国政府が政治面での協力関係を強化する余地が大いにあることを示唆するものであり、米国としても、主要な同盟国である両国の友好感情の発展は大いに歓迎するところだ、と言っています。

中ロ両国の国民世論が両国政府の対北政策にどのような影響を与えるかは未知数ですが、今後とも、日米韓三国が北朝鮮政策について結束して中ロ両国に協力を求めていく努力が必要でしょう。

他方、韓国の対日感情が、両国間に特別の懸案の無い場合には、これほど良好になり得るようになったことは大変喜ばしいことであり、北東アジアにおいて共通の価値観を有し、共通の脅威に直面している両国が政治面での協力を強化することは当然のことでしょう。まず手をつけるべきは北朝鮮についての緊密な意思疎通と政策協調です。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 14:53 | 東アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米の孤立主義的外交政策推奨論 [2010年04月20日(Tue)]
ネットのニュース・サイト、The Daily Caller4月20日付で、米国ケイトー研究所のDoug Bandowが、ブッシュ政権以来、拡張主義的外交路線を崩そうとしない共和党主流を批判しています。

すなわち、共和党が政権を取り返すには、ブッシュ政権以来の好戦的かつ手を広げ過ぎた対外政策を見直す必要がある。今の米国は、世界の2 つに1 つの国を守っており、そのため米国自身を守る余力がなくなっている。その結果起きたのが9.11テロだ、

欧州はユーゴの安定化を、グルジアはロシアとの戦争を、韓国は北朝鮮に対する安全保障を、日本は地域の安全保障を、イスラエルはイランの武装解除を米国に押し付けているが、欧州のGDP は米国のそれより大きく、日本は世界第二の経済大国であり、イスラエルは核弾頭200 は保有する地域大国だ、

かくて米軍は世界に伸びきり、米国自身は危なく貧しくなった。これが「世界の警察官」であろうとすることの代償だ。そればかりか、ブッシュは国民を逮捕し無期限に拘留する権限を主張して、国内の自由を窒息させた、

他方、米国に守られた国々は経済に主力を注ぎ、けっこうな福祉国家を作っている。彼らは米軍は喜んで受け入れるが、米国の商品は締め出している。こうしたことを言うと、共和党主流からは「孤立主義者」だとか、「宥和政策」だ、とか非難されるが、いつの世にも、戦争は最後の手段だ。冷戦の時もわれわれは「抑止」によって平和を維持したのだ、と言っています。


この論説は、「自由擁護、小さな政府、軍事より外交」を求める声が米保守派の中にも一貫してあることを示しています。

もっとも、オバマ政権はイラク、アフガニスタンでの戦闘を続けており、当面、米国が軍事プレゼンスの縮小に向かうことはないでしょうが、両国からの撤兵が完了した後はわかりません。ソ連崩壊後、東からの脅威がほぼなくなった欧州では、米軍の戦術核を撤去する議論が始まっています。

ただ、「世界からの米国の撤退」は戦後何回も言われながら、結局大きな変化はありませんでした。金融危機後の現在はそうした議論が出がちですが、危機が去ったあとはまた別の状況が生まれるでしょう。

つまり、第2次大戦の結果、米国には世界最大の軍需産業が生まれ、それが隠然たる力を持っていますが、中国海軍に対処する必要が出てきたことは、彼らへの新たな需要を意味します。また、米国内では、ユダヤ勢力によるイスラエル支持の訴えや、ポーランド系勢力のロシアへの警戒の呼び掛けが今も根強く存在します。それに、イラク、アフガニスタン戦争が終息すれば、米政府の財政も急速に回復するでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:27 | ロシア・東欧 | この記事のURL | コメント(1) | トラックバック(0)
米国海上覇権の喪失 [2010年04月19日(Mon)]
Foreign Policy Research Instituteの機関紙、Orbis 2010年冬期号で、元米統合参謀本部戦略部長顧問で現海軍大学教授のJames Kraska が、2015年に米国が海上覇権を失うシナリオを提示しています。

すなわち、冷戦後、米国はテロ対策等に集中して海軍力を衰退させたのに対し、中国の軍拡はディーゼル潜水艦や対艦ミサイル等の増強に特化している、

そうしたことを背景に、2015年に、東アジアに米空母機動部隊が一個しか配備されていない状況下で、中国沿岸を航行中のジョージ・ワシントン号に中国の中距離弾道弾が命中、弾薬庫が爆発して、船が沈んだ。米国が事態を把握しようとする間に、中国は早くも救助活動に乗り出し、中国のTVは感謝する被救助者や、米国から駆け付けた親族の感動的なシーンを放映。また中国は自らの攻撃を否定、漁業地域における核汚染の問題を安保理事会に提起した。米国は急きょ艦隊を派遣したが、すでに中国海軍によって事態は収集された後だった。また、高度の性能を持つ日本の海上自衛隊は憲法に制約されて役に立たなかった。米国は中国の仕業だと主張したが、国際社会で影響力を持たず、結果として、アジアにおける米国の覇権は失われた、

海上覇権は一瞬にして変わる。陸軍は失敗しても良い(現にベトナムでは失敗した)が、海軍は失敗を許されない。この事件は、対テロなどに忙殺されて、歴史の教訓を忘れ、大国間の力の抗争を忘れた米国やNATOに対する警鐘だ、と言っています。


このシナリオで起きた事件は、レパント海戦、無敵艦隊撃滅、トラファルガーに較べるほどのものではなく、米国の九個の空母機動部隊は健在なので、むしろ、真珠湾攻撃に較べるべきケースかもしれません。また、いくら中国がシラを切っても、国際社会がそれを受け入れるということは、いかに米国の権威が衰退したからといって、非現実的と思われます。

ただ、言わんとするところは良くわかります。9.11以来、米国の国防体制は「新しい戦争」に備えるのに急で、伝統的国防体制、特に全世界的な海軍力を閑却してきました。ソ連の崩壊後しばらくはそれで良いとして、中国の勃興を前に、そのままで良いのか、危機感を持つ人々が増えてきても不思議ではありません。いずれ伝統的なバランス・オブ・パワーの問題に正面から取り組むべき時が来ざるを得ないでしょう。

なお、この米国の反応の遅さの背後には、中国の軍備拡張は目覚ましいものであっても、スタート時の米中較差が大きいため、まだ10年単位の余裕を持って見ることができるということと、軍事バランスの変化が先ず影響するのは東シナ海であって、米国本土ではないという事情があると思われます。その意味では、日本こそ、中国の脅威の増大に真っ先に警鐘を鳴らすべき立場にあると言えます。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:46 | 米国 | この記事のURL | コメント(2) | トラックバック(0)
ロシア=NATO関係の現状と展望 [2010年04月16日(Fri)]
モスクワ・タイムズ(西側資本の英字紙)4月16日付で、カーネギー財団モスクワ所長、Dmitry Treninがロシア=NATO関係の現状を分析し、将来を展望しています。なお、トレーニンはソ連国防省の出身で、米国での研修を経て欧米的価値観への同調を強め、ソ連崩壊後はカーネギー財団に所属。是々非々の立場からロシア外交を論じ、米ロ関係改善に向けても提言を行っている人物です。

それによると、冷戦終結直後はロシアのNATO加盟が取りざたされたが、今のロシアにはその気はない。ロシアは少なくとも地域大国化を望んでおり、また、冷戦後のロシア外交の最大の成果と言える中国との良好な関係をNATO加盟で台無しにしたくないからだ、

他方、NATOの側も、加盟国が勝手に国益を追求して団結を欠く中でロシアが加盟すれば、完全に機能不全に陥るだろう(NATOはコンセンサス決定方式をとっているので、加盟すればロシアがveto権を有することになる)、

従ってロシアとNATOが今できることは、相互の疑念を少しづつなくし、両者の域内から戦争の可能性を排除することだ。両者を網羅する安全保障上の取り決めを作ることは今世紀最重要の課題だろう、

それには、米国はロシアとの関係をさらに前向きに進め、ロシアはポーランドやバルト諸国等との相互理解を促進するべきだ。また米ロは、地域レベルのMD開発で協力を進めるべきだ、と言っています。

ソ連崩壊で「敵」を失ったNATOは、新たな目標を「グローバル化」に求めようとしましたが、これはアフガニスタン問題のために行き詰っています。他方、欧州で米軍のプレゼンスが続いていることは、遠心力が働きがちな欧州諸国を一つにまとめる効用があることは忘れてはならないでしょう。

また、トレーニンも指摘しているように、ロシアはNATOとの関係を考える上で、対中関係とのバランスを考えていますが、このことは、中国がユーラシア大陸で大きな政治パワーとして定着したことを意味します。つまり、ユーラシアでは、NATO(米欧)、ロシア、中国が3大勢力として合従連衡の国際政治を始めているということであり、日本もユーラシアにおける存在感を維持するには、NATOとの政治的関係を深化することが必要でしょう。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:29 | その他 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
日本の核政策批判 [2010年04月14日(Wed)]
ニューヨーク・タイムズ4月14日付で米外交問題評議会の日本研究員、Sheila A. Smithが日本の核政策を批判しています。

それによると、テロリストが核を入手する危険が今回の今回の核サミットの実現につながったが、日本はサミットで影が薄かった。これは普天間問題など日米関係が困難な状況にあることも背景にあるが、もう一つは、米の核が日本の防衛に果たすべき役割について、日本国内で深い亀裂があることが影響している、

日本は模範を示すことで指導力を発揮しようと、1970年代にはNPTを批准することで非核の道を進もうとした。しかし、核を持たないという決定は、それ自体では他国に核の使用を放棄するように説得する十分な外交的ツールにはならない。日本はその相反する核に関する感情を国内にとどめ、核使用防止への深い信念を政策に仕立て上げ、集団的防止行動の触媒になるように努力すべきだ、と言っています。

日本が核サミットで反核の姿勢を世界にアピールすることを期待していたスミスが、サミットでの鳩山総理の言動に失望し、日本は反核姿勢をもっと具体的な政策にすべきだと言っているわけです。

しかし、日本にとっては、北朝鮮・ロシア・中国の核が脅威であって、核テロの脅威はほとんどありません。また、世界的に見ても、テロリストが核を入手する可能性は、パキスタンがイスラム過激派に乗っ取られるか、イスラム過激派がパキスタンの核を奪取する以外にほとんどなく、パキスタンでそうした事態が起きる可能性は低いものです。

従って、テロリストが核物質を入手しないように核物質防護をすることは重要ですが、それについては既に条約その他の措置があり、核テロを差し迫った脅威だとする前提自体、問題があるでしょう。それに、こうした蓋然性の低いテロリストによる核使用について大騒ぎするのは、真の問題から人々の注意をそらすことにさえなりかねません。核保有国が核軍縮にもっと真剣に取り組む、あるいは、イランや北朝鮮の核にもっと真剣に取り組むことの方が重要ですし、中国が米ロ間で全廃された中距離核戦力を増強していることの方が問題としては重大です。

つまり、ソ連のSS-20の配備で、西ドイツのシュミット首相が心配したディカプリング(欧州と米の安全保障面での分離が起こること)が日本に関して生じつつある方が、日本にとってはより大きな問題でしょう。反核感情に流された日本の核政策を反省し冷静に考えることが日本の急務です。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:42 | 日本 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
北朝鮮の経済危機と政情 [2010年04月13日(Tue)]
ウォール・ストリート・ジャーナル4月13日付でピーターセン国際経済研究所副所長のMarcus Nolandが、北朝鮮は昨年11月以降の貨幣改革等の失策によって深刻な経済危機に直面しており、この危機は、将来の歴史家から北朝鮮の転換点と見られるようになるかもしれない、と論じています。

すなわち、北朝鮮当局の狙いは、市場を破壊し国家管理を回復させることにあったが、散発的とはいえ極めて強い抗議を受けたために、政策の撤回と謝罪を余儀なくされてしまった。しかし、一旦破壊された経済を立て直すことは容易ではない、

しかも、今回の失策は北朝鮮当局が自ら招いたことが明らかであり、人民の苦難を全て外国敵対勢力の所為にする言い訳はもはや通用しない。もっとも、体制への不満がいかに広まっても、通常の市民社会の制度がない北朝鮮では、民衆の不満が組織化されたり、建設的な政治行動に繋がることはない、

そこで、伝統的な共産主義復活の試みが成功する保証は無いものの、外国からの援助で物資が行き渡り、主要な支持勢力を満足させることができれば、状況は少し楽になる。金正日が訪中して、6カ国協議について譲歩するとすれば、その理由は、経済危機の存在と中国や米国からの援助への期待だろう。

このように、北朝鮮は援助や圧制によって時代錯誤の共産主義をしばらくは続けることは出来るかもしれないが、次の指導者は維持不可能な状況を引き継ぐことになろう、と言っています。

昨年11月の貨幣改革は金王朝の基本的な経済政策を忠実に体現するものであり、権力継承を控えて、国家の管理下に無い勢力を排除することが目的だった見られます。しかしそれによって、細々ながらも育ちつつあった市場経済の芽は摘まれてしまい、民衆の体制に対する不信感は相当に深まったはずです。また、将来の経済政策の方向性も益々不透明となりました。ノーランドが指摘する通り、次の指導者は継続不可能な状況を引き継ぐこととなるので、北朝鮮がソフトランディングできる見通しは益々立てにくくなったと言えます。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:59 | 東アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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