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世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


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米国のASEAN政策  [2010年02月26日(Fri)]
US-ASEAN Business Councilの創立者で、10年間その議長を務め、現在はCSISの東南アジア研究計画部長であるErnest Bowerが、米国にとってのASEANの重要性を説いています。

それによると、ベトナム戦争以来、米国の東南アジア政策はその場その場だけの対応で来たが、オバマ大統領は、自らを初めての「太平洋・米大統領」と呼び、ASEAN10カ国との首脳会談を始めている、

米国のASEANにおける投資は、中国における投資の3倍以上、インドにおけるそれの10倍にあたる$153 billionであり、これに石油・ガス関連投資が加われば、額はほぼ倍になる。ASEANにとって米国は最大の市場であり、米国にとってASEANは、NAFTA、EU、日本に次ぐ4番目の市場だ。また、ASEANは、中・豪・日が出す種々の競合する提案の中心にあり、ASEAN抜きのアジアの地域機構は考えられない、と述べ、

米国は、ベトナム戦争以来の混迷した政策から脱し、ASEANの客観的政治経済状況に基づく明確な戦略の上に立ってアジア政策を構築しなければ、太平洋国家として地位を損なうことになる。特に、ASEAN政策は、中国とインドの興隆を意識したものでなければならない。植民地時代以来の南アジアと東南アジアの区別はもはや意味がない。インドを入れることは、対中バランスとしてだけでも意味がある、と言っています。

この論説は特に新しいことを言っているわけではありませんが、最近、ASEANに長年関わってきた人たちが相次いで論壇に登場していることは、米政府の関心が久々にASEANに向かいつつあることを示しています。

実はASEAN自体、米国のベトナム介入の産物です。それまでの東南アジアは、共産系ゲリラが猖獗を極め、同地域の指導者たちは、自分たちの国もいずれ中国、カンボジア、インドネシアの親共枢軸のヘゲモニーの下に共産化する運命にあると諦め、反共を口にすることもできませんでした。しかし、1965年の米国のベトナム介入とインドネシアの9.30共産党クーデターの失敗で、東南アジアは元気を取り戻し、1967年の50万米兵のベトナム投入による安全保障環境とベトナム特需を背景に結成されたのがASEANであり、それが現在に至る東南アジアの安定と繁栄の出発点となりました。

当時、米国で花盛りだった東南アジア研究はすっかり衰えて久しくなりますが、その東南アジアが、ほぼ40年ぶりに再び米国の関心の的の一つとして浮上してきたわけです。

その背景には、@ASEAN結成以来の東南アジア諸国の経済的発展、A中国の興隆とそのヘゲモニーが再び東南アジアに及ぶ恐れが出てきたこと、Bインドネシアにおける比較的民主的で安定したユドヨノ政権の成立、C米国と西欧の力の長期的衰退があります。

他方、過去半世紀の東南アジアに対する日本の善意、技術、資本の投下は並々ならぬものがあり、ASEANは本来日本の金城湯池と言ってもよい地域です。ここで、もう一度日本は米国と協力してASEAN政策を立て直す時期だと言えるでしょう。そのためにも、前に指摘したように、アジアから米国を除外する政策は軌道修正する必要があるでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:54 | 東南アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
中国企業が作り出す異質の競争環境 [2010年02月24日(Wed)]
ウォール・ストリート・ジャーナル2月24日付で、香港Enright, Scott & Associates取締役のMichael J. Enright、香港Exceptional Resources Group社長のW. John Hoffmann、対中戦略アドバイザーのPeter Woodが、中国はもはや単にモノを売る、生産する、またはアウトソースする場であるにとどまらず、世界の国々に直接投資を行い、先進国企業に新たな異質の、かつ激しい競争を強いる国として立ち現れてきた、と論じて、経済人に対して中国像の転換を迫っています。

すなわち、中国企業は、資本コストが著しく安い上に労務コストも安く、株主に対する責任も弱い。つまり、先進国企業に比べてはるかに有利な立場を享受しつつ対外直接投資を行える。しかも、国家を後ろ盾にし、その力を動員することができ、これは、資源狙いで開発途上国に進出する際に非常に有利に働く。さらに、中国がアンゴラやコンゴ民主共和国など、抑圧体制をとる国々に提供する巨額の政府金融などは、実際は中国企業の進出を助ける役割を果たしながら、統計にはカウントされないものもある、

その上、中国企業の経営者には必ず中国共産党の息がかかった人間がなる。そうした企業が国外に進出すれば、営利とは別の、国益を尺度として動くことになる。その結果、中国企業は、これまで先進国企業がなじんできたのとはまるで異質の競争環境を作り出しつつある、と警告しています。

政府・党・金融・企業が一体の行動をとる中国企業が異質の競争条件をもたらしつつあることに、欧米メディアはもっと早くから関心を向けるべきだったと言えます。とりわけ海外で巨額の投融資を行う中国企業は、いったいどこからその原資を調達したのかといった内情について、ファイナンシャル・タイムズもウォール・ストリート・ジャーナルもこれまであまりに無頓着でした。遅まきながらこの面に関心が向き始めたのだとすると、歓迎すべき傾向ですが、公有の土地資本を用いることで、中国企業はどのようなコスト優位に立っているかなど、メスを振るうべき側面はまだ山ほどあります。勿論これは日本のメディアの課題でもあります。

中国企業が対外プレゼンスを増すにつれ、今後はOECDが中国をどう扱うかが課題になってくるでしょう。しかし、OECDに加盟させれば、中国はその自国利益、中国企業利益中心主義の行動を少しは是正し、都合次第で大国と途上国の立場を使い分けることも控えるようになるかもしれませんが、他方、OECDに加盟し、市場経済としてお墨付きを得た中国に対し、欧州各国は安んじて武器を売ろうとするでしょうし、中国に対して武器禁輸等の措置をとることも難しくなると思われます。

せめてもの対中圧力として考えられるのは、中国企業の対外進出を細大漏らさずモニターして行くことでしょう。既に米ヘリテージ研究所は、中国の誰がいつどこで何を買ったかを追跡調査(China Global Investment Tracker)しており、例えば2009年12月に中国は米国で2件、イラク、インド、メキシコ、オーストラリア、カナダ、チリで各1件の対外直接投資を行い、チリ鉄鉱石鉱山への投資は19億ドルだったことを明らかにしています。




Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:54 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(1) | トラックバック(0)
東南アジアに対する中国の影響力 [2010年02月24日(Wed)]
米ヘリテージ財団のウェブサイト2月24日付で、Walter Lohman同財団アジア研究センター所長が、米国のASEAN政策は中国に遅れをとっているとして、種々の提案をしています。なお、Lohmanはヘリテージに来る前にU.S.-ASEAN Business Councilの副会長を4年務めており、ASEANとの経済問題に精通した人物と思われます。

すなわち、中国のASEAN進出は1997年の経済危機の際に人民元を切り下げずにASEANの復興に協力したことから始まり、その後、2002年の経済枠組み合意をはじめ、種々の取り決めを結び、2003年以降、ASEAN=中国貿易は平均年率で26%成長してきた。サービスや投資の自由化は遅れているが、貿易の自由化だけでもその効果は絶大だ、

中国が米国をリードしているのは、一つには中国がASEAN 流を受け入れ、忍耐することを知っているからだ。対中FTAなどは、10年もただ話をするだけで来ている。しかし、米国には見えないところで、中国とASEANの経済統合は15年間も進捗している、と述べ、

米国は、@ASEANの主要関心事は貿易だということを認識する、Aすぐに出来ないことでも長期的ヴィジョンを持ち、中国がしているように、まず理念、ついで、交渉、そして実施というプロセスで進む。理念はすぐ実現しなくても、触媒となれば良い、B杓子定規でなく柔軟になる、C既に出来上がっている経済秩序には抵抗せず、それに乗ることを考える、D米=ASEAN首脳会談を年次行事にして、米国とASEAN関係を深める、等をすべきだと提案、

中国はASEAN諸国にその影響力を効果的に伸ばしている。ASEAN諸国にとって当面の関心は安全保障ではなく、経済であり、米国が供与する安全保障だけでは、経済的利益の代わりにはならない。貿易という具体的な利益を提供することが必要だ、と結んでいます。

ホノルルにおけるヒラリー・クリントンの演説から察すると、米ASEAN首脳会談を定期化しようとする意向は、米政府内では固まっている感があります。日本がこの動きから疎外されないためには、東アジア共同体に米国を入れないという趣旨の日本政府の発言は何らかの形で軌道修正しておくことも考えるべきでしょう。中国が東アジア共同体に米国歓迎の意向を表明していることを考えるとなおさらです。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:16 | 東南アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
韓国の興隆 [2010年02月24日(Wed)]

ファイナンシャル・タイムズ2月24日付でコラムニストのDavid Pillingが、冬季オリンピックにおける金研児の活躍から書き起こして、韓国の興隆ぶりを指摘しています。

すなわち、韓国は今や人口では二十倍のインドと同規模の経済を有し、輸出額では英国を越えている。購買力平価でも、一人当たりの所得は、日本よりわずかに低い$28,000に達している。金融危機も乗り切ったし、UAEでは、米、仏、日に対抗して原子炉の契約を勝ち取った。自動車産業は現在既に世界最高の成長率を誇っているが、トヨタの問題はそれを加速させるだけだろう、

また、外交的にも、日米摩擦があり、米中関係が悪化している中で、韓国はワシントンにとって新たな最良の友となっている。韓国にも少子高齢化などの問題はあるが、それは日本の場合と同じく、成功の結果とも言える。韓国はもはや「負け犬」ではない、と言っています。

たしかに、盧武鉉政権が去り、日米関係、米中関係がそれぞれギクシャクしている中で、韓国が米国にとって最も信頼すべき同盟国として浮上して来たという感は否めません。またその背後には、韓国の高度経済成長と、最近の金融危機の乗り切った実績があります。購買力平価で、一人当たりの所得が日本と遜色ないところまで来ていることは、日本ではあまり知られていません。

振り返ってみれば、岸、池田内閣から中曽根内閣に至る歴代の日本の保守政権は、左翼の反対を排して、浦項製鉄をはじめとして韓国の近代化に協力して来ました。現在の韓国の人々が過去の日本の協力のことをどう覚えているかはわかりませんが、その成果には満足すべきものがあったと思ってよいでしょう。そしてそのことが、表には出ていなくても、現在の良好な日韓関係に反映されているのではないかとも思われます。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:40 | 東アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
オバマの核軍縮政策批判 [2010年02月24日(Wed)]
ワシントン・タイムズ2月24日付でタカ派のJohn R. Bolton元国務次官が、オバマ政権の核軍縮政策、特にロシアとのSTART後継条約交渉への姿勢を批判し、上院は新条約が米国の安全保障上の利益を高めているかどうかを判断基準とすべきだ、と論じています。

すなわち、米ロは核弾頭数については現在の2200から1500-1675に削減することで合意したが、米国がNATO諸国や太平洋の同盟国に核の傘を提供し、かつテロリストやイラン、北朝鮮などの「ならず者国家」とも対峙しているのに対し、ロシアには守るべき同盟国がない。従って、核弾頭数の制限は、ロシアよりも米国を弱体化させ、同盟国を不安にさせることになろう、

また米国は、通常兵器の運搬手段の数ではロシアをはるかに凌駕しており、その削減は、米国やその同盟国を犠牲にしてロシアに利益を与えることになる。しかも報道によれば、ロシアは米国のミサイル防衛にも制約を課そうとしているのに、オバマ政権はそれをはっきり拒否はしてはいない。ミサイル防衛で譲歩するのは重大な誤りであり、それだけでも上院が新条約を否決する理由になる、と述べ、

上院は、条約を支持するかどうかの基準を、米国の安全保障を高めるかどうかに置かなければならない、と言っています。

米ロは、戦略核弾頭数の1500-1675への削減には合意したものの、運搬手段の数や、そこに通常兵器搭載長距離ミサイルを含むのか、また、検証規定をどうするかでもめており、START後継条約の交渉はまだ決着がついていません。

実は、ロシアのICBM、SLBM、戦略爆撃機はみな老朽化し、多くは廃棄せざるを得なくなっている上に、新型SLBMの実験も失敗したため、ロシアとしては米国の運搬手段を出来るだけ削減したい状況にあります。従って、交渉の詳細はわからないものの、米国は経済的にも技術的にも優位にあって強気で交渉できる立場にあると思われます。ところが、オバマ政権がそうした優位性を十分活用しているかは疑問であり、むしろ、ロシアの方が、ミサイル防衛問題もこの交渉に加えることを主張するなど、強気の姿勢を示しています。

しかし、この交渉はたとえ失敗したとしても、ロシアはその経済事情から言って、核戦力増強で対抗してくることは出来ないと思われます。従って、核兵器削減で合意できるに越したことはありませんが、米国は、もっと幅広く同盟国の利益も考え、中国の核戦力増強も視野において、ロシアに対して譲歩し過ぎないようにすべきだと思われます。







Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 13:40 | 米国 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
イラク駐留継続論 [2010年02月24日(Wed)]
ニューヨーク・タイムズ2月24日付で、軍事ジャーナリストのThomas E. Ricksが、自分は元々イラク戦争には反対だったが、イラク介入が間違いだったからといって、誤った撤退をして良いわけではない、ある程度の規模の米軍の駐留は継続させるべきだ、と主張しています。

すなわち、米軍の撤退は比較的安定した地域から始められるが、いずれは不安定な地域からも撤退することになる。従って、夏の終わり頃には、本当に撤兵して良いかどうかが問題になり、おそらく、あと数年は3万〜5万程度の兵力の駐留が必要だと考えられるようになるだろう。米軍は特に好かれてはいないが、公正な調停者として信頼はされているので、イラクの分裂を回避するのには役に立つだろう。米軍の残留は内戦の勃発を先延ばしするだけだ、という主張もあるが、ともかく試してみる価値はある、と論じています。

イラクから米軍を引き揚げさえすれば良い、というオバマの政策が、ここに来て、今後イラクをどうするかという戦略的問題に直面せざるを得なくなって来ています。何と言っても、イラクはチグリス、ユーフラテスの合流点に位置する中東の中心であり、無尽蔵の資源の宝庫です。そのイラクについての米国の戦略が、ただ撤退するだけというわけにはいかないでしょう。米大統領選選挙以来のオバマ民主党の立場や、イラク議会内の反米・ナショナリズムの経緯から見て、米軍撤兵の方針を覆すのは、政治的に容易ではないのは確かですが、この論説も指摘しているように、今後撤兵が進み、どう考えても撤兵が現実的とは思えない地域にまで拡がるにつれて、米国とイラクの双方の国内で、撤兵方針を修正する議論が起きてくる可能性は小さくないと思われます。

また、それは望ましいことだと思われます。欧州ではドイツ、アジアでは日本がそうであるように、中東のイラクが安定した米軍の駐留地域となることは、米国の世界戦略、特に中東戦略にとって理想的な形と言えます。またそれこそネオコンが希求したものです。そこまで行かなくても、それに近い形になれば、それは米国の中東戦略にも、中東の安定にも資するでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 11:23 | イラク | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
イスラエルに求められる民主的正統性 [2010年02月23日(Tue)]
ファイナンシャル・タイムズ2月23日付で、ロンドン大学東洋アフリカ研究学院のHenry Siegman客員教授が、2国家解決を不可能にすることで、イスラエルはパレスチナ人を差別するアパルトヘイト体制になってしまう、と批判しています。

それによると、オスロ合意後、イスラエルは入植地を作って2国家解決を難しくしてきたが、その上に、イスラエルに入植地撤退を迫ると期待されたオバマ政権が、ネタニヤフの抵抗を受けて後退してしまったために、2国家解決の見通しは無くなりつつある、

2国家解決の消滅は、イスラエルを民主国家からアパルトヘイト国家に変貌させよう。イスラエルはユダヤ人には民主主義を提供するが、それ以外の者については、人権を否定し、検問・鉄条網・分離壁で閉じ込めている。こうした状況の中で、パレスチナ人の絶望は怒りに変わり、イスラエルの正統性は世界的に疑問視されるようになり、これまで非現実的とされた方策を再検討する動きが起きている、

すなわち、パレスチナ人を無権利状態におくことに怒った国際社会は、国連総会で1967年ラインを国境とするパレスチナ国家宣言を受け入れるかもしれない。国連の承認を拒否することはイスラエルの正統性を脅かすので、あるいはこれが、イスラエルに対して2国家解決の受け入れを促す唯一の方策かもしれない、と言っています。

ジーグマンはユダヤ人であり、一貫して中東和平の推進、2国家解決、そしてユダヤ人の民主主義国家としてのイスラエルを支持してきた人物です。カーター元大統領が「平和かアパルトヘイトか」と言う本を書いて、ユダヤ・ロビーから袋だたきにあいましたが、ジーグマンもそれなりの覚悟をもってこの論説を書いたと思われます。

2国家解決をしない以上、イスラエルには、アパルトヘイト国家となるか、ユダヤ人の民主主義国家としてのイスラエルの消滅しか選択肢はありません。現在、西岸やガザではパレスチナ人の方がユダヤ人より数が多く、その差は両者の出生率の差によって開くばかりです。民主主義の原則である一人一票制であれば、この地域の政権はパレスチナ人のものになりますが、それを拒否すれば、パレスチナ人を無権利状態に置くアパルトヘイトしかなく、その意味でジーグマンの論は筋が通っています。米国が入植地問題でネタニヤフに押し返される中で、国連総会が1967年のラインを国境とするパレスチナ国家の承認を決議することは一つの選択と言えるでしょう。

なお、今のイスラエル政府の政策は批判せざるをえませんが、ユダヤ人にはこのジーグマンのように正義について鋭い感覚を持ち、それを頑固に主張する人もいます。それがユダヤ人の良さでしょう。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:40 | 中東 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
対中テクノロジー規制 [2010年02月22日(Mon)]
ファイナンシャル・タイムズ2月22日付社説が、中国の情報関連技術政策について警鐘を鳴らしています。

それによると、中国は過去10年間、拡大する自国の経済力を背景に、外国の情報セキュリティソフトメーカーに対し、保証義務や技術水準等の国内要件を通して、事実上、技術情報を中国政府と共有することを強いてきたが、中国市場にアクセスしたい外国企業はこれに従うしかない。こうした中国の戦略は、中国ソフトメーカーの国際競争力を高めるという商業的目的に役立つだけでなく、外国から入手した暗号技術などを使って自国の安全保障上の能力を高める上でも効果的だ。また、外国が中国の基準に従った中国製品を安易に輸入すれば、その製品を使ってサイバー攻撃などを行う能力を中国に与えることにもなりかねない、と述べ、

かつて主要国は、安全保障のために外国への技術輸出をコントロールしようとしたものだが、今や安全保障のために、外国からの技術輸入を規制する必要が出てきている。米国およびEUは、まず第一段階として、外国による情報コントロールというリスクをもたらす技術の輸入規制を検討すべきだ、と言っています。
 
中国が様々な手段で外国から情報セキュリティ関連技術情報を入手しようとしていること自体は、広く知られています。また、中国製ソフトなどを輸入することにより、中国が同ソフトをインストールしたコンピューターを勝手に遠隔操作し、輸入国内でサイバー攻撃などに利用する可能性があることも、コンピューター専門家の間では周知の事実でした。

この論評の目新しいところは、こうした中国政府の意図をはっきりと指摘して、中国製情報ソフトなどのテクノロジーの輸入自体を規制する必要性に言及した点です。最近中国政府が進めている情報戦略の巧妙さを考えると、こうした政策提言は極めて時宜を得たものと言えるでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:10 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
イランの核武装は不可避 [2010年02月21日(Sun)]
イランの核兵器開発が時間の問題となって来た中で、ワシントン・ポスト2月21日付で米外交問題評議会のJames M. LindsayとRay Takeyh が、またNewsweek2月19日付で同誌国際版編集長のFareed Zakariaが、イランの核武装は不可避との前提の下にそれぞれイラン対策を論じています。

リンゼイとタケイは、今やイランは急進派の革命防衛隊の支配下にあり、いったん核武装をすれば、イランが中東における影響力拡大のために核を使うことは必至だ。従って、米国はそれに対して断固たる対応措置を取る、すなわち、近隣諸国への通常兵力による攻撃や核の拡散、そして破壊活動への支援強化に対しては、実力行使で応じることを明らかにすべきだ、と論じています。

タケイはもともと対イラン核政策では穏健派であり、核施設先制攻撃には反対して来ましたが、その論理の延長線上に、核武装した後のイランに対する封じ込め政策を主張しているわけです。

他方、ザカリアは、米国がイランを武力行使で脅せば、イランの全国民が反米となり、中東での米国の評判も落ちて米国は孤立化することになるだろう。米国はこれまでもソ連(ロシア)や中国の核とも共存してきたではないか。合理的な考え方をしない、不可解な宗教指導者が率いるイランは、核兵器によって抑止できないと言われるが、今のイランは革命防衛隊が実権を握っており、こうした軍事政権というものは、損得勘定ができるものだ。むしろ、米国は、実力はまだ不明だが、イラン国内の反対派を支援していくべきだ、と論じています。

この二つの論説は、イランの核施設を先制攻撃する可能性を否定した上で論を進めています。今でもジョン・ボルトンなどは一貫して軍事攻撃を主張していますが、イスラエルも米国の説得に応じて武力攻撃を諦めたという元米政府関係者の話もあり、核施設先制攻撃の放棄はワシントンではコンセンサスとなっているようです。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:00 | イラン | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
イラク戦争の評価 [2010年02月17日(Wed)]
先日、バイデン副大統領がCNN で、この夏の終わりには九万人の米軍が引き揚げ、イラクでは安定した政府が民主化に向かって進むことになるが、それはオバマ政権の大きな成果だ、と発言したことについて、ウォール・ストリート・ジャーナル2月17日付で、イラクの評論家Omar Fadhil Al-Nidawil と米軍事専門家Austin Bay が、それはブッシュが敷いた路線の成功であって、オバマの勝利ではない、と論じています。

細かい議論は紹介するまでもなく、この二人が言っているのは、こうした成功の元であるイラク増派作戦の時に、皆は反対したではないか、特にバイデンなどは、イラクは三つに分裂すると言っていたではないか、ということです。

イラク問題についてつくづく感じることは、米国の世論、マスコミ、議会の議論のたのみ難さ、つまりその変動の激しさと党派性であり、今更ながら、「救い難い」という感を禁じ得ません。

イラク戦争が米国の国益にとって、あるいはもっと広く、自由民主主義の価値観を持つ世界にとって、プラスだったか、マイナスだったか、と言う設問に対する答えは、せいぜい五分五分というものでしょう。チグリス=ユーフラテスの合流点に位置し、中近東の中心である上に、無尽蔵の資源を持つメソポタミアに、反米を標榜し、周辺に脅威を及ぼすサダム・フセイン政権が存続した方が良かったのか、現在の方が良かったのかという設問ならば、プラスであるという答えは否定できないでしょうが、その結果生まれたシーア派政権が、イランに組して中東に新たな変動を引き起こせば、話は変わってきます。さらに、イラクが三つに分裂する可能性は、バイデンがその見通しを放棄しようがしまいが、今も厳然と存在しています。そしてそこまで行くと、評価は後世史家の判断に待つほかはありません。

マイナス面は、イラク戦争の結果は、あれほどの米国の国費と人命に値したかいうことです。特に、米国内の激しい分裂を招いたことについては、分裂における双方の立場の是非はともかく、国論を分裂させたこと自体を悪と考えれば、マイナスということになります。もっとも、国論分裂すなわち悪と考えると、新しいものは何も生まれて来ないことになってしまいます(自民党の中の改憲論批判の多くは、国論の分裂を招くということでした)。

問題はその振動幅が大き過ぎると、無辜の被害者が出ることでしょう。Omar Fadhil Al-Nidawi という人物の背景は分かりませんが、おそらくは、米国の庇護の下におけるイラクの自由民主化を信じ、それに希望を抱いた人ではないかと思われます。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:04 | イラク | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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