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世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


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オバマのお辞儀への批判 [2009年11月27日(Fri)]
ウォール・ストリート・ジャーナル11月27日付で、鋭い観察力と軽快な文章で知られる著名な保守系女性コラムニストPeggy Noonanが、日増しに激しくなるオバマ批判、そして大統領のイメージとお辞儀の政治的意味合いを分析しています。

それによると、民主党系の大物ジャーナリストや外交問題の重鎮の間でオバマへの支持が落ちてきている。例えば、民主党支持者のエリザベス・ドルー記者は、オバマが大統領になる上で影響のあった人々がオバマへの判断を誤ったかもしれないと思い始めていると書いている。どんな大統領にも、絶対に離れないコアの支持者が20%はいるものだが、オバマにはそうした人がいないようだ。これはオバマが冷たい突き放した印象を与えるためかもしれない。また、外交問題評議会のレスリー・ゲルブ名誉会長も、大統領のアジア訪問はあまりにも素人めいたやり方で心配だ。天皇にお辞儀をするよりも、ワシントンの経験豊かな有識者に頭を下げるべきだと言っている、

そこで天皇への辞儀が問題になる。映像は、人々が既に心に思っていることを現した場合に象徴性を帯びる。米国が自信に溢れていたら、そしてアジアからの報道が、「きびしい交渉が結果を生んだ」「オバマは中国で気骨を見せた」というような内容だったら、お辞儀は余裕と敬意を表すものだと評価されただろう。ところが、オバマのお辞儀は、どこか素人っぽく、能力に欠けているのではないか、というオバマについて広がりつつあるイメージを代弁してしまった、と言っています。

ここ数週間のオバマ批判には激しいものがあり、ヌーナンも指摘するように、民主党系の人々の間で批判が相次いでいるところに状況の深刻さが表れています。勿論、保守派の批判はさらに激しく、英エコノミスト誌は、オバマ外交は賢明なのか弱腰なのか、世界を変える戦略があるのか、それとも世界を良くしようと意気込むものの、問題の深刻さを理解できず逆に状況を悪化させることになるのか、と問うています。

個別政策を対する批判は横においても、経済難に苦しみ感情の高ぶっている米国民の目には、オバマ氏のクールというイメージは冷徹、極端な実利主義というものに変わってきています。そうした中で、天皇へのお辞儀の映像は、オバマに対する国民の不満や不安を表すイメージとなっただけに、日本とか日米関係とかに関係なく、これからも活用される可能性があるでしょう。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:23 | 米国 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
欧中経済関係 [2009年11月26日(Thu)]
ニューヨーク・タイムズ11月26日付で、全欧州産業団体Business EuropeのJürgen R. Thumann会長(ドイツ出身の1941年生まれ、鉄金属プラスチック製造業などで成功し、ドイツ工業協会会長を務めた後、今年7月から現職)が、欧州と中国の関係について論じています。

すなわち、EUは、米中のいわゆるG2対話の陰で代償を払わされている。G20ピッツバーグ宣言での約束にもかかわらず、下落する米ドルとそれにペッグする人民元のために、将来のマクロ経済調整の重荷はEUの肩にシフトしてきている、

米ドル・人民元に対するユーロ切り上げは、欧州経済の回復にとって障害であるだけでなく、将来の新たな金融・資産不均衡をもたらしかねない。マクロ経済・通貨政策でこれまでの誤りを繰り返さないことが、世界経済の成長回復の条件だ、と述べて、

EUの利益は明確であり、中国は内需拡大のため為替政策をもっと柔軟にすべきだし、米国は強いドルを維持し、国内貯蓄率を上げるべきだ。また、EUも構造改革を実行する必要がある、

またEUは、国際的不均衡を減らし、持続可能な発展を実現する方途について、米国や中国とも議論すべきだが、これまでの中国側の対応は十分ではない。貿易、投資、原料調達、知的財産権などに対する中国側の制約は、EU・中国関係を害しているが、両者が協力すれば、国際経済、環境問題、貿易拡大などで相互に利益を得ることができる、と言っています。
 
これは、暗に中国側の対応ぶりを批判している論説であり、その行間から、中国経済の台頭が、日米だけでなく、欧州経済にも深刻な影響を与えており、将来EU・中国間でも貿易摩擦が更に悪化する可能性があること、それにもかかわらず、EUは中国を必要としており、さらには、経済面でEUが米中の間で埋没しかねないことに強い懸念を抱いていることが読み取れます。欧州産業界の本音を知る上で興味深い一文と言えるでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:38 | その他 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
パートナーなき超大国 [2009年11月24日(Tue)]
ワシントン・ポスト11月24日付で米ジャーナリストのAnne Applebaumが、誰も絶対のリーダーシップを持たなくなった世界の現状を描いています。

すなわち、オバマ訪中の際、温家宝は、「『G2』などと言われることには不賛成だ。中国はまだ開発途上国であり、われわれは常にこれを念頭に置いて思い上らないようにしなければならない。中国は米国との経済関係は喜んで続けるが、独自の平和外交を続けるつもりだし、いかなる国やブロックとも同盟は結ばない」と述べた。また、EUも、議論や交渉を10年も重ねた挙句、EU大統領に無名の政治家を選んだ、と指摘し、

要するに、超大国としての責務を米国と分かち合おうとする国はなく、米国が望む、望まないに関わらず、グローバルな軍事・安全保障の問題は米国の責務として残り続けるのではないか、オバマもいずれ単独主義に戻らざるを得ないかもしれない、と言っています。

オバマは単独主義ではなく、「外交重視」だと言われますが。経済が破綻した今の米国は、相手が協力しなくても、その国と「外交」を続けざるを得なく、それ以外の選択肢は孤立主義しかありません。

ところで、アップルバウムは、米国にとって「価値観を共有する欧州がやはり最も頼りになる」存在だと言っていますが、日本も国民の大多数が自由・民主主義・アカウンタビリティーの諸原則を自分のものとしています。アジアが中国中心の世界となった場合、その日本が一国でそうした社会を維持するのは難しく、日本にとっては米国との同盟がやはり必要でしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 14:18 | 米国 | この記事のURL | コメント(2) | トラックバック(0)
アフガン情勢の好転 [2009年11月22日(Sun)]
オバマがアフガン増派について決断を引き伸ばし、アフガンの将来見通しに不安が持たれている中で、アフガン情勢について楽観的な見通しを述べる解説記事や論説が出てきました。

まず、ニューヨークタイムズ11月22日付で、同紙外国特派員のDexter Filkinsが、アフガン各地域に反タリバンの民兵組織が生まれ、米、アフガン政府もこれを支援している。7月にはShinwari部族とタリバンの間で衝突が起き、部族の長老がタリバン指導者を殺して周辺地域からタリバンを駆逐し、米国も特殊部隊を送って長老を支援した、と伝えています。

また、Michael E. O'Hanlonはブルッキングス研究所の11月18日、19日付ウェブサイトで、米国はアフガン戦の将来についてだんだん楽観的になって来ている。アフガン人は予想以上に親米的で、米国への批判は増大しているが、それは戦果が上がらないことに対してであり、米軍そのものに反対しているのでない。それにここ数年の教育、保健の進歩や携帯電話の導入などは評価している。アフガン軍も比較的成功していて、国家的統一が可能な国だと言うことを示している。非軍事的支援活動も盛んになってきた、

アフガニスタンでは反乱軍に勝つよりも、反乱を弱めるのが現実的であり、それには、軍はともかく、警察が全く訓練不足なのでこれを改善し、民兵とも協力すべきだ。ただ、民兵は中央からの統制を受けねばならないし、支配範囲もその地域に限定されるべきだ。また、タリバンの司法制度に代わる新たな司法制度を創らねばならないし、汚職腐敗対策は特に重要だ、と言っています。

こうした記事や論説を読むと、あるいは風向きは変わってきているのかもしれません。また、戦争とはそういうものでしょう。味方が苦しくてもう限界だと思う時は、敵はそれ以上に苦しいというのは戦場の常です。米国が苦しいようにタリバン側も苦しいでしょう。今年の夏のタリバンの攻勢とそれに伴う死傷者数に増加で、このままではどうなるのかと思わせられましたが、アフガンの部族にとっても、こんな状態をいつまでも続けさせるわけにはいかないでしょう。

こうした状況は、増派直前のイラクも同じだったかもしれません。従って、マックリスタルの言う通りに増派していれば、それがはずみとなって、イラクと同様の画期的な事態の転換があったかもしれませんが、逆にイラクは増派がなくても、戦局は転換したかもしれません。その意味では、たとえ限られた規模であっても、アフガン増派は、決定的な効果は無いかもしれませんが、相当な転機をもたらすと期待できるかもしれません。ただ、心配なのは、部族支配に反発する米国の原理主義が、こうした動きの足を引っぱらないかということです。



Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:35 | 中央・南アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
インドの戦略的重要性 [2009年11月21日(Sat)]
インド首相の訪米を控えて、ニューズウィーク誌11月21日付でFareed Zakaria同誌国際版編集長が、米国はインドの重要性を閑却すべきでない、と論じています。

すなわち、オバマ政権は中国やロシアを甘やかして、ブッシュ時代のインド重視政策から離れようとしているらしい。何より問題なのは、アフガン問題に捉われて、パキスタン対策重視に傾き過ぎていることだ、

インドは地域の大国であり、タリバン政府が倒れれば、映画、食事、通貨もおのずからインドのものが流入してくるだろう。パキスタンがこれを嫌って、タリバンの存続を計ろうとしていることが問題なのであり、パキスタンが、ムンバイ・テロの犯人グループを追求しない態度をとる限り、印パ関係は好転しないだろう、

しかし、破綻国家の多い南アジアにおいて、インドは安定した民主主義国家であり、中国の勃興にも対抗し得る国だ。米国にとっては、そうしたインドとの関係こそが最重要事項であり、アフガニスタンの政情などと比較にならない、と言っています。

タリバンを討伐すれば、インドの影響力が増す、とパキスタンが恐れていることは、従来から多くの専門家が指摘してところです。しかし、カシミールの対印テロリストにパキスタンの過激派の影響力がある、ということぐらいは推測できても、これが印パ関係一般にどう関係するのか、これまで必ずしも納得できる説明はありませんでした。この論文は一つの説明を与えるものでしょう

確かに、インドは地域の超大国であり、治安が回復した地域には、インドの商品や商人、また、経済援助に携わる各種技術者、教育者が大量に流入し、インドのプレゼンスが増大するのは自然の成り行きでしょう。また、それに反発したパキスタンの軍関係者が、米軍関係者に訴えるという状況も容易に想像できます。

これは、米国が目指すアルカイーダやそれを庇うタリバン勢力の討伐・排除のために、協力が不可欠なパキスタンが、タリバン排除後のインドの勢力流入を警戒している、という困った図式であり、その解消には、究極的にはカシミール問題の解決と印パ和解が必要です。ただ、そこまで行かなくても、パキスタンが、政治、経済、治安面で安定し、米国ひいては日本などとの関係に自信を持てるようになれば、アフガニスタンに対するインドの影響力増大をさほど心配しなくて済むようになるかもしれません。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:55 | 中央・南アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
欧州の価値の低下 [2009年11月20日(Fri)]
英ファイナンシャル・タイムズ11月20付でTony Barber同紙ブラッセル支局長が、今回のEU大統領と特別代表(外相)の選出について論じています。

それによると、グローバル化は、米国やBRICs諸国による大国政治の時代を招き、そうした中で、欧州は、これらの大国に振り回されるのを避けるためには、一致団結する必要がある。リスボン条約はEU諸国の団結を強め、国際的影響力を高めるための改革をもたらすはずだった、

ところが、各国政府は大統領にファン・ロンパイ、特別代表(外相)にアシュトンを選んだのであり、この選択は、そうした目標とはまるで矛盾する。コンセンサスを求める司会者タイプのファン・ロンパイがオバマや胡錦濤と対等に渡り合えるとは到底思えない。また、アシュトンには数億ユーロの予算と数千人の部下が与えられるが、EU副委員長も兼任する立場なので、バローソEU委員長に決断を譲らなければならない場面が出てくる。その上、条約により、外交政策の策定には全27カ国政府の賛同が必要だ、

結局、勝者は各国政府であり、各国政党で組織する中道右派と中道左派の政党グループだ。欧州議会は彼らが支配している。各国指導者たちはEUではまだ新参者の二人を選び、自分たちの影が薄くならないようにしたのだ、と言っています。

EUの選択はワシントンにも衝撃を与えました。冷戦後、米国は欧州の自立を望む一方で、あまりに強力なEUの出現には懸念を抱いていましたが、ボスニア、コソボ戦争でEUが案外に弱体なことがわかり、他方、米国自身、単独では多義的な複雑な問題を解決できないことに気づいたことから、ブッシュ時代後半以降、共に問題解決にあたってくれるパートナーとしてのEUを改めて求めるようになりました。

しかし、27カ国の政府は、結局、一個人に多大な権力を与えることに恐れをなし、国家主権を優先したわけです。指導者たちが権力を手放したくなかったばかりでなく、多くの国の市民が、直接選挙で選ばれないブラッセルの官僚や政治家に自分たちの生活を支配されることに反対であることが明らかになったからです。

米国は、一国主義と見られがちですが、実は仲間が欲しい国民であり、指導層は、共に議論を交わし、実質的負担や政治決断の重荷を分かち合える信頼できる他国の指導者を必要としています。そうした米国にとり、歴史や文化的つながりから、一番パートナーとして自然なのはやはり欧州でしょう。

ところが、欧州は、EUとして強い単体となることを避けたのであり、世界におけるその地位はますます下がることになるでしょう。米国は、自国に反対する強力なライバルの誕生は避けられたものの、指導力のある頼りになる仲間は得られなかったことになります。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:14 | 欧州 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米中共同声明 [2009年11月18日(Wed)]
米AEIの11月18日付ウェブサイトで同研究所のDan Blumenthalが、先般の米中共同声明は、米国の台湾政策とインド政策に関する限り有害だった、と論じています。

すなわち、共同声明は、主権と領土保全の尊重の基本原則が、米中関係を規定する3つの米中共同声明の核心だと言っているが、主権と領土保全の尊重が米中和解の核心であったかどうかは、極めて疑わしい、

米国はこれまで、台湾は中国の一部だとする中国の立場を受け入れず、台湾関係法に基づいて台湾の安全を保証し、台湾については中国の勝手にさせないという政策をとってきたが、最近の中国は、米国が台湾を支援しなければ台湾を粉砕できるほど軍事力を強化している。他方、オバマ政権は対台湾政策を打ち出しておらず、兵器システムも台湾に売却していない。こうした状況下で、中国が重視する主権と領土保全の尊重を強調するのは危険だ。中国は、米国が、台湾は中国の一部であるとの主張を受け入れ、台湾に関する中国の主権を尊重することを望んでいるが、今回の共同声明によって、米国は中国の台湾に関する主権の主張を正式に受け入れる立場に近づいた、と言っています。

またインドについて、中国はパキスタンの軍事計画を支援し、南アジアで勢力圏を認められることを望んでいるが、インドは中国に対し毅然とした態度を示しており、例えばインド洋で中国が勢力圏を作ることは許さないだろう。ところが米中共同声明は、米中両国は南アジアの平和と安定、発展のために協力すると述べて、中国を大国として扱う一方、インドを単なる南アジアの一国として扱っている。これによってオバマはインドに公式にアジアの二流国の地位を与えてしまった、と言っています。

これは、共和党系保守派のオバマ批判ですが、台湾について、米中共同声明が、主権と領土保全が上海コミュニケなど3つの共同声明の核心だとしたことをもって、米国は台湾に対する中国の主権を認める立場に近づいたと解釈するのは無理があります。

ただ、今回のオバマの訪中、共同声明の作成は、中国ペースで行われたといってよく、中国が共同声明を上記のように解釈したがることは十分考えられますし、オバマ政権が明確な台湾政策を打ち出していないことが、懸念材料になっていることも事実です。






Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:18 | その他 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
怪物チメリカの終焉 [2009年11月16日(Mon)]
ニューヨーク・タイムズ11月16日付で米ハーバード大学のNiall Fergusonと独フリー大学のMoritz Schularickが、経済怪物「チメリカ」――中国の輸出と米国の過剰消費によって出現した世界経済の拡張を指す彼らの造語――が死を迎える時に来た、と論じています。

すなわち、チメリカは、しばらくは理想的な結婚と思われた。世界貿易は拡大し、ほとんど全ての資産価格が跳ね上がった。しかし元々この結婚は長く続くはずがなく、世界的経済危機を経た今、チメリカの崩壊、つまり米中間の経済不均衡の是正こそが、世界経済の均衡回復には不可欠だ,

またこれは米国にとっても利益になる。なぜなら、チメリカが終焉して為替レートが調整されれば、@米国の輸出製品に中国での競争力が与えられる、A米国の国内消費刺激策への依存を減らす、B貿易をめぐる深刻な国際的摩擦が起こるリスクを減らすからだ、と述べ、

中国はドルペグ政策から脱却すべきだ。米国は商品や資本の自由な移動を可能にし、石油を提供する中東の安定化に貢献してきたが、中国ほどこの体制の恩恵を得た国はなく、自国通貨を切り上げることによってその代償を払う時にきている。それに、元の価値が低すぎることが世界経済の最大のゆがみであり、これが続けば、開かれた世界貿易市場という中国の経済的成功の基盤も失われる可能性がある。中国が元を切り上げれば、経済怪物チメリカに静かな死を与えることができる、と言っています。

オバマ大統領の中国訪問はたいした成果もない代わりに、大喧嘩もない、という予測でしたが、先週末、ロイターは、中国は近く元の切り上げを実施する可能性がある、と伝え、中国も、米国FRBの弱いドル政策と低金利を批判して、一気に緊張が高まりました。元の切り上げがあるにしても、来春以降というのがコンセンサスでしたが、中国は、米国ばかりでなく、アジア諸国やEUからも、ドルペグを維持して元を低く抑えることで、他国の輸出に打撃を与えていると批判されるのをかわす必要があったのと、米国の失業率増加が対中批判を招くという懸念から、先手を打ったものと思われます。

元のドルペグにより東南アジア諸国も打撃を受けており、地域経済の発展、米経済ひいては世界経済の回復を考えれば、切り上げは当然でしょう。ただ、同日のNYTでクルーグマンも中国は当然切り上げを考えるべきと論じていますが、本論説も含めてこうした海外の論調によって、中国政府が動かされることはないように思われます。中国が元を切り上げるとしたら、その大きな動機となるのは、自国内のインフレへの懸念でしょう。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:07 | その他 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米国のアジア政策 [2009年11月16日(Mon)]
米National Interest誌11月号でケイトー研究所のDoug Bandowが、オバマのアジア歴訪を機会に米国のアジア政策全体を論じる中で、日本については、地位協定など論ぜず、米軍を引き揚げ、米国は日本も含めてアジアの安全保障に責任を持つのをやめるべきだ、と言っています。

すなわち、米国は日本を対等のパートナーとして扱うべきで、経済面では自由貿易協定を提案すべきであり、防衛問題では、日米同盟を真に対等な安全保障関係に変えるべきだ。それには、地位協定など議論せず、在日米軍を日本から引き揚げ、防衛の責任は日本にまかせるべきだ。日本は自分たちで何が自国にとって必要な外交防衛政策か決めるべきだし、その結果、軍事バランスに生じる変化については、米国はもはや責任を負わないことも理解すべきだ、と述べ、

アジア諸国は日本の再軍備を心配するが、戦争はもう60年前の話であり、米国もいつまでも面倒を見るべきではない。日本の新政権は、東アジア共同体などと言っているが、米国はこうした構想には抵抗せず、支持すべきだ。その方が冷戦の残滓である現行のシステムより良い。東アジアの諸国が自分で問題に対処してくれるなら、それにこしたことはなく、こうした動きが、豪州の国防白書にあるように軍事力で裏打ちされれば、中国を平和的に導いていける、と言っています。

米国の伝統の一つである孤立主義の典型的な論文です。中国との友好関係を説いてはいますが、対中傾斜ではありません。ただ、中国の脅威に対しては、豪州、日本、韓国、そして台湾など地域諸国がしっかり対処すべきであり、中国から直接脅威を受けていない米国は責任を負う必要は無い、と言う議論です。また、現在の苦しい経済状況の中で、米国だけが負担を負い続けることにも異議を申し立てています。

孤立主義的な少数派の意見であり、米政府・議会の中枢の流れにはさして影響はないでしょうが、基地問題などで日本の言うことに振り回されるのはもうたくさんだ、自国の防衛は勝手に自分たちでやってくれ、という感触は、あるいはもっと広く保守、リベラル双方の現実派の中にも存在している恐れはあると思われます。



Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:31 | 東アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
オバマの東アジア政策に望むこと [2009年11月15日(Sun)]
オバマの訪韓を控え、ウォール・ストリート・ジャーナル11月15日付で、延世大学国際関係大学院長の李正民がアジアの新情勢を論じています。

即ち、世界の舞台は米国、欧州、東アジアの三大地域で占められるようになった(それには、西欧や東アジアの安全を保証し、その産品に市場を開いてきた戦後の米国の功績が大きい)が、こうして三極世界が出現した今、米国は東アジアについては次の3つの核心問題に焦点を合わせる必要がある、と述べて、

先ず、中国の勃興にどう対処するか重要だ。中国なしのアジアの将来はもはや考えられなくなっているが、地域諸国はそうした事態に不安も抱いており、米国はアジア諸国との同盟関係を強化していく必要がある。第二に、日韓協力関係の推進が重要だ。日韓はもはやかつてのようなトゲトゲしい関係にはない。日米韓の三民主主義国が協力すれば相乗効果を産むだろう。第三に、米韓は、北朝鮮の核の脅威に対抗するだけでなく、将来の朝鮮半島統一を視野に入れて、周辺諸国、特に中国との信頼関係を築きつつ全ての朝鮮民族が自由の中に生きられるよう、緊密な協議を始めるべきだ、と言っています。

李正民は、ノムヒョン時代はシンガポールに「亡命」していた、保守、親米派の国際関係論学者であり、李明博政権とも近い人物です。

論説は堂々なる保守路線であり、米韓同盟と日米同盟を、対中対策も含む、東アジアの安定の中心に置いています。特に注目すべきは、日韓関係についての自信でしょう。

確かに、ノムヒョン時代の反日にもかかわらず、日韓の民衆レベルの親近感は、ヨン様ブームに見られるように進展し、過去の朝鮮人蔑視やそれに対する反発なども、記憶している人も少ない状況になっています。そして李明博政権は、論説も言うように、日韓間の感情的摩擦を政治的に利用することを拒否し、日韓関係を深めようとしています

もう一つ注目すべきは、ノムヒョン時代以来、北朝鮮の将来は米中の取引で決められるという漠然たる考えが支配的だったのに対して、この論説は中国との信頼関係には配慮しつつも、朝鮮半島の将来を決するのは米韓の協議だということを明白に打ち出していることです。本来、朝鮮半島の統一は朝鮮民族の問題であるという意味でも、また、論説が言うように、全朝鮮民族が自由を獲得するという目的の上でも、その将来を決定する主体は中国ではない、というのは正論でしょう。
 
日米韓三国関係の強化については、鳩山政権も異論は無いところでしょうし、朝鮮半島統一において朝鮮民族の意思が再優先だということも異論の唱えようの無いところです。日本としても、このような韓国の新しい親米、親日姿勢には応えるべきでしょう。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:51 | 東アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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