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世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


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米国が理解すべき日本の現状 [2009年10月30日(Fri)]
Forbes誌10月30日付オンライン版で、“The Coming Collapse of China”の著者、Gordon Changがオバマ政権のアジア政策を厳しく批判しています。

すなわち、歴代米大統領が日本の存在を当然視していた時期もあったが、日本は今、何十年に一度の変革期のただ中にあり、アジアを歴訪するオバマ大統領は特に日本には注意しなければならない、

米政府関係者は、インド洋での給油問題や普天間基地移転問題で新たな対米主張を始めた日本に怒っているが、これは非生産的だ。一つには、米国の韓国防衛は日本なしには不可能だということもある。また、米国以外に東アジアの平和と安定を保証できないと考える他のアジア諸国も、こうした日米間の動きを懸念している、

それに、冷静に考えると、米国は対衛星攻撃、サイバー攻撃、南シナ海での米海軍に対する「戦争行為」など、最近の中国の一連の行為に対しては沈黙を守っている。過去の合意について再交渉したいと言ってきただけの半世紀来の忠実な同盟国よりも、中国のような米国に対して攻撃的な国を優遇するオバマ政権のアジア政策は、基本的にどこか間違っている、と言っています。

チャンは、2001年に発表した“The Coming Collapse of China”で話題を集めた、中国に批判的な作家であり、同書で予言されたような2006年の中国崩壊は起きていませんが、その対中批判は今も健在です。

彼の主張は、最近増大を続ける中国の影響力を懸念する米国保守派の中に、日米関係の悪化はアジア太平洋地域における米国の立場を弱める可能性があることを正確に理解する人々がいることを示しています。

米政府に対して鳩山政権との衝突を回避すべしと説く声は、米民主党リベラル派ばかりでなく、共和党保守派にも広がっているようです。日本の民主党にまた一人新しい味方が現れたと言えるかもしれません。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:37 | 日本 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
東アジア地域機構を巡る動き [2009年10月28日(Wed)]
ファイナシャル・タイムズ10月28日付で、同紙アジア特派員Kevin Brownが新たな東アジア地域機構をめぐる各国の動きを報道しています。

それによると、アジア・サミットは普通は面白味のないものであるが、今年は陰にアジアを巡る米中間の指導権争いが隠されている。問題は、米国と米国の友好国がどこまでアジアの多国的地域機構に直接参加できるかだろう。東アジア共同体を提唱した日本の鳩山首相は、米国を参加させる考えからは後退しているようだが、豪州はAPEC中心のものを考えているらしい。他方、中国は何も言わないが、密かにASEAN+3を推しているようだ。しかし、ASEANは元々中国の脅威に対抗するために始められたものであり、今でもインドネシア、シンガポール、フィリピンは親米的であるし、日本も中国が支配するような機構は支持しないだろう、

こうした中で米国にとって大事なのは、米国を除外したアジア地域機構が出来てしまう前に行動することだろう。長い目で見れば、米国が加わった地域機構にはあまたの通商協定に勝る価値がある。今回のオバマのアジア訪問は、中国による米国排除の動きを食い止め、新たなアジアの地域機構への米国の参加について支持を固める絶好の機会を提供しよう、と言っています。

ジャーナリストの解説記事であり、それほど深い分析をしているわけではありませんが、鳩山首相が東アジア共同体論を提唱したことで、新たに火がついたアジア統合を巡る状況をよく解説しています。

中国が内心ASEAN+3を求めているというのは、2006年ごろの経緯から考えて妥当な判断でしょう。他方、ASEANが元々は中国の脅威に対抗するために結成されたという歴史的判断も正しく、ASEANは、1965年にインドネシアで9.30事件が起きて、ようやく中国の脅威に対抗する機運が生まれ、1967年に結成されたものです。

また、最近のアジアは、日本だけはややリベラル傾斜の印象を与えていますが、インドネシアは親米、対中国警戒の傾向を示し、韓国の李政権もはっきり親米であるというように、一昔前よりも全体に親米傾向が強くなっています。

そして米国は、そもそもオバマ大統領の今回のアジア歴訪がAPEC首脳会議への出席の途次であることから見ても、APEC重視、そしてAPEC活性化を主要目標としているように思われます。日本にとっても、対米関係を重視するのであれば、東アジアの地域統合はAPECとの協力を中心に据えるのが正攻法だと思われます。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:13 | 東アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
在日米軍再編問題 [2009年10月26日(Mon)]
ウォール・ストリート・ジャーナル10月26日付社説が、鳩山首相の米軍再編合意、特に普天間飛行場の移転についての対応姿勢を厳しく非難しています。

それによると、2006年に米軍再編計画が合意された時、日米両政府は日米同盟を、日本の安保とアジア太平洋地域の平和と安定の不可欠の基盤と位置付けたにも関わらず、昨日、鳩山首相は、同盟を口では評価しつつ、普天間合意の実施について「率直に話し合う」と述べた、

これは小さな問題ではない、鳩山氏の姿勢は2006年合意全体を危うくするものだ。普天間の移転なしには、海兵隊8000人のグアム移転などもなくなる、

鳩山氏は、日米間にもっと距離を置くという選挙公約を守っているだけだと思っているのかもしれないが、代替案について熟慮したようには見えない。日本は防衛予算を増やすのか、北朝鮮の核と中国の軍拡はより緊密な日米関係を必要としないのか、外交だけで日本の安全を保てるのか。鳩山氏はこれらの問題を真剣に考える必要がある、と言っています。

米国は鳩山政権の成立直後は、新政権が日米関係重視を掲げていたこともあって、新政権との関係を忍耐強く築いていくという姿勢をとり、日本の政権交代が日米関係に与える影響についても楽観していたように思えます。新聞などの論調も新政権に対して好意的でした。

しかし最近の評価は、メディアの論調でも政府当局者の匿名発言においても悪い方向に振れてきており、この社説もそうした流れの中にあります。

オバマ訪日までもうあまり時間はありませんが、鳩山総理は日米間の信頼関係が揺らいできていることを深刻に受け止めるべきだと思われます。インド洋上の給油活動やアフガン支援は、日本が自発的に決める問題ですが、米軍再編は日米合意の尊重、実施の問題です。

合意を守ることは、信頼関係の基礎であり、また、合意は合意によってしか変えられないということを肝に銘じるべきでしょう。米軍再編合意は長い交渉の産物であり、その過程で日米双方の多くの人がしたくもない譲歩をして作られたものです。政治的な事情が変わったからといって、簡単に反故にしてよいものではありません。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:01 | 日本 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米台貿易拡大論 [2009年10月25日(Sun)]
ウォール・ストリート・ジャーナル10月25日付で、ジョン・マケインの安全保障問題顧問を務め、最近CNAS(民主党系の政治、安全保障専門家が中心となって設立されたシンクタンク、ただし超党派を原則とする)に加わったRichard Fontaineが、中台間の経済の緊密化に対抗するために、台湾と米国間、また台湾とASEANなどとの経済交流を促進すべきだと論じています。
 
すなわち、中台交流は結構だが、強力な経済関係は政治的梃子にもなり得る。中台間では年内に「経済協力枠組み合意」が成立して、貿易はさらに拡大すると予想され、その結果、中国は台湾に対して政治的影響力も持つようになるだろう。現に、ダライラマ訪台後、中国観光団の台湾南部訪問がキャンセルされるという出来事があった、

他方、米台経済交渉は現在停滞しているが、これが合意されれば、中台間に匹敵する自由貿易が実現する。また、米国は、台湾とASEANなどとの貿易増進にも力を貸すべきだ。この地域で自由貿易を推進することは戦略的に重要だ、と言っています。

中台経済関係の深化それ自体は結構なことだが、中国がそれを政治的梃子として使う恐れがあることは、台湾の民進党系の評論を含めて広く指摘されているところです。この論文は、その対策として、事態をゼロサム・ゲームと捉えず、台湾と他の地域との経済関係も拡大することにより、拡大均衡を得ようという、建設的な提案をしているわけです。

中国の強烈な対台湾平和攻勢に対して、この提案がどれほど有効な政策になりうるかは別として、前向きの建設的提案と思われます。二国間の経済交流が深化することと政治とは、本来、無関係であり、それは、第一次大戦前の英独経済関係の深化の例を見ても明らかです。ただ、問題は、他の国と違って中国共産党政府には、経済関係を政治的操作の道具とする体質があり、一党独裁国家としてそうした政策を遂行する能力があることです。ダライラマの訪台に不快感を示すために観光団の旅程を変更することなどは、その典型であり、他の国は敢えてしないことです。

中国共産党専制国家の体質である以上、これはいかんともし難く、中国と貿易する以上は与件として受け止めるしかないでしょう。外部の国が出来るのは、そのつど、それが国際的な行動規範に反していることを指摘して咎め、それに譲歩しない毅然たる態度をとることであり、逆にそれが出来れば、経済関係の深化はさほど恐れるに足らないように思われます。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:03 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
日中バブル対比 [2009年10月22日(Thu)]
米AEIの機関紙、The American10月22日付で同研究所のMichael Auslinが、香港で中国経済の過熱ぶりを体感し、かつて日本のバブル時代とその崩壊を体験した身として、一体こうしたことがいつまで続くのだろうか、と感想を述べています。

すなわち、最近のオークションではワイン1本が$93,000で売れたが、これは日本のバブル時代を彷彿とさせる出来事であり、中国の将来にも思いを馳せることになる、

こんな消費は続くはずがなく、中国に破綻が生じるとすれば、それは富裕階級の浪費から来るのではないか。日本がそうだった。日本の繁栄はいつまでも続くと思い込み、日本経済が持つ弱点などは無視されるようになった結果、伝統的な価値観や抑制も失われ、貯蓄率も下がってしまった、

しかも中国のような貧富の格差の大きいところでは、バブルがはじけた時の影響は日本の場合よりももっと大きいだろう。また、国際的にも影響は大きく、中国経済の破綻は、世界経済を停滞させてしまうだろう。例えば、中国が米国債を買うのを控えるだけで、米国の金利は暴騰する。いつ中国経済が崩れるかは想像の限りではないが、それに備えておくことが賢明かもしれない、と言っています。

経済学者ではないオースリンは、日中のバブルを理論的に比較しているわけではなく、美術品の高値購入、ロックフェラー・センターやペブル・ビーチなどの買収、パーティーにおける浪費等の日本のバブル時代の経験を想い出し、それらを現在の中国の具体例と重ねて、こんなことがいつまでも続くはずはない、と感想を述べているわけです。

「奢れるもの久しからず」、という感想だけの論文ですが、言っていることは千古の哲理であるかもしれません。経済的なファンダメンタルズから中国経済の弱点を論じる経済学者の手法ではなく、こんな浪費が続くはずがない、という直感的判断で捉えているのですが、あるいは、中国の庶民から見ると、これが切実な現実的感覚であるかもしれません。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:17 | その他 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
民主党の対米政策への危惧 [2009年10月22日(Thu)]
ウォール・ストリート・ジャーナル10月22日付で、ブッシュ時代に米国家安全保障会議の核不拡散部長を務め、北朝鮮問題を担当したクリストファー・ヒルの政策に反対して辞職したCarolyn Leddy(日本滞在中)が、日本民主党の安保政策を批判しています。

即ち、民主党は、沖縄の基地に関する日米合意については、国内的状況が変わったと言い、インド洋の給油活動についても、継続しないと言っている。また、岡田外相は核の先制不使用を言い、鳩山総理は西側の国際機構と競争する東アジア共同体を主張している。これでは東アジア安全保障の礎石である日米同盟は揺らいでしまう。また、国内向けに言っているだけなら、それでも良いが、そうでないとすれば、東アジアの安全保障機構全体を脅かしてしまう、

鳩山内閣のすべきことは、日米同盟の基礎を揺るがすことではなく、過去50年間の防衛負担の不均衡を是正するために、他のポピュリスト的政策に優先させて、防衛費を増額することだろう、

オバマ大統領も鳩山総理も、核廃絶を目指しているが、それと同時に、彼らには国民を防衛する義務があり、そのためには同盟の亀裂を防がねばならない、と言っています。

これは、米国の防衛関係有識者が鳩山新政権の安保外交政策に対して抱く懸念を、最も単純直截に表現した論文と言えます。ただ、レディーも、「この先どうなるかは予測できない」と言っているように、これは現時点における懸念を最大限表明しているものであり、今回の東アジア首脳会議の鳩山発言のように、日米同盟を再認識する政府の姿勢が明らかになるにつれて、懸念は漸次弱まって行く可能性はあります。

ただ、防衛費増額の問題については、たまたま日本の防衛態勢が大幅な更新時期に来ている一方、中国が飛躍的に軍備を増強させ、北朝鮮も核武装したという情勢下で、日本も防衛費の増額が必要な時期に来ていることは、誰も否定できない客観的事実です。従って、現在の三党連立政権では難しいとしても、早晩、この問題に対処しなければ、日本の安全保障政策は整合性がとれなくなります。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:46 | 日本 | この記事のURL | コメント(1) | トラックバック(0)
米国のCTBT批准への反対 [2009年10月20日(Tue)]
ウォール・ストリート・ジャーナル10月20日付でJon Kyl米上院議員が包括的核実験禁止条約(CTBT)批准に反対を表明しています。

すなわち、CTBTについては、10年前にクリントン政権が批准しようとしたが、上院で僅差で否決され、その後、ブッシュ政権はCTBTには否定的な姿勢をとってきたが、オバマ政権は批准しようとしている、

しかし、@CTBTは禁止対象の定義が不明確で、批准国は自国に都合よく条約を解釈できる、A秘密の核実験は検証できない、B核実験ができないと、(老朽化などによって)米の核兵器の信頼性を維持できなくなるし、日本など同盟国に対する拡大抑止にも悪影響を及ぼす、CCTBTを批准しても、北朝鮮やイランの核開発をやめさせる効果はない、と述べて、米国がCTBTを批准することに反対しています。

カイル上院議員の反対論はこれまで言われてきたことの繰り返しです。禁止対象の定義はゼロ・イールド(核実験の全面禁止)ということで、それなりに明確であるし、秘密の核実験も地震波からそれなりに探知できます。ただ、兵器の信頼性を未臨界実験などで確認し得るかどうかについては、学者の意見は分かれています。クリントン政権も核兵器の信頼性は重視し、科学者に検討を依頼、ジェイソン報告で他の手段によって信頼性は確保し得るということになって、批准要請に踏み切った経緯があります。

また、米国のCTBT批准が、イランや北朝鮮の核開発をやめさせることに直接つながらないのは、カイルの指摘通りですが、CTBTさえ批准せずに不拡散を主張するのは身勝手だ、という見方も成り立ちます。

カイルはCTBTのような欠陥条約の批准ではなく、イランや北朝鮮の核問題に注意を集中すべきだと言っていますが、CTBTへの取り組みと、北朝鮮・イランへの取り組みは相互に排除しあう関係にあるわけではありません。それに、CTBTは、今のところ、発効要件国の内、イラン、北朝鮮、インド、パキスタン、イスラエルが批准する見込みがないので、発効することはないでしょう。

なお、核軍縮を進めて核のない世界を目指すことと、現実に核兵器が世界の平和を守る役割を果たしている問題とでは、いずれがより重視されるべきかといえば、これは疑いなく後者でしょう。岡田外相が提起している核の先制不使用は、後者の問題に関わりますが、将来の不確実な目標の実現の観点から現実を無視して核の問題を論じているきらいがあり、中国を除く核兵器国の支持は得られないでしょう。まして北朝鮮などは、日本への核使用を「最強の武器による本拠地攻撃」と言っているのが現実です。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:10 | 米国 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
ロシアが抱えるエネルギー問題 [2009年10月16日(Fri)]
英ファイナンシャル・タイムズ10月16日付で英国のロシア・欧州専門家David Clark(1997〜2001年外相顧問、現在Russia Foundation会長)が、ロシアのエネルギー問題について論じています。

それによると、プーチンはエネルギー資源依存の経済政策をとり、さらに、エネルギー資源を外交手段に用いて、ロシアを世界の支配的エネルギー供給国にすることを目論んだが、この戦略は、@原油価格の暴落、A世界的な省エネの動きと石油からの転換の加速化、B天然ガスの世界需給の緩和のために破綻してしまった、

しかも、ロシアの既存の油田、ガス田は枯渇しつつある一方、ロシアは外国企業の資金・技術なしには新たなエネルギー資源開発はできないのに、これを制限している。また、昨冬のロシア=ウクライナ間の天然ガス紛争は、ウクライナ経由でロシアからガスを輸入しているEUに、ロシアのエネルギーに依存することの危険を痛感させてしまった、

結局、ロシアは今のところエネルギー憲章条約(ECT)の批准を拒否しているが、いずれECTかそれに類似の条約に署名して、信頼できるエネルギー供給国であることを証明しなければならなくなるだろう、と言っています。


今回の世界金融危機は、ロシア経済のエネルギー資源への依存ぶりを暴露しました。2000年〜2008年の原油価格上昇で5倍になったGDPは、今年は、昨年夏以降の原油価格暴落と金詰まりの影響で前年比約10%も減少しています。

メドベージェフもプーチンも、エネルギー依存の危険性と製造業強化の必要を指摘してはいますが、ロシア経済は軍需産業を除いて製造業を伸ばせる体質にはありません。原油価格の回復に従って、ルーブルは再び上昇を始めていますが、ロシア国内の製造業はこれによって益々不利になります。完成品輸入に高関税をかけると共に、外国企業による対ロシア直接投資を促すしか道はないでしょう。もっとも、短期的には、当面の原油価格回復と西欧からの資金流入回復によってロシア経済は小康状態を保つ可能性が高く、そうなれば指導部の危機感は薄れることになります。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:16 | ロシア・東欧 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
民主党安保政策への懸念 [2009年10月15日(Thu)]
Far Eastern Economic Reviewの10月15日付ウェブサイトで、米AEIのMichael Auslinが民主党内閣の安保政策について懸念を表明しています。

冒頭、政権成立前に民主党の安保政策に関与した山口壮議員の、ミサイル防衛の対ミサイル命中率は1%だという趣旨の発言をとりあげ、山口氏には既にあまり発言力は無いかもしれないが、民主党の安保政策は掴み難く、その真意を読み解くには、こうしたヒントにも頼らざるを得ないとして、北朝鮮の核の脅威や中国の軍備増強という東アジア情勢の下で安保政策が重要であるこの時期に、民主党の安保政策の前途に不安を表明しています。

そして、日本がインド洋での補給活動を止め、防衛力近代化の努力を緩め、中国に接近、そして北朝鮮の核については、ミサイル防衛ではなく国連決議だけを頼るようになれば、ワシントンは、日米同盟を再検討しなければならなくなる、と言っています。

これは、政権成立前の山口壮氏の発言を取り上げた思い付きの論文のようにも見えますが、オースリンが憂慮しているのは、日本が防衛力近代化の努力、とくにミサイル防衛を怠ることであり、それは年末の予算編成に向けて大きな実質的課題だと言えます。

実は防衛予算については、民主党政権になったからというよりも、自民党政権時代以来ここ数年間の傾向が憂慮されます。

日本は、「隠れた成功物語」と言われた中曽根・レーガン時代の防衛計画が実を結んで、90年代前半には核を除いて世界第二の近代的海空軍を持つに到りました。しかしその後は、冷戦が終わり、米国もクリントン政権時に軍備縮小時代に入り、さらに、過去の投資によって日米同盟が東アジアで圧倒的な軍事的優位を保っていたことから、防衛努力が閑却されていました。

そのため、日本の軍備は次第に老齢化し、更新を必要とする時期に来ています。つまり本来なら、新たな防衛計画大綱を作成し、次の目標と計画を定める時期に来ているのですが、まさに、そうした時に今回の政権交代が起こったわけです。

他方、中国は、90年代半ば以降、驚異的な軍備増強に乗り出し、アジアの軍事バランスは年々脅かされるようになってきました。かつては、東シナ海で中国に対して圧倒的優位を誇った自衛隊の軍事力も、既にバランスが逆転したか、あるいは逆転は時間の問題という状況になっています。

こうした時期に、恐らくは安保予算よりも国内予算重視と思われる民主党政権が誕生したのは、歴史の皮肉と言えます。日本の防衛関係者としては、防衛力更新の必要を指摘し続けるしかないでしょう。安保政策は長期的問題であり、日本が防衛力増強に踏み切るのが1〜2年遅れても無意味ということはありません。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:20 | 日本 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
中印国境対立 [2009年10月15日(Thu)]
ウォール・ストリート・ジャーナル10月15日付で、米アジア太平洋安全保障研究センターのMohan Malikが、最近くすぶっている中印国境紛争について論じています。

それによると、インドのシン大統領は9月初めに紛争地域のArunachal Pradeshを訪問し、同地域はインドの不可分の領土だと発言した。他方、中国は今年初め、アジア開銀による13億ドルの借款に対して、それがArunachal Pradeshにおける灌漑事業を含むという理由で反対するなど、中印間で対立が目立ちはじめている、と指摘し、

インド軍はこれから大規模な軍近代化に乗り出そうとしているところであり、軍事バランスでは今のところ中国の方がはるかに有利であるが、実際の戦争になれば、中国軍が1979年の対べトナム戦以来、戦闘を経験していないのに対し、インド軍は近年実戦経験を積んでいるから、そう簡単に勝負はつかないだろう。それに、中国の場合、インドに対して強硬な態度にでれば、これまで懸命に築いてきた平和国家のイメージを傷つけてしまうし、さらには、中国包囲網を作らせてしまうおそれがある、と述べて、結局は、両国間の外交的解決が望ましい、と結んでいます。

中印間には、今でも、潜在的な国境紛争があることを指摘した上で、しかし、現状では大事に至らないだろうと常識的な分析をしている論説です。

特に中国にとっては、領土問題で武力行使をした場合の外交的あるいはイメージ上の損害は大きいので、中国から手を出すことはないだろうと思われます。問題は、むしろ、過去の中国の暴慢に反発しているインドが、最近の国力の充実と米国との良好な関係を背景に、より積極的に領土問題にかかわって来る可能性があることでしょう。しかし、それも、実力が中国より劣る現状では、決定的な対決まで行く情勢ではないようです。




Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:44 | その他 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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