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世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


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中国の対イラン石油投資 [2009年07月30日(Thu)]
中国がアザデガン油田開発権益の70%取得に関心を示していると報じられたことを受けて、7 月30 日発行のForeign Policy 誌で、ブルッキングス研究所のErica Downsが慎重な対中対応を説いています。

ダウンズは、これが成立すれば、イランは中国から見返りに巨額の投資を受けて、不足している石油精製能力を増強することになる。イランがガソリンを自給できるようになれば、対イラン制裁措置の効果は大きく減殺されるだろう。しかし中国はこれまで安保理制裁を守ってきているし、イランの核武装を警戒しているサウジ・アラビアから最も大量の原油を輸入しているので、これはそう簡単には成立しないだろう。それに中国にしても、イランが核武装し、それによってペルシア湾の通航が危なくなることは望まないだろう、と述べ、

従って、中国としては、事態が落ち着いた際は、中国にアザデガン開発の優先権が与えられるという保証が得られれば、イラン政情の見極めがつくまで待った方が良いと思うだろう、と言っています。

これは、イランよりも、米国の対中政策に関わる論評と言えます。注意を引くのは、中国が対イラン制裁破りをするのを許さないという強硬な姿勢は示さず、中国自身の理性的判断に期待していることであり、中国に極端に遠慮する最近の米国の態度の一端が表われています。世論の振り子は一度極端に振れると、中庸に戻るまでに数年かかるものです。

また、ダウンズはアザデガン油田開発について中国に「優先権を与える」ことを言っていますが、これは日本にこそ与えられてしかるべきであり、この点は日本も米国に明確に主張しておくべきでしょう。

ところで、日本に中東問題で貢献を迫る時の米国の論拠だった「ペルシア湾の通航の安全確保」が、中国に対しても用いられていますが、中東原油の利権は産油国自身が大部分握るようになった現在、イランも含めて産油国が自らペルシア湾通航を阻害することは考えにくくなっています。

また、中国は今年、トルクメニスタンから年間400 億立米の天然ガスを輸入することで合意していますが、これは、これまで同国の天然ガスをほぼ独占輸入してきたロシアの輸入量に匹敵します。このことは、中国を南西アジア・中央アジア・中東の接点地域における政治的要因とするものであり、冷戦時代の地域分けが時代遅れになってきたことを示しています。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:02 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
アジアにおけるF-22の必要性 [2009年07月29日(Wed)]
Foreign Policy誌の7月29日付Web版で、米AEIのDan Blumenthalらが、アジアの地政学的見地からF-22の必要性を論じています。

ブルーメンソールらは、米上院でF-22戦闘機の生産停止が表決されたが、これを批判する者たちでさえ、米国の空軍力の減殺にしか目が行かず、このことがアジアに対して深刻な地政学的影響を与える可能性に気づいていない、

アジアでは未だにパワー・ポリティックスが幅をきかせ、高性能の空海軍力が最重要性を持っている。同盟国の日本、韓国、オーストラリア、そしてインドは、このアジアに所在し、いずれも中国の軍事力拡大に懸念を抱いている。つまり、これらの国が直面する安全保障の脅威はまさに今現在のものだ。そしてF-22については、日本が一番関心を示しているが、韓国やインドも日本に続く可能性は高い、

米国は、これら同盟国の強化に死活的利益を持っており、同盟国側はF-22欲し、必要としている。同盟国側が対中防衛力を高めれば、中国は紛争解決のための武力行使に自信が持てなくなるだろう。それなのにオバマ大統領は、F-22の製造継続は「許し難い金の浪費」になると主張している、と述べ、

米国が同盟国と協力してアジアで有利なバランス・オブ・パワーを維持しなければ、今後のアジアはこれまでのような繁栄と平和は享受できなくなるかもしれない、と警告しています。

中国が軍事力を拡大しつつあるアジアのパワー・バランスは、F-22なしに安定しないという論説の主張は、日本のF-22導入推進派にとっては実に頼もしい正論ですが、問題は内容の当否ではなく、こうした議論が現在のワシントンでは少数意見に過ぎないことでしょう。AEIは保守系シンクタンクであり、特にブルーメンソールは従来から中国に対して厳しい意見をもっています。しかし、ワシントンのアジア専門家の多くはF-22の輸出に懐疑的であり、これをめぐるワシントンの政治環境は厳しさを増しています。ブルーメンソールらが何を書こうが、こうした穏健現実派の人々の中から強力な賛成論が出てこない限り、F-22の対日供与は難しくなったと見るべきでしょう。

お知らせ:来週1週間は夏休みをいただきます。次の更新は8月17日です。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:32 | 米国 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米中戦略経済対話 [2009年07月27日(Mon)]
ウォール・ストリート・ジャーナル7月27日付に、米国のHillary Clinton国務長官とTimothy Geithner財務長官が連名で寄稿、この日ワシントンで開かれる米中戦略経済対話の意義を説いています。

2人は、米国は中国との公的な関係を強化していくし、今回の会議にも米中双方から多数の閣僚が参加する、なぜなら、「米中だけで世界の全ての問題を解決できるわけではないが、米中が協力しなければ解決できない問題は多い」からだ。ただ、米国は、「中国を重要なパートナーとする努力を続ける一方で、アジアや世界の同盟国、友好国とも引き続き緊密な協力を続けていく」と言っています。

そして、今回の閣僚会議の目的として、@世界経済の回復に向けての協力(そのために中国は輸出への依存縮小と内需振興に努める必要があり、また双方が保護主義を避けなければならない)、A環境・気候問題での協力、Bアジアと世界の安定および経済開発における相互補完的アプローチ(例えば、北朝鮮の挑発への対処、アフガニスタン・パキスタンの安定化、アフリカの経済発展等)を挙げています。

米国では、「米中だけで世界のことを決めていくのだ」という「G2」論が盛んですし、日本でも今回の米中閣僚会議をTVで見て、「ジャパン・ナッシング」の印象を強めた人は多いでしょう。しかしよく考えると、今回の会議でも、米国の背後には同盟国・友好国が全てついているのに対し、中国は裸であり、これは、米中で世界を牛耳るというよりも、周囲の世界に中国を有益な形で取り込む努力がなされているとも言えます。従って日本は、日米関係、日中関係を強固に維持し、その中で日本の立場・利益を米中両国に常にインプットしていくことで、ジャパン・パッシングを防ぐことができるはずです。

勿論、米国が経済危機や中東情勢に気持ちが奪われ、「アジアの問題はすべて中国に委任」する誘惑に駆られがちであることには、十分気をつけていく必要があります。

また、米国がアジアにおける多数国首脳会議としてAPECを最重要視していることを考えると、今後数年は、APECが変動するアジアの政治・経済・安保の未来像を議論・規定する上での主要なフォーラムとなる可能性があります。ジャパン・パッシングを防ぐためにも、日本は2010年に日本で開かれるAPEC首脳会議を最大限活用するべきでしょう。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 14:05 | その他 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
イスラエルによるイラン攻撃の困難 [2009年07月23日(Thu)]
独ツァイト7月23日付で、発行人のJosef Joffeがイスラエルによるイラン攻撃の困難について論じています。

ヨッフェは、イスラエルが自国にとって致命的な危険を長期間(少なくとも一世代)除去するつもりなら、イラン全土に分散する約50ヶ所の施設の内、少なくとも1ダースは攻撃、破壊しなければならないが、その多くは地中深くにあり、所在がわからないものもある、

また、攻撃そのものが、技術的には可能だが、問題山積だ。まず飛行ルートは(共犯と見られたくない米国がイラク経由ルートを許さないだろうから)、距離2000キロのトルコ経由とサウジ経由になるが、イスラエルには長距離爆撃機がなく、給油機も不足している。さらに、要塞化された地下深くの施設を確実に破壊できるような強力な兵器もない、

他方、イランは攻撃されれば、人口が集中するイスラエル諸都市に必ず報復攻撃するだろうし、米国も攻撃対象になるだろう、ホルムズ海峡の封鎖や、ヒズボラ、ハマスからのミサイル攻撃も覚悟しなければならない。

つまり、この問題の専門家、Anthony Cordesmanらが言うように、「イスラエル空軍のイランの核関係施設に対する攻撃は可能だが、これは複雑な行動であって、大きい作戦上のリスクを含む。高い成功の度合いは、何ら保証されない」、と言っています。

ヨッフェの分析と結論に付け加えることは何もなく、イスラエルがここに列挙したような障害が大きすぎると判断すれば、攻撃自体を取り止めることになるでしょう。日本にとっての問題は、イスラエルが攻撃した場合にもたらされる国際政治上の波及効果であり、その大きさは計り知れないと思われます。

今回イスラエルがイランを攻撃すれば、1981年のイラク攻撃当時のような一方的圧勝は到底期待できず、イスラエルも甚大な被害を受ける上に、イランの核戦力も完全には破壊されず、5年、10年先には、イランは必ず怨念に満ちた核兵器国として出現することになるでしょう。




Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:07 | 中東 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
政権交代と日米関係 [2009年07月23日(Thu)]
ファイナンシャル・タイムズ7月23日付で、東京特派員を02年から08年まで務め、現在本社のアジア関係編集者であるDavid Pillingが、来る日本の選挙と日米関係について論じています。

ピリングは、今度の総選挙では民主党が勝利するだろう。そうなれば、戦後日本の安全を保証して来た日米同盟と、それを支えてきた自民党政府という二本柱が揺らぐかもしれないが、案外、蓋を開けてみれば、新しい政権も、姿勢と言葉だけの反米主義で、具体的には大した変化はないかもしれない。ただ、今までのように、ああしろ、こうしろと言っても日本は言うことは聞かないかもしれないと指摘し、その上で、

むしろ今回注目すべきは、日本の政権が戦争の記憶を持たない世代に取って代わられることだ。戦争の罪の意識や、米国依存への反撥意識の無い、こうした新しい世代は、アジア諸国との連帯と中国の脅威の認識の上に立つ日米同盟を構築しようとするだろう、と言っています。

さすが、元日本特派員らしい、日本をよく知っている論説であり、長期的歴史的視点から捉えながら、実際はたいしたことはないのではないか、と醒めた判断をしています。

また論説の主題ではないかもしれませんが、政権交代の前向きの意義を認めているともとれる最後の部分は、日本の前途に希望を持たせてくれる一つの流れを捉えています。目前の政局を離れて、日本の長期的動向という視点から見れば、戦争の記憶から来る反軍思想や、60年70年安保の反米思想で育った世代が去りつつある一方、中国の軍事力は増大し、李明博政権成立で韓国の反日思想も過去のものになろうとしているアジアの中に、現実的な日米韓安保協力関係を許容できる環境が整いつつあるということかもしれません。

ただ、民主党支持勢力の中に、過ぎ去りゆく世代の残滓とも言うべき反米、平和主義勢力が依然残っているので、当面はそれへの対応が、新政権内外の主な問題となるでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:34 | 日本 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米軍基盤の浸食 [2009年07月20日(Mon)]
Foreign Affairs7−8月号で、国防変革の理論的基盤を考案した一人として知られるAndrew F. Krepinevich米戦略予算評価センター理事が、米国の圧倒的な軍事的優位性が損なわれつつあることに警鐘を鳴らしています。

クレピネヴィッチは、中国など新たなパワーの台頭や、イスラム過激派等への先端軍事技術の拡散を背景に、米国が維持してきた圧倒的な軍事的優位が浸食されつつある。これは、冷戦初期にソ連によって核の独占が覆されたのと同様の重大な変化であり、米国は、対ソ「封じ込め」と「抑止」政策の採用に至るまでになされたような深い戦略的熟考を必要としている、

また、非軍事面でも、米経済が相対的に凋落しつつある中で、欧州や日本は、将来の脅威について認識を共有していない、経済的困難に直面している、ただ乗りの利益を追求しがちだ、社会が高齢化しつつある等の理由で、安全保障上の責任を積極的に分担はしないだろう、その事実を直視すべきだ、と指摘、

そうした認識の下に、@イラクやアフガンのようなケースでは、米軍が直接手を下さず、現地の友好勢力を訓練して治安回復・維持の任を負わせる、間接的アプローチをとる、Aパワープロジェクション能力確保のために、前方基地の防護とミサイル防衛を強化する一方、長距離偵察・攻撃能力の開発と通常型ミサイル搭載大型潜水艦の増強によって、前方基地への過度の依存を避ける、Bより小型の衛星を多数配備してネットワークの脆弱性を減じるとともに、サイバー攻撃能力を開発してサイバー空間での攻撃を抑止する、Cズムワルト級大型駆逐艦、陸軍の将来戦闘システム、海空軍の短距離攻撃機、海兵隊の遠征戦闘車両等は脆弱かつ高価格なので、開発配備を停止し、ラムズフェルド以来の国防変革を進める等を提言しています。

クレピネヴィッチは、かつて圧倒的優位にあった米国の軍事能力が資産価値を失いつつある現実を直視し、この前提に立って新たな戦略を立案しなければならないと言っているわけです。論説は回答を示していませんが、冷戦初期に米国が核兵器独占の地位を失ってからの歴史を顧みれば、希望がない訳ではありません。冷戦時の米国の軍事戦略は、アイゼンハワー時代の大量報復に始まり、柔軟反応、相互確証破壊、相殺と、情勢の変化に伴って逐次修正され、最終的にはレーガン政権の戦略防衛構想とあいまってソ連との対決に勝利したのであり、米国が再び圧倒的優位を失いつつある現在、冷戦期と同様の深い戦略思考がなされれば、冷戦終焉と同様の結末を期待することもできるでしょう。一方、クレピネヴィッチの言う、地味ではあるが喫緊の個別施策を進めることも重要であり、着実に変革を進めることが当面の課題となるでしょう。

それにしても、かつて軍事革命を提唱した際は、極めて斬新に響いたクレピネヴィッチの情勢認識や提言が今は常識的なものとして映るのは、15年の歳月を経て、彼らの主張がコンセンサスになってきたからでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:31 | 米国 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
オバマ外交評価 [2009年07月19日(Sun)]
ワシントン・ポスト7月19日付でコラムニストDavid Ignatiusがオバマの大統領就任6か月の外交成果を論じています。こうした評論は多数出ていますが、まだ各種懸案について具体的な成果はないので、イメージ論が主であり、これもその一つです。

イグネイシャスの言っていることは、要するに、オバマ政権は、米国が傲慢であり、一方的な行動をするという国際的イメージの払拭には成功したが、中東和平、イラク、イラン、アフガニスタンなどの対処については、まだこれからだ、ということに尽きますが、一つだけ、具体的問題点として、個別の諸問題を特使に投げてしまい、ヒラリー国務長官やジョーンズ国家安全保障顧問は式典にばかり使うような「いささか混乱した場当たり的外交体制」は整理し直す必要があると指摘しています。

オバマ政権が、米国のイメージ改善に成功したことは間違いないが、実際の懸案となると、これからだ(つまりまだ何も進んでいない)と言うのは、客観的な評価でしょう。確かに不運な面もあって、北朝鮮やイランとの対話を標榜していた矢先に、北朝鮮はミサイルや核実験で挑発して来て、まともな話し合いの相手にはならない状況であり、イランは、政権の正統性が疑われ中で、改革派を無視して現政権と話し合いをして良いがどうか、事態を見極める必要が生じています。イラク撤兵やアフガン増派は、戦略に基づくというより、選挙戦の公約の延長上の政策であり、種々の問題と危険をはらんでいます。もちろん中東和平は誰がやってもそう簡単に行く問題ではありません。

そうして見てくると、オバマ政権半年間の最大の成果は、東アジア政策にあったように思えます。それは国務・国防省の東アジア担当の人事にも良く表れており、政策面では、ヒルの六カ国協議偏重を脱して、北朝鮮が不参加なら五カ国で良い、北朝鮮の参加自体にはいかなる代償も払わない、という姿勢を示したことに表れています。また北朝鮮問題を中心に、日米韓の同盟国間の協力関係を強化しました。これは、オバマ政権6か月の最も顕著な成果として称賛されて良いと思われます。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:51 | 米国 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
中東和平への道 [2009年07月17日(Fri)]
ワシントン・ポスト7月17日付けで、Ehud Olmert前イスラエル首相が中東和平について論じています。

オルメルトは、現在、米=イスラエル間で入植地建設凍結が大きな問題になっているが、これは他の問題に比較して重要ではない。重要なのは、包括的和平のための政治過程やイランの脅威などであり、優先度の低い入植地問題にとらわれすぎるべきではない、と言っています。

オルメルトは、入植地建設問題はさほど重要な問題ではないと言っていますが、これはパレスチナ側にとっては、将来のパレスチナ国家を分断し、その生存可能性を奪う潜在力のある大きな問題です。あるパレスチナ側の交渉担当者は、「イスラエルにとってのテロと、パレスチナにとっての入植地建設は、同じように衝撃を与える問題である」と何度も強調しています。

既に建設された入植地をどう取り扱うかも非常に難しい問題ですが、特に、今もなお入植地が拡大されたり、新たに違法な入植地が作られていることは、パレスチナ側としては全く受け入れられない事態でしょう。そもそも入植地建設は国際法に違反する行為です。

他の問題の方が重要だというオルメルトの主張は、それなりに成立する主張のようにも聞こえますが、より小さな問題である国際法違反の入植地建設の凍結さえせずに、より大きな問題の解決に向かおうと主張しても、説得力はありません。おそらくオバマ政権は、入植地問題をイスラエル側の姿勢を試す踏み絵として重視しているのでしょう。

イスラエルが入植地拡大を止め、違法な新入植地の建設につながるアウト・ポストを撤去すれば、この問題はなくなり、これに焦点をあわせることも、こだわることも必要ではなくなります。イスラエルとしては、入植地建設凍結を宣言して、米=イスラエル間の争点を取り除き、より重要な問題に取り組むほうが得策でしょう。そうした視点からみると、このオルメルトの論説は方向が間違っていると言わざるをえません。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:00 | 中東 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
インドネシアの民主主義 [2009年07月17日(Fri)]
ウォール・ストリート・ジャーナル7月17日付でPaul Wolfowitz元米国防副長官・駐インドネシア大使が、ユドヨノ大統領の再選を受けて、インドネシアにおける民主制の成功と宗教的寛容はイスラム世界のモデルになる、と論じています。

ウォルフォウィッツは、ユドヨノ大統領が今回60パーセントの得票を得て大統領に再選されたことは、一般的には大統領個人の成功と評価されているが、インドネシアがこの10年、民主制の建設に成功したことも同様に重要だ、

スハルト体制が崩壊した10年前、インドネシアで民主制が成功するかどうか、懸念する人は少なくなかった。危機のために人口の4分の1が貧困ライン以下に落ち込み、東ティモールが分離独立したことで、インドネシアの分裂が懸念されたし、イスラム主義急進派の勢力も拡大して、2002年10月にはバリで爆弾テロが起きた、

こうしたことを振り返ると、現在のインドネシアの成功は大変なものだ。一人当たり国民所得は1500ドルに迫り、経済は2000年以降平均4パーセントで成長し、アチェ内戦は終了、各地の分離独立運動もほぼ消滅、テロとの戦いもうまくいっている、

また政治も成熟したが、これにはユドヨノのリーダーシップ、ワヒッド、メガワティの大統領選出に示されるインドネシア社会の宗教的寛容や女性の地位の高さ、市民団体やメディアも貢献したし、米国も貢献した。もっとも、貧困はなお大問題であるし、腐敗も深刻であり、イスラム主義もまだ脅威だ、

しかしインドネシアの安定は東南アジア全体にとって大きな意義があり、インドネシアの宗教的寛容はイスラム世界のモデルとなる。世界はこれを認めるべきだ、と言っています。

この論説は、ユドヨノが今回の大統領再選に際し享受した国際的な正当性を遅まきながら改めて確認したということに尽きます。ユドヨノは、国内的にも国際的にも大きな正当性をもってこれから5年、政権運営に臨むことができるでしょう。

ただ、この論説では、インドネシアの民主制がなぜ成功したかについての分析は不十分です。重要な要因を一つ挙げれば、地方分権があります。現在インドネシアでは、地方分権的民主制の下に、スハルト時代よりもはるかに多くの勢力が体制の存続に利益を持つようになっています。時に優柔不断と評されるユドヨノの政治スタイルも、かなりの部分、この地方分権的民主制の運営に照らして理解されるべきものでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:06 | 東南アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米国とUBSの争い [2009年07月16日(Thu)]
独ツァイト7月16日付で解説記事が、米政府とUBS(スイス連合銀行株式会社Union des Banques Suisses AG)間の争いを取り上げ、一方は世界最強国、他方は欧州の一銀行だから、勝負は見えていると思うかも知れないが、実は米側が最小限面子を護るために示談を求めている、と言っています。

記事は、米側が脱税を疑って米人預金者の氏名開示を迫ったのに対し、UBS側は、スイス政府の強力な支援の下、同国の銀行秘密保護法を盾に抵抗、米側は訴訟を起こしたが、これが突然延期され、両者は舞台裏で示談を図ることになった、

実は、オバマ政権はUBSを追い詰め得ない。UBSの従業員への懸念や、UBSが米連銀との公的証券の取引を許された特別な銀行だからではなく、「第二のリーマン・ショック」が引き起こされることを危惧するからだ、

UBSも世界金融市場を維持してきた体制の一部であり、米政府はCitigroupやBank of Americaを解体できないのと同じ理由で、UBSを国外追放する勇気がなかったのだ。これら二大銀行には、既に900億ドルの資金が注入されたにも関わらず、米財務省は経営陣の交代すら強制出来ないでいる。議会でいかに銀行首脳陣が叩かれようと、現実の力関係には何の変化もないということだ、と述べ、

UBSも同じであり、この件はおそらくUBSが巨額の罰金を払い、形式的譲歩の声明も出して終了することになるだろう。このことは米政府だけでなく、われわれ全員に問題を提起する。即ち、いかに金融規制を厳しくしようが、巨大金融機関はその巨大さゆえに、「免除」が与えられるということだ、と言っています。

この件は、いわゆるtoo big to failのまさに好例であって、昨年の金融危機以来、欧州諸国が米国に規制強化を求め、米国も若干それに応じたものの、抜本的銀行管理体制は、欧米でも日本でも実現されませんでした。

現状をみると、米国の住宅金融二社やAIG救済は当然とされ、「投資銀行」も、不動産や資源投資が行きすぎて救い難くなったリーマンは破産させられたものの、残りの四大投資銀行は生き延びています。結局、悪者はいい加減な基準を流布した格付け会社だったと言わんばかりの説が横行し、大銀行のモラル・ハザードは不問に付されたような感すらあります。今回の経験で、銀行経営はより慎重になるでしょうが、オバマ政権の財務・金融関係者の顔ぶれを見ていると、やがて金融工学なるものを駆使した取引が吹き返し、第二の金融危機が再び訪れるのではないかという気さえしてきます。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:56 | 米国 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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