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世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


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対イラン経済制裁が成功しない理由 [2009年12月30日(Wed)]
ウォール・ストリート・ジャーナル12月30日付で、テヘラン生まれのイラン系米国人女性で、国務次官補を務めたGoli Ameriが、欧州の対イラン政策を厳しく批判しています。

すなわち、オバマ政権は、目下、中ロを念頭に新たな対イラン経済制裁を検討しているが、米国が真に働きかけるべき相手は欧州だ。イランの最大の貿易相手は欧州であり、そのイラン経済はイラン革命防衛隊が牛耳っている。欧州企業は、「イラン企業と取引をしているだけで、イラン政府は支援していない」と嘯いて、イランとの経済関係を犠牲にしないよう、「今は話し合いをすべきだ」と主張している、と指摘して、

オバマ大統領は、革命防衛隊を利する貿易を今も続ける欧州諸国に対して圧力を強めるべきだ。エネルギーが必要な欧州はイランとの関係を切れないと言われるが、制裁発動によって原油の供給が減る分は、既にイランに立ち向かい始めているサウジが埋めることができる。革命防衛隊は自らの生き残りのために核兵器を必要としており、欧州は今こそ行動を起こして、彼らの資金源を断ち切るべきだ、と言っています。

「対イラン制裁の成否のカギは欧州だ」というアメリの指摘はまさに正しく、米国とイスラエルが切望する対イラン経済制裁が成功しない最大の理由は、欧州がイランとの取引を止めようとしないことにあります。欧州諸国にしてみれば、米国の圧力によって「おいしい対イラン貿易の果実」を全面放棄することなどあり得ず、実際、1979年のイスラム革命以降、欧州は常に米国とは一線を画して、イランとの実質的関係拡大を目指してきました。欧州の米国に対する「面従腹背」は今に始まったことではなく、従って、今後も、効果的な対イラン経済制裁を目指す米国の試みは成功しないでしょう。

そうした中で懸念されるのは、問題が日本に飛び火しないかということです。この論説の中の「欧州」を「日本」と置き換えても、十分意味をなしますが、これは逆に言えば、米国の働きかけを中ロが無視し、欧州が動かなければ、米国の対イラン強硬派は日本を次のターゲットにする可能性があるということです。

抜け目のない欧州は、「P5+1」(安保理常任理事5カ国とドイツ)を作って、対イラン包括的制裁を封印しようと懸命になっていますが、日本は残念ながら、そうした国際的ルール作りの枠組みにも入らず(入れず)、政治的影響力を十分行使してきたとは言えないのが実情です。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:40 | 欧州 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
ロシアの安全保障観 [2009年12月26日(Sat)]
ワシントン・ポスト12月26日付でRonald D. Asmus元米国務次官補代理が、安全保障についてロシアと西側の考え方は全く異なっていると論じています。

すなわち、ロシアは19世紀的な勢力圏の奪い合いという発想をしているのに対し、西側は、大国も小国も平等に安全保障を享有すべきだと考えており、1990年のパリ憲章や1999年のOSCE(欧州安保協力機構)イスタンブール憲章にもその考え方が反映されている。しかし、ロシアではこれらの憲章は死文化しており、また、ロシアは、武力で国境の変更はしない、というルールも含めて、OSCEの中核的な原則にも違反している、と述べ、

オバマ政権がロシアとの関係を「リセット」し、ロシアと関与するのは良いが、ロシアの主張のうち、正統なものとそうではないものを峻別し、さらに、ロシアには隣国に介入し、その政府を倒し、その外交上の望みを否定する権利はないことは明確にすべきだ。そして、「リセット」には、ロシアがパリ憲章の原則に戻ることも含まれるべきだ、と言っています。

アスムスの論旨は明快であり、言っていることも賛同できます。プーチンのロシアは明らかにエリツィンのロシアとは異質のものになっており、スターリンの再評価に見られるように、全体主義時代の過去は郷愁の気持ちで振り返り、現在の世界は勢力圏の拡大・縮小という尺度で眺めています。

また、実際に武力を振りかざし、グルジアには満州国のようなものを二つ作り、ウクライナを脅かしています。力が足りないがために問題は大きくなっていませんが、対外政策の考え方において、ロシアは明らかに先祖帰りをしており、近い将来、パリ憲章の原則に戻ることは期待できないでしょう。そのことをよく認識することが重要です。

そうしたロシアの勢力圏を認めることも、認めると示唆することもすべきではないでしょう。それをすれば、ロシアを増長させ、より危険な国にしてしまいます。ロシアを封じ込める必要はないし、話し合いはすべきですが、ロシアの無法な要求は断固として拒絶すべきです。当然、こういうロシアが北方領土で譲歩することなど全く期待できないでしょう。

また、冷戦後という相対的に平和な時代は去って、ポスト冷戦後という列強競争時代になったという認識は、ロシアだけでなく、中国も持っています。今は軍拡の時代だというプーチンの発言や、中国の軍拡がそれを示しています。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:34 | ロシア・東欧 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
ウクライナと西側世界の役割 [2009年12月23日(Wed)]
ニューヨーク・タイムズ12月23日付で、クリントン政権時に国家安全保障会議のロシア・ウクライナ部長を務めたMark Medishが、今月17日に大統領選挙が迫っているウクライナについて論じています。

即ち、ウクライナは反ロ・ナショナリズムを弄ぶべきではない(もっとも、有力候補のヤヌコーヴィチ、チモシェンコ共に対ロ宥和姿勢をとっており、対ロ関係は選挙イシューにはなっていない)。ウクライナは民主主義の新興市場経済国となることを目指しながら、ロシアと西側双方との関係をうまくバランスさせていくべきだ、と述べ、

キエフなど、ウクライナの都市を歩くと自由の匂いがするが、ウクライナはこれを維持するべきだ。旧ソ連諸国は、今後もロシアの言う「隣接外国」であることを運命づけられてはいるが、米国とEUは、これらの国の独立と自由の保持、そして繁栄を支援していくべきだ、と言っています。

米国は、ブッシュ政権時代に旧ソ連諸国で次々とレジーム・チェンジを実現しましたが、グルジア、ウクライナ、キルギスのいずれもその後、新政権自身が専制化、あるいは果てしない利権争いに陥っており、さらには、08年夏グルジア戦争のように、米国をロシアとの無用な対立に巻き込みがちです。

他方、経済危機で米国の力が低下していることもあって、オバマ政権は民主化や市場経済化を性急に他国に求めることはしないと明言しており、このメディッシュの論評は、こうした基本方針の上に、ウクライナの実態をよく見極めて、現実的な提言をしているものと言えます。

そのウクライナの実態とは、論説も言っているように、@西欧文明圏に属していた西半分とロシアの政治・経済・文化的影響下にある東半分(工業の中心地でもある)に分かれており、両地域の対ロ、対西側政策に関する世論は一致しない、Aウクライナ経済(特に軍需産業、航空産業、天然ガス、インフラ)は未だにロシア経済と密接にからんでおり、両国の寡占資本家や彼らが担ぐ政治家達は、表ではナショナリズム的言辞を弄しつつ、裏では手を握っていることがある、従って、他国がウクライナ=ロシア関係に徒に介入することは、大きなリスクを伴う、B毎冬の「天然ガス騒動」では、常にロシアが悪者にされるが、実際は、ウクライナ側がガス購入価格を引き下げ、欧州への通過料金を引き上げるための対ロ「春闘」的性格を強く持っており、多分に狂言芝居であることをよく認識しておく必要がある、Cブッシュ政権は欧州側の抵抗を押し切って、グルジア、ウクライナのNATO加盟を性急に実現しようとしたが、オバマ政権の下でこの問題はうやむやになっている、というものです。

もっとも、メディッシュの言っていることは、米国の国力が低下している現状に見合った、当座しのぎの面があり、彼の言う「微妙なバランスを維持」していくだけでは、ウクライナの独立、主権を守りきれない時が来るかもしれません。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:08 | ロシア・東欧 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
サイバー防衛要員不足 [2009年12月23日(Wed)]
ワシントン・ポスト12月23日付で、同紙スタッフライターのEllen NakashimaとBrian Krebsが、国務省や国防省をはじめとする米国の諸官庁が、サイバー・アタック防衛のために人員や組織の充実の必要に迫られている中で、専門家の数が不足し、そのために、給料で民間と困難な競争をしなければならなくなっている現状について解説記事を書いています。

それによると、コンピューター・システムと機密データの保護は今や国家安全保障の最大の問題となっている。2006年の中国経由のサイバー・アタックについては、国務省が2週間にわたる昼夜 兼行の作業を行なって対抗することに成功したが、その2ヶ月後の商務省へのアタックについては、対応に失敗した、

政府は専門家養成のために優遇措置を設けて人員を募集したが、定員に満たなかった。専門家の引き抜き合戦は熾烈であり、あるNSCの専門家は民間企業に45%の給料引き上げで引き抜かれ、ある国防省の専門家は引退を前に民間から20件もの勧誘を受けた、

政府は民間業者にサイバー防衛事務を委託することもあるため、民間に移ったある専門家は、民間でも(政府委託で)国家安全保障のために働けると言っており、国土安全保障省は、1,000名の専門家を雇う計画を諦めた、

その結果、サイバー防衛の法律家、研究者、政策立案者はいずれも不足しているが、これは単に給料だけの問題でなく、国防省などでもサイバー防衛専門家がキャリアを積んでいける制度が出来ていないことによるところが大きい、と言っています。

サイバー・アタックとそれに対する防衛は、勿論、米国だけの問題ではなく、日本を含めて各国で大きな問題となっています。中でも、世界の安全保障に責任を持つ国として、米国が機密の保持と有事の連絡を保全することは、世界の安全に関わる重大な問題です。しかも、これは従来無かった全く新しい問題であり、そのための対応に多大な困難が伴うことは十分理解出来ます。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:19 | 米国 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
イランの反政府運動と政権交代の可能性 [2009年12月22日(Tue)]
ニューヨーク・タイムズ12月17日付でコラムニストのRoger Cohenが、また、Times Online12月22日付で英国際戦略研究所のNader Mousavizadehが、最近のイランはベルリンの壁崩壊前夜の東欧と状況が似てきており、政権交代が起こりつつある、と論じています。

2人は共に、イランの核開発問題で対イラン制裁を強化することは、教育程度の高い青年と勇敢な女性が進めているイラン国内の改革運動を弱め、逆に、愛国的感情に訴え、経済統制を強化する口実を与えて、現政権を強化することになろう。特に、これまでも巧みに制裁に違反してきた革命防衛隊が利を得ることになるだろう、と言っています。

そしてCohenは、1989年の東欧開放の時、当時の父ブッシュ政権はベルリンの壁の崩壊までの決定的期間に何もせず、そのため、クレムリンの強硬派に米国が介入したという口実を与えなかった結果、東欧の革命は自律的に進むことができた。オバマも、今イランで多元的政治体制への動きが高まっていることを理解し、何もすべきでない、そうすればイランの政治状況の進展は一層加速されることになろう、と述べ、

Mousavizadehは、西側は、イランと中東全体の将来にとって極めて重要な今のイランの反政府運動の高まりという機会を捉え、核合意の取り付けに代わる道を探求すべきだ。すなわち、あらゆる機会にイラン国民への支持と、国内弾圧を続けるイラン政府とは核をめぐる取引には応じられないことを表明する一方、イスラエルへの安全の保証を一層強化し、イラン国民自身による政権交代を期待しつつ、対イラン封じ込めと抑止体制を作り上げるべきだ、と言っています。

両者は共に、先日のモンタゼリ師の追悼行事の際の大々的な反政府デモに注目し、イランでは政権交代が起ころうとしている、あるいは、政権交代への動きが早まっていると言っています。しかし、本当に状況が政権交代につながる段階に来ているかどうかはまだ定かでありません。また、両者共、対イラン制裁の強化は、イラン国内の民主化運動を妨害することになるとして、それに反対していますが、現実は制裁強化に向いて動いています。オバマとしても、今の状況で何もしないわけにはいかないでしょう

従って、両論説の情勢判断や政策提言はそのまま受け入れられるものではありませんが、イラン国内の現実を理解する上で、重要な洞察を提供していることは間違いありません。今後、イラン情勢を追う際は、政権交代の可能性を常に念頭に置くべきでしょう。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 12:35 | イラン | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米国防予算縮小への懸念 [2009年12月19日(Sat)]
米AEIの12月19日付ウェブサイトで、ネオコンのGary Schmittと軍事評論家Thomas Donnelly が、オスロのノーベル平和賞受賞演説でオバマが初めて軍事力の重要性に触れたことから、今まで明らかでなかったオバマの軍事思想を読み解こうとしています。

それによると、オバマは60年以上世界の平和を支えて来た米国の軍事力の重要性を認めたと言っているが、この言葉が実際の政策に反映されるかどうかは疑問だ。中東や南アジアの当面の諸問題はまだ解決されていないし、中国の勃興にどう対処するかという問題もあるのに、オバマの当初の計画では、大幅な軍事計画の削減と社会保障の増大が予定されており、現にF-22戦闘機計画の廃棄などが行われている、

要するに、対テロ戦争など当面の問題に対する答えはまだ出ていないが、長期的には軍備費削減の方向であり、今後の国際情勢を考えると憂慮される。今後、防衛費をどうするかで、オスロで表明されたオバマの真意が試される、と言っています。

オバマの本心は、軍事問題に巻き込まれている今の状況を早く終わらせて、国内施策に集中したいということでしょう。となると、オスロ演説は何だったのかという疑問が生じますが、常識的に考えれば、ノーベル賞受賞自体に批判がある中で、これは、平和主義に傾き過ぎているという批判を避けるための演説であり、リベラル左派は失望させたものの、国民に対して、頼るに値する大統領であるとの好印象を与えた点で成功だったと言えるでしょう。しかし、オバマの内心が軍事離れであることは想像に難くありません。
 
ところで、米軍事予算が減るということは、日本の防衛努力削減に共感を示すことにはならず、むしろ米国では、こういう時こそ、日本は防衛費を増大して、米国が一方的に負担してきた今までの状況を改善すべきだという主張が強まることが予想されます。現にその種の評論は既に出てきています。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:58 | 米国 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
普天間基地問題 [2009年12月18日(Fri)]
ワシントン・タイムズ12月18日付で、米ジョージワシントン大学のMike Mochizukiとブルッキングス研究所のMichael O'Hanlonが、普天間基地問題を論じています。

それによると、米国にとって嘉手納基地は、朝鮮半島、台湾海峡有事に備えるために極めて重要であり、それに較べれば、普天間は小さな問題だ。従って、住民の意思を尊重したいとして日本があくまでもこの問題にこだわるのなら、どうにかしてもよいが、それならば日本は、より対等な同盟関係を創るためにも(米国はGDP の5%、日本は1%しか防衛に使っていないのだから)、基地再編のコストを大幅に負担するべきだし、世界の安全に関しても、実質的かつ大きな歴史的貢献をして欲しい。多くの国は対テロ戦争で犠牲を払っているのに、日本はそれをしていない。具体的には、例えば、スーダンやコンゴへの派兵など、抜本的対策を実施して、日米同盟を維持強化する方策を示すべきだ、と言っています。

オハンロンは、公平客観的な軍事専門家として、ブッシュ時代以来、常に軍事的合理主義の観点から論じて来た人物であり、マイク・モチズキは東部エスタブリッシュメントの間で認められている日系二世の日本専門家です。

彼らは、要するに、北朝鮮の核武装、中国の軍拡、イスラム過激派の脅威を前に、日米という世界の二大国が普天間という小さな問題にばかりかかずらっている。このほとんど解決していた問題を、新総理が蒸し返すのは総理の特権ではあるが、そうしたことは軽々しく行われるべきではないし、見直すのであれば、日本側は、その代わりに、世界の安全と日米同盟への寄与という広い観点から新たな前向きの代案をだすべきだ、と言っているわけです。

日本の政治の現状において、現実的な提案であるかどうかは別として、日米関係を憂うる善意から出た忠告と言えるでしょう。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:39 | 日本 | この記事のURL | コメント(1) | トラックバック(0)
オバマ政権の新たな対日戦略 [2009年12月17日(Thu)]
ウォール・ストリート・ジャーナル日本版12月17日付で、米AEIのMichael Auslin日本部長が、オバマ政権の対日政策について論じています。

すなわち、米国では、鳩山政権成立前から、日米関係への影響に憂慮する向きはあったが、どうなるかはわからないということで来たし、在日米軍縮小などの小沢一郎氏の発言も深刻には受け止めないようにしてきた。しかし、米政府関係者の懸念は、今、当初予想された以上に大きくなっている。現段階では、米政権幹部はこの危機は良い形で解決できるとの姿勢を維持しているが、永久に待てるわけではない。それよりも、景気回復から気候変動まで多岐にわたる分野での中国との協力関係の構築に注力することの方がはるかに大きな関心の対象になっている、と述べ、

「その結果、米国の対アジア外交において既に増大しつつある中国の存在がさらに大きくなることは必至だ。これまでに米国の望む米中関係と、米日同盟や米日間のより包括的な政治的関係の重要性に関する米政府の認識との間には、常に葛藤があった。しかし、米国が、日本の民主党は生産的なパートナーになり得ないと判断し、他方、民主党は中国その他アジア諸国への働きかけを強めた場合、米国は自らの国益に反する状態を放置したままにはおかないだろう。これは特別なものであった日米関係の性質が変化する可能性を示唆し、その結果は誰にも予測不可能なものになるかもしれない」、と結んでいます。

オースリンは、現在、日米関係に関する評論では、量質ともに第一人者です。それだけに、判断は慎重であり、断定的な言葉は避けて、将来を危惧しつつも「予測不可能」なことになるとだけ言っています。むしろこの論説は、初めは、たいしたことにはなるまいと思っていたが、だんだん心配になって来て、まだ希望は持っているが、それがどこまで持つかわからない、その間、中国の方が重要だという雰囲気が強まって来て、先行きが見えなくなって来ている、という米政府内の空気を良く伝えていると言えるでしょう。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:03 | 日本 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
習近平訪日 [2009年12月16日(Wed)]
ファイナイシャル・タイムズ12月16日付で、同紙元東京支局長(2002〜2008年)で、現在論説委員を務めるDavid Pillingが、習近平の訪日を報道しています。

ピリングは、僅か数日前の要請で実現した天皇陛下のご会見は、「宮内庁のエチケットからすれば、まるで、午前3 時に隣の家をたたき起こして、砂糖を貸して欲しいというようなものだ」と述べて、今回の「事件」を伝えていますが、注目すべきは、日中友好は、現在、中国側の方が希望していることだと判断していることです。

すなわち、中国とインドが対立し、日米の同盟関係にもひびが入っているアジアの現状において、日中関係がこれまでになく良好なのは、北京側がそれを望んでいるからだ。これは、日本と良好な関係を保つことが、中国の平和姿勢を示すのに好都合だからというだけでなく、実は中国が密かに日本を尊敬しているからだ。例えば、環境問題では、40 年前の日本の大気や河川は現在の中国と同じように汚染されていた。しかし、日本はその後、政策面でも技術面でも環境問題を克服して世界で最もクリーンな省エネルギー経済を実現した。中国はそうした日本のノウハウが欲しい、

また、一般の中国人の間でも、求められているのは、米国よりもむしろ日本のライフスタイルだ。他方、日本も安い労働力と旺盛な消費市場を提供する中国を必要としている、

もっとも、東シナ海の問題一つをとっても、日中関係はそう簡単には良くならないと思われる。また、中国側が国内問題から国民の眼をそらすために、再び、反日のカードを使う可能性もあるかもしれない、と言っています。

今回の習近平の訪日については、日本国内では、専ら、日本側の中国に対する叩頭的態度が批判されていますが、現在、中国の方から日本にすり寄る姿勢があるというのは面白い指摘です。日中双方を第三者的に見る立場からすると、こういう見方もあるのかもしれません。

【次回の更新は1月4日です。皆さま良いお年を】
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:17 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
日米同盟の揺らぎへの危惧 [2009年12月16日(Wed)]
ウォール・ストリート・ジャーナル日本語版12月16日付で、外交安全保障問題で豪州政府の要職を歴任し、現在Lowy Instituteに所属するAndrew Shearerが、日米同盟について論じています。

すなわち、日本は幻想を持つべきではない。同盟というのは難しいものであり、豪州、韓国、インドもそれぞれ国内事情を抱えている。日本が的確な判断を下し、米政府との間の溝を早急に埋めることは、これらの国々にとっても重要性が高い、と述べ、

アジアの安定と平和を保障する米国の役割を「日本が脅かすのを感謝する国は無い」、「政治経験に欠ける民主党が率いる日本政府は現在どんなリスクがあるのか把握しておらず、北朝鮮のミサイルや中国の軍備増強の危機に日本が曝されていることも認識していない」と言っています。

中国の軍拡と北朝鮮の核武装の脅威の下にあるアジアでは、日、韓、豪、印それぞれが、何らかの形で米国との同盟を必要としていますが、国内の一部には親中反米を唱える勢力もあり、それぞれがそれを克服するのに障害となる国内事情を抱えています。これは、そうした中で、日本が揺らぐと、アジア全体に影響を与えると憂慮する豪州からの警告です。

現在アジアの政治安全保障問題について国際的な対話が行われる場合、まず、その前提となる情勢判断において、最大かつ不可欠なのは、中国の軍拡と北朝鮮の核武装という状況であり、それらへの対策が第一の議題にならなければなりません。ところが、今までの日米対話では、その面が欠如しているように思われます。経済や環境について話すことはもちろん良いことですが、国家間の対話に政治安全保障環境についての判断が欠如していては、どんな対話を行っても、足が地についていないことになります。そうなれば、韓国、豪州、インドなどアジア大洋州諸国との対話も無内容なものとなり、やがてこれらの国は日本との対話に関心を失っていくのではないかと危惧されます。




Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:16 | 日本 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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