CANPAN ブログ検索
Loading
  • もっと見る

世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


プロフィール

特定非営利活動法人 岡崎研究所さんの画像
Google

Web サイト内

カテゴリアーカイブ
最新記事
最新コメント
△小泉純一郎前首相の医師久松篤子
英米関係は共通の理念に支えられる (10/08) 元進歩派
実績をあげているオバマ外交 (09/21) wholesale handbags
タクシン派のタクシン離れ (07/04) womens wallets
豪の新たな対中認識 (07/04) red bottom shoes
バーレーン情勢 (07/02) neverfull lv
石油価格高騰 (07/02) wholesale handbags
金融危機後の世界 (07/02) handbags sale
米国の対アジア政策のリセット (07/02) neverfull lv
ゲーツのシャングリラ演説 (07/02) handbags sale
パキスタンの核の行方 (07/01)
最新トラックバック
リンク集
月別アーカイブ
https://blog.canpan.info/okazaki-inst/index1_0.rdf
https://blog.canpan.info/okazaki-inst/index2_0.xml
MD政策見直しの弊害 [2009年09月17日(Thu)]
ウォール・ストリート・ジャーナル9月17日付で、Melanie Kirkpatrick元同紙評議員とJack David元国防次官補(大量破壊兵器担当)が、「東欧へのMD配備を中止した」オバマ政権の決定を厳しく批判、オバマの姿勢を、「弱い、米国の利益に反する」と言っています。

すなわち、ポーランドとチェコへのMD配備中止は、@米国をイランの核ミサイルの脅威にさらす、A東欧の同盟国を安易に「捨てた」ことで米国の核の傘に対する信頼性を落とし、日本等を核武装に走らせかねない、Bロシアの圧力に屈したことになり、旧ソ連圏でのロシアの専横を許すことになる、と言っています。

世界中のマスコミが、MD配備の中止ばかり書きたてていますが、実は、オバマの記者会見で配布されたFact Sheetには、米国は今後、@海上配備に加えて、移動式陸上配備MD(欧州を狙うイランの中距離ミサイルに対処するもの)を欧州に配備する、Aイランが米国を狙うICBMを開発することを想定して対抗MDを配備すると書かれています。Aは2020 年以降に関するもので、実際にどうなるか今はまだわかりませんが、@は、東欧への固定配備(敵から狙われやすいので、脆弱)よりもむしろ欧州防衛を強化するものとも言えます。つまりオバマ政権としては、今回の決定は撤回ではなく、合理化、強化だということでしょう。

それに、元々ポーランド、チェコへのMD配備計画は、十分な説明もなしに唐突に出てきた感があり、両国の国内世論も割れていましたし、欧州勢の大半も懐疑的でした。さらに、今回の決定で、欧州に配備されるMDはロシア向けではなく、イランのミサイル向けのものであることがより明確になりました。

そのため、今回決定に際して米国がロシアと協議したとは思われませんが、米国はこれを背景に、@ロシア領空を通過してのアフガニスタン向け米軍事物資の空輸(これなしには米軍大幅増派は不可能)、ASTART-1(戦略核兵器削減)改訂交渉の促進、B対イラン制裁を支持するというメドベジェフ大統領の言質、を得たかっこうとなり、こういう観点に立てば、オバマ政権はむしろ非常に巧妙な外交を行なったことになります。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 13:59 | ロシア・東欧 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
ネタニヤフに圧力を加える方法 [2009年09月16日(Wed)]
ニューヨーク・タイムズ9月16日付でNATO国防大学中東問題顧問のPierre Razouxが、中東和平推進のためにイスラエルにどのような圧力をかけるかを論じています。

すなわち、ネタニヤフは米との衝突は避けつつ、和平交渉の遅延をパレスチナ側のせいなどにして遅らせている。それに対し、オバマは、イスラエル・ロビーが反対するため、イスラエルへの金融・軍事支援を減らして圧力をかけることはできないものの、@イスラエル擁護のために安保理で自動的に拒否権を使うことを止める、A来年の核拡散防止条約の再検討会議にイスラエルの参加を公に促す、B借款の保証を縮小する等、別の圧力手段を持っている。また、より簡便で効果的な方法として、米とイスラエルの利益はいつも一致するとは限らないことを明らかにし、対イラン交渉についてイスラエルに知らせるのを止めて、イスラエルの関心事項が必ずしも米の最優先事項ではないことを知らしめることもできる、と述べ、

ネタニヤフがオバマのカイロ演説について事前通報がなかったのを怒ったことを見ても、こうした間接的圧力は有効だろう。それに、イスラエルの安全保障を脅かすわけではないので、イスラエル・ロビーもそれを理由にオバマ政権に圧力を加えることはできない、と言っています。

ラズーが言うように、ネタニヤフが中東和平交渉について遅延策を弄している――自らの政権基盤との関係上、そうせざるを得ない面もありますが――のは明らかであり、米が中東和平を進めるためには、イスラエルの態度を変えさせる必要があります。

今具体的に問題になっているのは、ネタニヤフが入植地での建設拡大を打ち出し、アッバスがそれに反発、建設が凍結されない限り、米が望む10月の米・イスラエル・パレスチナ三者首脳会談に出ないと表明して、首脳会談の実現が危ぶまれていることです。

そもそも国際法違反の入植地の建設は、パレスチナ国家の実現を危うくするもので、オバマ政権としてもその拡大は抑え込む必要があります。そのためにどのような圧力をかけるか、イスラエル・ロビーの反応も考慮しつつ、知恵を出す必要があり、ラズーの提案もその一つです。

ただ、イランとの交渉内容をイスラエルに知らせないというのは、嫌がらせに類することで、よい知恵かどうか疑問です。それよりも、入植地は許容できないと米国が正面から理由を挙げて説明する方が正攻法でしょう。また安保理で拒否権行使を止めることや、NPT再検討会議へのイスラエルの参加を実現するのは容易ではありません。

要は、知恵は出す必要はあるが、それ以上に必要なのは、米国がイスラエルの頑固さに負けずに、腹を決めてイスラエルに要求を出し、応じなければそれなりの対応をするということをイスラエルに分からせることでしょう。これまで米国は国内の政治事情もあり、これができていません。



Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:04 | 中東 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
ロシア議会選挙と民主主義 [2009年09月15日(Tue)]
ウォール・ストリート・ジャーナル9月15日付で、ロシア自由民主化運動リーダーのVladimir Kara-Murza Jr.が、現在のロシアの非民主主義的な政治を批判し、民衆の不満に捌け口がない政治は旧ソ連諸国で起きた「カラー革命」のようなものをロシアでも挑発しかねないと論じています。

すなわち、10月11日のモスクワ議会選挙は経済危機後、市民が意見を表明する最初の機会になるが、当局は反クレムリン派の候補者の立候補を手続きの不備を理由に阻止した。ムガベやミロセビッチでさえ反対派の立候補は認めたが、今のロシア政府は格好をつける気もない。また、プーチンは2012 年の大統領選への出馬を示唆しており、これがロシアの政治の現状だ、と述べ、

プーチンは、ロシア人は民主主義を望んでいないという神話を利用しており、西側でもそれを言い訳にする向きがあるが、これは歴史的な事実に反する。最近の世論調査でも、プーチンが廃止した知事直接選挙制の復活を57%が望んでいる。第一、民衆の間に民主主義への支持がないのなら、立候補を妨害したり、集会を強引に解散させる必要はないはずだ。反対派を沈黙させ、不満を抑え込んでいると、政府は民衆の支持を失い、腐敗も進行して、民衆の不満は投票所ではなく、街頭に向かうことになろう。政府は「カラー革命」を恐れているのに、皮肉にもむしろそれを挑発している、と言っています。

ロシア人が民主主義を望んでいるのかどうかは、簡単に答えられる問題ではありません。プーチンが民主主義を破壊しているのは事実ですが、ロシア人の大多数は石油高騰による好況の中でそれを許容してきた面があります。また多くのロシア人は、無秩序より秩序、人権より国権重視の傾向があります。その背景には、エリツィン時代の民主主義が、国家の衰退とともに、無秩序や混乱として連想されるという不幸な事情があります。民主主義を望むかどうかではなく、他の価値との比較でどの程度強く望むかと問う方が適切でしょう。

先の見通しを言えば、経済、社会が安定して中産階級が成長してくれば、民主主義への欲求がまた出てくると思われますが、それはプーチン後のことになるでしょう。なお、勝つ見込みのない反対派の立候補さえも阻止するというのは、プーチンの不寛容な性質とパラノイアのせいだと言えるでしょう。
_
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:15 | ロシア・東欧 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
アフガン大統領選挙失敗 [2009年09月10日(Thu)]
ワシントン・ポスト9月10日付でコラムニストのJim Hoaglandが、アフガン大統領選挙が期待されたようなクリーンな選挙ではなかったことで、今後、オバマのアフガン政策は打撃を受けることになるが、当面は代替策がない以上、オバマ政権は、米国民に対して今後の問題点と米国が払わねばならない犠牲について率直に述べ、米国民に責任を共有する覚悟をしてもらわねばならない、と論じています。

すなわち、米政府は選挙前には、問題は誰が選出されるかではなく、いかに公正に選挙が行われるかだと言っていたが、その期待は、国連の選挙苦情委員会が「不正の明白な証拠」があると言明したことで裏切られた。特にパシュトゥン地域の投票率が低かったことは、元々パシュトゥン人が少ないアフガン軍の再建にも暗雲を投げかけよう。今や問題は増派の規模ではなく、増派戦略が、米国民の納得する成果を速やかに挙げられるかどうかにかかっているが、今回の選挙結果は見通しを暗くするものだ。と言っても、代替案はないのだから、オバマはそのことを率直に国民に語り、国民と共に問題に立ち向かってほしい、と言っています。

タリバンの攻勢で米英軍の損害も増えており、アフガン情勢は悪化しています。何よりも援助すべき現地政権の腐敗が著しく、これは米国民の支持に最も影響します。そうした中で、米国では右派左派双方の議員から即時撤退の主張が出てきています。しかしアフガン戦争は選挙以来のオバマの公約であり、ようやく兵力と資金を増やし、正面から取り組みを始めた今、それを止めることは、中道派や民主党主流、そして現実的な軍事専門家には到底受け入れられないでしょう。保守派のホーグランドも、やはり当面はやって見るしかないという考えだと思われます。

元々岡崎の持論では、オバマ政権のアフガン戦争支持は、米国の国益に基づく世界戦略から生まれたものではなく、選挙戦中のレトリックから生じた公約に基づくものであり、米国にとって戦略的根拠は薄い戦争と言えます。しかしホーグランドも言っているように、今止めるわけにいかないのも事実です。そして、日米同盟の維持強化が日本の大戦略である以上、日本としては、米国に対日不信感や挫折感を抱かせないよう、米国がアフガン戦争を遂行する間は協力の姿勢を示すことが日本の国益になると考えるべきでしょう。それに、イラク増派の成功例を見ても、やって見なければ分からないというのもまた真実です。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:45 | 中央・南アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米国のアフガン政策 [2009年09月05日(Sat)]
ニューヨーク・タイムズ9月5日付で、コラムニストのNicholas D. Kristofが米軍のアフガン増派を批判し、民生向上に重点を置きつつ控え目な軍事介入に留めるべきだと論じています。

即ち、この地域に関わった何人ものCIA関係者も言うように、南部パシュトン地域で米軍を増強するのは逆効果だ。パシュトンは、親タリバンと反タリバンに明確に分かれているわけではない。タリバンの残虐さは嫌っても、その清廉さは評価している。またタリバンに加わる動機も、西側に親族を殺されたことへの復讐やカネ目当て等、様々だ。増派を強行すれば、パキスタンでもパシュトン族が不穏化し、最悪の場合はパキスタンの崩壊を招くだろう。つまり、解決は、アフガニスタンからの撤退や兵力増強にはない。外国軍はアフガン政府軍を訓練して主要都市の維持を助けるとともに、教育や農業開発に力を注いで、パシュトンをタリバンから離反させていくべきだ、と言っています。

短期に限って言えば、クリストフの意見はもっともと思われます。ただ、米国内ではイラクについても増派か撤退かで激しい議論がありましたが、結果的に、少なくとも当面は増派が成功していることは留意すべきでしょう。

他方、これまでの経緯や現在の国際情勢を考えると、次のことが言えるかもしれません。すなわち、米国の国際的地位は一時的にせよ転換点にあり、世界の余剰資金も減少して、「反米」は以前のインパクトを失い、国際テロ組織に流れる資金量もおそらく減ったことから、国際テロも転換点にあるかもしれない。つまり、「米国が国際テロの標的になる」、「アフガニスタンが国際テロの巣窟になる」、ことをどこまで心配する必要があるか、再評価が必要と思われます。

また、アフガニスタンはオバマ政権が始めた問題ではないので、撤退しても、致命的失点にはなりにくいでしょう。そこで、撤退への世論を高めて、野党共和党に撤退を求めさせ、目下難航している健康保険問題での共和党側の譲歩と引き換えに撤退するという高等戦術も可能でしょう。

もっとも、こうしたシニカルな計算とは別に、アフガニスタンの民生向上、特に農業開発については、国際社会は真剣にやることを決めるべきであり、それこそ日本は率先して調査・マスター・プラン作成を進めるべきでしょう。

ただ、いずれにしても、アフガニスタンがまだ国家の体をなしておらず、部族社会にとどまっていることは考慮に入れておかなければなりません。援助案件を実行するにしても、完全なアカウンタビリティーは期待し難いでしょう。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:17 | 中央・南アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
石油価格安定 [2009年09月04日(Fri)]
カーター時代に国務省でエネルギー政策に従事したこともある石油専門家、Edward MorseがForeign Affairs 9-10月号で、石油価格は今後安定すると予想し、合わせて、米国はサウジと密接に協議すべきだと論じています。

論文は、一般にはまだ知られていない情報も使って、長期的石油価格の動向、採油技術の進展から見た今後の供給、米国や中国などの需要の動向等を詳細に分析しており、参考になるところが多々あります。中でも、サウジが増産を決意したことの重要性を指摘している点が注目されます。

すなわち、世界の石油余剰生産能力は、2002〜03年にかけてヴェネズエラやナイジェリアの政治状況等のために急速に消滅し、石油価格の上昇が始まった。ところが、サウジなどが石油価格の上昇に安心したこともあって(それが失敗だった)石油開発を怠り、また、BPやExxon Mobilなども、開発投資による株価下落を恐れて投資をしなかったため、2003-2008年の石油価格高騰を招いてしまった。その後、覚醒したサウジは増産に転じ、現在、生産能力は12.5 million bd.となり、その結果、OPECの生産能力は空前の規模となった。今やサウジの石油余剰生産能力が今後3年間(世界の需要が反転拡大しなければ更に長い期間)石油価格を抑える決定的な要因となるだろう、と述べ、

サウジが余剰能力を持っていることは、サウジの国益に合致する。また、それは、イランやロシアなどの石油収入を減らして地域の安定にも資するし、投機を抑えることもできる。現在サウジは、石油価格を$40-75に抑えようとしていると推測される、

他方、米国とサウジの利害も一致する。両国は、世界経済の成長のために石油価格が急激に変化しないこと、そしてイランの収入が減り、テロリストに資金が流れないことを望んでいる。両国の対話と協力が強化されることが望ましく、オバマが中東への石油依存を減らそうとしているのは、米サウジ関係にとっては望ましくない、と言っています。

1979年の高騰後、石油価格が反落し、低価格が長期にわたった時代の経験から、原料価格というのは、一度下がるとなかなか回復しない、というモースの議論には共感できます。そして、今後もし、モースが提言しているように、米国とサウジの戦略的関係が深まり、石油価格の乱高下を防げるようになるとすれば、それはまさに画期的なことでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 13:42 | 中東 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米帝国衰退論批判 [2009年09月02日(Wed)]
Foreign Affairs 9-10月号で、独ツァイト編集発行人のJosef Joffeが米帝国衰退論を批判しています。

即ち、米国衰退論は、50年代のスプートニク・ショックからポール・ケネディの大国の盛衰論まで、10年おきに出現するものだ。90年代はソ連崩壊、日本の「失われた十年」、そして米国の長期的景気のために一休みしたが、ここにきてまた皆が言い始めている。

しかし経済の数字を見比べれば、米国はまだまだNo.1であり、第一次大戦前の英独の差とは比較にならない。何よりも違うのは軍事力で、米国の海軍トン数は2位以下の17カ国の総計よりも大きい。

また急成長している中国は、購買力平価で計算すれば2015年には米国に追い付くかもしれない。しかし購買力平価だけで評価してよいか疑問があるし、中国の経済成長が直線的に伸びるとは限らない。常識的には今後中国は成長率7%、米国は3.5%と考えるべきで、それならば中国が追い付くのはまだ先だ。

何よりも、米国は他の国が果たせない役割を担う大国だ。それが出来るのは、国家利益の追求が同時に国際公共財への貢献となるようなリベラルな海洋国家だろう。英国も自らの国益のために世界帝国を築いたが、その過程で、自由貿易、海洋の自由、金本位制をもたらした。他方、中、印、日、ロ、EUなどが、そうした役割を果たすとは思えないし、第一、誰がこれらの国や欧州の支配下に入りたいと思うだろう、と言っています。

要するに、結論は、米国衰退論は俗論であり、米国の指導的地位は今後も続く、という平凡かつ常識的なものですが、豊富な引用と精緻な議論展開はさすがです。

中で面白いのは、アングロ・アメリカン世界の覇権についての考察でしょう。「自国の国益の伸長が国際公共財の創出につながるリベラルな海洋国家」という定義は、アングロ・アメリカン世界の覇権の内容をかなり良く説明していると思われます。

もう一つ関心を引くのは、軍事力の重要性の指摘です。大英帝国が19世紀を通じ、仏独米の追い上げで製造業や貿易の独占的地位を失いながら、なお世界の覇権を維持し得たのは、世界中の海域で優位を誇った海軍力の賜でした。現在の米国の軍事力の圧倒的優位は19世紀の大英帝国の比ではありません。米国が現在のGDPの4%程度の支出でこの優位を守れる限りは、いかに経常収支が赤字になろうと、負債が増えようと、米国の覇権は揺らがないでしょう。

ただ、懸念されるのは、例えば世界中どこでもピンポイントで攻撃出来る宇宙兵器のような新軍事技術の出現です。これを使えば、中国は空母機動部隊の建設等に必要な数十年をスキップして米国に追いつくことが出来ます。
 
また、米国が中国による台湾統一を許し、米国の自由民主主義擁護への信頼が失われて、東南アジア全域が中国の勢力圏に入り、日本が窮地に追い込まれるというシナリオも懸念されます。これは、東アジアにおける中華帝国の復活を意味します。あるいはこの戦略的状況の変化の方が現実の可能性は高いかもしれません。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 10:05 | 米国 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米中戦略対話の先行き [2009年09月01日(Tue)]
7月27-28日に、米国側はクリントン国務長官とガイトナー財務長官、中国側はDai Bingguo外務副大臣とWang Qishan副首相が出席して、米中戦略経済対話が行われました。11月のオバマ訪中の準備ともいうべきこの対話について、経済評論家でありコンサルタントであるIan Bremmer とNouriel Roubiniが、ウォール・ストリート・ジャーナル9月1日付で論じています。

即ち、米国はイラクやアフガン問題で頭がいっぱいであるのに対し、中国の関心は専ら経済、特に米中の経済関係に限定されている。中国にしてみると、中国は2兆ドルの外貨準備を持ち、米国の赤字を填め、自国経済を活性化させて世界経済に貢献しており、それで十分ではないか。中国は米国が抱えるイラクやアフガン問題とは無関係であり、イランについては利害が一致せず、東アジアでは米海軍の存在によって日本やインドなどが軍備力増強を控えている今、面倒なことに捲きこまれたくない、ということだろう。対話では唯一、気候変動に関しては成果があったが、CO2についての具体的合意はなく、今後の問題となろう、と述べ、

米中対話の価値を否定するのは間違っているが、双方が対話から現実の取り組みへと進むに従って、両国の乖離は広がっていくだろう、と言って、訪中の成功に懐疑的な意見を表明しています。

現在、米中対話は花盛りで、あらゆるレベルで行われていますが、その成果については、今のところ具体的なものは無く、将来に期待するとされています。一昔前は、中国が国際会議に出席すること自体が稀であり、中国の出席を得られれば、その発言がいかに内容に乏しく、公式論一点張りであっても、中国との相互理解への一歩が踏み出されたとして評価されました。

現在も、そうした状況の延長線上にあると言えます。勿論、その間に中国の国力が増大したために、対話の必要も価値も上がりましたが、内容の乏しさについてはあまり変わりがないようです。そのため、中国のような国に対しては、対話による相互理解という下からの積み上げは無意味であり、問題があればトップに直接決断を迫るしかないという意見も出て来ています。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:34 | その他 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)