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世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


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オバマの核政策批判 [2009年06月29日(Mon)]
ウォール・ストリート・ジャーナル6月29日付で、米上院の共和党幹事Jon Kylと、Richard Perle元国防次官補が連名でオバマの核政策を批判しています。

2人は、2008年に結成された超党派のペリー=シュレジンジャー委員会が5月6日に報告を発表、その中で、核抑止力は予見し得る将来は米国にとって必要であり、核抑止力維持のための措置が取られるべきだと言っている、と述べ、

オバマはプラハで行なった核政策演説の中で、CTBT批准を「直ちに強力に追求する」と言ったが、オバマ政権は、根拠もなく、条約批准は他の国の核開発を阻止するとしている。他の国とは、イランや北朝鮮、シリアのことを指すのか、と疑念を提起しています。

そしてシュルツ、ペリー、キッシンジャー、ナンも共同で、「核の無い世界」と言う遠い将来のヴィジョンを示したが、現在の核抑止力を閑却すべきだとは言っていない、と指摘しています。

オバマがプラハで公約した以上、CTBT批准はオバマ政権の政策となるでしょうが、共和党幹事のカイルがここで明確に反対の意思表示をしたので、批准に必要な上院の三分の二獲得のためには、共和党の切り崩しが必要となってきました。また、ブッシュ時代に任命されたペリー=シュレジンジャー委員会の報告も、委員会の報告とは言え、超党派であるので、民主党の中にも懐疑的意見が出て来る可能性があります。

それに、この論説でも言われているように、元々CTBTが1999年には批准されなかったのは、検証の困難さが主な理由でしたが、こうした事情は今も変わっていないかもしれず、さらに、米国とその同盟国の防衛にとって死活的に重要なものを永久に放棄して良いのか、という疑念は拭いきれないものがあるでしょう。オバマの公約が勇み足となる可能性は排除できないようです。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:40 | 米国 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
イランの政権交代を待つ [2009年06月27日(Sat)]
ワシントン・ポスト6月27日付社説が、オバマ=メルケル会談で、オバマが、多数国間交渉は続けるが、米イラン直接対話については今後の形勢を窺いたい、と言明したことを支持し、現段階で、抑圧的なイラン現政府に正統性を与えるようなことは一切すべきでない、と論じています。

社説は、今のイラン政権が宥和的外交政策を取るとすれば、それは、自分たちの正統性を認めてもらいたいためであって、核計画やテロ支援を止めるつもりなど全くない。そうであるなら、米国にとっては、イランの政権が交代することが利益になる。それが実現する可能性は少ないかもしれないが、現政権が穏健化する可能性よりは大きいだろう。米国がそのために出来ることは限られているが、少なくとも政権交代のチャンスを損ねるようなことはすべきでない、と言っています。

これは、米国はアフマディネジャド政権を相手にせず、というスタンスです。この種の政策は、ブッシュの「悪の枢軸」政策、古くは近衛文麿の「蒋介石相手にせず」の例が示すように、相手側の政権が崩れなければ、単なる外交的無為に終わってしまう可能性があります。しかし、イラン国内にこれだけ反対勢力が存在する現状では、崩壊の可能性に賭けて、反対勢力を挫折させるような言動を控えるのは、正しい選択だと思われます。もし不幸にして、情勢がこのまま落ち着いてしまうのであれば、それはその時のことでしょう。それに、その間も、多数国間交渉に委ねておくという逃げ場はあります。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 10:10 | イラン | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
五カ国協議 [2009年06月26日(Fri)]
米国のCenter for a New American Securityが6月に、米国の北朝鮮政策について5人の若手研究者による論文を発表、その中で、現在の六カ国協議を、北朝鮮を抜いた五カ国協議にすることを提案しています。CNASは、キャンベル現東アジア担当国務次官補が中心になって設立した研究所であり、メンバーの多くが政権入りしています。

論文は、六カ国協議から北朝鮮が去っても、地域安全保障機構の利点を温存するための五カ国協議を行うべきだ、ただ、六カ国協議とは異なるものとするために、協議の場所は欧州か東南アジアにすることを考えた方がよい、とした上で、

五カ国は北朝鮮の核保有への反対をはっきり表明し、北朝鮮が参加国間の意見の相違に乗じる隙をなくすべきであるし、さらに、拉致問題などの付随的問題を論じる余地も作るべきだ。また、率直な意見交換をして、東アジアに存在する歴史的対立などの諸問題を扱う場も提供すべきだ、と提案し、

中国の役割は重要であり、中国に対しては、制裁の強化を求めるべきだが、六カ国協議を五カ国協議にすることは、米国の指導力の増大を意味する、と言っています。

新聞、TVの報道によれば、日米はもとより、韓国やロシアも五カ国協議に賛成のようですが、中国は日中次官協議で態度をはっきりさせなかったそうです。それは当然でしょう。今までの六カ国協議では、北朝鮮の参加、つまりは六カ国協議再開の成否は、その都度、中国の北朝鮮説得にかかっていましたが、北朝鮮の参加は不必要ということになれば、中国の存在意義は低下し、反対に、北朝鮮不在の五カ国協議の場では、日米韓の同盟の発言力が増大することになるからです。

従って、実際は、六カ国協議とは別の五カ国協議の設立というCNASの構想(おそらくキャンベルの構想)は実現が難しいでしょう。しかし五カ国協議が提案されたこと自体、既に北朝鮮の参加は必ずしも必要ではないということを意味しますし、それを日米韓ロが支持したことで、北朝鮮の参加という切り札を握っていた中国の発言力の低下は避けられないことになりました。






Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:14 | その他 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
イラン騒乱の宮殿内決着 [2009年06月25日(Thu)]
独ツァイト6月25日付は、イランの権力闘争は宮殿内で、つまり、ハメネイ、アフマディネジャド、ラフサンジャニ等、支配層の間で決着がつくことになるだろう、と論じています。

記事は、彼らはいずれもイスラム革命の申し子であり、イラン・イスラム共和国は保ちたいが、いかなる方法でそれを達成するかで意見が分かれる。アフマディネジャドは武力を使う気であり、最高指導者ハメネイの支持も確保している。ハメネイがアフマディネジャド側についたのは、民衆に譲歩すれば全体制が崩壊すると恐れているためか、あるいは、既に彼自身が大統領一派の人質となっているためだろう。アフマディネジャドが勝てば、イランは事実上、一党独裁国家となり、既存の民主的勢力は根絶やしにされてしまう、

これを回避できる者がいるとすれば、ラフサンジャニしかいない。彼は凝り固まった革命論者だったが、長い闘争を経て、イランはある程度門戸を開かなければ、いずれ確実に没落する、と考えるに至っている、

ラフサンジャニは、「最高宗教指導者」を解任しうる唯一の機関、「監視理事会」の議長であり、かなりの機構的権力を持っている。ただ、ハメネイの解任は可能でも、これは極めて危険な試みだ。あるいは、民衆の圧力が高まれば、ハメネイの正統性が問題にされるかもしれない。 またムサビも、選挙の勝者は自分だとして、ハメネイの命令に従わず、ゼネストを行なうと脅しており、これがより深刻な変化への幕開けになる可能性もある、と言っています。

おそらくハメネイは既にアフマディネジャドの傀儡になっているか、いずれそうなるのでしょう。ホメイニが30年前に持っていたような権威を持つ者は一人もいません。ラフサンジャやムサビも一定の力はありますが、常識的に見て、目下最強なのは、多数の軍事的組織を配下に持つアフマディネジャドです。ただ彼も、下手に民衆運動を弾圧すれば、失敗する恐れがあるというところでしょう。

なお、発行人Joffeは同日付きの自分の欄で、オバマは“change”、“hope”と言うだけで、手をこまねいているが、サルコジやメルケルは、イランの選挙はまやかしであり、「集票はやり直すべきだ」と明言しており、米国と欧州は、ウクライナのオレンジ革命やグルジアのバラ革命の時と立場を逆転させたかのようだ、「(外部との)連帯が勝利をもたらすことはないが、大流血を厭わない連中に対する抑止力にはなる」と述べて、米国が民衆を応援しないことを批判しています。これは欧州らしい見方と言えます。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 14:56 | イラン | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
北朝鮮への中国の関与 [2009年06月24日(Wed)]
USA Today6月24日付で、ブルッキングス研究所のMichael E. O'HanlonとStephen J. Solarz元下院議員が連名で同研究所の北朝鮮政策を発表しています。

二人は、北朝鮮に核を放棄させるには、北に厳しい制裁を課して、政権崩壊か核放棄かの二者択一を迫らねばならず、それには中国の協力が不可欠だが、中国は、北朝鮮の挑発的行動に困ってはいても、北の崩壊による難民の流入と緩衝地帯の喪失の方をより心配している、と指摘し、

中国の不安を和らげる対策として、中国が難民の負担を蒙らないようにすると共に、38度線以北への米軍の駐留は、核施設の撤去など一時的な目的を除いては行わないことを約束する、あるいは、朝鮮半島が安定すれば米軍の必要はなくなるのだから、更に踏み込んで、撤兵を言明することも考えるべきだ、と言っています。

オハンロンは、これまでも、政治的思惑を離れて純粋な軍事的合理性から発言してきており、民主党系のブルッキングスに所属しながら、イラク戦争、特にその増派作戦について、その意義を正当に評価する論説を発表しています。

今回は、軍事戦略に限らない、より広い国際政治戦略の視点から北朝鮮問題についての発言ですが、これはもしかするとこうした観点からの初めての論説かもしれません。

内容は問題の本質を簡潔に捉えており、提案も賛同できるものです。朝鮮半島問題解決の道筋は、結局は、米中間の意思疎通とグランド・バーゲンがあって初めても見えて来るものでしょう。オハンロンらが、その際は日本及び韓国と協議した上で、とはっきり書いている点も、日本にとって好ましい姿勢です。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:31 | 東アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
中印国境対立 [2009年06月24日(Wed)]
ウォール・ストリート・ジャーナル6月24日付で、保守系の外交政策評議会(外交問題評議会とは異なる小規模なシンクタンク)の研究員でインド専門家のJeff M.Smithが、中印国境で両国の対立が高まっていることに注意を喚起しています。

スミスは、中国は、@近年、1962年の中印国境紛争でもめたArunachal Pradesh地方への権利を主張し始め、同地方に向かう道路・鉄道の整備を開始、A今年3月には同地方の洪水対策プロジェクトへのアジア開銀の融資にストップをかけ、さらにB国連安保理常任理事国の座からインドを閉め出す一方、ネパールやスリ・ランカで影響力を伸ばしている。それに対し、インドは、6月に同地方の兵力を10万に増強する発表、また、中国がインド国内の過激派ナクサライトを支援していると非難し、国外でもインド外交官が中国への警戒感をおおっぴらに語るようになってきた。そうした中で中国の6月11日付人民日報は、インドによる同地方の兵力増強を危険な措置と非難し、「中国はインドとの国境問題では譲歩しない」と報じた等、最近の中印関係悪化の実例を列挙し、

米国は中印両国との友好関係を活用して、要請があれば「公平な仲介者」の役割を果たすべきだが、必要な場合は、ブッシュ時代に築いたインドとの戦略的パートナーシップを発展させて、「同盟国」たるインドを助けなければならない。つまり、中国が一線を超えるようなことがあれば、米国は現状固定(現在インドが管理する領土への中国の要求を抑える)の方向で動くべきだ、と言っています。

中印間、特にインドの中国に対する目には嫉視や警戒感の混ざった複雑なものがあるのは確かであり、これはアジアの国際関係における重要要因の一つです。また東南アジアでも、華僑と印僑の間で張り合いが見られます。しかしその反面、両国が協力関係を進めていることも忘れてはならないでしょう。ロシアのイニシアティブで中印ロ首脳・外相会談が何度か開かれています。またインドにとって中国は米国に次ぐ貿易パートナーであり、貿易額は1990年の3億ドル弱から2008年には500億ドルに急増しています。

今後ダライラマの継承問題がこじれ、インドが介入するようなことがあれば、中印国境は一気に緊張を高めるでしょうが、当面スミスが主張するほど切迫した状況は見られません。インドは中国への警戒心、対抗心は緩めないでしょうが、中国との関係が大きく悪化する状況にはないと言ってよいでしょう。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:44 | その他 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(2)
オバマ訪ロの課題 [2009年06月22日(Mon)]
米カーネギー平和財団モスクワセンターのウェブサイト6月22日付で、同研究員のLilia Shevtsovaが、7月初めのオバマ大統領のモスクワ訪問について論じています。

シェフツォーワは、開放、社会福祉、法の支配を望むロシア社会の利益と、ロシアのエリート層の利益は異なる。問題はエリート層で、オバマは彼らだけを相手に譲歩をすれば、STARTの代替条約交渉も含め、貿易・安保問題で進展を図れるだろうが、反面、それは今のロシアの体制を促進し、親西側のロシア人を失望させることになろう。それにこうしたリアルポリティクを展開したブッシュはかえって米ロ関係を悪化させている、

といって、価値に基づく政策を推進すれば、安全保障面での進展は期待できなくなる。また、ロシアを重視しない姿勢をとることもできるが、そうなれば、米との「特別な関係」の復活を望むエリート層は西側から「無視され、侮辱された」と被害妄想をつのらせ、自らの重要性を示すために、周辺国に不当な圧力をかける恐れがある、

従って、今回の訪ロはオバマにとってワナになる可能性がある。ただオバマは多方面から世界の指導者と目されている人物であり、モスクワでの彼の発言は、ロシアのみならず、広く旧ソ連諸国でも注目されようし、西欧の東方政策にも影響するだろう。今ロシアは経済困難に直面し、指導者は方向感覚を失っている。オバマはそうしたロシアに戦略的ビジョンを示す必要がある、と論じています。

オバマがどういう対応をするか、今回の訪ロは注目に値します。この論説は、ロシアの支配エリート層との取引を重視しつつも、ロシア社会との関係も重視すべきこと、また、支配エリート層とロシア社会の利益は一致せず、注意深い対応が必要なことを指摘して、訪ロの問題点の一つを的確に突いています。

オバマ政権は、米ロ関係のリセットを標榜してきましたが、リセットを米側の一方的な譲歩で実現すべきではありません。ロシアの今の支配層には、シェフツォーワが言うような「ならず者」的行動様式が見られ、利害と力に基づく政策しか通用しません。米国はこの点をよく認識して対処すべきであり、雰囲気の改善などにあまり重きを置くべきではないでしょう。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 11:07 | ロシア・東欧 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
イランで進む二つの革命 [2009年06月18日(Thu)]
独ツァイト6月18日付で同紙発行人のJosef Joffeが選挙後のイラン情勢について論じています。

ヨッフェは、革命の最中に流れの行方を見極めようとすることほど愚かなことはない。特に今のイランのように、権力機構に対する民衆の革命と、権力機構の中でアフマディネジャドやその親衛隊が起こしている革命の二つが同時進行している場合はなおさらだ。この後者のクーデタの標的は国民ではなく、アンシャンレジーム、即ち、ハメネイを頂点とする宗教権威者達の支配であって、ここにはラフサンジャニ、ハタミ元大統領、さらには選挙で敗れたムサビも入る。彼らは真の「改革者」ではなく、せいぜい権力維持のために奉仕する実務者に過ぎず、財産、地位、特権等失うものを沢山持っている、

ハメネイはこのクーデタを早くに見抜き、「選挙結果は神の声なり」と宣言したが、これはすぐにボロが出てしまい、アフマディネジャドは、13日に早くも腐敗聖職者たちに釈明を要求している。アフマディネジャドの恐喝は、ジロンヂストや聖職者たちをぶっ潰すジャコバン党員の恐喝と同じだ、と述べ、

要するにアフマディネジャドは、怒り狂う民衆と権力を護らんとする宗教界に対する二正面作戦を戦おうとしている。選挙結果は確かに改竄されたが、彼は決して単なる誤魔化しによって選出されたのではない。選挙前の世論調査では三分の二の支持を得ていた。従って民衆のみでは、このテヘランのロベスピエールを倒すことは出来ない、

本物のロベスピエールは最後には自らの傲慢不遜の犠牲となり、そのあとは、民主主義体制とはならずに、ナポレオンという軍事独裁者に取って代わられた。30年間の貧困化の後に、勇気あるイラン国民はもっと明るい将来に値する、と言っています。

ヨッフェはイランの現状とフランス革命との類似点を指摘しています。この場合、ブルボンの国王に当たるのは、シャーではなく、ホメイニとその後継者であり、アフマディネジャドは、今やこれら宗教権威及び民衆との二正面作戦に出ているとヨッフェは見ています。この見方に与しない者も多いでしょうが、イランという国の現状の矛盾はよく捉えていると言えます。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:10 | イラン | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
中台関係の進展 [2009年06月18日(Thu)]
米Daily Standard(ネオコンのWilliam Kristol発刊のWeekly Standard が発行する地方紙)6月18日付で、AEIのMichael Mazza が最近の中台関係について論じています。

マッザは、中国が台湾との交流を促進し、台湾のWHO大会への参加も認めたことは中台双方の利益になる、と認めた上で、中国は軍備費を増強しているのに、台湾の軍事費はむしろ減っており、また、米国の軍事費も削減されているので、やがて台湾は中国に対して弱い立場になり、中国の勢力範囲に取り込まれてしまうかもしれない。そうなれば、現在の中台関係の増進は相互の利益になるとは言えなくなる、と述べ、

現在の中台関係の改善に反対するものではないが、米国や台湾の政策担当者は中国の意図を常に意識し、力の立場から中国と交渉できるよう、軍備増強を怠るべきでない、と論じています。

現在の中台関係の改善は、保守派の論客にとり、いかなるコメントが適当かという問題を提供するものです。台湾の民進党系の論説は、中国が台湾を経済的に呑み込もうとしていることへの警戒心を強く表明しており、確かに、中国や中国のダミーによる台湾の戦略的産業やマスメディアの資本買収は懸念されます。

しかし、ブッシュ政権以来、米国は台湾の対中強硬姿勢には批判的であり、現在でも、保守的な論説も含めて、中台の経済関係の進展やWHO参加には賛意を表しています。

その点はマッザも同様ですが、ただ彼は、台湾海峡の軍事バランスが悪化し、台湾が弱者の立場から中国に対するようになることを懸念して、中台接近は歓迎するが、台湾と米国が中国の軍拡に対応する軍事力強化を怠らず、軍事バランスを維持するべきだと主張しているわけです。

経済的接近は中台双方の利益になるため、本質的に反対することは難しいのですが、それはそれとして、軍事バランスの悪化だけは食い止めるべきだ、というのは、一つの筋の通った主張と言えるでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:34 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
ロシア指導部内に経済政策をめぐる亀裂? [2009年06月17日(Wed)]
ニューヨーク・タイムズ6月17日付で米ヘリテージ財団のAriel Cohenが、今月初めに開かれた「サンクト・ペテルブルグ経済フォーラム」に関連し、ロシア指導部内に経済政策について深刻な亀裂がある、と論じています。

コーエンは、メドヴェージェフと改革派は年末までにWTO加盟交渉を終わらせ、OECD加入の話を復活させたいと思っている。もっともロシアにOECDへの加入資格があるかどうかは疑わしい、

他方、プーチンの懐刀、セーチン副首相が主導するシロビキ(軍事、治安機関の指導者たち)は、国家主義的、反米的、民族主義的政策を目指すことを主張している。ただ、「経済フォーラム」では、メドヴェージェフ派もシロビキ派も共に、ドルに代わる超国家的貨幣(例:IMF引き出し権)の導入やそれまでの暫定措置としてのルーブルの地域通貨化などを主張した、

ところでこの「フォーラム」は、プーチンらがいかに容易にメドヴェージェフのお株を奪えるかをも示した。プーチンはフォーラムに出席せず、ピカリョヴォ市に行き、新興財閥デルパスカをそのセメントやアルミ企業の国有化などで恫喝、そのことが国営テレビで大きく報じられた。メドヴェージェフは国有化を経済危機への対処の臨時的措置と見ているが、プーチンは違う、と述べ、

ロシアには、腐敗した石油依存国家となるか、WTOやOECDに加盟してハイテク投資を招くかの選択肢はあるが、両方を目指すことはできない。オバマは来月ロシア指導部に会うが、どちらを選択すればどうなるかを示すべきだ、と言っています。

これは、プーチン=シロビキ一派とメドヴェージェフ=改革派の間に経済政策面での違いがあることを図式的に描き出しています。こうした図式は判りやすいものですが、現実の状況はもっと複雑であり、こうした図式的な情勢判断や、それに基づく政策提言は適切なものとは言えません。

コーエンが言うような路線対立があれば、プーチン=メドヴェージェフ政権は崩壊します。むしろプーチンもメドヴェージェフも同じ穴のムジナと考えるべきでしょう。プーチンにしても、エネルギー分野での国家の役割強化は強固に信じているでしょうが、他分野の国有化にはさほどこだわっていないように見えますし、他方、メドヴェージェフも、ガスプロムの社長をしたこともあり、エネルギー分野での国家の役割についてプーチンとさほど考えが異なるわけではないでしょう。WTO加盟についても、いかに加盟条件をロシアに有利にするかが問題にされているのであって、両者間に原理的な違いがあるように描くのは適切ではありません。

なお、法の支配や私有財産の尊重などの点でロシアにはOECD加盟資格はない、というコーエンの指摘はその通りと思われます。政治的な考慮で加盟資格を緩めるようなことはすべきではないでしょう。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:46 | ロシア・東欧 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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